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最新投稿日時:2022/12/26 12:23 - 「プライムからスタンダードへ」(みんかぶ株式コラム)

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プライムからスタンダードへ

著者:鈴木 行生
投稿:2022/12/26 12:23

・4月にプライム、スタンダード、グロースの各市場がスタートしたが、10月末からはTOPIX構成銘柄の見直しも始まった。基準未達でプライム市場に留まった企業は、その対応が急がれる。だが、基準クリアは容易でない。

・4月4日時点の東証1部2177社のうち、338社はスタンダードを選択した。基準との見合いで無理をしなかった。プライム市場1839社のうち295社は上場維持基準に適合していなかったので、早期の基準クリアを目標とした。

・10月7日に東証はTOPIXの算出に関して、493社の構成比率を下げると公表した。流通時価総額が100億円を下回り、売買代金が基準に満たない場合は、3か月ごとに比率を下げ、2025年1月には指数から外れることになる。

・プライム市場に上場していると、どんなメリットはありそうなのか。①信用が高い、②ブランドが認められる、③社員の士気が上がる、④ビジネスが有利になる、などいろいろ考えられる。でも、本当だろうか。一方、実力が伴わなければ、負担も重い。

・成長戦略が十分でない時、サステナビリティへの対応は難しさが増す。ESGの基盤作りには投資を伴う。基準適合に汲々として無理な対応を急ぐよりは、スタンダードで本来の実力を養い、時間をかける方が得策ともいえる。

・一方で、プライムの条件をクリアしているので、上場を維持する上で特に問題はないと安易に構えられても困る。1)成長性とサステナビリティは本当に確保されているのか、2)そのための戦略は実効性を有しているのか、が問われている。

・4月時点でプライム基準を満たしていた1543社の1社当たりの時価総額は762億円(7月時点の中央値)であった。NYSE(2599社)では同2079億円、NASDAQ(1624社)同1430億円、ロンドンPremium(444社)同1668億円、ドイツPrim(307社)同1361億円であった。米欧に比べて、日本は1社当たりの規模が小さい。

・さらに重要なことは、ROEとPBRにある。TOPIX500のROEをみると、8%未満の企業が全体の40%(7月時点)。これに対して、米国のS&P500では14%、欧州のSTOXX600では19%であった。逆に、ROE15%以上の構成比は、日本19% に対して、米国61%、欧州49%であった。

・PBRで見ると、日本(TOPIX500)は43%が1.0倍割れであったが、米国(S&P500)は5%、欧州(STOXX600)は24%にすぎない。

・市場別でみると、PBR1.0倍割れは、プライム(1837社、7月時点)で922社(50%)、スタンダード(1457社)で934社(64%)、グロース(476社)で32社(7%)であった。

・PBR=ROE×PERという関係にあるので、ROE 8% ×PER 12.5倍=PBR 1.0倍が1つの目安である。つまり、ROEでみた収益性が低く、PERでみた成長性が低いから、PBRが1.0倍を下回ってしまう。これをPBRからみると、企業の非財務資本が価値を生み出す仕組みとして機能していないことを意味する。

・上場維持基準に適合していない会社は、プライムで262社、スタンダードで122社、グロースで39社、合計492社であった。基準クリアの目標期間は2~3年が最も多く、次が3~4年である。期限があるわけではないが、自ずと潮時というものがあろう。

・ポストコロナ、ウクライナ紛争、円安に伴うインフレはスタッグフレーションの景況を強め、企業業績は苦しくなろう。株式市場も調整色を強めるので、2年後の回復を見込むとしても、企業間格差は拡がり、企業再編は一段と加速しよう。上場企業のふるい落としも鮮明化するものと予想される。

・プライム上場企業では、さらなるサステナビリティ改革が求められる。1)独立社外取締役の強化、2)取締役人材のスキル向上、3)マネジメント人材の多様性の拡大、4)TCFDに対応できる質的・量的な充実、5)ダイバーシティの充実、6)リスク管理・内部統制の機能強化、7)英語によるディスクロージャーの充実なども必須である。

・これらは形式でなく実質が求められる。形から入ろうという企業が多い。それで企業価値が高まり、PBR=ROE×PERの大幅な向上が結びつくのであろうか。ROE 10~15%×PER 12~18倍=PBR 1.2~2.7倍というゾーンが当たり前になってほしい。

・スタンダード企業においては、ROEが8~10%を確保しても、PERが10倍を下回り、PBRも1.0倍を切ってしまうことも多い。流動性が十分でないほかに、成長イメージが伝わらず、サステナビリティの基盤が十分でないことも、その要因である。

・ステークホールダーとのエンゲージメントに当たっては、従来から行われてきた伝統的なIRを超えていく必要がある。IRに効果がみられないので、力が抜けてしまっているともいえる。収益性、成長性が乏しいので、必要な投資ができない。IRについても、効果がはっきりしないので、お金をかけられない企業は多い。

・ここをどう打破するか。インベストメントチェーン、バリューチェーンをスパイラルに好循環のもっていくトリガーがほしい。ポジティブスパイラルのストーリーをぜひ描いてほしい。

・うまくやっている企業をみると、後追いの対応に追われていない。ゴーイングマイウェイで、はっきりした独自性を打ち出している。トップのリーダーシップのもと、社員をはじめステークホールダーを巻き込んでいる。

・条件未達企業は、プライム上場に拘ることなく、スタンダード市場に立ち位置を定め、そこから新たな挑戦を開始してほしい。スタンダードで光る企業を評価し、投資を実行したい。

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配信元: みんかぶ株式コラム

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