【QAあり】マブチモーター、小型モーター世界No.1の技術力・70年連続黒字を基盤にM&Aを積極推進、新市場開拓へ

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最新投稿日時:2024/11/28 11:00 - 「【QAあり】マブチモーター、小型モーター世界No.1の技術力・70年連続黒字を基盤にM&Aを積極推進、新市場開拓へ」(ログミーファイナンス)

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【QAあり】マブチモーター、小型モーター世界No.1の技術力・70年連続黒字を基盤にM&Aを積極推進、新市場開拓へ

投稿:2024/11/28 11:00

1.マブチモーター概要

伊豫田忠人氏(以下、伊豫田):マブチモーター株式会社取締役専務執行役員の伊豫田です。さっそく私から、マブチモーターについてご説明します。本日ご説明する項目は、スライドに記載のとおりです。

1.マブチモーター概要

伊豫田:弊社の概要です。マブチモーター株式会社は、今から70年前の1954年に創立しました。本社は千葉県松戸市に、技術研究所は千葉県印西市にあります。

連結子会社数は24社ですが、そのうち海外が23社、国内が1社と、海外の割合がかなり高くなっています。従業員数は、本社単体では845人、連結では2万人弱の規模です。

1.マブチモーター概要:事業内容 1960年代

伊豫田:事業内容についてご説明します。初期に注力していたのが、模型・玩具用モーターです。

模型・玩具用モーターは、特にプラモデル等を作られる方はお使いいただいたことがあるかと思います。なかでも水中モーターは、船の模型の下に取り付けたり、銭湯に持ち込んで石鹸箱等につけて遊んだりした方もいたと聞いています。

1.マブチモーター概要:事業内容 現在

伊豫田:現在の事業内容についてご説明します。弊社の現在の姿ですが、小型・軽量・高効率のモーターをさまざまな用途に提供し、豊かな生活や産業の発展に貢献しています。

モーターが使われる用途は、自動車電装機器用がかなり多い状況になっています。ライフ・インダストリー機器用としては、電動歯ブラシやヘアドライヤー、プリンターなどがあります。みなさまのご家庭にも、弊社のモーターが使われている製品があるのではないかと思います。

自動車電装機器用は、モーターそのものが目に見えるところになく、なかなか馴染みがないと思いますので、事例として本日はサイドミラーをお持ちしました。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):車の横についているサイドミラーですね。

伊豫田:サイドミラーの後ろに、3つのモーターが入っていることをご確認いただけるかと思います。そのうちの2つはサイドミラーの角度を調整するためのモーターです。

坂本:最近は自動で調整できるタイプなどいろいろありますよね。

伊豫田:はい。もう1つは、サイドミラーを折りたたんで格納するためのモーターです。1つのサイドミラーの中に、このように3つのモーターが入っています。

坂本:サイドミラーだけで、6つのモーターが使われているということですか?

伊豫田:おっしゃるとおりです。他には、ドアロック等もすべてモーターで動かしています。

坂本:スライド左側の図を見ると、自動車1台に多数のモーターが使われています。御社の業績は、自動車生産台数によって、ぶれるところがあるのでしょうか?

伊豫田:弊社のモーターの約8割は自動車に使われていますので、やはり自動車販売台数の影響はあります。そのため、私どもは自動車の販売動向を常に注視しています。

坂本:取り扱っているモーターについては、非常に小さなものからそこそこ大きなものまで、製造・販売されていると思います。製造しているサイズの範囲を教えていただけますか?

伊豫田:小さなものだと小指の先ほど、大きなものでは片手で持てるくらいのサイズが多いです。例えば、今日はパワーウインドウ用のモーターをお持ちしていますが、弊社で扱うモーターはだいたい片手で持つことができます。

坂本:御社は、そのくらいのサイズに絞って展開しているということですね。

伊豫田:はい。それが、弊社が取り扱っているサイズの範囲です。

坂本:非常によくわかりました。また、1個あたりの単価について、卸値でも構いませんので、価格帯の幅を教えてください。

伊豫田:今年は平均145円です。ただし、単価帯はかなり幅が広く、数十円のものから数万円のものまであります。弊社としては、今後、高付加価値の分野に注力していきたいと考えています。

坂本:もちろん、そのほうが値段は高くなるということですね。

伊豫田:おっしゃるとおりです。

1.マブチモーター概要:経営の特徴

伊豫田:弊社の経営の特徴についてご説明します。スライドには3つ挙げています。1つ目は、ポーター賞を受賞していることです。「戦略がある企業」とも記載していますが、こちらは後ほどあらためてご説明します。

2つ目は、小型モーターの生産・販売数量が世界No.1であることです。年間約13億個のモーターを生産・販売しています。

3つ目は、本年1月に創立70周年を迎えましたが、この間一度も営業赤字に陥ったことがなく、必ず利益を創出してきたことです。

2.創業:会社創立前

伊豫田:会社創立前についてです。幼少時から、ものづくりが大好きだった創業者は、小学生の時に蒸気船の模型を速く動かそうと、燃料にガソリンを使用したところ、引火して大火傷したことがありました。その時、「世の中の子どもたちに、安全に楽しめる動力を作ろう!」と考え、のちのモーター作りにつながったと聞いています。

そこからいろいろなモーターを開発しましたが、特にご紹介したいのは、まさに会社創立の年、1954年にできたモーターです。本日は、70年前の車の模型をお持ちしました。この中にモーターが使われており、驚いたことに今でも動きます。

坂本:すばらしいですね。

伊豫田:実際にスイッチを押すと、このように動くのですが、当時から品質のよいモーターを作っていたということです。

ただし、このモーターが使われたおもちゃは、ほとんどが輸出用でした。そのため、非常に値段が高く、日本のお子さまたちが買えるような値段ではなかったということです。そこで創業者は、「モーターをどんどん安くして、お子さまたちが買えるようなおもちゃに貢献したい」という、強い思いを持ちました。

2.創業:創業の志

伊豫田:創業の志についてご説明します。夢は「モーターで飛行機を飛ばしたい」ということでした。また、「安全に楽しめる動力」と「子どもたちが買うことのできる価格」に、強いこだわりを持っています。

3.経営理念・戦略の確立:経営理念

伊豫田:弊社は、経営理念として「国際社会への貢献とその継続的拡大」を掲げています。私どもは社会にモーターを直接お届けする機会は非常に少ないのですが、お客さまの製品の中で活躍するかたちで、社会に貢献しています。

このモーターに「安全な社会を作りたい」「幸せな社会を作りたい」という思いを乗せ、それがお客さまの製品に搭載されることで、社会の役に立った結果として利益を創出します。したがって、社会が抱えるなんらかの課題の解決に貢献することが、私どもの目指すところだと考えています。

3.経営理念・戦略の確立:経営機軸

伊豫田:「国際社会への貢献とその継続的拡大」という経営理念のもと、4つの経営基軸を掲げています。特に3番目、人を最も重要な経営資源と位置付け、仕事を通じて社会に役立つ人を育てるということを、とても大切にしています。

3.経営理念・戦略の確立:基本戦略の3本柱

伊豫田:経営戦略上の特徴として、スライドには基本戦略の3本柱を記載しました。1つ目は「小型直流モーター事業に特化」です。技術・製品範囲を小型直流モーターに絞り込み、そこを深掘りしていくことで技術を高め、よいモーターを作ります。それにより、モーターの利用領域が広がり、用途の多様化を実現するという流れを考えています。

その結果、業界で世界No.1のシェアを獲得し、お客さまからの高い評価と信頼をいただくことで、高品質の製品を安定供給し続ける社会的責任を負っています。

品質を高くすると、ややもすれば値段も高くなってしまいます。しかし弊社は、高品質と低コストを同時に実現させることに、こだわりを持っています。そのため、「標準化戦略」と「国際分業制体制」の2つに取り組んでいます。

3.経営理念・戦略の確立:標準化戦略

伊豫田:標準化戦略についてご説明します。1968年頃、モーターの生産・販売数量が1億個台にまで増えました。

玩具用モーターはクリスマス・お正月商戦向けに作られているため、生産のピークが8月前後の6ヶ月ぐらいに集中します。それが終わると閑散とした状態になり、繁閑ギャップが非常に大きいという問題がありました。

忙しい時期にはクレーム等も発生し、大変な悪循環に陥っていました。当時はお客さまの個々のニーズに応えていたためで、それにより、だんだんと無理が生じてきました。そこで、個々のお客さまではなく、複数のお客さまのニーズに応えられる標準モーターを開発し、たくさん作り、安く売っていく考えに至ったわけです。

3.経営理念・戦略の確立:標準化戦略

伊豫田:この標準化戦略により、コストの低減に加え、同じものをたくさん作ることで品質も非常に安定しました。そして、モーターの用途自体が広がっていきました。

用途が増えると、さらに規模が拡大します。それにより規模の経済効果が働き、さらにコストが低減されるという、好循環を生み出すことができました。これが非常にユニークな戦略だということで、戦略論の大家、ハーバード大学マイケル・E・ポーター教授の名前を冠した「ポーター賞」を受賞しています。

坂本:今までお付き合いがあった取引先は、御社に頼んでいるモーターのかたちをもとに、玩具など、さまざまなものを製造していたと思います。そのため、標準化戦略の導入により、製品設計の変更が必要になる可能性もあったと推察します。

これを乗り越えて御社が支持されているのは、やはりコスト低減と価格競争力、そして品質が噛み合ったからであり、そのために標準化戦略がうまく進んだと思います。このあたりについて、クレームがあったのか、その中でどのように推進したのかなど、もう少し詳しく教えてください。

伊豫田:当時の社内では、「お客さまの言うとおりに作ったほうがよいのではないか」という意見もありました。しかし品質のクレーム等もあったため、「標準化戦略を実行しなければならない」という創業者の強い思いで、進めることとなりました。

この戦略を支持してくれたのが、世界最大のアメリカの玩具メーカーです。同社はたくさんのモーターを使うため、安く安定的に調達したいというニーズがありました。彼らが「標準モーターで構わない」と言ってくれたことで、標準化を軌道に載せることができました。

3.経営理念・戦略の確立:国際分業体制

伊豫田:国際分業体制についてご説明します。スライドに記載したとおり、関連会社はアジアに非常に多いのですが、現在は欧州や米州にも生産拠点を設けています。国際分業は時代ごとに変遷があり、そちらはスライド下部に記載しているとおりです。

坂本:海外にかなり進出されているとのことでした。先ほども、過去のエピソードとしてアメリカの玩具メーカーとの取引のお話をお聞きしましたが、地域ごとの販売比率はどのようになっているのでしょうか? ざっくりでよいので、教えてください。

伊豫田:弊社の販売地域別で見ると、実は日本は約1割しかなく、9割が海外です。海外の内訳は、中国が約3割、米州、欧州、日本と中国を除いたアジアパシフィックエリアが、それぞれ約2割です。

坂本:かなり分散している状況ですね。売上高の比率を教えていただきましたが、中国の景気がよくないことや、他の新興国の所得が少しずつ上がってきたことなど、さまざまな要素があると思います。近年、比率の変化はありますか?

伊豫田:もともとは中国、アジアの比率が非常に高かったのですが、自動車分野に注力し、現地に生産拠点を設けてビジネス拡大を図ることで、米州や欧州の割合が少し上がってきています。

4.戦略に基づく右肩上がりの成長:用途市場の拡大

伊豫田:スライドに「戦略に基づく右肩上がりの成長」と記載していますが、モーターの用途をVTR用、電気ドリル用、ドアロック用、CDスピンドル用と拡大してきた歴史があります。

4.戦略に基づく右肩上がりの成長:業績

伊豫田:業績としても、スライドのグラフのとおり、2002年まで非常に右肩上がりで、2002年の営業利益率は25パーセントと、高収益になりました。

坂本:メーカーではあまり見ない水準ですね。

伊豫田:おっしゃるとおりです。この時代は音響・映像機器のCD用やDVD用で非常に高いシェアを持っており、業績も好調でした。

5.戦略の調整、再成長:直面した環境変化

伊豫田:この後、さまざまな外部環境変化がありました。当時は音響・映像機器を非常に得意としていたのですが、ご存知のとおり、CDは最近見なくなっていますし、自動車にも搭載されなくなり、お客さまの製品が変わってきました。

また、デジタル化の影響でお客さまの製品自体の価格がかなり下がり、そこで使われるモーターも値段を下げてほしいという話が出てくるようになりました。さらに、先進国のお客さまから新興国のお客さまにシフトしていく中で、価格を重視する姿勢が強く、価格競争が激化していきました。

5.戦略の調整、再成長:成長の踊り場

伊豫田:スライドは、2012年までの業績推移を示しています。ご覧のとおり、営業利益率が苦しい局面を迎えた時期もありました。

5.戦略の調整、再成長:パワーウインドウ、パワーシートを選択

伊豫田:ただし、これで終わるわけにはいかないため、弊社として、どのような分野で事業を伸ばしていくかを研究しました。

弊社の戦略や組織能力に合わせた時に、どのような用途に取り組むことが成功につながるのかを検討して選択したのが、パワーウインドウやパワーシートなどの分野です。弊社はモーターを小型化するのが得意です。今、私が手にしているのはパワーウインドウのモーターですが、この2つを比べると大きさが若干違います。重量としても、500グラム台ぐらいから、最新のものでは300グラムを切るぐらいにまで軽くなっています。

坂本:メーカーから、燃費の関係で軽量化を求められるのでしょうか?

伊豫田:そのとおりです。車は、部品が軽ければ軽いほど車重が減り、燃費がよくなります。また、EVでも航続距離が長くなります。お客さまも重視されるところですので、軽量化により、この分野でも事業を伸ばしていきました。

5.戦略の調整、再成長

伊豫田:その結果、再び成長軌道に入り、2017年時点での営業利益率は16.4パーセントと、高収益に戻すことができました。

6.2024年の業績:2024年上期連結業績

伊豫田:今年の状況に話題を移したいと思います。2024年上期(1月から6月)の連結業績です。売上高は952億円、営業利益は91億円、営業利益率は9.6パーセントでした。

6.2024年の業績:取り組み状況(ライフ・インダストリー機器用)

伊豫田:取り組み状況についてです。私どもが「3つのM」と呼んでいる、Mから始まる3つの領域、Machinery・Mobility・Medicalを伸ばしていこうと考えています。

まずMachineryについて、最近のコンビニエンスストアでは、商品陳列にロボットを使用しています。人手不足という背景から、今後もさらに増えていくと思いますが、その商品陳列ロボット用モーターの受注獲得に取り組んでいます。

また、Mobilityではアシスト自転車用のモーターを手掛けています。そしてMedicalでは、M&A等を通じて、医療用のポンプ・ユニット・モーター、特に血圧計ポンプの受注獲得に取り組んでいるところです。

坂本:現在は自動車分野の売上構成が高くなっています。御社は今後、ライフ・インダストリー分野の売上高を伸ばしていくと、バランスがよくなると考え、注力されていると思いますが、どのくらいまで伸ばしたいとお考えですか?

伊豫田:現在、自動車分野とライフ・インダストリー分野の構成比は8対2です。これを2030年くらいには6対4程度にまでもっていきたいと考えています。

坂本:やはり、自動車分野のほうが安定しているイメージがありますよね。

伊豫田:はい。自動車分野の比率が高くなっていますので、そちらも全力で伸ばすのですが、それ以上に新しい分野を伸ばしていき、6対4の比率までもっていきたいと思います。

6.2024年の業績:取り組み状況(自動車電装機器用)

伊豫田:自動車分野の取り組みについてご紹介します。モーター単品ではなく、モーターにギア、ファン、それからポンプなどの付属部品を付けてユニットとして提供することに力を入れています。

こちらは、付加価値を上げていく1つの方法として注力しているところです。具体的には、1つはEV向けのバッテリー冷却水バルブ用のギア・ユニット・モーターです。

もう1つは、SVS(シート・ベンチレーション・システム)用のファン・ユニット・モーターです。自動車のシートの中に付けるファンで、車体全体を冷やすのではなく、シートに座っている方を直接冷やすもので、効率を上げるための手段です。そのような新しい分野のユニット・モーターに取り組んでいます。

坂本:メーカーが求めるものに応えるためには、製品開発段階で、ある程度タッグを組んでいかなければならないと思っています。このあたりのことは、すでに行われていますが、日系メーカーと海外メーカーで、数の違いはあるのでしょうか?

伊豫田:スライドには、日系大手のお客さまについて記載していますが、用途によっては、海外メーカーのお客さまとの取り組みも多数あります。自動車分野だけでなく、ライフ・インダストリー分野においても、例えば、電動歯ブラシなどで世界大手のお客さまと、開発段階から一緒に取り組んでいます。

6.2024年の業績:2024年通期の連結業績予想概要

伊豫田:2024年通期の連結業績予想です。売上高は1,890億円、営業利益は189億円、営業利益率は10パーセントを見込んでいます。

6.2024年の業績:2024年通期の連結業績予想

伊豫田:スライドは、2024年通期の連結業績予想です。私どもは高収益にこだわりを持っているため、営業利益率は10パーセントを確保したいと考えています。

10パーセントで満足しているわけではなく、今後、15パーセントを目指していきたいと思います。

7.2030年に向けて:経営計画2030

伊豫田:2030年に向けての取り組みについてご説明します。「経営計画2030」には、財務的な指標と未財務指標があります。今は財務指標に直結しないのですが、「このことに取り組むと将来、財務指標にも効いてくる」というものを、未財務指標というかたちで掲げています。

財務指標として売上高3,000億円、営業利益率15パーセント以上、ROIC12パーセント以上を掲げて取り組んでいるところです。未財務指標は、サステナビリティにかかわるような項目を掲げています。

7.2030年に向けて:新たな事業コンセプト

伊豫田:売上高3,000億円に向け、取り組みの考え方を過去とは変えようと、新しい事業のコンセプトを社内で議論し、打ち出しました。モーターをコアとしながらも、お客さまと社会が望む多様な「動き」のソリューション提供を、事業活動の目的と位置付けて進めていきます。

物(モーター)を売るという従来の発想から、「動き」のソリューションといったかたちに変えていく発想で、新事業コンセプト「e-MOTO」を掲げて取り組んでいます。具体的には、モーターの種類の充実、あるいはモーターだけでなく入力から出力までの提供ソリューションの拡大にも取り組んでいます。

ただし、自社の単独努力では実現しないため、M&Aや提携に取り組み、社外の技術・ノウハウを獲得しながら進めていこうと考えています。

7.2030年に向けて:新たな事業コンセプト

伊豫田:今お伝えしたことを、スライドの図で表しています。入力から出力までの各分野でM&A、提携、そして出資等をしながら、活動する領域を広げていきます。

「動力」は、主にモーターを指していますが、マブチエレクトロマグという、スイスの医療機器用モーターメーカーをM&Aで統合しました。

7.2030年に向けて:沖マイクロ技研の獲得

伊豫田:沖電気の子会社である沖マイクロ技研の小型モーター事業を2025年7月にM&Aで統合します。こちらの会社は、弊社のモーターとは種類の異なるモーターを取り扱っています。統合により、ソリューション力を引き上げていきます。

事例として、弊社には、ロボットの関節や走行部分はありますが、つかむ部分に使われるモーターがありません。そちらを沖マイクロ技研が持っているため、一緒になることでお客さまへ提供できるソリューションを高めていく取り組みです。

7.2030年に向けて:CuboRexへ出資

伊豫田:ベンチャー企業への出資も始めました。CuboRexは現場に「キツいがない世界」を目指しています。人が行うと体が「キツい」となる建設現場等の作業で、モーターを活かして物を運ぶ機器などを作っている、スタートアップ企業です。そこに弊社のモーターを使っていただいています。弊社もCuboRexを通じ、モーター技術により「現場にキツいがない世界」の実現に貢献していきます。

7.2030年に向けて:企業価値向上への取り組み

伊豫田:企業価値向上への取り組みです。事業成長によるリターンの最大化と同時に、資本効率の改善にも積極的に取り組んでいこうと考えています。

7.2030年に向けて:キャッシュ・アロケーションの方向性

伊豫田:事業活動により創出する営業キャッシュ・フローを、さらなる成長投資に積極的に配分し、株主還元を強化するということで、キャッシュ・アロケーションの方向性を公表しています。

2024年から2026年までのキャッシュ・アロケーションの方向性として、戦略投資に250億円、設備投資に450億円、株主還元に500億円を充てる計画です。

7.2030年に向けて:サステナビリティへの取り組み

伊豫田:サステナビリティへの取り組みです。環境、社会、ガバナンスと、大きく3つのカテゴリに分けて、私どもが解決すべき重要課題を掲げています。具体的には、①から⑧のサステナビリティ指標を設定し、テーマに取り組んでいます。

①のCO2排出量削減率については、どの企業でも取り組んでいると思います。弊社でも太陽光発電システムの導入や、自然エネルギーの購入などにより、CO2排出量の低減に取り組んでいます。

②はモーターそのものに関することです。サステナブルプロダクツと言っていますが、従来のモーターよりも効率がよい、軽い、小さいなど、環境負荷の低減に役立つような製品の開発・販売拡大に取り組んでいます。

8.株主還元について:配当政策

伊豫田:株主還元についてです。まず配当ですが、会社の成長・発展に必要な研究開発、設備投資は内部留保によって賄いますが、業績に応じて、株主に対する利益還元を積極的に行っていく方針です。

また、2024年から株主資本配当率(DOE)を配当の算定基準に採用し、DOEで3パーセントから4パーセントを目安に配当します。配当実績はグラフにあるとおりですが、2024年は1株当たり年76円で、過去最高を更新するかたちで配当を実施する予定です。総還元性向は101.8パーセントとなります。

8.株主還元について:自己株式取得

伊豫田:自己株式の取得にも取り組んでいます、こちらは余剰資金やキャッシュ・フローに加え、PBR等の状況も考慮し、今後も株価あるいは経営環境の変化に対する機動的な対応、資本政策および株主に対する利益還元の一方法として適宜、取得を検討していく方針です。

今年も上期に30億円の自己株式取得、償却済みですが、下期も30億円を上限として自己株式を取得している最中です。

8.株主還元について:株主優待

伊豫田:また、株主優待も行っています。私どもにとって個人の株主さま、投資家さまは非常に重要ですので、弊社株式に投資することの魅力を高め、より多くの方に長期的に保有していただくために、株主優待制度を導入しています。

事例として、2023年12月期の優待品に千葉県産品、香川県産品、長野県産品とありますが、私どもが活動する事業所のある地域社会、あるいは創業した地域に貢献したいということから、これらの地域の名産品・特産品を対象とした優待を行っています。

坂本:とてもよい取り組みだと思います。一方で、機関投資家の方は公平な株主還元を求めると思いますが、一部で不公平ともいわれている優待をまだ続けていくのですか?

伊豫田:個人投資家さまの多くが弊社に投資していただけるということは、機関投資家さまにとっても、よいことだと思います。また、この株主優待に投じる金額規模感については、公平・平等性を損ねる規模ではなく、あくまでもバランスを見ながら、適切な範囲内で行っています。

9.最近のトピックス:魔改造の夜

伊豫田:最後に、トピックスについて少しご紹介したいと思います。弊社社員がNHK総合の「魔改造の夜」という番組に、「Mブチモーター」という名前で出演しました。当時の奮闘した状況をWebサイトに掲載していますので、もしお時間がありましたら、ご覧ください。

ここまで弊社についてお話ししてきましたが、経営理念である「国際社会への貢献とその継続的拡大」のもと、モーターをコアとしながらお客さまと社会が望む多様な「動き」によるソリューションを提供し、地球環境の保全を含め、すべてのステークホルダーのみなさまの幸せに貢献していきます。そのために全力を尽くしていきたいと考えていますので、今後も変わらぬご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

質疑応答:円安円高の影響について

坂本:「御社の約9割の売上は海外ですが、為替感応度はどれくらいですか? 営業利益でかまいませんので、円安円高によってどれくらいの変化があるのか教えてください」というご質問です。

伊豫田:おっしゃるとおり、弊社の販売の9割は海外ですので、やはり外貨での売上が多くなります。円安になると、円に換算した時の売上金額が大きくなり、利益も増えます。

1年間で見ると、営業利益は1円の円安で2億1,000万円ほど増加し、売上については1円の円安で11億4,000万円ほど増加します(2024年12月期通期の見込み)。

質疑応答:EVの普及による影響について

坂本:「EVの普及による影響もあると思います。また、モーターを使用するサイドミラーはカメラになる可能性がありますが、コスト的に、ゆっくりそうなると思います。EVになっても多くの用途は変わらないと思いますが、EVの影響と、EVの登場によって新たに生まれた需要などありましたら教えていただけますか?」というご質問です。

伊豫田:EVになっても、当面はドアロックもサイドミラーもなくなりません。多くの自動車電装用途は、従来どおり、お使いいただけると思います。

さらにEVはバッテリーの力を引き出して航続距離を伸ばすことが重要ですが、それにはバッテリー温度のコントロールが不可欠です。現状、冷却水等や、経路を切り替えるためにバルブを使っているのですが、そこにモーターが使用されています。これはEVによって生じた用途です。

坂本:熱くなり過ぎないようにするということですね。それ以外にはありますか?

伊豫田:EVの給電に関して、給電をロックするところにもモーターが使われているため、これについてもEVの登場によって生じた用途と言えます。

質疑応答:今後の再成長について

坂本:「『戦略の調整で再成長を遂げる』というお話がありました。今後、需要の変化、コモディティ化、新興国の台頭などが考えられますが、このあたりについてどのようなお考えですか?」というご質問です。

伊豫田:先ほど、少し業績の落ちる局面のお話をしましたが、やはり長い間経営をしているとさまざまなところで外部環境が変化します。一時的にいろいろな局面がありますが、弊社はしっかりと戦略を見直し、再び成長軌道に戻すことのできる会社だと考えています。

現在、自動車の割合が非常に高いのですが、ご存知のとおり、自動車産業もさまざまな変化が起こりつつありますので、自動車の影響を受けすぎないよう、6対4くらいの割合がよいかと思います。また、自動車以外の付加価値の高い分野を伸ばしていくことで、より強固な経営体質にしたいと考えています。

坂本:一般の会社ではなかなかできませんが、御社は小型モーターを作る技術、アジャスト力、また安く生産できる技術があるからこそ、実現できるのだと思います。

伊豫田:私どもには生産基盤がありますし、多くのすばらしいお客さまの基盤、これまでの事業で育った人材にも恵まれています。それらを活用し、さらにM&Aを加えて外部の新しい力を取り込み、これまでにない成長を果たしていきたいと考えています。

質疑応答:健全な財務状況を踏まえた今後の戦略について

坂本:「御社も自己資本比率が約9割と非常に高く、財務はかなり健全です。これについてどのようにお考えですか? 今後もこの状態を維持していくのか、それとも何かに使うのか、戦略的なイメージがあれば教えてください」というご質問です。

伊豫田:現在、弊社の自己資本比率が非常に高い状態にあるのは、私どもが大きな供給責任を有しているということと密接に関係しています。先ほど冒頭でサイドミラーをご覧いただきましたが、サイドミラーについては世界シェアで約8割、ドアロックは同じく世界シェアで約7割を占めています。弊社の経営が立ち行かなくなると、特定のお客さまだけでなく、世界の自動車生産にも影響が出てしまいます。

それだけの大きな供給責任を負っていることを強く意識し、さまざまな事業環境変化はありますが、いかなる状況でも耐えられる強固な経営基盤、財務基盤を持っておくことが必要だと考えています。

ただし、私どもも、キャッシュ等の過度な積み上げは考えていません。キャッシュ・アロケーションのお話をしましたが、適宜見直し、適切なところにもっていこうと考えています。

坂本:コロナ禍で、ハーネスやチップがないという話はよく聞きましたが、モーターが足りないという話は聞いていません。御社がしっかり生産されていたということですか?

伊豫田:おっしゃるとおりです。コロナ禍では、ベトナムやメキシコの工場が1ヶ月以上も停止することがありました。しかし、モーターの標準化に取り組んでいたため、ある拠点が機能しなかったとしても、他の拠点でカバーできました。

また、在庫を抱えていても、売れ残るリスクのない標準品を扱っていたことも大きかったと思います。つまり、供給の安定性を重視して取り組んできたということです。

坂本:そちらは御社の強みでもありますね。

質疑応答:株価上昇後の低迷について

坂本:「株価は上昇していますが、その後は低迷が続いています。これについて、どのように分析をされていますか?」というご質問です。

来期以降の回復の話でも、分析でもかまいません。株主の方、今から投資しようと思っている方にもお考えが伝わると思いますので、そのあたりをぜひ教えてください。

伊豫田:株価を直接的に上げることはできませんので、私どもとしては継続的に業績を向上させていく必要があります。それにより、企業価値を高めていくことが一番重要だと考えています。

先ほど2030年の目標をご説明しましたが、その実現に向けて付加価値の高い分野に取り組み、業績を上げていきます。営業利益率も10パーセントで満足するのではなく、15パーセントを目指す取り組みを進めていきます。

また、両輪のお話がありましたが、株主還元を含む資本政策等もしっかりと行い、資本効率を改善していくことで、結果として株価も上がっていくのではないかと考えています。

質疑応答:個人投資家への情報発信について

坂本:「ログミーもそうですが、御社がセミナーに登壇されるのを、他で見かけたことがありませんので、今回が初めてだと思います。今後の個人投資家に向けた情報発信を教えていただけますか?」というご質問です。

伊豫田:個人投資家向けの会社説明会は、以前は証券会社の支店等でありました。

坂本:リアルセミナーといったかたちでしょうか?

伊豫田:はい。そのようなかたちでは、2015年から実施していましたが、コロナ禍でできなくなり、そこから数年、開催を見送っていました。

しかし、このようなすばらしい場があると認識し、登壇させていただきました。今後も継続的に開催していく方向です。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:ドローン向けのモーターを販売していますか?

回答:現時点では販売していません。ドローン用モーターについて、当社の強みを活かして高い付加価値を付けることができるかを検討しているところです。

<質問2>

質問:生産は海外とお見受けしましたが、円安や地政学リスクへの対応をどうしようとしているのか、また、国内にマザー工場がない中でどのように標準化高品質を維持していこうとしているのか、差し支えない範囲で教えてください。

回答:生産については1990年代より海外生産比率100パーセントですが、製品開発については日本の本社が掌握し、標準化を担保してきています。

為替の影響を受けにくい体質にしていくこと、地政学リスクに対応することは重要であると認識しており、生産については地産地消の方針を打ち出しています。

日本のお客さまにお届けする付加価値の高い製品については、日本で生産する方向性を持っており、M&Aで統合したマブチオーケンの長野工場を活用し、モーターユニットの組立を開始しています。

<質問3>

質問:モーターについて、交流ではなく直流に特化している理由を教えてください。

回答:さまざまな機器をコンセントにつながなくても自由に動かすためには、バッテリーで利用できる直流モーターが必要です。電気が通じていない場所であっても機器を動かすことができる利便性には大きなものがあり、ドライヤーやシェーバー、電動工具、音響機器等、生活のさまざまなシーンで使われる機器に用途が拡がっていきました。

<質問4>

質問:売価の改善はひと段落したのでしょうか? 今後も続けていくかたちでしょうか?

回答:資材・物流費のコスト上昇分については、お客さまにご理解をいただき、価格改定を進めています。今後も同様の考えです。

<質問5>

質問:e-MOTOコンセプトは、主にどのような領域に使われることを想定していますか?

回答:主に「3つのM」と呼んでいるモビリティ、メディカル、マシーナリーの領域をターゲットにしています。モーター単品だけではなく、ギア、ポンプ、ファン等を取り付けたユニットとして提供することで、お客さまが望む「動き」を提供していきます。

<質問6>

質問:業績が順調で株価も上昇しましたが、第3四半期単体の経常が赤字になった理由を詳しく教えてください。また、これは一過性のものでしょうか?

回答:7月から9月の第3四半期の経常利益が赤字となった主な理由は、円高の進行によりドル建ての債権・預金等資産について、四半期末換算の為替差損が発生したことです。6月末時点での為替レートは約161円でしたが、9月末には約143円まで円高が進行し、この影響を受けたものです。

今後も為替の変動により経常利益は影響を受けます。

<質問7>

質問:ラジコン用モーターといえば貴社のイメージが強いのですが、現在の製品や市場シェアなどを教えてください。

回答:当社モーターは、自動車のラジコンやプラモデル、ミニ四駆等に使われているイメージが強いと思いますが、現在では、本物の自動車向けのモーターが中心です。玩具・模型用の販売は、一部の高い品質が求められるものに限定されています。

配信元: ログミーファイナンス

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