*14:37JST 富士紡HD Research Memo(7):第5次中期経営計画「増強21-25」では、「稼ぐ力」の強化がキーポイント
■中期経営計画
富士紡ホールディングス<3104>は2006年以降、その時々の経営課題を解決するために、5次にわたり中期経営計画を策定・実行してきた。中期経営計画「変身06-10」以降、「突破」「邁進」「加速」から「増強」へとつながるなかで、経営の最重要テーマを「変身」とし、事業ポートフォリオの再構築により企業体質を強化し、2022年3月期は親会社株主に帰属する当期純利益が44億円超と過去最高を更新した。2021年からスタートした中期経営計画「増強21-25」では、儲かるビジネスへの転換により収益性を向上させ、「稼ぐ力」の強化を図ることで、最終年度営業利益100億円の達成を目指している。
1. 中期経営計画「増強21-25」の全体像
2021年4月にスタートして3年目を迎えた中期経営計画「増強21-25」の前半(2021~2023年)は、高収益体質への転換の種まき時期と位置付けた。そして、2024年からの中期経営計画の後半(2024~2025年)は2025年のあるべき姿の実現に向け、“非連続的成長”を達成すべく、盤石な準備を行うことが喫緊の課題である。最大のキーポイントは研磨材や化学工業品を扱う中核事業のさらなる拡大のための「設備投資」の適時適正な実行である。設備は発注してから稼働まで2年のタイムラグがあり、早期の意思決定が重要となるので今後も注視したい。
半導体業界の足元はシリコンサイクルによる需給変動はあるものの、これは循環的要素であり構造的には高成長を持続するので、同社も先行的に設備投資を行っていく。事業を拡大するためには、設備投資やM&A、アライアンスといったハード面の増強は不可欠であるが、ソフト面とのバランスも重要であることから、優秀な“人財”を確保し、その能力を存分に発揮できる環境をいかに整えるかが喫緊の課題である。
2. 経営目標と計画数値
同社は、中期経営計画「増強21-25」の全体方針である“儲かるビジネス”への転換を図り、収益性を向上させる(“利益あっての社会貢献”)としており、経営目標は2026年3月期営業利益100億円(営業利益率16.7%)の実現を目指している。これは、2021年3月期(2020年度)の営業利益52億円の約2倍とチャレンジングな目標であり、同計画期間内の“非連続の事業拡大”が求められる数値である。この目標実現のために、2026年3月期の売上高目標は、2021年3月期比1.6倍の売上高600億円を掲げている。前述のとおり、これらの売上高・利益目標実現の鍵となるのは「適時適正な設備投資の実行」もしくは自社生産力を補完できる外部資源の調達・連携(アライアンスやM&A)の成否である。2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけての半導体不況が直撃し、研磨材事業を中心に大幅な減収減益となり、同社の成長力にブレーキがかかった。中期経営計画の後半(2024~2025年)の最終目標に向けて、いかに軌道修正していくかがポイントとなる。例えば、目標数値(連結売上高600億円、連結営業利益100億円)は修正せずに到達時期の許容範囲を広めるなど、実現性の高い“ローリングプラン”の検討が必要になる。
3. 事業ポートフォリオ
同社の主力事業は研磨材事業と化学工業品事業であり、準主力事業として生活衣料事業がある。この3事業を中核事業と位置付け、さらなる事業拡大と高収益化を目指している。そのための戦略事業として、化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”に育成する考えである。
一方、生活衣料事業では選択と集中を進め、特化素材などは高採算品に絞り込み、汎用素材は撤退も視野に入れながら、粛々と整理・縮小を進める方針である。
4. ROIC重視の経営
同社ではこれまで“ROIC指向”の業務オペレーションに取り組み、一定の成果も上げてきた。現場部門では定常業務のなかで、原材料費の圧縮、キャッシュマネジメントによる現預金残高圧縮、機動的な生産調整による在庫圧縮、設備生産性の向上などROIC向上のための主要施策を実施してきた。
ROIC重視のマネジメントを全社で共有化すべく、ROIC指標をブレイクダウン(貸借対照表B/Sと損益計算書P/Lを因数分解)し、現場の個々の施策と関連付け、全社のROIC向上への貢献度が一目で分かるようにした。ROIC経営では、中期経営計画の進捗と成果フォロー(年2回)のなかで、個々の施策の進捗と成果を測定し、部門の業績評価につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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富士紡ホールディングス<3104>は2006年以降、その時々の経営課題を解決するために、5次にわたり中期経営計画を策定・実行してきた。中期経営計画「変身06-10」以降、「突破」「邁進」「加速」から「増強」へとつながるなかで、経営の最重要テーマを「変身」とし、事業ポートフォリオの再構築により企業体質を強化し、2022年3月期は親会社株主に帰属する当期純利益が44億円超と過去最高を更新した。2021年からスタートした中期経営計画「増強21-25」では、儲かるビジネスへの転換により収益性を向上させ、「稼ぐ力」の強化を図ることで、最終年度営業利益100億円の達成を目指している。
1. 中期経営計画「増強21-25」の全体像
2021年4月にスタートして3年目を迎えた中期経営計画「増強21-25」の前半(2021~2023年)は、高収益体質への転換の種まき時期と位置付けた。そして、2024年からの中期経営計画の後半(2024~2025年)は2025年のあるべき姿の実現に向け、“非連続的成長”を達成すべく、盤石な準備を行うことが喫緊の課題である。最大のキーポイントは研磨材や化学工業品を扱う中核事業のさらなる拡大のための「設備投資」の適時適正な実行である。設備は発注してから稼働まで2年のタイムラグがあり、早期の意思決定が重要となるので今後も注視したい。
半導体業界の足元はシリコンサイクルによる需給変動はあるものの、これは循環的要素であり構造的には高成長を持続するので、同社も先行的に設備投資を行っていく。事業を拡大するためには、設備投資やM&A、アライアンスといったハード面の増強は不可欠であるが、ソフト面とのバランスも重要であることから、優秀な“人財”を確保し、その能力を存分に発揮できる環境をいかに整えるかが喫緊の課題である。
2. 経営目標と計画数値
同社は、中期経営計画「増強21-25」の全体方針である“儲かるビジネス”への転換を図り、収益性を向上させる(“利益あっての社会貢献”)としており、経営目標は2026年3月期営業利益100億円(営業利益率16.7%)の実現を目指している。これは、2021年3月期(2020年度)の営業利益52億円の約2倍とチャレンジングな目標であり、同計画期間内の“非連続の事業拡大”が求められる数値である。この目標実現のために、2026年3月期の売上高目標は、2021年3月期比1.6倍の売上高600億円を掲げている。前述のとおり、これらの売上高・利益目標実現の鍵となるのは「適時適正な設備投資の実行」もしくは自社生産力を補完できる外部資源の調達・連携(アライアンスやM&A)の成否である。2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけての半導体不況が直撃し、研磨材事業を中心に大幅な減収減益となり、同社の成長力にブレーキがかかった。中期経営計画の後半(2024~2025年)の最終目標に向けて、いかに軌道修正していくかがポイントとなる。例えば、目標数値(連結売上高600億円、連結営業利益100億円)は修正せずに到達時期の許容範囲を広めるなど、実現性の高い“ローリングプラン”の検討が必要になる。
3. 事業ポートフォリオ
同社の主力事業は研磨材事業と化学工業品事業であり、準主力事業として生活衣料事業がある。この3事業を中核事業と位置付け、さらなる事業拡大と高収益化を目指している。そのための戦略事業として、化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”に育成する考えである。
一方、生活衣料事業では選択と集中を進め、特化素材などは高採算品に絞り込み、汎用素材は撤退も視野に入れながら、粛々と整理・縮小を進める方針である。
4. ROIC重視の経営
同社ではこれまで“ROIC指向”の業務オペレーションに取り組み、一定の成果も上げてきた。現場部門では定常業務のなかで、原材料費の圧縮、キャッシュマネジメントによる現預金残高圧縮、機動的な生産調整による在庫圧縮、設備生産性の向上などROIC向上のための主要施策を実施してきた。
ROIC重視のマネジメントを全社で共有化すべく、ROIC指標をブレイクダウン(貸借対照表B/Sと損益計算書P/Lを因数分解)し、現場の個々の施策と関連付け、全社のROIC向上への貢献度が一目で分かるようにした。ROIC経営では、中期経営計画の進捗と成果フォロー(年2回)のなかで、個々の施策の進捗と成果を測定し、部門の業績評価につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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