―電気料金高騰、カーボンニュートラル背景に活躍のフィールド更に広がる―
猛暑に酷暑――とにもかくにも暑い日が続く。災害級の暑さに見舞われるなかエアコンはフル回転、これに電気料金の高騰が追い打ちをかけ更なる家計の重荷になっている。企業も急激なエネルギーコストの上昇が業績の足かせになっており、いかにして「省エネ」を進めるかが大きな課題だ。更に、地球温暖化による猛烈な暑さなど異常気象との闘いは、そうはたやすく終わりそうもない。省エネ技術でリードする関連株を追った。
●「地球沸騰化」で出番到来
グテレス国連事務総長は先月、もはや地球温暖化の時代は終わったとし、「地球沸騰化の時代が到来」と発言した。それを裏付けるかのように、気象庁が1日に発表した「7月の天候」によると、東京都心のひと月の平均気温が、統計開始(1875年)以来「最も暑い7月」だったという。このまま行けば沸騰現象に拍車がかかることが予想されるだけに、脱炭素社会の実現は待ったなしの状況だ。
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする カーボンニュートラルに向けた目標や、30年の野心的といえる温室効果ガス削減目標の達成に向けて、徹底した省エネに努めることを目的に、4月1日に改正省エネ法が施行された。資源エネルギー庁によると、改正により「すべてのエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換を求めるとともに、電気の需要の最適化を促す法律に変わる」としている。
政府は2月、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定。このなか、省エネ・省CO2を促進する設備投資支援による排出量等の削減支援を推進していくとしており、強力な国策の追い風も吹く。省エネ技術の進展は、CO2排出の削減に加え、企業や家庭にとってはエネルギーコストの低減につながるだけに、まさに官民挙げての重要課題と言えるわけだ。地球温暖化は沸騰へと激しさを増し、電気料金が高騰するなか省エネ関連株の活躍のフィールドは更に広がっている。
ただ、「省エネ」とひとことで言っても、「家電」から「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」まで多岐にわたるだけに、さまざまな角度から注視しておくことが必要となる。こうした省エネに絡む業界も、リオープン(経済再開)の動きを受け、ここ業績が回復色を鮮明にしている銘柄は少なくはない。株式市場でも注目されて久しい「省エネ関連」だが、改めて注目した。
●三機サービス、省エネ工事案件が再始動
三機サービス <6044> [東証S]は設備メンテナンス大手だが、デリケートな管理が必要となる病院や学校などを中心に、省エネ・省コスト・CO2削減のソリューションを提案し、設計・施工まで行っている。同社は、先月14日に23年5月期の決算を発表。営業利益は5億7500万円(前の期比2.6倍)となった。続く24年5月期も、2ケタ伸長となる前期比26.7%増の7億2900万円を計画。新型コロナウイルス感染症の対応緩和などで、一時的に保留になっていた病院や老健施設への省エネ工事案件が再び動き出したという。株価は7月4日に1296円まで買われ年初来高値を更新も、その後は調整し1000円を挟みもみ合う展開だがじわり煮詰まり感も。
●ウエストHDは最適サービス提供
太陽光発電設置工事、保守などを手掛けるウエストホールディングス <1407> [東証S]は省エネの提案にも注力。商業施設や工場・病院などエネルギーを大量に消費する施設に対し、最先端のLED照明に加え空調設備など、設備更新を軸とした最適な省エネのトータルサービスを提供している。23年8月期は、営業利益段階で前期比44.7%増の112億4700万円となる見通しだが、7月14日に発表した第3四半期累計(22年9月~23年5月)の同利益は前年同期比61.8%増の43億2700万円となったものの、通期計画に対する進捗率は38%にとどまっている。こうした状況を受け株価も年初来安値圏に沈むが、省エネ分野にスポットライトが当たるなか注目は怠れない。また、今月2日にはパワーエックス(東京都港区)と蓄電所と太陽光発電所の開発・運用に向けた業務提携の締結を発表しており、今後の展開にも期待が高まる。
●“25年控え”攻勢強めるERIHD
建築確認検査業務を展開するERIホールディングス <6083> [東証S]からも目が離せない。同社は、省エネ関連の法改正前の需要拡大が追い風となり業績好調。7月11日に発表した23年5月期決算は、営業利益段階で前の期比20.9%増の23億2600万円と大幅な伸びを達成し過去最高利益を更新。続く24年5月期の同利益も前期比微増ながら最高益更新の見通しだ。省エネ基準の完全適合義務化を25年度に控え、24年度に始まる住宅・建築物の省エネ性能表示制度に先行して、省エネ認証を取得する動きが拡大することが予想される。こうしたなか、関連する業務申請の増加に備えて、態勢整備を一層加速させ攻勢を強める構えだ。株価も7月7日につけた直近安値1321円を起点に急速に切り返し、同月27日には2095円まで上昇し年初来高値を更新。きょうも高値圏で頑強展開となっている。
●前沢工業、下水処理施設で大幅省エネ
上下水道用機械大手の前澤工業 <6489> [東証S]も省エネ関連の一角として注目したい。下水処理施設では、沈砂池設備、水処理設備などで消費電力の大幅な省エネ化を可能にしている。24年5月期は、営業利益は前期比11.6%増の36億円と2ケタ成長を予想する。引き続き老朽化した施設の更新・再構築需要の取り込みに注力するほか、防災・減災、エネルギー問題などに対するソリューション営業を進めることで営業増益を見込む。また 再生可能エネ・省エネ技術の拡充と展開にも注力する方針だ。株価はきょう957円まで買われ年初来高値を更新しており、1000円大台回復から一段高期待も。
●アズビル、マイクロ波、グリムスなどにも注目
一方、四半期決算シーズンが本格化しており、多くの省エネ関連株も決算発表を控える。
制御・自動化機器を手掛けるアズビル <6845> [東証P]は、エネルギー管理でも強みを持つ。同社は、エネルギー管理支援サービス(エネマネ)事業者として豊富な実績を持ち、省エネ分野での存在感が高まっている。先月27日には「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」の公募に対し、同社をエネマネ事業者として活用するスキームが採択されたと発表している。株価は高値からの一服商状にあるものの、折に触れて投資家の視線を集めることになりそうだ。(決算発表予定日:8月8日)
マイクロ波化学 <9227> [東証G]は、莫大なエネルギーを消費する化学産業において、マイクロ波の利用で従来よりも大幅な省エネを実現している。昨年6月に東証グロース市場に新規上場し投資家の視線も熱い銘柄だが、ここ株価は上値の重い展開が続く。7月27日には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による今年度の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に、同社が申請した「マイクロ波加熱を利用した革新的ナフサクラッキング技術の開発」事業が採択されたと発表。また、今月1日には千代田化工建設 <6366> [東証S]及び三井化学 <4183> [東証P]と、同技術の共同開発を開始したことを発表している。(決算発表予定日:8月8日)
グリムス <3150> [東証P]は企業の電力削減コンサルなどを展開するが、安定的な需要があるコスト削減・省エネ・再生可能エネ関連の商品・サービスは受注が好調。引き続き電力コスト削減のための電力基本料金削減コンサルや各種省エネ設備の販売を推進していく構えだ。株価は、ここ上値の重い展開を強いられてはいるが、蓄電池関連の一角としての切り口もあり注視しておきたい。(決算発表予定日:8月14日)
そのほかでは、省エネ支援とバイオマス発電を展開するエフオン <9514> [東証P]、AI(人工知能)を活用した電力コスト削減システム「AIrux8(エーアイラックスエイト)」を展開するトラース・オン・プロダクト <6696> [東証G]にも目を配っておきたい。
株探ニュース
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