■事業活動の進捗と今後の取り組み
1. 細胞加工業の進捗と今後の取り組み
細胞加工業は、2019年9月期に初めて黒字化を達成したが、その後コロナ禍により免疫細胞治療を受ける患者(特にインバウンド患者)が激減し、今年も苦況(海外からの入国制限が継続)が続き、2021年9月期も減収・損失拡大を余儀なくされた。
特定細胞加工物製造実績推移は、4~5期前の月間ピーク時に比べ、コロナ禍により細胞加工件数が急減したため、月間で約1/3まで落ち込んだ。しかし、2020年3四半期に細胞加工件数は下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にある。コロナ禍の終息が見えないため、メディネット<2370>は国内がん患者を対象とした潜在顧客開拓をすべく、2021年9月期よりがん免疫細胞治療の啓発活動強化を推進している。
また、「CDMO」事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマとの治験製品製造における技術移転が完了し、同社と治験製品受託製造に関する契約を締結(2021年5月)、同年6月よりヤンセンファーマが日本国内で実施する国際共同治験(第III相臨床試験:CARTITUDE-4)の日本国内で試験に用いる治験製品製造工程の一部の製造受託を開始した。これにより、「CDMO」事業は業績拡大に向け進むことになる。
細胞加工業の事業構造は特定細胞加工物製造業(がん免疫細胞治療の細胞培養加工)の“1本足打法”に偏っていたため、今回のコロナ禍の影響で大打撃を受けた。その教訓を生かし、事業環境変化に強い事業構造へ転換・拡大を推進している。従来からも進めていたが、1)非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)、2) CDMO事業の拡大強化が事業戦略の2本柱となる。CDMO事業の拡大強化のため、細胞培養加工の環境・体制整備として専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行、当初調達予定27億円)を実施した。また、事業目標については「2023年9月期黒字化」を目指す。一時的な黒字化だけにとどめずインバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。
(1) 特定細胞加工物の売上拡大
再生・細胞医療に取り組む製薬企業、大学、医療機関、研究機関等から受託製造する特定細胞加工物における細胞種・品目数の取り扱いを増やしていくほか、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン」の受託製造を推進していく。がんの治療に用いられるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンは、患者自身のがん組織を用いてがん細胞の遺伝子異常を解析し、患者自身のがん固有の抗原(目印)を特定しワクチンを作製するため、少ない副作用で高い効果(免疫反応)が得られる。すなわち “オーダーメイドがんワクチン”とも言える。瀬田クリニック東京を中心とする同社の契約医療機関で提供している。同社は以前から、患者自身の組織を用いて治療に合わせた細胞加工の製造受託を行っており、今後も最新の「がんの個別化医療」に貢献しつつ、業績拡大に向け推進していく。
(2) CDMO事業の加速
2020年1月、品川CPFでは「再生医療等製品製造業許可」を取得した。同社はCDMO事業において、国内外製薬企業やバイオベンチャー企業に対し、今後アプローチを強化していく。ヤンセンファーマとの契約締結に次ぐ、治験製品受託製造の第2・第3の案件獲得に向け、製薬企業・大学病院を中心に顧客開拓活動を推進している。その活動を支える体制として、リモート環境を整え細胞加工業の効率化を行った。Web会議システムを用いた技術移転や監査など有効性を確認したうえで、Web周辺機器を用いたバーチャルプラントツアーを確立し、業務効率に効果をもたらしている。
(3) バリューチェーン事業の拡大
同社は“フロー型バリューチェーンビジネス”を構築し、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。アカデミア(大学、研究機関)を中心として施設運営管理業務をリピート(継続受託)するとともに、新たに再生・細胞医療分野へ参入を企図しているアカデミアや製薬企業の様々なニーズに合わせた多様なサービスに取り組み、販売強化につなげていく。
(4) 海外企業とのアライアンス活動強化
同社は、2019年10月に台湾Medigen Biotechnology Corp.(MBC)とガンマ・デルタT細胞培養加工技術のライセンス契約を締結し、技術移転を完了した。この技術を用いたがん免疫細胞治療は台湾当局の承認後、MBCが提携する医療機関である新光醫院が台湾当局へ申請している。台湾国内で免疫治療を受診できる申請が許可されれば、台湾のがん患者が現地医療機関で同社の細胞培養加工技術を用いたがん免疫細胞治療が受けられるようになる。また、世界各国の医療法制度に応じて現地の医療機関に再生・細胞医療が健全に提供されるよう、同社が培った技術と経験を積極的にライセンス供与していく。さらに、コロナ禍の影響でインバウンド患者が入国できず減少傾向にあるが、日本での治療を待ち望んでいる多数の患者もおり、同社は日本で円滑に受診・治療できる仕組みを構築していくとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<EY>
1. 細胞加工業の進捗と今後の取り組み
細胞加工業は、2019年9月期に初めて黒字化を達成したが、その後コロナ禍により免疫細胞治療を受ける患者(特にインバウンド患者)が激減し、今年も苦況(海外からの入国制限が継続)が続き、2021年9月期も減収・損失拡大を余儀なくされた。
特定細胞加工物製造実績推移は、4~5期前の月間ピーク時に比べ、コロナ禍により細胞加工件数が急減したため、月間で約1/3まで落ち込んだ。しかし、2020年3四半期に細胞加工件数は下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にある。コロナ禍の終息が見えないため、メディネット<2370>は国内がん患者を対象とした潜在顧客開拓をすべく、2021年9月期よりがん免疫細胞治療の啓発活動強化を推進している。
また、「CDMO」事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマとの治験製品製造における技術移転が完了し、同社と治験製品受託製造に関する契約を締結(2021年5月)、同年6月よりヤンセンファーマが日本国内で実施する国際共同治験(第III相臨床試験:CARTITUDE-4)の日本国内で試験に用いる治験製品製造工程の一部の製造受託を開始した。これにより、「CDMO」事業は業績拡大に向け進むことになる。
細胞加工業の事業構造は特定細胞加工物製造業(がん免疫細胞治療の細胞培養加工)の“1本足打法”に偏っていたため、今回のコロナ禍の影響で大打撃を受けた。その教訓を生かし、事業環境変化に強い事業構造へ転換・拡大を推進している。従来からも進めていたが、1)非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)、2) CDMO事業の拡大強化が事業戦略の2本柱となる。CDMO事業の拡大強化のため、細胞培養加工の環境・体制整備として専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行、当初調達予定27億円)を実施した。また、事業目標については「2023年9月期黒字化」を目指す。一時的な黒字化だけにとどめずインバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。
(1) 特定細胞加工物の売上拡大
再生・細胞医療に取り組む製薬企業、大学、医療機関、研究機関等から受託製造する特定細胞加工物における細胞種・品目数の取り扱いを増やしていくほか、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン」の受託製造を推進していく。がんの治療に用いられるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンは、患者自身のがん組織を用いてがん細胞の遺伝子異常を解析し、患者自身のがん固有の抗原(目印)を特定しワクチンを作製するため、少ない副作用で高い効果(免疫反応)が得られる。すなわち “オーダーメイドがんワクチン”とも言える。瀬田クリニック東京を中心とする同社の契約医療機関で提供している。同社は以前から、患者自身の組織を用いて治療に合わせた細胞加工の製造受託を行っており、今後も最新の「がんの個別化医療」に貢献しつつ、業績拡大に向け推進していく。
(2) CDMO事業の加速
2020年1月、品川CPFでは「再生医療等製品製造業許可」を取得した。同社はCDMO事業において、国内外製薬企業やバイオベンチャー企業に対し、今後アプローチを強化していく。ヤンセンファーマとの契約締結に次ぐ、治験製品受託製造の第2・第3の案件獲得に向け、製薬企業・大学病院を中心に顧客開拓活動を推進している。その活動を支える体制として、リモート環境を整え細胞加工業の効率化を行った。Web会議システムを用いた技術移転や監査など有効性を確認したうえで、Web周辺機器を用いたバーチャルプラントツアーを確立し、業務効率に効果をもたらしている。
(3) バリューチェーン事業の拡大
同社は“フロー型バリューチェーンビジネス”を構築し、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。アカデミア(大学、研究機関)を中心として施設運営管理業務をリピート(継続受託)するとともに、新たに再生・細胞医療分野へ参入を企図しているアカデミアや製薬企業の様々なニーズに合わせた多様なサービスに取り組み、販売強化につなげていく。
(4) 海外企業とのアライアンス活動強化
同社は、2019年10月に台湾Medigen Biotechnology Corp.(MBC)とガンマ・デルタT細胞培養加工技術のライセンス契約を締結し、技術移転を完了した。この技術を用いたがん免疫細胞治療は台湾当局の承認後、MBCが提携する医療機関である新光醫院が台湾当局へ申請している。台湾国内で免疫治療を受診できる申請が許可されれば、台湾のがん患者が現地医療機関で同社の細胞培養加工技術を用いたがん免疫細胞治療が受けられるようになる。また、世界各国の医療法制度に応じて現地の医療機関に再生・細胞医療が健全に提供されるよう、同社が培った技術と経験を積極的にライセンス供与していく。さらに、コロナ禍の影響でインバウンド患者が入国できず減少傾向にあるが、日本での治療を待ち望んでいる多数の患者もおり、同社は日本で円滑に受診・治療できる仕組みを構築していくとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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