■日本BS放送<9414>の事業環境
電通グループ<4324>が公表した「2021年 日本の広告費」によれば、2021年における日本の総広告費は前年比10.4%増の6兆7,998億円となり、2011年以来9年ぶりのマイナス成長となった前年から、再びプラス成長に転じた。2021年上半期は、コロナ禍による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの施策による悪影響を受けたものの、下半期はコロナ禍の影響が緩和したことで消費者心理が改善した。これらの要因からテレビメディア広告費が回復したほか、インターネット広告費の成長の加速につながったと言う。また、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックや、イベントやテーマパークの入場制限緩和などが広告市場の回復にも一役買ったもようだ。総広告費6兆7,998億円のうち、衛星メディア関連(BS、CS、CATV)の広告費は1,209億円(前年は1,173億円)となったが、同社が属するBS放送は衛星メディア関連市場の70%強を占める。BS放送市場は2000年12月にBSデジタル放送がスタートしたことで本格的に立ち上がり、黎明期の2001~2003年を除くと順調に右肩上がりで成長を続けてきた。編成の多様化により様々なジャンルの番組が増加したため多くの企業による出稿が増加し成長を後押ししている。2020年はコロナ禍の影響を受けて広告市場全体が低調に推移したため、BS放送市場もマイナス成長となったが、2021年は巣ごもり需要の増加によって2020年に引き続き通販市況が好調に推移したことに加え、コロナ禍で中止となっていたスポーツその他イベントが開催される運びとなり、BS放送の広告収入は2020年比で4.2%増加した。
足元ではテレビメディアにかける広告費は減少傾向にあるが、これはインターネット広告の台頭によるものである。2019年にインターネット広告の構成比がテレビメディアの構成比を上回った。続く2020年、2021年もインターネット広告の成長は続いている。これによって、2021年の構成比はテレビメディアが27.1%、インターネット広告が39.8%と、その差がさらに開く結果となった。イベントなどのプロモーションメディア広告は「交通広告」「イベント・展示・映像ほか」「フリーペーパー」などがいずれも2020年に比べて減少しており、引き続きコロナ禍によるイベントの収支や延期などの悪影響を受けている。
もっとも、多くの世帯でBSデジタルチューナーが搭載された薄型テレビへの買い替えが進んだことにより、2019年度のBS放送の視聴可能世帯数の割合は77.1%(「BS世帯普及率調査」(ビデオリサーチ調べ))と、8割近くまで伸長している。コロナ禍において視聴者の意識も変わってきていることが考えられ、インターネットの情報については正確性において不安な面もあることから、速さよりも内容の正確さが重要視されるテレビの情報番組による情報収集志向は依然高いと見る。そうしたなかで、同社は視聴者目線で番組制作を行える強みを生かしている。また、コロナ禍における巣ごもり消費により、通販会社や保険会社などからのCMが増えてきているなか、地域によって普及差のある地上波に比べ、衛星メディアとして全国に一斉放送されるBSへの魅力が見直されていると弊社では考えている。
一方、2022年3月に「BS松竹東急」「BSJapanext」「BSよしもと」が開局したことにより、今後の他社動向に注目する必要がありそうだ。例えば、同社が注力するアニメコンテンツなどに対して、争奪戦の激化及びそれに伴う単価の高騰などの形で影響が出ることも考えられる。
同社によると環境としては、番組への出稿を行うタイムCMと比較し、キャンペーンごとのスポットCMの出稿を行うクライアントが増えていると言う。そのためタイム収入は番組提供だけではなく、通販番組の出稿が支える格好にある。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<EY>
電通グループ<4324>が公表した「2021年 日本の広告費」によれば、2021年における日本の総広告費は前年比10.4%増の6兆7,998億円となり、2011年以来9年ぶりのマイナス成長となった前年から、再びプラス成長に転じた。2021年上半期は、コロナ禍による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの施策による悪影響を受けたものの、下半期はコロナ禍の影響が緩和したことで消費者心理が改善した。これらの要因からテレビメディア広告費が回復したほか、インターネット広告費の成長の加速につながったと言う。また、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックや、イベントやテーマパークの入場制限緩和などが広告市場の回復にも一役買ったもようだ。総広告費6兆7,998億円のうち、衛星メディア関連(BS、CS、CATV)の広告費は1,209億円(前年は1,173億円)となったが、同社が属するBS放送は衛星メディア関連市場の70%強を占める。BS放送市場は2000年12月にBSデジタル放送がスタートしたことで本格的に立ち上がり、黎明期の2001~2003年を除くと順調に右肩上がりで成長を続けてきた。編成の多様化により様々なジャンルの番組が増加したため多くの企業による出稿が増加し成長を後押ししている。2020年はコロナ禍の影響を受けて広告市場全体が低調に推移したため、BS放送市場もマイナス成長となったが、2021年は巣ごもり需要の増加によって2020年に引き続き通販市況が好調に推移したことに加え、コロナ禍で中止となっていたスポーツその他イベントが開催される運びとなり、BS放送の広告収入は2020年比で4.2%増加した。
足元ではテレビメディアにかける広告費は減少傾向にあるが、これはインターネット広告の台頭によるものである。2019年にインターネット広告の構成比がテレビメディアの構成比を上回った。続く2020年、2021年もインターネット広告の成長は続いている。これによって、2021年の構成比はテレビメディアが27.1%、インターネット広告が39.8%と、その差がさらに開く結果となった。イベントなどのプロモーションメディア広告は「交通広告」「イベント・展示・映像ほか」「フリーペーパー」などがいずれも2020年に比べて減少しており、引き続きコロナ禍によるイベントの収支や延期などの悪影響を受けている。
もっとも、多くの世帯でBSデジタルチューナーが搭載された薄型テレビへの買い替えが進んだことにより、2019年度のBS放送の視聴可能世帯数の割合は77.1%(「BS世帯普及率調査」(ビデオリサーチ調べ))と、8割近くまで伸長している。コロナ禍において視聴者の意識も変わってきていることが考えられ、インターネットの情報については正確性において不安な面もあることから、速さよりも内容の正確さが重要視されるテレビの情報番組による情報収集志向は依然高いと見る。そうしたなかで、同社は視聴者目線で番組制作を行える強みを生かしている。また、コロナ禍における巣ごもり消費により、通販会社や保険会社などからのCMが増えてきているなか、地域によって普及差のある地上波に比べ、衛星メディアとして全国に一斉放送されるBSへの魅力が見直されていると弊社では考えている。
一方、2022年3月に「BS松竹東急」「BSJapanext」「BSよしもと」が開局したことにより、今後の他社動向に注目する必要がありそうだ。例えば、同社が注力するアニメコンテンツなどに対して、争奪戦の激化及びそれに伴う単価の高騰などの形で影響が出ることも考えられる。
同社によると環境としては、番組への出稿を行うタイムCMと比較し、キャンペーンごとのスポットCMの出稿を行うクライアントが増えていると言う。そのためタイム収入は番組提供だけではなく、通販番組の出稿が支える格好にある。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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