■事業概要
1. 中核商品「NET119緊急通報システム」について
ドーン<2303>の代名詞ともなっているのが2010年※に開始された「NET119緊急通報システム」である。このシステムは、聴覚や発話に障がいのある人のための緊急通報システムであり、スマートフォン・携帯電話のインターネット接続機能を利用して、簡単に素早く119番通報することができる。急病やけが、地震や風水害、火災などの緊急時に、自宅からの通報はもちろん、GPS機能を利用しているため外出先からも通報でき、受信側はすぐに居場所を特定できる。操作性の良さやシステムとしての信頼性の高さが評価され、現在では全国の自治体・消防団体で広く普及している。同システムはクラウドサービスであり、顧客である自治体にとっては自前で運営する場合と比較してコストが安く運営の手間もかからないというメリットがある。なお料金体系は、消防の管轄人口に応じた月額利用料を支払う方式である。
※開始当初のシステム名は「緊急通報システムWeb119」。後にリニューアルされた。
兵庫県神戸市や埼玉県川口市などの自治体を皮切りに導入が進み、2015年12月には東京消防庁、2016年10月には大阪市消防局で稼働を開始し、全国の自治体への横展開に弾みがついた。2021年5月期にも、福岡市、大分市、長野市、川崎市など多数の自治体でサービスが開始され、同システムが導入されている消防本部の管轄人口は約7,213万人(2021年5月末現在、契約済未稼働を含む)、人口カバー率は56.5%と過半数を超えてなお増加している。2018年3月に、総務省は同システムの早期導入を進めるために、地方自治体の各消防本部が同システムを導入した際の運用経費を地方交付税で賄う措置を通知(消防情第98号)。2018年12月には総務省消防庁から各都道府県の消防に対して、「NET119緊急通報システム」の未導入地域の解消を促すために地域別導入状況の公表を開始した。大都市圏の自治体での導入が進展したため、今後の導入は中規模・小規模の自治体が中心となる。導入ペースが多少鈍化することが予想されるものの、今後も導入自治体の増加が見込まれる。
2. クラウドサービスの成長
システム開発においては“所有から利用へ”の流れのなかで「クラウド」へのシフトが進行中である。顧客にとって初期投資が抑えられ、最新のシステムがすぐ利用でき、自前で運用・保守をする面倒もない。政府は2020年秋から、各省庁が自前で管理・保有する現在のシステムを順次クラウドに切り替える取り組みを開始した。情報セキュリティに配慮するとともに、コストを抑制し、デジタル技術の更新も早まる点でクラウドが優位との判断に至った。省庁の動向は、今後、自治体や民間にも波及し、クラウド化の流れは加速すると考えられる。
クラウド化の進展は、同社の成長及び収益改善にも大きく貢献してきた。2014年5月期に全社売上高の12.9%だったクラウド利用料の売上高構成比は、2021年5月期には46.5%まで上昇し、これと並行して売上高営業利益率は0.5%(2014年5月期)から30.4%(2021年5月期)に上昇した。サービスとしては、同社の代名詞となっている「NET119緊急通報システム」のほか、「DMaCS(災害情報共有サービス)」も普及が始まっている。次期の主力サービスとして期待される映像通報システム「Live119」なども提供が始まった。今後もクラウド利用料を伸ばし、収益力を高めることが、同社の基本戦略である。
3. 災害時・感染症拡大時の危機管理用クラウドサービスに強み
静岡県熱海市の土砂災害(2021年7月)や新型コロナウイルス感染症などの例を出すまでもなく、行政・自治体は風水害、地震、感染症など様々なリスクへの対応を迫られる。このような事象が発生した場合には、発生後の情報共有や意思決定の迅速さが被害を最小限に食い止める決め手になる。同社のクラウドサービスのラインナップには、地域内(自治体、関連する組織・団体)が円滑にコミュニケートでき、司令塔となる組織がタイムリーな意思決定をするための支援システムが揃っている。一例を挙げると、「DMaCS」は、災害時に、災害現場や避難所、事務局や災害対策本部を結び、被害情報等を収集・一元管理し、初動期における災害対策本部の意思決定を支援するサービスである。2021年5月期以降においても、兵庫県尼崎市をはじめとする中規模都市への普及が進んでいる。また、行政からの通知や医療機関・教育機関からの感染症発生状況などの情報を共有し一元管理するシステム「感染症危機管理システム」も提供している。いずれもクラウドサービスのため、初期構築コストや運用コストが圧倒的に廉価に抑えられ、タイムリーな情報共有と報告書類の作成・一元管理が可能となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. 中核商品「NET119緊急通報システム」について
ドーン<2303>の代名詞ともなっているのが2010年※に開始された「NET119緊急通報システム」である。このシステムは、聴覚や発話に障がいのある人のための緊急通報システムであり、スマートフォン・携帯電話のインターネット接続機能を利用して、簡単に素早く119番通報することができる。急病やけが、地震や風水害、火災などの緊急時に、自宅からの通報はもちろん、GPS機能を利用しているため外出先からも通報でき、受信側はすぐに居場所を特定できる。操作性の良さやシステムとしての信頼性の高さが評価され、現在では全国の自治体・消防団体で広く普及している。同システムはクラウドサービスであり、顧客である自治体にとっては自前で運営する場合と比較してコストが安く運営の手間もかからないというメリットがある。なお料金体系は、消防の管轄人口に応じた月額利用料を支払う方式である。
※開始当初のシステム名は「緊急通報システムWeb119」。後にリニューアルされた。
兵庫県神戸市や埼玉県川口市などの自治体を皮切りに導入が進み、2015年12月には東京消防庁、2016年10月には大阪市消防局で稼働を開始し、全国の自治体への横展開に弾みがついた。2021年5月期にも、福岡市、大分市、長野市、川崎市など多数の自治体でサービスが開始され、同システムが導入されている消防本部の管轄人口は約7,213万人(2021年5月末現在、契約済未稼働を含む)、人口カバー率は56.5%と過半数を超えてなお増加している。2018年3月に、総務省は同システムの早期導入を進めるために、地方自治体の各消防本部が同システムを導入した際の運用経費を地方交付税で賄う措置を通知(消防情第98号)。2018年12月には総務省消防庁から各都道府県の消防に対して、「NET119緊急通報システム」の未導入地域の解消を促すために地域別導入状況の公表を開始した。大都市圏の自治体での導入が進展したため、今後の導入は中規模・小規模の自治体が中心となる。導入ペースが多少鈍化することが予想されるものの、今後も導入自治体の増加が見込まれる。
2. クラウドサービスの成長
システム開発においては“所有から利用へ”の流れのなかで「クラウド」へのシフトが進行中である。顧客にとって初期投資が抑えられ、最新のシステムがすぐ利用でき、自前で運用・保守をする面倒もない。政府は2020年秋から、各省庁が自前で管理・保有する現在のシステムを順次クラウドに切り替える取り組みを開始した。情報セキュリティに配慮するとともに、コストを抑制し、デジタル技術の更新も早まる点でクラウドが優位との判断に至った。省庁の動向は、今後、自治体や民間にも波及し、クラウド化の流れは加速すると考えられる。
クラウド化の進展は、同社の成長及び収益改善にも大きく貢献してきた。2014年5月期に全社売上高の12.9%だったクラウド利用料の売上高構成比は、2021年5月期には46.5%まで上昇し、これと並行して売上高営業利益率は0.5%(2014年5月期)から30.4%(2021年5月期)に上昇した。サービスとしては、同社の代名詞となっている「NET119緊急通報システム」のほか、「DMaCS(災害情報共有サービス)」も普及が始まっている。次期の主力サービスとして期待される映像通報システム「Live119」なども提供が始まった。今後もクラウド利用料を伸ばし、収益力を高めることが、同社の基本戦略である。
3. 災害時・感染症拡大時の危機管理用クラウドサービスに強み
静岡県熱海市の土砂災害(2021年7月)や新型コロナウイルス感染症などの例を出すまでもなく、行政・自治体は風水害、地震、感染症など様々なリスクへの対応を迫られる。このような事象が発生した場合には、発生後の情報共有や意思決定の迅速さが被害を最小限に食い止める決め手になる。同社のクラウドサービスのラインナップには、地域内(自治体、関連する組織・団体)が円滑にコミュニケートでき、司令塔となる組織がタイムリーな意思決定をするための支援システムが揃っている。一例を挙げると、「DMaCS」は、災害時に、災害現場や避難所、事務局や災害対策本部を結び、被害情報等を収集・一元管理し、初動期における災害対策本部の意思決定を支援するサービスである。2021年5月期以降においても、兵庫県尼崎市をはじめとする中規模都市への普及が進んでいる。また、行政からの通知や医療機関・教育機関からの感染症発生状況などの情報を共有し一元管理するシステム「感染症危機管理システム」も提供している。いずれもクラウドサービスのため、初期構築コストや運用コストが圧倒的に廉価に抑えられ、タイムリーな情報共有と報告書類の作成・一元管理が可能となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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