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最新投稿日時:2024/05/07 10:43 - 「DE&Iを稼ぐ力に」(みんかぶ株式コラム)

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DE&Iを稼ぐ力に

著者:鈴木 行生
投稿:2024/05/07 10:43

・DE&I(多様性、公平性、包摂性)を企業において、どう実現していくのか。まだ至る所に昭和の匂いが残っている。経営者の意識改革は十分とはいえない。

・社会の規範を変えていくには、制度の変革とともに、アンコンシャスバイアス(無意識の差別)を解消することであると、萩原なつ子氏(独立行政法人国立女性教育会館理事長)は指摘する。

・人には違いがある。この違いを無意識に差別して、格差を作っているとすれば、それはフェアでない。個性は尊重されてよい。多様であることがベネフィットを生むと実感できるか。何らかの組織に属して、そこで働くことに幸せを感じることができれば、well-beingは良好となる。

・萩原氏は、個人的事情をハンディキャップにしないで、きちんと参画を認めていく。どこかにみえない特権を作っていないか、をチェックする必要があると強調する。

・例えば、全員に同じ自転車を提供することが、平等なのか。そうではなく、個々の事情に合う自転車を提供することが、本来の平等である。何が同じ条件なのか。合理的に配慮して、個々に寄り添って、一緒に進めるようにする。

・こうなれば、DE&Iからイノベーションが生まれるとみている。実際、ジェンダーイノベーションでは、多様性に対応することで新しい商品・サービスが売れていく。

・無意識に思い込み、うっかり刷り込まれていくバイアス(偏見)には、よほど注意する必要がある。一方的な決めつけや、ジェンダーによって判断を変えるようなダブルスタンダードの使用などに気をつけるべきである。

・1989年は昭和64年であり、平成1年である。35歳以下の平成、令和世代に合った新しいDE&Iが求められており、それを実践する企業に魅力があろう。

・女性の活用、参画にとって何が課題なのか。CGNW(コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)の富永執行役は、女性の社外取締役にアンケートを実施し、48名(90社)から回答を得た。その分析から印象に残ったことをいくつかとりあげてみたい。

・企業では、女性社外取締役を増やしたいと思っている。誰がどのように声をかけるのか。選任プロセスの独立性が問われる。これまでの経験と実績を踏まえて、ガバナンス上十分な貢献ができるのか。社外取締役としての勉強がかなり必要となる。その機会はあるので、活用すべきである。

・会社への理解を深め、社外取締役の実効性を高めるには、経営陣との少人数での意見交換会の実施や、社外取締役だけのコミュニケーションの活用が効果的である。DE&Iは、まさに経営トップの姿勢に依存する。

・執行サイドは、耳の痛い指摘にどう対応するのか。リスペクトの姿勢が問われる。育児や介護への男性経営陣の姿勢はどうか。経営経験がある社外取締役といっても、勉強不足が目立つこともある。一方で、忖度する社外取締役もいて、それでは本来の役割が果たせない。

・社外取締役として、2社以上を兼職していると比較ができて効果的である。一方で、社数が増えると、スケジューリングや準備対応が課題となる。4社以上にはかなり無理があるのではないか。

・執行役員との面談は理解を深める上で役立つ。しがらみのなさを活かして、忖度のない問いで、取締役会を活性化させることができる。しかし、意見が単にスルーされてしまうこともあり、経営者の姿勢が問われる。

・社内昇進の女性取締役はどうしたら増えるのか。まずは経営トップの意識づけが重要で、社外取締役としては常に2年以上先を考えて議論に関わっていく。

・投資家は、社外取締役の役割を株主のかわりとみている。まだ、投資家との直接対話の機会は少ないが、そういう場面では自分の言葉で率直に語っていく。アクティビストの対話に当たっては、こちらからもどんどん質問していくことが相互理解に不可欠である。

・社外取締役の中には、自分がボスになりたい人がいる。こういうマウントとりはよくない。その役割を知るには、やはり研修が必要である。女性社外取締役は複数になることで、やり易さが向上しよう。

・筆者の経験でも、女性取締役がいる会社は、1)議論が活発になり、視点が広がり、多様性を意識した発言が増えてくる。よって、2)女性取締役がガバナンスの向上に貢献するのは間違いない。ひいては、3)社外取締役が会社のパフォーマンス向上に寄与すると思っている。

・では、稼ぐ力はどのように高めるのか。昨年、日本取締役協会のウインターセミナーに参加した。そこでの議論から感じたことをとりあげたい。

・ガバナンスはフレームだけを作っても、実効性が上がらない。すでに10年近く改革をやってきているが、未だに十分でない。この30年デフレ経済の中で、日本企業の経営は世界に通用しないものとなってしまった。

・デフレ経済を脱するプロセスにあって、いよいよ本気で経営改革ができる局面を迎えている。富山会長(取協)は、常に原理原則に則った経営に徹すべしと強調する。甘えは許されない。できない、難しいというな。それなら経営者は交替である。ここがガバナンスの要である。

・マーケットはグローバルに、人手不足時代こそポートフォリオの入れ替えを、ガバナンス改革は手段であって、目的はもっと稼ぐことである。アクティビストは健全な野党として改革を追ってくる。受けて立って、違いを作っていく。コンプライできないなら、堂々とエクスプレインすればよい。企業の独自性ことが競争の差別化を生む。まさにその通りであろう。

・オリンパスの竹内会長は、オリンパスの改革を一気に進めた。自らの方針に合うので、アクティビストも社外取締役に入れた。ガバナンスは、会社をよくするためにある。企業価値を上げることだけに集中して戦略を実行した。

・オリンパスは、世界で通用するグローバルメドテック(医療機器)メーカーになると決めた。3年で営業利益率を10%から20%に上げた。自らのCEOの在任期間は短かったが、企業の発展にはステージがある。次のステージにむけては、それに合ったトップが必要である。これも当然の決断で、指名委員会がそのように判断した。

・ガバナンスの要として、DE&Iの実践がある。これは有力な方策である。しかし、本質はこれで稼ぐ力が高まることにある。企業価値の向上にどう結びつくか。その実効性をみせ、パフォーマンスで実証することである。引き続きここを問うて、企業の選別に力をいれていきたい。

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配信元: みんかぶ株式コラム

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