■シンバイオ製薬<4582>の開発パイプラインの動向
(2) RTD製剤/RI投与
「トレアキシン(R)」の液剤タイプであるRTD製剤は2021年1月から販売を開始し、同年12月にはFD製剤からすべて切り替えを完了している。切り替え率は2021年3月時点の約2割から6月時点で5割弱、9月時点で6割弱と段階的に進んできた。販売開始当初は再発・難治性DLBCL向けを除く既適応症向けに販売していたが、2021年4月に再発・難治性DLBCL向けの販売承認を取得したことで、すべての既適応症向けに販売が可能となったことが要因だ。
また、RI投与については2022年2月に販売承認を取得しており、同年9月末時点では取引先の94%超の医療機関がRI投与に切り替える意向であることを確認しており、2023年3月頃にはほぼすべて切り替えが完了する見通しとなっている。RI投与は静注時間が従来の60分から10分に短縮されるため、医療従事者及び患者の負担を大幅に軽減できることになる。特に、通院患者にとって短時間で治療できるメリットは大きく、多剤併用療法を行っている医療機関でもRI投与の浸透が進み、シェアの拡大につながる可能性が高いと弊社では見ている。
(3) 後発医薬品の影響について
2022年2月、RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品について4社(東和薬品<4553>、ファイザー(株)、Meiji Seikaファルマ(株)、コーアイセイ(株))が販売承認を取得したことを発表した。また、このうち東和薬品とファイザーが同年11月にRI投与での販売承認を取得したことも発表している。適応範囲は、低悪性度NHL/MCL、再発・難治性DLBCL及び腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置の3つで、CLLを除いて先発品の適応症をカバーすることになる。2022年6月より東和薬品が販売を開始したのに続き、同年12月よりファイザーが販売を開始している。2022年12月期第2四半期までは販売面での影響は殆ど無かったが、薬価が先発品の約43%の水準と低いことやファイザーが発売を開始したことから、今後その影響が出てくる可能性もある。なお、RTD製剤やRI投与に関する製造特許や用法特許について開発元であるEagle社が複数取得しており、国内で同特許の独占的使用権を有している同社は、当該特許権の侵害の懸念について文書によって4社に通告していた。このうち、先行販売していた東和薬品に対して2022年12月16日付で関連特許を侵害しているとして東京地方裁判所に特許侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止及び損害賠償請求訴訟を提起した。その後、ファイザーについても2022年12月26日付で同様に提訴した。
RTD製剤の製剤特許に関しては、組成物(ベンダムスチン、グリコール、抗酸化剤)の濃度や組成比などを定めている。後発医薬品4社の組成物については同特許で記されたものとは異なっているものの、それだけで特許を回避できるとは限らず、用法特許なども含めて総合的見地から判断されるようだ。実際、米国ではMylan他3社がRTD製剤の後発医薬品を販売しようとしたが、2021年8月に開かれた裁判でEagle社の主張が認められ、2031年まで特許が有効であるとの判決が下っている。とは言え、日本では別の判断がなされる可能性も否定できず、事業リスクとして留意しておく必要がある。また、RTD製剤/RI投与は新薬創出加算※の対象品目となっており薬価が維持されているが、後発医薬品の販売が開始された場合は、次の改定年すなわち2023年度より対象品目から外れることになり、薬価が引き下げられる可能性がある。
※新薬創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)とは、薬価改定時に一定の条件を満たした新薬に与えられる加算のこと。特許が切れるまで薬価を維持または下がりにくくすることで、革新的新薬の創出や未承認薬・適応外薬の開発を促進することを目的とした制度。
(4) 今後の開発方針
「トレアキシン(R)」については、アカデミアと共同で新たな適応症の探索に向け研究を進めており、さらなる事業価値の拡大に取り組んでいく方針となっている。具体的には、2021年1月に東京大学医科学研究所と共同研究契約を締結し、AI技術も活用しながら血液がんのみならず固形がんなどその他のがん種での開発の可能性や、他剤との組み合わせによる新たな治療法の創出などの研究に取り組んでいる。また、同年8月には京都大学とも共同研究契約を締結し、難治性の活性化B細胞型(ABC)-DLBCLへの関与が示唆されている直鎖状ユビキチン鎖生成酵素複合体(LUBAC)に対する阻害作用についての研究を進めているほか、2022年1月より埼玉医科大学にて、BR療法による自家造血幹細胞移植適応の再発又は再燃DLBCL患者を対象とした医師主導による第2相臨床試験を開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(2) RTD製剤/RI投与
「トレアキシン(R)」の液剤タイプであるRTD製剤は2021年1月から販売を開始し、同年12月にはFD製剤からすべて切り替えを完了している。切り替え率は2021年3月時点の約2割から6月時点で5割弱、9月時点で6割弱と段階的に進んできた。販売開始当初は再発・難治性DLBCL向けを除く既適応症向けに販売していたが、2021年4月に再発・難治性DLBCL向けの販売承認を取得したことで、すべての既適応症向けに販売が可能となったことが要因だ。
また、RI投与については2022年2月に販売承認を取得しており、同年9月末時点では取引先の94%超の医療機関がRI投与に切り替える意向であることを確認しており、2023年3月頃にはほぼすべて切り替えが完了する見通しとなっている。RI投与は静注時間が従来の60分から10分に短縮されるため、医療従事者及び患者の負担を大幅に軽減できることになる。特に、通院患者にとって短時間で治療できるメリットは大きく、多剤併用療法を行っている医療機関でもRI投与の浸透が進み、シェアの拡大につながる可能性が高いと弊社では見ている。
(3) 後発医薬品の影響について
2022年2月、RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品について4社(東和薬品<4553>、ファイザー(株)、Meiji Seikaファルマ(株)、コーアイセイ(株))が販売承認を取得したことを発表した。また、このうち東和薬品とファイザーが同年11月にRI投与での販売承認を取得したことも発表している。適応範囲は、低悪性度NHL/MCL、再発・難治性DLBCL及び腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置の3つで、CLLを除いて先発品の適応症をカバーすることになる。2022年6月より東和薬品が販売を開始したのに続き、同年12月よりファイザーが販売を開始している。2022年12月期第2四半期までは販売面での影響は殆ど無かったが、薬価が先発品の約43%の水準と低いことやファイザーが発売を開始したことから、今後その影響が出てくる可能性もある。なお、RTD製剤やRI投与に関する製造特許や用法特許について開発元であるEagle社が複数取得しており、国内で同特許の独占的使用権を有している同社は、当該特許権の侵害の懸念について文書によって4社に通告していた。このうち、先行販売していた東和薬品に対して2022年12月16日付で関連特許を侵害しているとして東京地方裁判所に特許侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止及び損害賠償請求訴訟を提起した。その後、ファイザーについても2022年12月26日付で同様に提訴した。
RTD製剤の製剤特許に関しては、組成物(ベンダムスチン、グリコール、抗酸化剤)の濃度や組成比などを定めている。後発医薬品4社の組成物については同特許で記されたものとは異なっているものの、それだけで特許を回避できるとは限らず、用法特許なども含めて総合的見地から判断されるようだ。実際、米国ではMylan
※新薬創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)とは、薬価改定時に一定の条件を満たした新薬に与えられる加算のこと。特許が切れるまで薬価を維持または下がりにくくすることで、革新的新薬の創出や未承認薬・適応外薬の開発を促進することを目的とした制度。
(4) 今後の開発方針
「トレアキシン(R)」については、アカデミアと共同で新たな適応症の探索に向け研究を進めており、さらなる事業価値の拡大に取り組んでいく方針となっている。具体的には、2021年1月に東京大学医科学研究所と共同研究契約を締結し、AI技術も活用しながら血液がんのみならず固形がんなどその他のがん種での開発の可能性や、他剤との組み合わせによる新たな治療法の創出などの研究に取り組んでいる。また、同年8月には京都大学とも共同研究契約を締結し、難治性の活性化B細胞型(ABC)-DLBCLへの関与が示唆されている直鎖状ユビキチン鎖生成酵素複合体(LUBAC)に対する阻害作用についての研究を進めているほか、2022年1月より埼玉医科大学にて、BR療法による自家造血幹細胞移植適応の再発又は再燃DLBCL患者を対象とした医師主導による第2相臨床試験を開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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