・日本は、2050年にカーボンニュートラル(CN)を目指している。30年後であるから今の20代、30代の人々にとっては、自らのメインテーマのはずである。社会システムをどのように変革していくのか。それがGX(グリーントランスフォーメーション)である。まずは2030年度にGHG(温室効果ガス)の半減(2013年度比-46%)を実現すべくスタートを切っている。
・生活者として、CNに貢献することが当たり前であるという感覚が身に付くだろうか。コストが負荷されるという後ろ向きではなく、将来の生活環境に価値を付加していくという姿勢が求められる。若い世代ほど切実であろう。
・企業にとっては、CNを実践することが自らの持続性を確保し、ビジネスチャンスにも結び付けることができる。取り組みに後向きである企業はステークホルダーから見放されて、企業そのものが淘汰されるかもしれない。
・CNを達成するための産業間格差、企業間格差は極めて大きい。これまでの技術では達成できない産業、企業にとって、イノベーションは不可欠であり、国を超えたグローバルな連携が必須となろう。
・国全体としてCNを実現するには、何らかのマーケットが必要である。1社1社が個別に努力するだけでなく、カーボンの削減を社会全体で目指すのであるから、カーボンの削減量を取引して、全体として最適化を図っていくことが望ましい。
・それには、カーボンクレジット市場を整備して、カーボンプライシングを活かして、脱炭素に向けた取引が活発にすることが、CNを促進することになろう。そのような政策が動き出している。
・経産省がリードするGXリーグでは、参加企業とともに、①未来への対話、②市場ルールの形成、③自主的な排出量取引、に向けて適切な場を構築していく方針である。
・GXでは、10年間で20兆円の投資を国が主導し、官民合計で150兆円の投資を呼び起こそうとしている。そのためのグリーンボンドをファイナンス手段として、CNに移行するための促進役とする。
・移行債を用意して、カーボンの回収に当たっては、カーボンプライシング(CP)の活用を促す。排出取引(有償オークション)も、GXリーグを主体にまずトライして、順調にいけば2026年から本格化させる方針である。
・各企業はCNに取り組んでいる。政府は先行投資を支援し、前倒しの達成を目指す。目標を上回った分は、取引所で他社に売る。この取引の場がカーボンクレジット市場である。このルールをしっかり作っていく。
・グリーン成長が期待される領域は、1)エネルギー関連(水素、燃料アンモニア)、2)輸送・製造関連(バッテリー、半導体、カーボンリサイクルマテリアル)、3)家庭、オフィス関連など多岐にわたる。
・TCFDはすでに実行に入っているが、CNに向けた移行期(トランジション)をどう乗り切っていくか。現状のテクノロジーの深化だけでなく、新しいテクノロジーを開発して、それを実装していくには膨大な投資を必要とする。
・それによって、新しい価値が生まれ投資が回収されるならば問題ないが、この間のファイナンスを誰が担っていくのか。トランジションファイナンスに、何らかの信用を担保する仕組みが必要である。トランジションボンド/ローンといった金融商品が大きく台頭してこよう。
・ファイナンスに当たって、資金使途が、1)グリーン領域なのか、2)トランジション領域なのか、3)広くサステナビリティに関連しているか、によって、グリーンボンド、トランジションボンド、サステナビリティリンクボンドなどに分けられよう。
・船舶、鉄鋼、エアライン、化学、電力、ガス、重工業、石油などで、先行事例作りが始まっている。CNで先行すれば世界での競争力も高まるので、ここが勝負どころとなろう。
・2050年までのCNに向けたビヨンド・ゼロ戦略では、GHGの削減量として、1)エネルギー転換 -300億トン、2)運輸 -110億トン、3)産業 -140億トン、4)業務・家庭など -150億トン、5)農林水産・炭素吸収 -150億トンを目標とする。
・これをどのようなイノベーションで攻めるのか。それに関するアクションプラン、その支援を加速させるアクセラレーションプランなどが逐次実行に移されようとしている。新しい投資機会として、大いに注目したい。
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