【QAあり】ピーバンドットコム、購買力の高い顧客層取り込みやクロスセルが奏功し増益 増員による販管費増加を利益増分が上回る
目次
後藤康進氏(以下、後藤):ピーバンドットコム代表取締役社長の後藤です。2025年3月期第2四半期の決算概要について、アジェンダに沿ってご説明します。
売上成長
2025年3月期第2四半期の売上高は、前年同期比6.3パーセント増となりました。2022年より進めていた「仕組み」×「ヒト」の戦略が、ようやく効き始めています。
売上高は上場以来、横ばいが続いていましたが、我々がKPIに掲げている2桁成長のさらに上へと推進していきます。これは決して、一時的なものではないと思っています。
利益も回復
利益においても、前年同期比20.4パーセント増とV字回復しています。こちらも成長軌道に乗せていきます。
売上成長の要因
売上成長の要因として、クロスセルが効いています。まず、我々が商材としているのはプリント基板で、みなさまの身の回りにある電子機器の中に入っている緑色の板です。板のみを作るのが、当社のメインサービスとなっています。
我々は、板を作るためにCADで設計図を引くサービスや、作成したプリント基板の上に半導体や電子部品をはんだ付けするサービスを提供しています。要はプリント基板の製造が中心です。我々は、その注文をクロスセルと呼んでおり、販売の効果がしっかりと出ています。
サービスをご利用いただくユーザーは、主にハードウェアを開発するエンジニアです。市場のマジョリティを占めている、中堅・大手企業所属のエンジニアの利用が着実に増え、安定的な売上基盤ができています。
利益回復の要因
利益回復の要因です。我々のビジネスモデルは非常にシンプルで、費用の大半が人件費となっています。ここ数年は、成長のための先行投資として、主にシステムエンジニアなどの人員採用を進めており、利益を圧迫していました。しかし、投資効果の戦略がようやく効き始め、売上が増えたことで、利益も回復しています。
なお、当社のビジネスモデルは営業マンを1人増やせば、売上がいくら増えるという計算ではなく、少数精鋭でサービス開発・提供ができることを強みとしています。
購買力の高い顧客層をさらに増やしていくことで、費用は固定のまま売上が増えていきます。我々は採算性のさらなる向上を目指します。
業績サマリ
業績サマリです。売上高は10億800万円で、前年同期比6.3パーセントの成長です。当期純利益は4,000万円で、前年同期比20.4パーセントの増加です。
システムエンジニアの増員計画が完了し、現在、従業員は40名です。基本的な方針として、少数精鋭を継続していきます。中堅・大手企業の購買力が高い顧客層からのクロスセル販売が増えており、成長軌道へ乗せていきます。
中期経営計画 ‐ 見直しの背景と目的
2024年10月17日に発表した、中期経営計画の見直しについてご説明します。
経営体制
現在、当社では、代表取締役社長の後藤が「既存事業の拡大」を、創業者かつ大株主でもある田坂が「新規事業の探索」を進めていく、「両利きの経営」を実施しています。
プリント基板市場の成長予測2024ー2036年
当社を取り巻く市場の成長性についてです。現在、IoTやAI、EV、ロボット、脱炭素に伴う再生エネルギーの活用、宇宙開発と、これからの未来を作っていく、これらの産業において、電子機器、いわゆるハードウェアの必要性がなくなることは考えにくいと思います。
そうなると、その中に入っているプリント基板の需要も、おのずと増えていくものといえます。したがって、プリント基板市場のCAGRは約5.1パーセントとしています。
事業環境:プリント基板業界マップ
プリント基板の業界マップです。現在、国内の電子回路基板と電子回路実装基板の市場規模は、合わせて1兆6,000億円ほどとなっています。その中で、中小規模の基板メーカーがいる6,500億円ほどの市場を、当社のメインターゲットと位置付けています。
単価が低く、難易度も高くない案件を取り扱う海外のネット通販は、収益性の観点から我々のターゲットとしていません。
基本方針
戦略についてご説明します。戦略は大きく分けて3つあります。まず戦略①は、当社のメイン事業であるプリント基板のシェア拡大です。
戦略②はクロスセルの拡大です。電子部品の調達を自動化していきます。そして戦略③は、モノづくりをトータルにサポートする新たなコンサルティングサービスの展開です。
基本方針
モノがアイデアから具現化されていくプロセスに対し、3つの戦略領域をそれぞれ配置した図です。
戦略① シェアの拡大へ向けた取り組み
それぞれの戦略についてご説明します。まずは戦略①、プリント基板のEC事業のシェア拡大についてです。
戦略① シェアの拡大へ向けた取り組み
当社が提供し、社名にもなっている「P板.com」は、国内初のプリント基板のネット通販サイトです。その強みは、誰でも簡単にサービスを利用できるシンプルな仕組みです。
従来のプリント基板の購買方法は、ユーザーとメーカーの営業担当間での、紙やメールベースでのやり取りでした。それが当たり前の業界でしたが、時間や工数などのコストが余計にかかってしまいます。
そこで我々は、複雑なプリント基板の仕様を標準化しました。これにより、ユーザーが見積から注文まで、すべてをWeb上で、いつでも完結できるような仕組み(BtoB‐EC)を実現しました。
戦略① シェアの拡大へ向けた取り組み
当社がこれから成長していくためには、中堅・大手企業のお客さまを、どのように取り込んでいくかが鍵となります。そこで重要な勝ち筋となるのが、日本企業特有の商習慣である、FAXや紙伝票でのやり取りなど、商社や代理店を経由する複雑な商流への対応です。
これは商社であれば、当たり前にできますが、我々のようなECは標準化された仕組みを強みとしているため、相反することになります。そこをあえて限界まで仕組み化し、フォローが必要な箇所を人で対応する、「仕組み」×「ヒト」、DXとECを掛け合わせることで、サービス利用につなげていきます。このようにして、業界シェアを拡大していく戦略です。
戦略② 電子部品調達の自動化
戦略②の部品調達の自動化についてです。
戦略② 電子部品調達の自動化
現状、電子部品の調達は、当社のサポートスタッフが個別に対応しています。そのため、在庫確認や見積の回答に時間がかかったり、その分の工数がお客さまへの価格に上乗せされてしまったりと、ユーザー側も当社もコスト過多となっています。こちらをWebサービスとして、完全自動化します。
戦略② 電子部品調達の自動化
施策の効果として、年間の売上高が4億円になるといった試算が出ています。ただし、あくまでも既存の利用状況からのシミュレーションとなるため、新規の利用も相乗的に加算されていきます。
新たなサプライチェーンの提供
その先の将来ビジョンとして、電子部品のみならず、ハーネスや筐体、専門商社や他社のEコマースまで、まるっとつなぐ「GUGEN Hub」構想を掲げています。ユーザーは、ここに来れば最適なサプライチェーンを簡単に見つけることができます。
さらにユーザー同士のコミュニティも活性化させ、モノづくりの好循環を生み出す場を提供していきたいと考えています。
戦略③ モノづくりコンサルティングサービス
戦略③は、コンサルティングサービス「S-GOK」です。
戦略③ モノづくりコンサルティングサービス
「S-GOK」は、ネット通販ではカバーしきれない電子機器開発の上流から下流までを、お客さまと伴走しながら手厚くサポートするサービスです。モノづくりの構想段階からコンサルティングとしてかかわり、その先の量産の受注確度を高め、採算性を向上させていきます。
数値目標
3つの戦略による数値目標です。2025年3月期から2028年3月期の3ヶ年にかけて、売上高は29億700万円、当期純利益は1億3,800万円を目指していきます。
また、主要KPIとして、当期純利益成長率を年率プラス10パーセント、株主資本コストとROEの差分であるエクイティスプレッドを2.5パーセントと設定しています。
株主還元
最後に、株主還元についてご説明します。これまでご説明してきたとおり、当社には大きな成長の余地があると認識しています。
戦略的な事業投資を最優先に考え、企業価値の向上を目指し、株主のみなさまへ中長期的に、より大きな還元を実施できる基盤をしっかりと築いていきたいと考えています。
その上で、株主還元についても、業績目標達成を背景とした増配を実現できるよう、全力を尽くしていきます。引き続き、みなさまのご支援をよろしくお願いします。
ご説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:通期予想に対する進捗について
司会者:「通期業績予想に対して、売上の進捗が45.4パーセントです。こちらはどのように見ればよいでしょうか?」というご質問です。
後藤:我々の業界は、その特性上、どうしても年末や年度末といった下半期に需要の偏りがあります。予算も、下半期にかけて高まるように設定しています。このような理由から、売上の進捗率は過半数になっていません。
質疑応答:売上成長の要因について
司会者:「売上高の横ばいが続いていましたが、前年同期比で6.3パーセント成長した一番の要因は何でしょうか?」というご質問です。
後藤:これは、今までの戦略がようやく効き始めているためです。特に中堅・大手企業の高い購買力のあるお客さまの注文が増えていますので、クロスセル、いわゆる複数サービスの利用をさらに増やしていきたいと考えています。
質疑応答:「GUGEN Hub」の実現時期について
司会者:「中期経営計画で公表された『GUGEN Hub』は、いつ実現しますか?」というご質問です。
後藤:こちらはハードウェア業界ではドリームオブドリームなお話で、絵に描いた餅のような構想に見えます。しかし、我々はプリント基板のサプライチェーンを構築したという意味で、プリント基板においては、すでに実現できています。
したがって、我々であれば実現できる可能性があり、12月にリリースを予定している部品調達の自動化が、「GUGEN Hub」の第一弾となっていきます。このように、着々と構想を実現させていきたいと思っています。
司会者:一歩ずつ進んでいる状況だということですね。
後藤:そのとおりです。
質疑応答:上場維持基準達成に向けた計画について
司会者:「上場維持基準を達成する計画はありますか?」というご質問です。
後藤:現在、前期に上場維持基準の1つである流通時価総額が抵触している状態です。その解消のためにも、まずは企業価値をしっかりと市場に伝えていく、IRの発信の強化が大事だと考えています。
その根拠となるのは業績の向上と考えており、その両面でしっかりと進めていきたいと思います。
質疑応答:開発支援における強みについて
司会者:「『S-GOK』のような開発支援サービスを行っている企業は多いように思います。貴社の強みはどこにあると思われますか?」というご質問です。
後藤:我々の場合、ネット通販の「P板.com」は、プリント基板に係るイニシャル費用を無料にしています。利用のほとんどは、試作や開発に使われるプリント基板です。
つまり、試作や開発をするユーザーが、何もしなくても我々のサイトに集まってきている状態です。そのため、営業をする際に新規顧客をディスカバリーする必要がありません。
これが我々の強みと思っており、訪問する顧客リストは山ほどあります。そこを人だけではなく「仕組み」×「ヒト」でどのようにして取っていくか、トライ&エラーを繰り返していくことが、我々にとって重要かと考えています。
司会者:強みの部分をこれからも伸ばしていきたいというところですね。
後藤:おっしゃるとおりです。
質疑応答:基板製造におけるシェア拡大の課題について
司会者:「小規模・中堅の基板製造メーカーのシェアを取っていくにあたり、現在の課題はどこにありそうですか?」というご質問です。
後藤:先ほどご説明したとおり、我々が日本企業特有の商習慣に合せていくことです。また、市場の中では、プリント基板の購買方法として、基板メーカーの営業担当者がユーザーと対面で営業することがまだ多くあります。そのため、その中に、いかにして浸透していくかが鍵となっていると思います。
認知度をしっかり高めて、我々のサイトは利用しやすいものだと訴求していくことが課題かと考えています。
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