■事業概要
2. 経営管理指標
トリプルアイズ<5026>は、主な成長性・収益性の指標として、売上高成長率を重視している。また、同社のAIZE部門では、顧客ニーズに合わせてAIZE Research、AIZE Bizなどのサービス提供を行っているが、提供形態にかかわらず共通で拠点ID数に基づき収益計上を行っており、拠点ID数を経営指標としている。SI部門では、SES(システムエンジニアリングサービス)については派遣単価及び派遣人数を経営指標としている。また、研修事業については研修の請負金額を経営指標としている。
売上高成長率は33%(2013年8月期~2021年8月期)であり、高水準となっている。SI部門の確実な成長とAIZE部門の急成長による。クライアント数もSI部門とAIZE部門ともに拡大しており、1年で約2倍(2020年8月期~2021年8月期)になっている。特にAIZE部門が急成長している。
AIZE導入拠点数を示す拠点ID数(拠点においてデータを取得するポイント(課金単位))は、四半期ベースで順調に拡大している。年平均成長率に換算すると、426%(見込み)(2020年8月期~2022年8月期)であり、急成長している。
機械学習技術、深層学習技術、画像処理技術を用いたアルゴリズム及びソフトウエアの研究開発に取り組む
3. 研究開発活動
同社は、深層学習技術を代表とした機械学習技術や、これらをもとにする画像処理技術及びアルゴリズムを用いてソフトウエアの研究開発に取り組んでいる。メインAIによる画像認識技術のビジネスでの実用化、社会実装にいち早く実績を残し企業活動に欠かせないシステムとして浸透、定着させることを目指してきた。同社の画像認識技術の特徴である顔認証に対する高い精度を実際のビジネスの現場で活用するためには様々な実際現場への環境対応が求められ、研究開発のみならず運用ノウハウなど得意とする分野は多岐にわたっている。
同社は、導入企業のニーズに応じた画像認識技術のカスタマイズ、機材や機材の設置環境に左右されない認証精度の追求を中心に研究開発を行っている。実用上で必要となる精度向上や機能追加の点では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の情勢下において、マスク着用時での顔認証精度のさらなる向上や、テレワークの際の顔認証における写真によるなりすましを防止する機能等の研究を進め、一定の成果を得ている。このうちマスク着用時での顔認証について、同社はコロナ禍以前より、他社に先がけて成果を出していた。
画像認識プラットフォーム・AIZEは、コロナ禍における社会貢献を目指して開発した自動検温システムにも搭載している。このシステムの顔認証AIは勤怠管理等感染拡大防止に止まらない機能を提供したことで注目されており、ITシステム企業、メーカーからも引き合いが増加し、それにともなって開発分野も拡大している。
同社の画像認識AIの研究開発の源泉となるのは、2014年より進めている囲碁AIの研究開発である。2015年に初めてコンピュータ囲碁の国内大会に出場して以来、国際大会、国内大会で好成績を収めてきた。2019年4月に世界一の囲碁AI開発を目的として、(株)グロービス、囲碁AI「AQ」開発者・山口祐氏、公益財団法人日本棋院、国立研究開発法人産業技術総合研究所と協働した「GLOBIS-AQZ」プロジェクトに参画し、2019年12月に開催された第11回UEC杯コンピュータ囲碁大会では、中韓を含め国内外から多くのチームが参加するなか、準優勝となった。続く2020年には、囲碁AI国際大会で優勝することを企図して、量子コンピュータによる計算資源増大等先端分野での研究開発を進めようとしたが、コロナ禍により各種大会の中止あるいは規模縮小での開催となり、大会参加を断念、囲碁AIに注力していた研究開発リソースを実用的な画像認識技術に振り替えた。
画像認識技術は、これまでにも同社の事業において、AIによる価格査定(企業向けフリマアプリ)の開発やAI画像認識アプリ、自動運転に向けた技術解析支援システム(航空写真の地図データ化、車載画像の解析)の開発、手書き文字認識・OCR開発等、様々な分野において活用されている。
また、AIZEの実用が進む中で顕在化した、二つのニーズについても研究を開始している。人流を検知し人数をカウントする「群衆分析」は、リテールマーケティングへの活用を期して開発を進めている。また人の眼では認知できない微細な動きを検知する「モーションマグニフィケーション」は、顔画像による決済システムの信頼度を高めうる技術として研究に着手している。この二つは、開発完了後、即時の実用化が見込める技術である。
強みは、「PoCの壁」を乗り越える技術力と社会実装力
4. 強み
同社の強みは「技術力」と「社会実装力」を兼ね備えていることであると弊社では考えている。研究開発系AIベンチャーなどディープラーニングをはじめとする先端テクノロジーの研究開発に取り組みAIサービスを提供する企業は増えてきている。一方で、実際にAIサービスを業務システムに社会実装し、業務への定着まで支援できる企業は限定されている。AIビジネスにおいては、PoC(概念実証)の実施までは行うものの、その後の本格運用にはなかなか至らない、いわゆる「PoCの壁」に阻まれるケースが散見される。同社は、AIZE部門で画像認識プラットフォームを独自開発してきた技術力を有していることに加え、もともとよりSI部門でシステムインテグレーションビジネスを手掛けてきたことから、「PoCの壁」を乗り越え、様々な社会課題を解決するシステムを実装してきた実績を有している。引き続き、同社の競争力は維持されていくと弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)
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2. 経営管理指標
トリプルアイズ<5026>は、主な成長性・収益性の指標として、売上高成長率を重視している。また、同社のAIZE部門では、顧客ニーズに合わせてAIZE Research、AIZE Bizなどのサービス提供を行っているが、提供形態にかかわらず共通で拠点ID数に基づき収益計上を行っており、拠点ID数を経営指標としている。SI部門では、SES(システムエンジニアリングサービス)については派遣単価及び派遣人数を経営指標としている。また、研修事業については研修の請負金額を経営指標としている。
売上高成長率は33%(2013年8月期~2021年8月期)であり、高水準となっている。SI部門の確実な成長とAIZE部門の急成長による。クライアント数もSI部門とAIZE部門ともに拡大しており、1年で約2倍(2020年8月期~2021年8月期)になっている。特にAIZE部門が急成長している。
AIZE導入拠点数を示す拠点ID数(拠点においてデータを取得するポイント(課金単位))は、四半期ベースで順調に拡大している。年平均成長率に換算すると、426%(見込み)(2020年8月期~2022年8月期)であり、急成長している。
機械学習技術、深層学習技術、画像処理技術を用いたアルゴリズム及びソフトウエアの研究開発に取り組む
3. 研究開発活動
同社は、深層学習技術を代表とした機械学習技術や、これらをもとにする画像処理技術及びアルゴリズムを用いてソフトウエアの研究開発に取り組んでいる。メインAIによる画像認識技術のビジネスでの実用化、社会実装にいち早く実績を残し企業活動に欠かせないシステムとして浸透、定着させることを目指してきた。同社の画像認識技術の特徴である顔認証に対する高い精度を実際のビジネスの現場で活用するためには様々な実際現場への環境対応が求められ、研究開発のみならず運用ノウハウなど得意とする分野は多岐にわたっている。
同社は、導入企業のニーズに応じた画像認識技術のカスタマイズ、機材や機材の設置環境に左右されない認証精度の追求を中心に研究開発を行っている。実用上で必要となる精度向上や機能追加の点では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の情勢下において、マスク着用時での顔認証精度のさらなる向上や、テレワークの際の顔認証における写真によるなりすましを防止する機能等の研究を進め、一定の成果を得ている。このうちマスク着用時での顔認証について、同社はコロナ禍以前より、他社に先がけて成果を出していた。
画像認識プラットフォーム・AIZEは、コロナ禍における社会貢献を目指して開発した自動検温システムにも搭載している。このシステムの顔認証AIは勤怠管理等感染拡大防止に止まらない機能を提供したことで注目されており、ITシステム企業、メーカーからも引き合いが増加し、それにともなって開発分野も拡大している。
同社の画像認識AIの研究開発の源泉となるのは、2014年より進めている囲碁AIの研究開発である。2015年に初めてコンピュータ囲碁の国内大会に出場して以来、国際大会、国内大会で好成績を収めてきた。2019年4月に世界一の囲碁AI開発を目的として、(株)グロービス、囲碁AI「AQ」開発者・山口祐氏、公益財団法人日本棋院、国立研究開発法人産業技術総合研究所と協働した「GLOBIS-AQZ」プロジェクトに参画し、2019年12月に開催された第11回UEC杯コンピュータ囲碁大会では、中韓を含め国内外から多くのチームが参加するなか、準優勝となった。続く2020年には、囲碁AI国際大会で優勝することを企図して、量子コンピュータによる計算資源増大等先端分野での研究開発を進めようとしたが、コロナ禍により各種大会の中止あるいは規模縮小での開催となり、大会参加を断念、囲碁AIに注力していた研究開発リソースを実用的な画像認識技術に振り替えた。
画像認識技術は、これまでにも同社の事業において、AIによる価格査定(企業向けフリマアプリ)の開発やAI画像認識アプリ、自動運転に向けた技術解析支援システム(航空写真の地図データ化、車載画像の解析)の開発、手書き文字認識・OCR開発等、様々な分野において活用されている。
また、AIZEの実用が進む中で顕在化した、二つのニーズについても研究を開始している。人流を検知し人数をカウントする「群衆分析」は、リテールマーケティングへの活用を期して開発を進めている。また人の眼では認知できない微細な動きを検知する「モーションマグニフィケーション」は、顔画像による決済システムの信頼度を高めうる技術として研究に着手している。この二つは、開発完了後、即時の実用化が見込める技術である。
強みは、「PoCの壁」を乗り越える技術力と社会実装力
4. 強み
同社の強みは「技術力」と「社会実装力」を兼ね備えていることであると弊社では考えている。研究開発系AIベンチャーなどディープラーニングをはじめとする先端テクノロジーの研究開発に取り組みAIサービスを提供する企業は増えてきている。一方で、実際にAIサービスを業務システムに社会実装し、業務への定着まで支援できる企業は限定されている。AIビジネスにおいては、PoC(概念実証)の実施までは行うものの、その後の本格運用にはなかなか至らない、いわゆる「PoCの壁」に阻まれるケースが散見される。同社は、AIZE部門で画像認識プラットフォームを独自開発してきた技術力を有していることに加え、もともとよりSI部門でシステムインテグレーションビジネスを手掛けてきたことから、「PoCの壁」を乗り越え、様々な社会課題を解決するシステムを実装してきた実績を有している。引き続き、同社の競争力は維持されていくと弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)
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