資源・新興国通貨の2022年3月末までの展望

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最新投稿日時:2021/11/29 14:40 - 「資源・新興国通貨の2022年3月末までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2022年3月末までの展望

著者:八代和也
投稿:2021/11/29 14:40

豪ドル

RBA(豪中銀)は11月2日の政策会合で政策金利を0.10%に据え置きました。一方で声明では、これまでの「利上げの条件は2024年まで満たされない」との文言を「利上げの条件を満たすには、ある程度の時間がかかる」へと変更。これは、状況次第では2024年よりも前に利上げが行われる可能性があるとの解釈ができます。

RBAは「政策金利を当面据え置く」との姿勢を示す一方、市場では「早ければ22年6月にも利上げが行われる」との観測があります。原油価格が上昇を続ける、あるいは豪州の雇用情勢の改善が続けば、早期の利上げ観測が市場で高まりそうです。その場合、豪ドル/円は堅調に推移するとみられます。豪ドル/米ドルについては、米FRBの早期利上げ観測が高まれば、上値が重くなる可能性があります。

一方で豪ドルには投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が拡大するなどして世界経済の先行きをめぐる懸念が強まる、あるいは主要国の株価が下落を続ければ、リスクオフの動きが強まり、豪ドル/円や豪ドル/米ドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。

***
豪ドル/NZドルは、上値が重い展開になるかもしれません。RBAは政策金利を当面据え置くと考えられる一方、RBNZ(NZ中銀)は利上げを継続するとみられるからです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
・米中関係、豪中関係(中国は豪州の主要輸出先)。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は11月24日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を0.50%から0.75%へと引き上げました。利上げは2会合連続です。

RBNZは声明で「時間とともに金融政策のさらなる解除が予想される」とし、追加利上げを示唆。議事録では「経済が見通し通りに発展することを条件に、政策金利は中立金利を上回る水準へと引き上げる必要がある」と政策メンバーが考えていることが判明しました。RBNZは中立金利を2%と推計しています。

RBNZの金融政策報告では、政策金利の見通しが8月時点から上方修正されました。政策金利は2023年12月までに2.6%(8月時点では2.0%)へと上昇すると予想し、8月時点の見通しよりも利上げペースが加速する可能性を示しました。

RBNZと日銀の金融政策の方向性の違いを背景に、NZドル/円は堅調に推移する可能性があります。NZドル/米ドルについては、米FRBの早期利上げ観測が高まれば、伸び悩みそうです。

一方でNZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が拡大するなどして世界経済の先行きをめぐる懸念が強まる、あるいは主要国の株価が下落を続ければ、NZドル/円やNZドル/米ドルには下押し圧力が加わる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・米FRBの金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米中関係、(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は10月27日の政策会合で政策金利を0.25%に据え置くことを決定しました。声明では、「経済のスラック(需給の緩み)が吸収されるまで政策金利を実効下限(0.25%)に維持する」と改めて表明。スラックが吸収される時期(≒利上げ時期)の見通しをこれまでの22年下半期(7~12月)から22年半ばへと前倒ししました。マックレムBOC総裁は会合後の会見で22年半ばとは「4~9月」と語りました。BOCが利上げ時期の見通しを前倒ししたことは、カナダドル/円の支援材料となりそうです。

一方で、カナダドル/円は原油価格(米WTI原油先物など)にも影響を受けやすいという特徴があります。目先は新型コロナウイルスのオミクロン株をめぐる懸念が原油価格の上値を抑える可能性があるものの、オミクロン株への懸念が後退すれば原油価格は再び上昇するとみられます。原油価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料です。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。
・米国景気の動向。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)は11月18日の政策会合で1.00%の利下げを行うことを決定。政策金利を16.00%から15.00%へと引き下げました。利下げは3会合連続です。

足もとのトルコリラ安の主な要因として、高インフレにもかかわらずTCMBが利下げを続けていることが挙げられます。TCMBが金融政策を転換(=利下げを停止して利上げを行う)すれば、トルコリラ/円は上昇傾向に転じる可能性があるものの、エルドアン大統領がさらなる利下げを求めるなかでTCMBが利上げを行うのは困難と考えられます。

トルコと米国との関係にも注意が必要かもしれません。トルコはS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を追加購入する方針を変えていません。NATO(北大西洋条約機構)の機密情報がロシアに漏洩するおそれがあるとして、米国は以前からトルコのS400購入に強く反対しています。両国の関係が悪化する場合、トルコリラ/円の下落材料になる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコと米国や欧州との関係。
・トルコの地政学リスク。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は11月18日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.50%から3.75%へと引き上げました。SARBの利上げは2018年11月以来、3年ぶり。利上げの決定は3対2で下されました(2人は政策金利の据え置きを主張)。

クガニャゴSARB総裁は会合後の会見で「インフレ率はインフレ目標(3~6%)の中央値近辺にとどまると予想しているが、インフレのリスクは増大している」と指摘。SARBはまた、21年と22年、23年のインフレ見通しを9月時点から上方修正しました(21年は4.4%→4.5%へ、22年は4.2%→4.3%へ、23年は4.5%→4.6%へ)。SARBは今後追加利上げを行う可能性があり、そのことは南アフリカランド/円の支援材料となりそうです。

一方で、南アフリカで確認された新型コロナウイルスの新たな変異種(オミクロン株)の感染状況には要注意です。南アフリカ国内の感染状況が悪化すれば、同国景気をめぐる懸念が市場で強まり、南アフリカランド/円に対して下押し圧力が加わる可能性があります。

南アフリカはまた、エスコム(国内電力の約9割を供給する国営電力会社)の問題を抱えています。エスコムは経営危機に陥っており、以前から計画停電をたびたび実施しています。計画停電は景気の下押し要因と考えられます。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の金融政策。
・新型コロナウイルスの変異株の感染状況。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
・米FRBの金融政策。
・商品価格の動向。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は11月11日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定しました(政策金利を4.75%から5.00%へ)。利上げは4会合連続です。

メキシコのCPI(消費者物価指数)はBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジである4%を上回り続けています。10月のCPIは前年比6.24%と、17年12月以来の高い伸びでした。BOMは今後も利上げを続ける可能性があり、そのことはメキシコペソ/円の支援材料と考えられます。

BOMのディアスデレオン総裁が21年12月末で退任。後任の総裁には、ビクトリア・ロドリゲス氏が就任します。ロドリゲス氏には金融政策に関する経験が不足しているとの指摘や、ロペスオブラドール大統領の意向に沿った金融政策運営を行うとの懸念が市場にはあります。ロドリゲス新総裁が市場からの信認を得られるかどうかに注目です。

メキシコペソ/円は、原油価格(米WTI原油先物など)の動向に影響を受けやすいという特徴もあります。原油価格が上昇を続ければ、メキシコペソ高材料となり得ます。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。新総裁の金融政策運営。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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