*13:46JST テクマト Research Memo(6):情報基盤事業が好調持続、アプリケーション・サービス事業も収益性向上(1)
■テクマトリックス<3762>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上収益は前期比19.5%増の35,005百万円、営業利益は同28.6%増の3,973百万円と過去最高業績を更新し、会社計画(売上収益32,260百万円、営業利益3,400百万円)に対しても上回って着地した。受注高も同17.3%増の47,652百万円と好調を持続し、期末受注残高は前期末比34.0%増の49,861百万円と大幅に積み上がるなど、旺盛な引き合いが続いている状況に変わりない。受注高は前期比で約70億円の増加となった。新規受注のうち、3分の2は既存顧客の更新受注によるもので、残り3分の1が新規顧客からの受注となっている。いずれもサブスクリプション型のクラウド型セキュリティ対策製品を中心に受注を獲得した。
製品・サービス別の主な売上動向を見ると、Palo Alto NetworksのSASEと呼ばれるクラウド型セキュリティ対策製品「Prisma Access」やCASB※1、Cyber Hygiene※2、クラスターストレージなど新たなセキュリティ対策製品の需要が引き続き好調に推移したほか、Proofpointの次世代型メールセキュリティ製品もランサムウェア攻撃による被害件数の増加を受けて好調を持続した。セキュリティ運用・監視サービス「TPS(TechMatrix Premium Support)」についても、クラウド型セキュリティ対策製品の需要拡大に伴い順調に伸長した。
※1 CASB(Cloud Access Security Broker):クラウドサービスのユーザとプロバイダーの間に位置し、クラウド利用状況の可視化や制御を行い、全体として一貫性のあるセキュリティポリシーを実施できるようにすること。
※2 Cyber Hygiene:定期的なパスワード変更やソフトウェアのアップデートなど、ユーザ単位でIT環境を健全に保つための取り組みを行い、セキュリティ・インシデントを防ぐこと。
また、子会社のクロス・ヘッドはサイボウズ製品のクラウド移行案件が好調で計画を上回る増収増益となった。OCHは中小企業向けの新たな自社企画製品(各種セキュリティ対策商品をパッケージ化した製品)の投入が下期にずれ込んだ影響で売上収益は計画をやや下回ったものの、営業利益はストック型ビジネスへの転換が順調に進んだことにより計画を超過した。
利益面では、円安による仕入原価高やサポート体制の強化による人件費・販管費の増加、新規事業となるクラウドネイティブ活用ソリューションへの投資や脆弱性管理ソリューションの立ち上げコストなどのマイナス要因があったものの、増収効果に加えて採算性を意識した営業活動を徹底したことで2ケタ増益を達成し、営業利益率も11.4%と3期ぶりに上昇に転じた。前期は急速な為替の円安進行で利益率が低下したが、2024年3月期は為替変動に対応した営業活動に取り組んだ成果が出たものと評価される。なお、為替変動リスクについては、受注が決まった際の為替レートで契約期間分の利用料金(売上収益)や海外ベンダーへの支払額を固定化するなどのリスクヘッジを行っているが、商談時から受注までの間に為替レートが急激に円安に変化する場合はコスト高となるため、利益が圧縮される可能性がある。
なお、情報基盤事業(単体)におけるストック売上比率は前期の77.4%から82.3%に上昇した。サブスクリプション課金モデルであるクラウド型セキュリティサービスが伸長しているためで、2024年3月期のストック売上は前期比29.4%増の24,612百万円となった。今後もサブスクリプション課金モデルのサービスが主流となることから、ストック売上比率は80%台と高水準が続くものと予想される。
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前期比12.4%増の8,205百万円、営業利益は同2144.5%増の317百万円となった。会社計画(売上収益7,850百万円、営業利益520百万円)に対して売上高は超過したものの、営業利益は教育分野の戦略投資を前倒しで実施したことを主因として若干未達となった。また、受注高は同16.3%増の9,074百万円、期末受注残高は前期末比19.5%増の5,327百万円とそれぞれ順調に増加した。先行投資段階である教育分野の損失が拡大したほか人件費や販管費が増加したものの、CRM及びSE分野で2期前から取り組みを開始したサブスクリプション契約への切り替えが順調に進み、収益面でプラスに貢献し始めたことや採算の良い学術・公共ソリューションの案件を獲得できたことが増益要因となった。
分野別の動向について見ると、CRM分野とSE分野はサブスクリプション契約への切り替えが順調に進んだ結果、前期比2ケタ増収となり会社計画を超過したほか、営業利益も増益となった。SE分野では企業向けシステムや車載用組込ソフトウェアの品質を担保するテストツールの需要が引き続き好調だった。
ビジネスソリューション分野の売上収益は前期並みの水準となったが、学術・公共ソリューションの大型受注を獲得し、売上貢献したことにより増益となった。子会社のカサレアルは技術者向け新人研修や声優・タレント管理システムが好調に推移した。アレクシアフィンテックは計画未達となったが、前期比では増収となった。同社は、金融ソリューションを強化するため、2023年7月に単体の金融システム関連事業をアレクシアフィンテックに統合し、人員についても30名程度を異動させ営業体制を強化した効果が出たようだ。アレクシアフィンテックで収益性の低かった常駐派遣サービスから撤退し、今後は「ARECCIA」シリーズの販売強化、並びに海外ベンダーの金融商品評価・分析ソリューションやALMリスク管理ソリューションの導入支援に注力することで、事業拡大を図る戦略である。
教育分野は、有名私立校を中心に「ツムギノ」の導入が進んだことで売上収益は前期比2ケタ増となったが、利益面では営業・マーケティング要員だけでなく、導入作業に携わる技術要員も増強するなど積極投資を実施したことで、前期から損失は拡大した。ただ、損失のピークは2024年3月期となり2025年3月期以降は増収効果で損失額も縮小していくものと見込まれる。
アプリケーション・サービス事業(単体)のストック売上比率は前期の62.4%から65.6%に上昇した。CRM、SE分野でサブスクリプション課金の積み上げが進んでいることが主因で、金額ベースでは同17.2%増の4,643百万円となった。今後は金融ソリューションでもストック型ビジネスへの転換を推進することから、ストック売上比率は緩やかに上昇するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別の動向
(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上収益は前期比19.5%増の35,005百万円、営業利益は同28.6%増の3,973百万円と過去最高業績を更新し、会社計画(売上収益32,260百万円、営業利益3,400百万円)に対しても上回って着地した。受注高も同17.3%増の47,652百万円と好調を持続し、期末受注残高は前期末比34.0%増の49,861百万円と大幅に積み上がるなど、旺盛な引き合いが続いている状況に変わりない。受注高は前期比で約70億円の増加となった。新規受注のうち、3分の2は既存顧客の更新受注によるもので、残り3分の1が新規顧客からの受注となっている。いずれもサブスクリプション型のクラウド型セキュリティ対策製品を中心に受注を獲得した。
製品・サービス別の主な売上動向を見ると、Palo Alto NetworksのSASEと呼ばれるクラウド型セキュリティ対策製品「Prisma Access」やCASB※1、Cyber Hygiene※2、クラスターストレージなど新たなセキュリティ対策製品の需要が引き続き好調に推移したほか、Proofpointの次世代型メールセキュリティ製品もランサムウェア攻撃による被害件数の増加を受けて好調を持続した。セキュリティ運用・監視サービス「TPS(TechMatrix Premium Support)」についても、クラウド型セキュリティ対策製品の需要拡大に伴い順調に伸長した。
※1 CASB(Cloud Access Security Broker):クラウドサービスのユーザとプロバイダーの間に位置し、クラウド利用状況の可視化や制御を行い、全体として一貫性のあるセキュリティポリシーを実施できるようにすること。
※2 Cyber Hygiene:定期的なパスワード変更やソフトウェアのアップデートなど、ユーザ単位でIT環境を健全に保つための取り組みを行い、セキュリティ・インシデントを防ぐこと。
また、子会社のクロス・ヘッドはサイボウズ製品のクラウド移行案件が好調で計画を上回る増収増益となった。OCHは中小企業向けの新たな自社企画製品(各種セキュリティ対策商品をパッケージ化した製品)の投入が下期にずれ込んだ影響で売上収益は計画をやや下回ったものの、営業利益はストック型ビジネスへの転換が順調に進んだことにより計画を超過した。
利益面では、円安による仕入原価高やサポート体制の強化による人件費・販管費の増加、新規事業となるクラウドネイティブ活用ソリューションへの投資や脆弱性管理ソリューションの立ち上げコストなどのマイナス要因があったものの、増収効果に加えて採算性を意識した営業活動を徹底したことで2ケタ増益を達成し、営業利益率も11.4%と3期ぶりに上昇に転じた。前期は急速な為替の円安進行で利益率が低下したが、2024年3月期は為替変動に対応した営業活動に取り組んだ成果が出たものと評価される。なお、為替変動リスクについては、受注が決まった際の為替レートで契約期間分の利用料金(売上収益)や海外ベンダーへの支払額を固定化するなどのリスクヘッジを行っているが、商談時から受注までの間に為替レートが急激に円安に変化する場合はコスト高となるため、利益が圧縮される可能性がある。
なお、情報基盤事業(単体)におけるストック売上比率は前期の77.4%から82.3%に上昇した。サブスクリプション課金モデルであるクラウド型セキュリティサービスが伸長しているためで、2024年3月期のストック売上は前期比29.4%増の24,612百万円となった。今後もサブスクリプション課金モデルのサービスが主流となることから、ストック売上比率は80%台と高水準が続くものと予想される。
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前期比12.4%増の8,205百万円、営業利益は同2144.5%増の317百万円となった。会社計画(売上収益7,850百万円、営業利益520百万円)に対して売上高は超過したものの、営業利益は教育分野の戦略投資を前倒しで実施したことを主因として若干未達となった。また、受注高は同16.3%増の9,074百万円、期末受注残高は前期末比19.5%増の5,327百万円とそれぞれ順調に増加した。先行投資段階である教育分野の損失が拡大したほか人件費や販管費が増加したものの、CRM及びSE分野で2期前から取り組みを開始したサブスクリプション契約への切り替えが順調に進み、収益面でプラスに貢献し始めたことや採算の良い学術・公共ソリューションの案件を獲得できたことが増益要因となった。
分野別の動向について見ると、CRM分野とSE分野はサブスクリプション契約への切り替えが順調に進んだ結果、前期比2ケタ増収となり会社計画を超過したほか、営業利益も増益となった。SE分野では企業向けシステムや車載用組込ソフトウェアの品質を担保するテストツールの需要が引き続き好調だった。
ビジネスソリューション分野の売上収益は前期並みの水準となったが、学術・公共ソリューションの大型受注を獲得し、売上貢献したことにより増益となった。子会社のカサレアルは技術者向け新人研修や声優・タレント管理システムが好調に推移した。アレクシアフィンテックは計画未達となったが、前期比では増収となった。同社は、金融ソリューションを強化するため、2023年7月に単体の金融システム関連事業をアレクシアフィンテックに統合し、人員についても30名程度を異動させ営業体制を強化した効果が出たようだ。アレクシアフィンテックで収益性の低かった常駐派遣サービスから撤退し、今後は「ARECCIA」シリーズの販売強化、並びに海外ベンダーの金融商品評価・分析ソリューションやALMリスク管理ソリューションの導入支援に注力することで、事業拡大を図る戦略である。
教育分野は、有名私立校を中心に「ツムギノ」の導入が進んだことで売上収益は前期比2ケタ増となったが、利益面では営業・マーケティング要員だけでなく、導入作業に携わる技術要員も増強するなど積極投資を実施したことで、前期から損失は拡大した。ただ、損失のピークは2024年3月期となり2025年3月期以降は増収効果で損失額も縮小していくものと見込まれる。
アプリケーション・サービス事業(単体)のストック売上比率は前期の62.4%から65.6%に上昇した。CRM、SE分野でサブスクリプション課金の積み上げが進んでいることが主因で、金額ベースでは同17.2%増の4,643百万円となった。今後は金融ソリューションでもストック型ビジネスへの転換を推進することから、ストック売上比率は緩やかに上昇するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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