*14:54JST Pウォーター Research Memo(4):8水源、独自物流、自社工場設備への投資が好循環を生み出す
■会社概要
3. 強み
プレミアムウォーターホールディングス<2588>の強みの根源は「高い顧客獲得力による保有顧客の純増」であり、それによって積み上げられた162万件(2024年3月末)の顧客基盤である。大きな顧客基盤により、水源分散化や物流効率化、無駄のない工場設備などへの投資が可能となり、好循環を生み出している。
(1) 高い顧客獲得力
同社は宅配水市場でのシェアを近年大きく伸ばしている。高い顧客獲得能力を培ってきた元をたどると、エフエルシーがデモンストレーション販売では国内トップクラスであったことに遡る。顧客獲得方法は様々であるが、主に大型商業施設や大手量販店、ホームセンターなどで同社専用のブースを期間限定で出展し、デモンストレーション販売で5割強の顧客を獲得している。また、培った営業ノウハウや従業員への教育のほか、従業員の育成とモチベーションを考慮して作り込まれた従業員評価制度があり、能力を引き出す仕組みが充実している。5割弱の新規顧客を獲得する手法がテレマーケティング及びWeb販売である。特にコロナ禍により在宅時間が増えた消費者に対して、これらの手法の有効性が増している。環境の変化に柔軟に対応し、多様な販売チャネルから顧客を獲得できるのが同社の強みと言えるだろう。
従来は自社の営業による販売(直販)が主体であったが、近年は代理店による販売(代販・取次)が増えており、その割合が50%を超えている。同社の認知が高まったことにより、取次店販売の依頼が増えた。取次店としては、家具、各種通販、家電量販店、不動産、鉄道、電力など多様な事業会社との取引を拡大中である。また宅配水事業を行う他社への製品提供(OEM)も増えている。2023年3月期には、営業力が期待できるラストワンマイル、2024年3月期にはINESTと資本業務提携を結び、外部チャネルの活用が加速している。
(2) 水源の分散化(全国8水源体制へ)
同社は水の安定供給及び地産地消を狙いとして水源を分散する方針を採っている。現在では、富士吉田(山梨県)、富士(静岡県)、南阿蘇(熊本県)、金城(島根県)、朝来(兵庫県)、北アルプス(長野県)、吉野(奈良県)、そして2024年4月には北方(岐阜県)の新工場の第二期工事が完了し、全国8ヶ所、最大で月に250万件の生産が可能な体制が整った。8つもの水源を持つことは業界では特異であるようだ。水源を増やす難しさは、一定以上の顧客が確保できなければ工場の稼働率は上がらず製造コストが高くなってしまう点にある。その点で同社は保有顧客を増加させることができているため、工場稼働率を落とすことなく水源の開拓が可能である。また、水源の分散は、災害時などの事業継続対策にもつながる。2016年の熊本地震の際に南阿蘇の供給がストップする事態があったが、九州地方に配送する宅配水をほかの水源から供給することができたことからも、分散化が災害時にも強いことを証明した。
(3) 地産地消及び自社物流による物流効率化
宅配水業界にとって、近年の物流費の上昇は大きな経営課題である。同社は1WAY方式(使い切り容器)の配送を行うため、大手の配送業者に配送を委託しており、売上収益に占める配送費の比率は20%を超える。配送業界からは絶えず値上げのプレッシャーがあるため、物流費をコントロールすることの重要性は高い。同社が打ち出す大きな方向性が「水源の分散化による配送距離の短縮化」、いわゆる「地産地消」である。製造地と消費地が近ければ配送費も抑制できる。8工場が担当するエリアは決まっている。例えば南阿蘇工場から九州地方、金城工場から中国・四国地方などである。エリア内で、定期的にまとまった物量が確保できるため、トラックの積載効率も高くなり、物流費高騰を回避できる要因となっている。
配送は、長らく全国に物流網を持つ大手配送業者に委託してきたが、2019年3月期より大都市圏を中心に自社専用の配送を行う地域のパートナーを置き、地産地消の物流インフラと大手配送業者を使い分ける独自の配送を行っている。自社物流網の開始の契機としては、物流単価の値上げの圧力が高まったことが挙げられる。特に大都市圏では、1ルート当たりの配送先が多くなり、専用配送車の積載効率を高めやすい。2024年3月期には、自社物流(全国に物流を持っている大手配送業者以外の配送パートナー。同社製品の配送を専門に行う)の比率は51.5%まで向上し、物流費の抑制に寄与している。
(4) 無駄のない工場設備投資による原価低減
同社は、製造原価の低減にも取り組んできた。2016年からプリフォーム射出成形機を導入し、容器の内製化を行い、原価低減に成功した。この設備投資は約4億円の投資であった。容器1本当たり20円削減を想定した投資だったが、大きな設備投資も商品の本数が少なければ、無駄な投資となってしまう。同社では初年度に1,000万本出荷し、約1.6億円の利益向上を達成した。投資から3年目には投資回収し、利益を生み出し続けている。このように、顧客純増による出荷規模の拡大は様々な面で好循環を生み出している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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3. 強み
プレミアムウォーターホールディングス<2588>の強みの根源は「高い顧客獲得力による保有顧客の純増」であり、それによって積み上げられた162万件(2024年3月末)の顧客基盤である。大きな顧客基盤により、水源分散化や物流効率化、無駄のない工場設備などへの投資が可能となり、好循環を生み出している。
(1) 高い顧客獲得力
同社は宅配水市場でのシェアを近年大きく伸ばしている。高い顧客獲得能力を培ってきた元をたどると、エフエルシーがデモンストレーション販売では国内トップクラスであったことに遡る。顧客獲得方法は様々であるが、主に大型商業施設や大手量販店、ホームセンターなどで同社専用のブースを期間限定で出展し、デモンストレーション販売で5割強の顧客を獲得している。また、培った営業ノウハウや従業員への教育のほか、従業員の育成とモチベーションを考慮して作り込まれた従業員評価制度があり、能力を引き出す仕組みが充実している。5割弱の新規顧客を獲得する手法がテレマーケティング及びWeb販売である。特にコロナ禍により在宅時間が増えた消費者に対して、これらの手法の有効性が増している。環境の変化に柔軟に対応し、多様な販売チャネルから顧客を獲得できるのが同社の強みと言えるだろう。
従来は自社の営業による販売(直販)が主体であったが、近年は代理店による販売(代販・取次)が増えており、その割合が50%を超えている。同社の認知が高まったことにより、取次店販売の依頼が増えた。取次店としては、家具、各種通販、家電量販店、不動産、鉄道、電力など多様な事業会社との取引を拡大中である。また宅配水事業を行う他社への製品提供(OEM)も増えている。2023年3月期には、営業力が期待できるラストワンマイル、2024年3月期にはINESTと資本業務提携を結び、外部チャネルの活用が加速している。
(2) 水源の分散化(全国8水源体制へ)
同社は水の安定供給及び地産地消を狙いとして水源を分散する方針を採っている。現在では、富士吉田(山梨県)、富士(静岡県)、南阿蘇(熊本県)、金城(島根県)、朝来(兵庫県)、北アルプス(長野県)、吉野(奈良県)、そして2024年4月には北方(岐阜県)の新工場の第二期工事が完了し、全国8ヶ所、最大で月に250万件の生産が可能な体制が整った。8つもの水源を持つことは業界では特異であるようだ。水源を増やす難しさは、一定以上の顧客が確保できなければ工場の稼働率は上がらず製造コストが高くなってしまう点にある。その点で同社は保有顧客を増加させることができているため、工場稼働率を落とすことなく水源の開拓が可能である。また、水源の分散は、災害時などの事業継続対策にもつながる。2016年の熊本地震の際に南阿蘇の供給がストップする事態があったが、九州地方に配送する宅配水をほかの水源から供給することができたことからも、分散化が災害時にも強いことを証明した。
(3) 地産地消及び自社物流による物流効率化
宅配水業界にとって、近年の物流費の上昇は大きな経営課題である。同社は1WAY方式(使い切り容器)の配送を行うため、大手の配送業者に配送を委託しており、売上収益に占める配送費の比率は20%を超える。配送業界からは絶えず値上げのプレッシャーがあるため、物流費をコントロールすることの重要性は高い。同社が打ち出す大きな方向性が「水源の分散化による配送距離の短縮化」、いわゆる「地産地消」である。製造地と消費地が近ければ配送費も抑制できる。8工場が担当するエリアは決まっている。例えば南阿蘇工場から九州地方、金城工場から中国・四国地方などである。エリア内で、定期的にまとまった物量が確保できるため、トラックの積載効率も高くなり、物流費高騰を回避できる要因となっている。
配送は、長らく全国に物流網を持つ大手配送業者に委託してきたが、2019年3月期より大都市圏を中心に自社専用の配送を行う地域のパートナーを置き、地産地消の物流インフラと大手配送業者を使い分ける独自の配送を行っている。自社物流網の開始の契機としては、物流単価の値上げの圧力が高まったことが挙げられる。特に大都市圏では、1ルート当たりの配送先が多くなり、専用配送車の積載効率を高めやすい。2024年3月期には、自社物流(全国に物流を持っている大手配送業者以外の配送パートナー。同社製品の配送を専門に行う)の比率は51.5%まで向上し、物流費の抑制に寄与している。
(4) 無駄のない工場設備投資による原価低減
同社は、製造原価の低減にも取り組んできた。2016年からプリフォーム射出成形機を導入し、容器の内製化を行い、原価低減に成功した。この設備投資は約4億円の投資であった。容器1本当たり20円削減を想定した投資だったが、大きな設備投資も商品の本数が少なければ、無駄な投資となってしまう。同社では初年度に1,000万本出荷し、約1.6億円の利益向上を達成した。投資から3年目には投資回収し、利益を生み出し続けている。このように、顧客純増による出荷規模の拡大は様々な面で好循環を生み出している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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