インフォメティス:次世代スマートメーターの普及と欧州展開で成長加速

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最新投稿日時:2025/12/11 09:21 - 「インフォメティス:次世代スマートメーターの普及と欧州展開で成長加速」(フィスコ)

インフォメティス:次世代スマートメーターの普及と欧州展開で成長加速

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/11 09:21
*09:21JST インフォメティス:次世代スマートメーターの普及と欧州展開で成長加速 インフォメティス<281A>は、電力データをAIで解析する「エナジー・インフォマティクス」領域のテクノロジー企業であり、電力センサー販売、クラウド型プラットフォーム、電気料金の最適化などのサービスを展開する。独自のNILM(機器分離推定)技術をコアとし、家庭内の電力使用を家電別に推定する高い分析能力を持つ点が最大の特徴だ。事業は単一セグメントだが、収益構造は「センサー等の導入支援に係るフロー収益」と「アプリ・クラウド利用料などのストック収益」を組み合わせたハイブリッド型となっている。グループは英国子会社Informetis Europe Ltd.を含む体制で、電力会社、ガス会社、住宅メーカーなど企業パートナーを介したBtoBtoCモデルを採用する。

2025年12月期第3四半期(累計)の売上高は366百万円(前年同期比47.6%減)と大幅減収となり、428百万円(前年同期は11百万円の赤字)と赤字が拡大した。主因は期初に計画していた大型案件のずれ込みで、特に(1)大手賃貸住宅向けセンサー販売中止、(2)英国の新サービス開始遅延、(3)需要側DR(デマンドレスポンス)サービスの成果報酬化による売上計上タイミングずれ、(4)次世代スマートメーター関連開発の後ろ倒しが響いた。また持分法適用会社エナジーゲートウェイ(EG)の在庫評価損も利益を圧迫した。一方、ストック収入の基盤であるARR(年次経常収益)は364百万円と、前年の大口テスト案件終了の影響で一時的に減少したが、利用契約件数は前年の2倍以上のペースで積み上がっており、需要自体は底堅さを維持している。

2025年12月期通期見通しを、期初計画の売上高1,325~1,747百万円から518百万円(前期比60.9%減)へ、営業利益も100~282百万円の黒字計画から672百万円の赤字(前期は49百万円の黒字)へ大幅に下方修正した。主因は、大手賃貸事業者向け電力センサー販売の終了に加え、プラットフォーム・アプリ提供や開発受託案件の獲得時期が翌期以降へ後ずれしたことによる計画未達である。一方で、来期以降は小売電気事業者向けサービスで成果報酬型料金プランの採用が進み、新規契約が拡大する見通しに加えて、英国事業および法人向けサービスのストック収入が増加する計画で、2027年12月期の黒字化達成を見込んでいる。

市場環境は明確に追い風だ。国内では再エネ導入拡大に伴い需給調整力の確保が重要課題となっており、DRサービスやデータ活用型需給管理に対する小売電気事業者の需要が急増している。2025年12月8日には中国電力との協業でエコキュートの遠隔制御をDRサービスに機能追加開発を行うことを発表した。さらに全国で普及が進む次世代スマートメーターは、電力データ活用ビジネスを大きく押し上げる構造的テーマであり、同社はこの領域で複数の電力会社、スマートメーター製造大手と協業しながら、将来の高スケールビジネスを狙う。また海外では欧州を中心に電気料金高騰と脱炭素化政策が進んでおり、特に英国ではガスボイラーをヒートポンプに置き換える政策が追い風となる。こうした環境下、同社は空調世界大手ダイキンUKと協同で「Budget Control」サービスを開始し、家庭における電力使用最適化を支援する仕組みを展開。ダイキンのヒートポンプ普及と連動する形で、インフォメティスのセンサー・解析基盤の採用が加速する可能性がある。

中期計画(2026~2030年度)では、2025年の売上高518百万円から2027年に1,493百万円、2030年には6,512百万円まで伸ばす計画を掲げており、2027年の黒字化を明確に打ち出している。成長ドライバーは「次世代スマートメーター関連」と「海外事業」の2本柱であり、特にDRサービスやスマートメーター関連事業は利益率が高く、顧客基盤の拡大とともにストック収入が増加して損益改善の中心的役割を担う見通しである。海外については、英国を起点に欧州各国へ展開を広げる計画で、欧州で急速に拡大するヒートポンプ市場を背景に、同社のエネルギーマネジメントサービスが浸透する余地は大きいと考えられる。

同社の優位性はNILMの精度、スマートメーター標準搭載を想定した拡張性、大手電力会社との長期的関係、海外子会社を軸にした欧州展開の実績、ダイキンとの協業によるシナジーなどが挙げられる。財務面は先行投資負担で赤字が続くが、ARRの拡大とストック比率の上昇が収益安定化に寄与する見込みだ。

株主還元は現時点では行っておらず、成長投資を優先する方針だが、中期的に黒字化が定着した段階で、配当や自己株式取得などの選択肢を検討するとしている。PBRは約2.8倍とグロース市場の小型AI企業としては中位水準であり、ストック収益の成長速度、中期計画の進捗、英国を中心とした海外案件の拡大を注視したい。

2025年12月期はフロー収益の急減で一時的に大幅減収となったものの、ストック収益基盤は維持され、契約件数も伸び続けている。特にDR、次世代スマートメーター、英国ダイキン協業という確度の高い成長ドライバーが揃っており、2026~2030年の成長フェーズ入りが期待される。エネルギーの脱炭素化と電力データ活用の拡大という構造変化は不可逆であり、同社のポジションは中期的に強まる見通しだ。中期計画で掲げる黒字化と高成長の実現に向け、2025年は体制整備と事業仕込みの年と位置付けられ、翌期以降の業績回復に注目したい。


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配信元: フィスコ

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