オーダーメイドのAI・人工知能ソリューション開発およびAI導入コンサルティング『カスタムAI』を展開する株式会社Laboro.AI(ラボロエーアイ、東京都中央区、代表取締役CEO椎橋徹夫・代表取締役COO兼CTO藤原弘将 以下、当社)は、気象庁気象研究所が実施する「AI技術を活用した気象レーダーによる顕著現象の検出と情報処理の高度化に関する研究開発」(※1)の研究開発委託先として採択された研究テーマの一つである「複数の異なる深層学習モデルを活用して竜巻渦を探知する技術の高度化」に関する開発を実施し、従来精度を上回る成果が得られたことをお知らせいたします。また、本件を含む研究論文が、公益社団法人 土木学会に採択されたとともに、同学会の「2024年 AI・データサイエンス論文賞」を受賞したことを併せてお知らせいたします。
なお、本プレスリリースは、2023年度に実施された気象研究所からの委託研究の成果に基づいています。
実施概要
気象研究所では、過去の気象レーダーデータから竜巻のパターンを抽出し、深層学習モデルを用いて竜巻を自動検出・追跡するための技術開発を進めています。しかし、複雑かつ特殊な条件下では精度の高い検出が困難です。そこで、現在気象研究所で採用されている深層学習モデルに加えて、複数の深層学習モデルを開発・比較評価することを通して、竜巻の探知技術の高度化に取り組みました。
竜巻渦検出のための深層学習モデルの開発にあたり、当社が実施した内容は以下のとおりです。
1.データの準備とVGGモデルの再学習
気象研究所は2010年から2019年までの9つの空港における過去データを元に、訓練用および検証用の学習データとして計13,000を超えるデータを新たに作成しております。当社では、このデータを用いて現在気象研究所で採用されているVGG(Visual Geometry Group)モデルの再学習を行いました。
2.新しい深層学習モデルの開発
上記の再学習させたVGGモデルに加えて、新たに以下3つのAIモデルを開発いたしました。
1.MobileNetV3を採用し、精度を維持しながら計算量とモデルサイズを削減することを企図したCNN(Convolutional Neural Network)モデル
2.EfficientNetV2を採用し、ネットワークを効果的にスケールアップするための学習アプローチをとったNAS(Neural Architecture Search)モデル
3.SwinTransformerV2を採用し、長距離依存関係をより効果的に捉えるために自己注意機構を組み込んだViT(Vision Transformer)モデル
3.性能評価と比較
上記3モデルの再現率と適合率のスコアを、ベンチマークとしたVGGモデルと比較したところ、2.NASモデルおよび3.ViTモデルが、適合率-再現率曲線下面積(AP)の点で従来モデルを上回り、竜巻渦の発生を正しく識別する精度が高いことが示唆されました。
4.CPUとGPUにおける推論時間の比較
新たに開発した上記3モデルについて、CPUとGPUにおける推論時間の比較の結果、CPUでの効率的な推論のために設計された1.CNNモデルが妥当な性能を示し、エッジデバイスやモバイルプラットフォームを含む幅広いデバイスに竜巻渦検出モデルを展開することができる可能性が示唆されました。
本件を含むBRIDGEプロジェクト全体の研究内容を記した論文が公益社団法人 土木学会に採択され、2024年11月に下記にて公開されております。当社が開発支援を行なった内容は、当論文の第4章1節に記載されています。
また、当論文が、土木学会 構造工学委員会「2024年 AI・データサイエンス論文賞」(※2)を受賞いたしました。
タイトル:Deep learning-based tornado vortex detection through the BRIDGE program:
advancing technology and multidisciplinary applications
掲載誌名:『Intelligence, Informatics and Infrastructure』
発行機関:公益社団法人 土木学会
巻 号:2024年5巻2号
ページ数:p.22-29
D O I:https://doi.org/10.11532/jsceiiai.5.2_22
リ ン ク:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsceiiai/5/2/5_22/_article
今後の展望
今般、大規模データの活用を通して初期的な成果を得られたAIによる竜巻検出技術は今後、鉄道や高速道路などのインフラや、電力会社や通信会社などのライフラインサービス事業者をはじめ、竜巻対策を必要とするさまざまな分野での適用・実装が見込まれ、リアルタイムでの災害予防情報の提供に貢献することが期待されます。
当社は、今後も目標実現に向けて気象庁気象研究所と共に取り組みを進めてまいる所存です。
(※1)内閣府が推進する「研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)」における「局地的・突発的な荒天対策のためのスタートアップとの連携:AIを用いたリアルタイム防災フィールド構築」の一部。
(2023年10月30日発表)
Laboro.AI、気象庁気象研究所「AIを用いたリアルタイム防災フィールド構築」の研究開発委託先として採択
https://laboro.ai/wp-content/uploads/2023/10/Press_2023-10-30.pdf
(※2)土木学会 構造工学委員会 AI・データサイエンス論文集編集小委員会【AI・データサイエンス論文賞】
https://committees.jsce.or.jp/struct1002/node/64
ご参考情報
■株式会社Laboro.AI 会社概要
会 社 名:株式会社Laboro.AI(ラボロ エーアイ)
所 在 地:〒104-0061 東京都中央区銀座八丁目11-1
代 表 者:代表取締役CEO 椎橋徹夫
代表取締役COO兼CTO 藤原弘将
設 立:2016年4月1日
事業内容:機械学習を活用したオーダーメイド型AI『カスタムAI』の開発
カスタムAI導入のためのコンサルティング
U R L : https://laboro.ai/
株式会社Laboro.AIは、オーダーメイドのAIソリューション『カスタムAI』の開発・提供を事業とし、アカデミア(学術分野)で研究される先端のAI・機械学習技術をビジネスへとつなぎ届け、すべての産業の新たな姿をつくることをミッションに掲げています。業界に隔たりなく様々な企業のコアビジネスの改革を支援しており、その専門性から支持を得る国内有数のAIスペシャリスト集団です。
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