―広告業界を席巻するネット広告、AI活用で新たな成長シナリオを宿す銘柄群を追え―
若者のテレビ離れが言われて久しいが、その背景にはもちろんインターネットの存在がある。近年ではテレビ離れしているのは若者に限ったことではない。10代から40代まではどの世代においても、1日当たりでテレビを見ている時間よりもネットを見ている時間の方が長いという現実が総務省の調査結果で明らかとなっている。ネットの方が消費者に見られているとするならば、広告を出す側の顧客企業にとっても、それまでのテレビに重心を置いた宣伝戦略を見直す必要性に迫られるのは自明だ。株式市場でもネット広告関連株が再脚光を浴びる場面が近いことを予感させるが、その際に新たな注目ポイントとなっているのが人工知能(AI)を活用した広告戦略である。
●一頭地を抜く状態のネット広告
電通によると2023年の日本の総広告費は前年比3.0%増の7兆3167億円で前年に続き過去最高となった。媒体別では「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」のいわゆる4マスは前年比3.4%減の2兆3161億円と減少トレンドが続く一方、ネット広告は同7.8%増の3兆3330億円と躍進、一人勝ちの様相となっている。総広告費に占めるネット広告の金額は率にして46%と半分近くを占めるなど一頭地を抜く状態にある。
テレビ広告についてはかつての全盛期と隔世の感があるというほどではないが、今後一段と視聴者層が若い世代に引き継がれていくなかで構造的な逆風環境は止められない。タレントの女性トラブルを巡る一連の騒動で“公共広告漬け”となったフジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]の件は特異な例としても、他の民放各局も商業広告需要が何らかのきっかけで剥がれ落ちていく近未来図を思い描いて戦慄したかもしれない。ネット広告と必ずしもトレードオフの関係にあるとは言えないが、ネット媒体も絡めた広告戦略の見直しがテレビ業界に改めて必要となっていることは確かであろう。
●コロナ禍を経て成長性が一気に開花
ネット広告が4マス向け広告を凌駕する状況となったのは、ひとことで言えば時代の流れといえるが、世界を半ばパニック的な環境に陥れた新型コロナウイルスの感染拡大がその流れを激流に変えるトリガーとなった。コロナ禍を経て消費者の購買経路がネット経由となる傾向が強まり、宣伝を打ち出す側もオンラインとオフラインを横断的に行う必要性が強く求められる時代となった。広告業界もIT分野を主戦場に、そこで戦うための人材をいかに確保するかということが重要な課題となっている。
一方、ネット広告における一つのアキレス腱は人的コストである。例えば国内産業を俯瞰すると、業種を問わずサービスや製品を提供する側にとってAIがもたらす高付加価値化や低コスト化が収益成長のカギを握るというのはもはや摂理である。例に漏れず、ネット広告分野でもAIを活用する動きが活発化している。
●ネット広告会社のエース社員はAI
ネット広告配信におけるプロセスは、まず広告の企画立案やマーケティング戦略などの広告制作をスタート地点に、広告を入稿し、配信を行い、その効果を測定してフィードバックするという流れにある。その際、上流工程の広告制作においては当然ながら人間の実働が必要となるが、「広告入稿」「配信設定」「効果測定」「分析・評価」という下流工程ではAIが人間の手を煩わせることなく、オートマチックに完結できる時代となってきている。また、人間の感性を必要とする上流工程でも、今や生成AIがフル参戦してクオリティーの高いものを短時間で創出することが可能となった。加えて宣伝をより効果的にするための改善箇所などもAIが瞬時に導き出すことが可能となれば、コンサルティング分野でも格段のレベル向上が見込め、ネット広告関連企業の成長性を高めることに直結していく。
ビッグデータとディープラーニングがAI技術に飛躍的進化をもたらす両輪となったが、今後は広告の運用だけではなく、広告素材である「テキスト」「画像」「動画」「音声」などの分野で生成AIが縦横無尽に活躍する未来が近づいている。株式市場でもこれまでとは違った観点でネット広告関連に耳目が集まりそうだ。今回のトップ特集では、ここから中期的に株価水準を切り上げる可能性が高い5銘柄をピックアップした。
●「AI広告時代」に要注目の5銘柄はこれだ
【マクビープラはLTVマーケティングが大躍進】
Macbee Planet <7095> [東証P]はWeb広告を活用して企業の販促支援を行う広告代理店であり、独自のAI技術を駆使しLTV(顧客生涯価値)の高いユーザーの開拓を特長とする「LTVマーケティング」を広告主に提供する。AIによるハイレベルなターゲティング及びパフォーマンス評価に広告運用におけるノウハウを融合させることで、費用対効果の高いサービスを売り物としている。
暗号資産関連の案件やネット証券向けに広告代理ビジネスが好調で収益に寄与している。トップライン、利益ともに伸び率は抜群で、24年4月期に営業7割増益を達成、25年4月期も同利益は45億~50億円(前期比23~36%増)とピーク利益の大幅更新が続く見通しにある。成長力の高さを考慮して16倍前後の時価予想PERはかなり割安といってよい。
株価は昨年12月初旬を起点に、調整を織り交ぜながらも力強い下値切り上げ波動を形成しており、中期波動でも週足でみると大勢トレンドの上昇転換を鮮明としている。13週・26週移動平均線のゴールデンクロスを示現しており、当面は昨年の株式4分割後の6月4日につけた高値3770円を目指す展開が予想される。
【サイバーはAI効果でネット広告の利益急改善】
サイバーエージェント <4751> [東証P]はネット広告を祖業とするが、現在はスマートフォンゲームの開発・運営を手掛けるほか、インターネットTV「ABEMA(アベマ)」への展開などで存在感を示している。ネット広告は売上高が24年10~12月期に過去最高となるなど上げ潮に乗っており、加えてAIを活用することによって利益率も向上し業績を牽引している。「ABEMA」も黒字化に向け順調に損益が改善傾向にあり、いよいよ収益化に向けて期待がかかる局面となってきた。
また、中長期戦略として世界を見据えたIP(知的財産)ビジネスに新たに注力する構えをみせるなど成長戦略に余念がない。25年9月期第1四半期(10~12月)は、最終利益段階で50億7100万円の黒字(前年同期は4億7200万円の赤字)と好調。通期では前期比29%増の210億円を見込んでいる。
株価は21年6月に2441円(分割修正後株価)の上場来高値を形成しているが、時価はそこから半値以下にディスカウントされた水準。直近は1月30日に1224円の戻り高値を形成後に下押しているが、目先筋の利食い一巡から切り返す展開が見込まれる。
【ジオコードは生成AI技術を深耕し実力発揮】
ジオコード <7357> [東証S]はWebマーケティングを手掛け、検索上位表示対策(SEO対策)のほかWebサイト制作やクラウド型業務支援ツールの提供なども行う。Web広告については検索連動型のリスティング広告を軸に、すべての業種を網羅する広告運用を展開する。生成AIの急速な進化に対応し、個人情報保護や著作権問題などリスクへの対処及び安全かつ効果的な活用を念頭に置いた「生成AI利用ガイドライン」を制定しており、同社の営業支援ツール「ネクストSFA」のAIを融合させた新機能開発や新サービスのリリースを加速させる方針だ。
業績面では25年2月期に営業損益黒字化を見込むものの低水準にとどまる見通し。しかし、トップラインは前期比13%増の17億1500万円と回復軌道に乗ることが予想されている。株価は急騰習性があり、上ヒゲをつけやすいとはいえ足の軽さは魅力となる。
昨年6月11日に1288円の昨年来高値をつけたが、時価はその半値水準に位置しており値ごろ感が漂う。テクニカル的には今月中旬以降は日足一目均衡表の雲抜けが想定される位置にある。昨年10月に大商いで急騰劇を演じた場面も雲抜け直後であった。
【アイモバイルはアドネットワークの象徴銘柄】
アイモバイル <6535> [東証P]は、ふるさと納税サイトの手数料収入を主力事業とするが、広告配信事業でも強みを有する。国内最大規模のアドネットワークを運営しており、高精度の最適化機能などを駆使し優位性を高めている。アドネットワークとは、複数のWeb広告媒体によって構成され、広告媒体をワンパッケージ化していることで多くのサイトやSNSに一括出稿できる配信ネットワーク。これによって広告主は労せず効率的な配信を行うことが可能となっている。
同社はこのほか、インフルエンサーマーケティングや広告代理店、アプリ運営なども手掛け、幅広い業務エリアで実力を発揮している。25年7月期は営業利益が前期比27%増の45億円予想と3期ぶりに過去最高利益を大幅更新する見通しにある。また、PERが10倍を下回るなどネットサービス関連としては割安感が際立つ。
株価は昨年10月に575円の昨年来高値をつけた後、12月中旬にも559円の戻り高値を形成したものの、その後は調整局面を余儀なくされた。しかし、500円未満の時価は売り物がこなれ浮揚力が働きやすくなっている。500円台活躍を第一目標に、早晩戻り相場突入が期待される。
【Appierは最先端AI技術で世界戦略進む】
Appier Group <4180> [東証P]はAIマーケティングのフロントランナーに位置付けられる。最先端のマシンラーニングを活用し、AI技術を搭載したマーケティングプラットフォームを武器に業績は飛躍的な成長局面にある。何百万ものシグナルの潜在的組み合わせをAIが分析し、LTVが最上位にあるユーザーセグメントを発見し広告を配信するというシステムで時流を捉えている。
開発拠点を主に台湾に置き、欧米を中心に海外で急展開をみせるなどAI搭載ツールのグローバル戦略で中期的な成長性の高さを際立たせている。米キャピタル・グループ傘下の投資ファンドが同社株を買い増す動きをみせており、直近で7%超保有するなど株式需給面でも思惑を内包している。業績は売上高・利益ともに飛躍期にあり、24年12月期営業利益は前の期比2.6倍の20億9000万円を見込んでいる。
通期決算発表を目前に控えているため、目先はその結果待ちとなっている。だが、今期以降の業績について収益拡大期待はかなり強い。株価は1月下旬に急動意し1814円の戻り高値を上ヒゲでつけた後に調整を入れたが、1500円台で踊り場を形成し再浮上の気配をみせている。
株探ニュース
関連銘柄
銘柄 | 株価 | 前日比 |
---|---|---|
4180
|
1,618.0
(02/07)
|
+67.0
(+4.31%)
|
4676
|
2,516.0
(02/07)
|
-64.0
(-2.48%)
|
4751
|
1,169.0
(02/07)
|
-11.0
(-0.93%)
|
6535
|
483.0
(02/07)
|
+8.0
(+1.68%)
|
7095
|
3,380.0
(02/07)
|
+20.0
(+0.59%)
|
7357
|
654.0
(02/07)
|
+6.0
(+0.92%)
|
関連銘柄の最新ニュース
-
02/07 17:19
-
02/07 16:44
-
02/07 13:00
-
02/07 12:35
-
02/07 12:27
新着ニュース
新着ニュース一覧-
今日 21:30
-
今日 20:30
-
今日 20:30
-
今日 19:30
注目!みんかぶ企業分析
みんかぶおすすめ
\ 投資・お金について学ぶ入門サイト /