■会社概要
1. 会社概要と沿革
日産東京販売ホールディングス<8291>は日産自動車系の自動車ディーラー(日産東京販売)を傘下に持つ持株会社である。日本の中心で人口が集中する東京を地盤に、日産及びルノーブランドの自動車を販売する事業を展開しており、東京の自動車ディーラーの中でも、全国の日産系ディーラーにおいても最大級の規模を誇る。主に日産自動車とそのグループ会社から自動車や部用品を仕入れて販売するほか、中古車の買取・販売や自動車の車体整備・車検整備などの事業も行っている。また、上場子会社の東京日産コンピュータシステムは、ソリューションプロバイダー事業を中心とした情報システム関連事業を手掛けている。
同社は、1942年の商工省通牒「自動車および同部分品配給機構整備要綱」に基づき、東京府自動車整備配給(株)として東京市で発足した。戦後の1946年に東京日産自動車販売株式会社に商号を変更し、その後はモータリゼーションとともに徐々に業容を拡大、1961年に東京証券取引所第1部に上場した。1989年に東京日産コンピュータシステムを設立してシステム事業に参入、2002年に(株)車検館を設立し車検整備を強化、2004年には東京日産コンピュータシステムをJASDAQ市場に上場させた。また、同年、会社分割により持株会社体制に移行して株式会社東日カーライフグループへと商号を変更、2008年には日産自動車子会社の日産ネットワークホールディングス(株)に対し第三者割当増資を実施、日産自動車の持分法適用関連会社となった。2011年には東京を地盤とする東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売(株)、日産プリンス西東京販売(株)の3社をグループ化し、東京における日産自動車の販売をほぼ一手に引き受けることになった。これに伴い、同社は現在の日産東京販売ホールディングス株式会社へと商号を変更した。そしてグループ化から10年後の2021年7月、さらなる効率化とスケールメリットを目指し、3販社を統合して日産東京販売を設立、名実ともに国内最大級の自動車ディーラーとなった。
大変革の時代に機敏に対応
2. 組織概要
同社は、子会社8社(非連結子会社3社含む)、その他の関係会社2社を擁する。子会社のうち新車の販売は、旧東京日産自動車販売、旧日産プリンス東京販売(バーチャルカンパニーのルノーNT販売を含む)、旧日産プリンス西東京販売の3社が統合した日産東京販売において、東京都区部8区を除く東京都全域を地盤に行っている。ちなみに、8区とは千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区のことで、いわゆる都心に当たり、法人需要をメインとする日産自動車の連結子会社が展開しているエリアである(日産自動車の直販エリアということができる)。しかし、都心とはいえ人口は8区で約180万人しかなく、東京都全域約1,400万人に対して10%強を占めるに過ぎない。つまり、同社が地盤とするエリアで東京の人口の9割近くをカバーしているということになる。
2011年にグループ化された旧3販社は、これまで営業や整備など様々な場面ですでにメリットを創出してきた。しかし、3社が別々に存在することによる非効率は依然残らざるを得ず、さらなる変革が必要になってきた。一方で自動車業界は、電動化や自動運転などの急速な発展により取りまく環境が大きく変わったことで、「100年に一度の大変革期」と言われるようになった。自動車メーカーもディーラーも生き残るためにはこうした大変革に適応する必要が生じた。こうした内外環境の変革に機敏に対応するため、同社は2021年7月に旧3販社を統合し、新たな時代の持続的成長に向けてグループの事業資源や人員配置を最適化することになった。そしてそこには、あらゆる場面で効率とシナジーを高め、スケールメリットを創出していくという強い意志があり、効率とシナジーをさらに深化させるとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)や店舗・販売オペレーションの変革、人材戦略の強化、店舗ネットワークの高度化などを推進し、競争力を引き上げて売上・利益を拡大していく方針である。この統合が同社業績に与える影響は、100%子会社3社による統合のため短期的には軽微かもしれないが、中長期的には効率化やスケールメリットなどを通じて大きく貢献すると考えられる。
とはいえ、少子高齢化や人口減少、自動車保有率の低下傾向などを背景に、全国で500万台程度と新車販売台数が横ばいで推移する時代になり、ディーラーが企業として成長するには、スケールメリットや集約化によって収益性を高めるとともに、成長を促進する独自戦略を展開する必要もあった。同社は他のディーラー同様、新車販売のほか中古車も扱っていて、日産東京販売は新車販売時に下取りした車の再販や中古車オークションでの売買を行っている。また、自動車整備や車検に関しても、日産東京販売の店舗ネットワークのほか、エヌティオートサービス(株)と車検館が独自の車体整備・車検整備などを行っていて、幅広いユーザーの獲得につなげている。さらに同社は、20年以上の歴史があり高いシェアを誇る個人リース「P.O.P」も展開している。中でも「頭金ゼロ・コミコミ・定額」の「P.O.P」は、特に自動車を所有するモノというより使用するモノと考える消費者にとって、非常に利便性の高いサービスとなっている。また、同社にとっても、通常の買い替えサイクルが10年超であるのに対し、個人リース「P.O.P」は7割以上の顧客が3年で次の新車に乗り替えるため、販売効率の良いビジネスなのである。このため「P.O.P」は、成長ドライバーの1つとして同社収益を押し上げることが期待されている。
ところで、東京日産コンピュータシステムは東証スタンダード市場に上場する子会社で、コンピュータのハードウェア・ソフトウェアの販売及びデータセンターなどのマネージドサービス※事業を行っている。東京日産コンピュータシステムは同社が株式を53.9%所有しているが、上場会社としての歴史が長く、同社グループとの取引高の比率は8.3%(2021年3月期)に過ぎず、大半が外部売上高となっている。このほか、同社は不動産の賃貸を行っており、一部を関係会社に貸与している。
※マネージドサービス:顧客企業の情報資産の管理や運用・監視業務にとどまらず、ITを駆使した新たな価値の創造を継続的に提供することで、顧客企業のコア業務への集中や業務効率化、生産性向上を側面から支援するアウトソーシングサービス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 会社概要と沿革
日産東京販売ホールディングス<8291>は日産自動車系の自動車ディーラー(日産東京販売)を傘下に持つ持株会社である。日本の中心で人口が集中する東京を地盤に、日産及びルノーブランドの自動車を販売する事業を展開しており、東京の自動車ディーラーの中でも、全国の日産系ディーラーにおいても最大級の規模を誇る。主に日産自動車とそのグループ会社から自動車や部用品を仕入れて販売するほか、中古車の買取・販売や自動車の車体整備・車検整備などの事業も行っている。また、上場子会社の東京日産コンピュータシステムは、ソリューションプロバイダー事業を中心とした情報システム関連事業を手掛けている。
同社は、1942年の商工省通牒「自動車および同部分品配給機構整備要綱」に基づき、東京府自動車整備配給(株)として東京市で発足した。戦後の1946年に東京日産自動車販売株式会社に商号を変更し、その後はモータリゼーションとともに徐々に業容を拡大、1961年に東京証券取引所第1部に上場した。1989年に東京日産コンピュータシステムを設立してシステム事業に参入、2002年に(株)車検館を設立し車検整備を強化、2004年には東京日産コンピュータシステムをJASDAQ市場に上場させた。また、同年、会社分割により持株会社体制に移行して株式会社東日カーライフグループへと商号を変更、2008年には日産自動車子会社の日産ネットワークホールディングス(株)に対し第三者割当増資を実施、日産自動車の持分法適用関連会社となった。2011年には東京を地盤とする東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売(株)、日産プリンス西東京販売(株)の3社をグループ化し、東京における日産自動車の販売をほぼ一手に引き受けることになった。これに伴い、同社は現在の日産東京販売ホールディングス株式会社へと商号を変更した。そしてグループ化から10年後の2021年7月、さらなる効率化とスケールメリットを目指し、3販社を統合して日産東京販売を設立、名実ともに国内最大級の自動車ディーラーとなった。
大変革の時代に機敏に対応
2. 組織概要
同社は、子会社8社(非連結子会社3社含む)、その他の関係会社2社を擁する。子会社のうち新車の販売は、旧東京日産自動車販売、旧日産プリンス東京販売(バーチャルカンパニーのルノーNT販売を含む)、旧日産プリンス西東京販売の3社が統合した日産東京販売において、東京都区部8区を除く東京都全域を地盤に行っている。ちなみに、8区とは千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区のことで、いわゆる都心に当たり、法人需要をメインとする日産自動車の連結子会社が展開しているエリアである(日産自動車の直販エリアということができる)。しかし、都心とはいえ人口は8区で約180万人しかなく、東京都全域約1,400万人に対して10%強を占めるに過ぎない。つまり、同社が地盤とするエリアで東京の人口の9割近くをカバーしているということになる。
2011年にグループ化された旧3販社は、これまで営業や整備など様々な場面ですでにメリットを創出してきた。しかし、3社が別々に存在することによる非効率は依然残らざるを得ず、さらなる変革が必要になってきた。一方で自動車業界は、電動化や自動運転などの急速な発展により取りまく環境が大きく変わったことで、「100年に一度の大変革期」と言われるようになった。自動車メーカーもディーラーも生き残るためにはこうした大変革に適応する必要が生じた。こうした内外環境の変革に機敏に対応するため、同社は2021年7月に旧3販社を統合し、新たな時代の持続的成長に向けてグループの事業資源や人員配置を最適化することになった。そしてそこには、あらゆる場面で効率とシナジーを高め、スケールメリットを創出していくという強い意志があり、効率とシナジーをさらに深化させるとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)や店舗・販売オペレーションの変革、人材戦略の強化、店舗ネットワークの高度化などを推進し、競争力を引き上げて売上・利益を拡大していく方針である。この統合が同社業績に与える影響は、100%子会社3社による統合のため短期的には軽微かもしれないが、中長期的には効率化やスケールメリットなどを通じて大きく貢献すると考えられる。
とはいえ、少子高齢化や人口減少、自動車保有率の低下傾向などを背景に、全国で500万台程度と新車販売台数が横ばいで推移する時代になり、ディーラーが企業として成長するには、スケールメリットや集約化によって収益性を高めるとともに、成長を促進する独自戦略を展開する必要もあった。同社は他のディーラー同様、新車販売のほか中古車も扱っていて、日産東京販売は新車販売時に下取りした車の再販や中古車オークションでの売買を行っている。また、自動車整備や車検に関しても、日産東京販売の店舗ネットワークのほか、エヌティオートサービス(株)と車検館が独自の車体整備・車検整備などを行っていて、幅広いユーザーの獲得につなげている。さらに同社は、20年以上の歴史があり高いシェアを誇る個人リース「P.O.P」も展開している。中でも「頭金ゼロ・コミコミ・定額」の「P.O.P」は、特に自動車を所有するモノというより使用するモノと考える消費者にとって、非常に利便性の高いサービスとなっている。また、同社にとっても、通常の買い替えサイクルが10年超であるのに対し、個人リース「P.O.P」は7割以上の顧客が3年で次の新車に乗り替えるため、販売効率の良いビジネスなのである。このため「P.O.P」は、成長ドライバーの1つとして同社収益を押し上げることが期待されている。
ところで、東京日産コンピュータシステムは東証スタンダード市場に上場する子会社で、コンピュータのハードウェア・ソフトウェアの販売及びデータセンターなどのマネージドサービス※事業を行っている。東京日産コンピュータシステムは同社が株式を53.9%所有しているが、上場会社としての歴史が長く、同社グループとの取引高の比率は8.3%(2021年3月期)に過ぎず、大半が外部売上高となっている。このほか、同社は不動産の賃貸を行っており、一部を関係会社に貸与している。
※マネージドサービス:顧客企業の情報資産の管理や運用・監視業務にとどまらず、ITを駆使した新たな価値の創造を継続的に提供することで、顧客企業のコア業務への集中や業務効率化、生産性向上を側面から支援するアウトソーシングサービス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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