■事業概要
(2) レンタル事業
レンタル事業は、創業の原点であるモップ・マットなどのダストコントロール商品を扱うダスキン事業をはじめ、介護用品や福祉用具、害虫駆除機等のレンタル・販売、総合ビルメンテナンスなど幅広いジャンルを手掛け、顧客のニーズに沿った衛生環境を保つビジネスを展開してきた。そして、今後は高齢化社会の進展によってシルバー向けのサービスの需要が拡大することを見込んで、ナック<9788>は高齢者を中心とした幅広い層をターゲットとするビジネスに注力している。このセグメントはダスキン事業、ウィズ事業、総合ビルメンテナンス業の(株)アーネストで事業を展開しているが、各ビジネスともにこうした需要増加を想定しつつ、幅広く顧客を取り込むために販売網の拡大やサービス体制の強化に取り組んでいる状況だ。
なかでも主力となる事業は、同社の出発点であるダスキン事業となる。ダスキン992番目の加盟店として創業して以来、ダスキンのフランチャイジーとしては、1984年より30年以上、全国約1,900店の加盟店で売上高・顧客数ともに首位を維持してきた。展開エリアは関東を中心に札幌、大阪、名古屋、福岡と幅広く網羅している。そこでは「モップのレンタル」といった従来のダスキンのイメージから抜け出し、清掃用品の定期的なレンタルのほか、プロによる清掃サービス、家事代行、害虫駆除、庭木のお手入れ、リペアなども提供している。
とりわけダスキン事業の中でも、先行き需要が拡大し、成長のエンジンとして機能しそうなのがケアサービスだ。ハウスクリーニングのほか、トイレやキッチンなど水回りの清掃、エアコンクリーニングなどを展開している。「家じゅうまとめてお掃除するならダスキンのハウスワイドサービス」として、世帯構成が単身世帯、共稼ぎ世帯、高齢者世帯などの比重が高くなるに従い、家事代行をはじめとする役務提供サービスに対する需要が今後は一段と拡大すると同社は想定している。
例に挙げた世帯構成のうち単身世帯や共稼ぎ世帯において、家事について関心が高いのがいわゆる「時短」だ。仕事などに時間を取られ家事は後回しになってしまう、時間が足らず満足できる家事が行えないといった悩みを抱く世帯が多く、こうした世帯がターゲットとなる。また「築年数が古いのと、洗面台と壁の隙間の長年のほこりの堆積等で自分では無理と諦めていたが、とても綺麗になった」といったユーザーの声が象徴するように、水回りやキッチンなど綺麗にすることが難しいクリーニングについて消費者からのニーズが多い。
一方、高齢化社会の進展によって高齢者世帯が確実に増えており、そこをターゲットとしてケアサービスの拡充を進めていく。レンタル事業全体では数十万レベルの顧客基盤があり、既存顧客が高齢化することによって、それまでモップなどを定期レンタルで活用していたものを、ハウスクリーニングなど家事代行を高齢者向けのサービスとして利用を促すなど、ダスキン事業の顧客をケアサービスに取り込む。さらに車椅子、介護ベッド、歩行器、杖など介護用品・福祉用具といったヘルスレント部門も拡充させる考えだ。
ケアサービス部門は潜在需要が大きいと同社は見ており、先行きの成長を見込んでいる。このように拡大する分野があるなかで、心配されるのが人材の確保だろう。同社は、共同出資した人材会社を通じて人材を確保し、自社運営のトレーニングセンターなども活用して教育を徹底する。また、モップなどの定期レンタルの営業現場においては、先輩の営業スタッフが新人のサポートにつく「サテライト制度」を古くから導入し、少人数で質の高い教育環境を整えることで人材育成に努めている。同社によると、新卒における離職率は、2019年の30%強から、2020年、2021年には5%強まで改善するなど定着率がアップしていると言う。なお、最近では、ダスキンのほかの加盟店からM&Aにより顧客権を継承するなど、ダスキン事業はさらに拡大する方向にある。
一方、飲食店向け害虫駆除システムを中心とした害虫駆除器「with」を扱うウィズ事業は、自社ブランドとして1988年にスタートした。以来、飲食店や施設、店舗などに害虫駆除器「with」の定期レンタルを行い、人のいない時間帯にタイマーで作動するマシンが、レストランや、施設における衛生をサポートしている。薬剤メーカーと提携した害虫駆除システム「with」は、薬剤ベーパーセクトと機械本体一対で高い駆除率を誇る害虫駆除システムで、毎週2回、6時間自動的に繰り返しゴキブリを駆除することが特徴だ。このほか、エアコンに設置する空気清掃器「BeCleanフィルター」や、節水洗浄ノズル「Bubble90」を手掛けている。
ウィズ事業は、順調に顧客を増やして描いていた成長路線がコロナ禍により暗転した格好となった。緊急事態宣言やまん延防止策と相次いだ経済制限によって飲食業界の多くが休業に追い込まれ、その影響を大きく受けた。ただ、「with」をはじめ取り扱い製品は、飲食業を営むうえで欠かせないものが多い。コロナ禍によって業績ダウンを余儀なくされたものの、アフターコロナで再び飲食店が活況を取り戻せば、収益が修復する分野であると見られる。
反対に、レンタル事業のなかで、コロナ禍が新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけとなったのが、(株)アーネストによるビルメンテナンス事業だ。アーネストでは、オフィスビルや商業施設、マンションなど、建物に関わる総合的なメンテナンスを行っている。オフィスや施設の日常清掃・定期清掃・消毒除菌作業を幅広く手掛けており、20年以上の安定したサービスを提供してきたことにより、約1,000社の導入実績を挙げてきた。対象となる清掃施設は、マンションや一般オフィスビルから、店舗・商業施設、病院・介護施設、教育機関、パチンコ店、工場、ホテル、神社仏閣・教会などがあり、それぞれ培ったノウハウを用いて綺麗に洗浄する。
アーネストで特筆すべきものは、手掛けたワクチン職域接種会場運営が大口の受注を確保したことによって収益に大きく貢献した点である。アーネストでは一般的な清掃だけでなく、衛生面や設備面から保守管理など管理業務、テナントの空調工事や、入居・退去にともなう内装工事、それらに伴う電気工事などの設備工事のほか、時流に乗るビジネスとしてウイルス・細菌対策やワクチン職域接種会場の運営を手掛けている。コロナ禍においてはワクチン職域接種会場の運営実績を急速に積み上げた。日本全国各地において会場設営から運営までサポートをした結果、足元で累計接種回数は85,000件に達した。この分野では著名企業からの受注によって信頼度が高くなり、国や自治体、大企業などからの受注が期待できる状況にあると言う。公的機関は、この手の案件については実績を重視するため、今後は新型コロナウイルスの感染予防だけではなく、様々なシーンでこうしたノウハウが生かされるものと見られる。
レンタル事業のビジネスは、創業来積み重ねてきた強固な顧客基盤の上に成り立っている。ビジネスモデルもクリクラ事業のように既存ビジネスから派生し拡大してきたが、レンタル事業はより強力な基盤を生かすことによってビジネスの厚みを増すことが可能と言える。たとえば、高齢化社会の進展をにらんだケアサービス事業がまさにそれに当たる。レンタル事業の今後のビジネス展開に注目したい。
なお、レンタル事業の2022年3月期セグメント別の売上構成比は28.9%、売上高営業利益率は10.2%となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
<EY>
(2) レンタル事業
レンタル事業は、創業の原点であるモップ・マットなどのダストコントロール商品を扱うダスキン事業をはじめ、介護用品や福祉用具、害虫駆除機等のレンタル・販売、総合ビルメンテナンスなど幅広いジャンルを手掛け、顧客のニーズに沿った衛生環境を保つビジネスを展開してきた。そして、今後は高齢化社会の進展によってシルバー向けのサービスの需要が拡大することを見込んで、ナック<9788>は高齢者を中心とした幅広い層をターゲットとするビジネスに注力している。このセグメントはダスキン事業、ウィズ事業、総合ビルメンテナンス業の(株)アーネストで事業を展開しているが、各ビジネスともにこうした需要増加を想定しつつ、幅広く顧客を取り込むために販売網の拡大やサービス体制の強化に取り組んでいる状況だ。
なかでも主力となる事業は、同社の出発点であるダスキン事業となる。ダスキン992番目の加盟店として創業して以来、ダスキンのフランチャイジーとしては、1984年より30年以上、全国約1,900店の加盟店で売上高・顧客数ともに首位を維持してきた。展開エリアは関東を中心に札幌、大阪、名古屋、福岡と幅広く網羅している。そこでは「モップのレンタル」といった従来のダスキンのイメージから抜け出し、清掃用品の定期的なレンタルのほか、プロによる清掃サービス、家事代行、害虫駆除、庭木のお手入れ、リペアなども提供している。
とりわけダスキン事業の中でも、先行き需要が拡大し、成長のエンジンとして機能しそうなのがケアサービスだ。ハウスクリーニングのほか、トイレやキッチンなど水回りの清掃、エアコンクリーニングなどを展開している。「家じゅうまとめてお掃除するならダスキンのハウスワイドサービス」として、世帯構成が単身世帯、共稼ぎ世帯、高齢者世帯などの比重が高くなるに従い、家事代行をはじめとする役務提供サービスに対する需要が今後は一段と拡大すると同社は想定している。
例に挙げた世帯構成のうち単身世帯や共稼ぎ世帯において、家事について関心が高いのがいわゆる「時短」だ。仕事などに時間を取られ家事は後回しになってしまう、時間が足らず満足できる家事が行えないといった悩みを抱く世帯が多く、こうした世帯がターゲットとなる。また「築年数が古いのと、洗面台と壁の隙間の長年のほこりの堆積等で自分では無理と諦めていたが、とても綺麗になった」といったユーザーの声が象徴するように、水回りやキッチンなど綺麗にすることが難しいクリーニングについて消費者からのニーズが多い。
一方、高齢化社会の進展によって高齢者世帯が確実に増えており、そこをターゲットとしてケアサービスの拡充を進めていく。レンタル事業全体では数十万レベルの顧客基盤があり、既存顧客が高齢化することによって、それまでモップなどを定期レンタルで活用していたものを、ハウスクリーニングなど家事代行を高齢者向けのサービスとして利用を促すなど、ダスキン事業の顧客をケアサービスに取り込む。さらに車椅子、介護ベッド、歩行器、杖など介護用品・福祉用具といったヘルスレント部門も拡充させる考えだ。
ケアサービス部門は潜在需要が大きいと同社は見ており、先行きの成長を見込んでいる。このように拡大する分野があるなかで、心配されるのが人材の確保だろう。同社は、共同出資した人材会社を通じて人材を確保し、自社運営のトレーニングセンターなども活用して教育を徹底する。また、モップなどの定期レンタルの営業現場においては、先輩の営業スタッフが新人のサポートにつく「サテライト制度」を古くから導入し、少人数で質の高い教育環境を整えることで人材育成に努めている。同社によると、新卒における離職率は、2019年の30%強から、2020年、2021年には5%強まで改善するなど定着率がアップしていると言う。なお、最近では、ダスキンのほかの加盟店からM&Aにより顧客権を継承するなど、ダスキン事業はさらに拡大する方向にある。
一方、飲食店向け害虫駆除システムを中心とした害虫駆除器「with」を扱うウィズ事業は、自社ブランドとして1988年にスタートした。以来、飲食店や施設、店舗などに害虫駆除器「with」の定期レンタルを行い、人のいない時間帯にタイマーで作動するマシンが、レストランや、施設における衛生をサポートしている。薬剤メーカーと提携した害虫駆除システム「with」は、薬剤ベーパーセクトと機械本体一対で高い駆除率を誇る害虫駆除システムで、毎週2回、6時間自動的に繰り返しゴキブリを駆除することが特徴だ。このほか、エアコンに設置する空気清掃器「BeCleanフィルター」や、節水洗浄ノズル「Bubble90」を手掛けている。
ウィズ事業は、順調に顧客を増やして描いていた成長路線がコロナ禍により暗転した格好となった。緊急事態宣言やまん延防止策と相次いだ経済制限によって飲食業界の多くが休業に追い込まれ、その影響を大きく受けた。ただ、「with」をはじめ取り扱い製品は、飲食業を営むうえで欠かせないものが多い。コロナ禍によって業績ダウンを余儀なくされたものの、アフターコロナで再び飲食店が活況を取り戻せば、収益が修復する分野であると見られる。
反対に、レンタル事業のなかで、コロナ禍が新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけとなったのが、(株)アーネストによるビルメンテナンス事業だ。アーネストでは、オフィスビルや商業施設、マンションなど、建物に関わる総合的なメンテナンスを行っている。オフィスや施設の日常清掃・定期清掃・消毒除菌作業を幅広く手掛けており、20年以上の安定したサービスを提供してきたことにより、約1,000社の導入実績を挙げてきた。対象となる清掃施設は、マンションや一般オフィスビルから、店舗・商業施設、病院・介護施設、教育機関、パチンコ店、工場、ホテル、神社仏閣・教会などがあり、それぞれ培ったノウハウを用いて綺麗に洗浄する。
アーネストで特筆すべきものは、手掛けたワクチン職域接種会場運営が大口の受注を確保したことによって収益に大きく貢献した点である。アーネストでは一般的な清掃だけでなく、衛生面や設備面から保守管理など管理業務、テナントの空調工事や、入居・退去にともなう内装工事、それらに伴う電気工事などの設備工事のほか、時流に乗るビジネスとしてウイルス・細菌対策やワクチン職域接種会場の運営を手掛けている。コロナ禍においてはワクチン職域接種会場の運営実績を急速に積み上げた。日本全国各地において会場設営から運営までサポートをした結果、足元で累計接種回数は85,000件に達した。この分野では著名企業からの受注によって信頼度が高くなり、国や自治体、大企業などからの受注が期待できる状況にあると言う。公的機関は、この手の案件については実績を重視するため、今後は新型コロナウイルスの感染予防だけではなく、様々なシーンでこうしたノウハウが生かされるものと見られる。
レンタル事業のビジネスは、創業来積み重ねてきた強固な顧客基盤の上に成り立っている。ビジネスモデルもクリクラ事業のように既存ビジネスから派生し拡大してきたが、レンタル事業はより強力な基盤を生かすことによってビジネスの厚みを増すことが可能と言える。たとえば、高齢化社会の進展をにらんだケアサービス事業がまさにそれに当たる。レンタル事業の今後のビジネス展開に注目したい。
なお、レンタル事業の2022年3月期セグメント別の売上構成比は28.9%、売上高営業利益率は10.2%となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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