S&P500月例レポート(21年8月配信)<後編>
企業業績
○これまでに、S&P 500指数構成銘柄のうち294銘柄が2021年第2四半期の決算発表を終え、このうち利益が予想を上回ったのは258銘柄(87.8%)、予想を下回ったのは27銘柄、予想通りだったのは9銘柄でした。また、売上高に関しては293銘柄中259銘柄(88.4%)で予想を上回りました。2021年第2四半期の利益予想は1年前(2020年第2四半期末)から29.1%、2021年第2四半期末(2021年6月30日)から11.0%、それぞれ上方修正されています。第2四半期は最高益を更新する見通しで、過去最高となった2021年第1四半期から3.4%の増益、(新型コロナウイルスの影響を受けた)2020年第2四半期から82.9%の増益が見込まれています。
⇒2021年については過去最高益を更新する見通しで、2020年比で59.3%増益が見込まれており、2021年の予想PERは22.6倍となっています。
⇒2022年は2021年比でさらに10.1%の増益と、再度の最高益更新が見込まれており、2022年の予想PERは20.5倍となっています。
⇒2021年第2四半期の決算発表を終えた銘柄のうち、株式数の減少によってEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄の割合は4.9%となりました(2021年第1四半期は5.8%、2020年第2四半期は17.8%、2019年第2四半期は24.2%)。
個別銘柄
○米国は100億ドル規模のクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure:ジェダイ=国防総省のクラウド・コンピューティング・システムに整備計画)に関して、ソフトウエア企業のマイクロソフト
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはヘルスケア企業のモデルナ
注目点
○企業向けにテクノロジーサービスを提供する米国企業Kaseyaのソフトウエアを媒介としたサイバー攻撃が発生し、7000万ドルのランサム(身代金)が要求されました。ロシアのハッカー集団の関与が疑われるランサムウエアの被害は世界中に広がった模様で、まさに「ロシアより愛をこめて」です。
利回り、金利、コモディティ
○米国10年国債利回りは6月末の1.47%から1.23%に低下して月を終えました(2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは6月末の2.09%から1.90%に低下して取引を終えました(同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは6月末の1ポンド=1.3838ドルから1.3906ドルに上昇し(同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは6月末の1ユーロ=1.1856ドルから1.1869ドルに上昇しました(同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は6月末の1ドル=111.14円から109.69円に上昇し(同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は6月末の1ドル=6.4572元から6.4615元に下落しました(同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○原油価格は6月末の1バレル=73.50ドルから73.68ドルに上昇して月を終えました(同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、6月末の1ガロン=3.185ドルから3.232ドルに上昇して月末を迎えました(同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。
○金価格は6月末の1トロイオンス=1768.10ドルから上昇して1816.80ドルで月の取引を終えました(同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は6月末の15.83から18.24に上昇して月を終えました。月中の最高は25.09、最低は14.25でした(同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。
⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
インデックス・レビュー
S&P 500指数
S&P 500指数は7月に2.27%上昇して4395.26で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス2.38%)。6月は4297.50で終え、2.22%の上昇(同プラス2.33%)となり、5月は4204.11で終え、0.55%の上昇(同プラス0.70%)でした。過去3ヵ月間では5.12%上昇(同プラス5.50%)、年初来では17.02%上昇(同プラス17.99%)、過去1年間では34.37%上昇(同プラス36.45%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは29.80%上昇して月を終えました(同プラス32.94%)。
ダウ平均は再び3万5000ドルを突破し、今回は初めて終値でも3万5000ドル超えを記録しました(初めて3万5000ドルを突破したのは5月10日)。とはいえ、月末は3万5000ドル割れとなり、最終的に1.25%上昇の3万4935.47ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス1.34%)。なお、6月は3万4502.51ドルで終え、0.08%の下落、5月は3万4529.45ドルで終え、1.93%の上昇(同プラス2.21%)でした。過去3ヵ月間では3.13%上昇(同プラス3.60%)、年初来では14.14%上昇(同プラス15.31%)、過去1年間では32.19%上昇(同プラス34.79%)でした。
S&P 500指数の7月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は6月の0.62%から0.80%に上昇し(5月は0.98%)、年初来では0.99%となりました(6月末時点は1.02%)。2020年は1.73%と2019年の0.85%から上昇し、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比4%増加した6月から18%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では27.8%減少し、過去1年間でも4%減少しました。
7月の前日比で1%以上変動した日数は21営業日中4日となりました(上昇が3日、下落が1日で、2%以上の変動は0日。6月は22営業日中2日で、上昇が1日、下落が1日)。年初来では前日比で1%以上変動した日数は33日(上昇が22日、下落が11日)、2%以上変動した日数は4日(上昇が1日、下落が3日)となりました。2020年は1%以上変動した日数が109日(上昇が64日、下落が45日)、2019年は37日(上昇が22日、下落が15日)でした。7月は21営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり(6月は22営業日中2日)、3%以上変動した営業日はありませんでした(6月も0日)。年初来では1%以上の変動が55日、3%以上の変動が2日となりました。2020年は1%以上の変動が158日(11月末時点は154日)、3%以上の変動が34日(同34日)、2019年はそれぞれ73日と1日、危機に見舞われた2008年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。
市場は7月も上昇が続き、終値での過去最高値を7回(6月は8回)更新しました(年初来では41回。週の最初の取引日に9回、週の最終取引日に13回)。2020年11月以降、S&P 500指数は毎月史上最高値を更新しています(2020年10月は最高値更新を逃したものの、2020年8月、9月は最高値を更新)。
7月は11セクター中9セクターが上昇し、6月の6セクター、5月の7セクターを上回ったものの、4月の全11セクターは下回りました。ヘルスケアが4.74%上昇し、騰落率首位となりました。同セクターは年初来では16.21%上昇しています。不動産が4.55%上昇で僅差で続き、年初来では27.26%上昇(騰落率第2位)しました。6月に騰落率首位(6.90%上昇)だった情報技術は7月も3.82%上昇し、年初来で17.56%上昇しました。消費関連セクターは引き続きまちまちとなり、生活必需品が2.37%上昇し、年初来で6.09%上昇した一方、一般消費財は0.48%上昇し、年初来で10.45%上昇しました。
エネルギーが8ヵ月連続での上昇の後に8.44%下落し、騰落率最下位となりました。同セクターは年初来では30.35%上昇と騰落率首位となっていますが、2019年末からはなお18.29%下落(騰落率最下位)しています。金融も0.61%下落し、年初来で23.75%上昇しました。
7月は値上がり銘柄数が増加し、値下がり銘柄数を上回りました。7月の値上がり銘柄数は290銘柄(平均上昇率は5.74%)と、6月の218銘柄(同5.66%。5月は317銘柄で同5.05%)を上回りました。10%以上上昇した銘柄数も39銘柄(同14.19%)と、6月の31銘柄(同16.73%。5月は27銘柄で同15.18%)から増加し、1銘柄(6月は4銘柄、5月は2銘柄)が25%以上上昇しました。
一方、値下がり銘柄数は215銘柄(平均下落率は5.14%)と、6月の287銘柄(同4.37%。5月は188銘柄で同3.75%)から減少しました。7月の10%以上下落した銘柄数は26銘柄(同13.93%)と、6月の16銘柄(同12.05%。5月は11銘柄で同13.25%)から増加し、25%以上下落した銘柄は5月、6月と同様にありませんでした。過去3ヵ月間では、値上がり銘柄数は290銘柄(平均上昇率は10.17%。月間の値上がり銘柄数と同数)と、6月末時点の373銘柄(同10.22%)、5月末時点の447銘柄(同15.10%)から減少した一方、値下がり銘柄数は214銘柄(平均下落率は6.82%)と、6月末時点の131銘柄(同4.51%)、5月末時点の57銘柄(同8.50%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は118銘柄(平均上昇率は18.56%)と、6月末時点の167銘柄(同17.14%)から減少し、10%以上下落した銘柄も43銘柄(平均下落率は15.06%)と、6月末時点の15銘柄(同14.86%)から増加しました。20銘柄が25%以上上昇し(6月末時点は19銘柄)、1銘柄が25%以上下落しました(同2銘柄)。
年初来では、値上がり銘柄数は445銘柄(平均上昇率は22.91%)と、6月末時点の438銘柄(同21.57%)から増加した一方、値下がり銘柄数は59銘柄(平均下落率は7.12%)と6月末時点の66銘柄(同5.79%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は343銘柄(平均上昇率は28.20%)と、6月末時点の323銘柄(同27.36%)から増加し、10%以上値下がりした銘柄数も18銘柄(平均下落率は15.33%)と、6月末時点の13銘柄(同15.03%)から増加しました。166銘柄が25%以上上昇し(6月末時点は147銘柄)、1銘柄が25%以上下落しました(同0銘柄)。
世界の株式市場
7月の世界の株式市場は、回復段階に入った経済と新型コロナウイルスの感染状況を受けて、米国市場は上昇しましたが、前月よりも上値が重い展開となりました。米国の景気改善見込みと欧州の「キャッチアップ」サイクルの両方について、議論が高まりました。米国のアウトパフォームによって、グローバル市場は全体では上昇しましたが、米国を除いた市場は下落しました。下落した市場数と上昇した市場数は同数となり、新興国市場が先進国市場(米国市場を含めても、含めなくても)に対して大幅にアンダーパフォームとなりました。世界の株式市場全体では、7月は0.32%上昇しました。米国市場は1.68%上昇、米国を除くグローバル市場は1.46%下落しました。7月は50市場中25市場が上昇し、6月の20市場から増加しました(5月は36市場が上昇)。
S&Pグローバル総合指数は6月に1.08%上昇した後(米国の2.41%の上昇を除くと0.60%の下落)、7月には0.32%上昇しました(米国の1.68%の上昇を除くと1.46%の下落)。5月は1.30%の上昇でした(米国の0.34%の上昇を除くと2.53%の上昇)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は2.71%上昇しました(米国の4.48%の上昇を除くと0.43%の上昇)。年初来では12.06%の上昇で、米国の16.48%上昇を除くと6.62%上昇しました。過去1年間では32.69%上昇し、米国の37.07%の上昇を除くと27.23%の上昇となっています。
より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は38.04%上昇しましたが、米国の48.99%の上昇を除くと25.55%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は37.93%上昇し、米国の56.29%の上昇を除くと18.70%の上昇でした。2020年11月3日の大統領選挙以降では、グローバル市場は28.34%上昇しましたが、米国の31.96%の上昇を除くと23.76%の上昇でした。
S&Pグローバル総合指数の時価総額は7月に2090億ドル増加しました(6月は1兆330億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は4640億ドル減少(同1990億ドル減)、米国市場は6730億ドル増加しました(同1兆1320億ドル増)。7月は11セクター中6セクターが上昇し、セクター間のばらつきは縮小しました(6月は6セクターが上昇、5月は7セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(素材、2.59%上昇)と最低のセクター(エネルギー、6.65%下落)の騰落率の差は9.23%となり、6月の9.75%(5月は6.73%)から縮小しました。
新興国市場は7月に6.40%下落しました。6月は1.12%の上昇、5月は1.31%の上昇でした。過去3ヵ月間では4.12%の下落、年初来では0.99%の上昇、過去1年間では18.85%の上昇となりました。過去2年間では21.41%上昇、過去3年間では17.64%上昇しています。7月は、25市場中10市場が上昇しました(6月と5月はいずれも14市場が上昇)。パフォーマンスが最高となったのはトルコで7月は6.04%上昇し、過去3ヵ月間では1.85%下落、年初来では16.59%下落しました。2番目はエジプトで7月は5.63%上昇し、過去3ヵ月間では1.18%上昇、年初来では2.18%下落しました。3番目はクウェートで7月は3.93%上昇し、過去3ヵ月間では7.79%上昇、年初来では19.78%上昇しました。パフォーマンスが最低だったのは中国で7月は13.33%下落し、過去3ヵ月間では12.99%下落、年初来では11.92%下落しました。これに続いたのがフィリピンで7月は10.83%下落し、過去3ヵ月間では4.55%下落、年初来では14.23%下落しました。3番目がペルーで7月は8.92%下落し、過去3ヵ月間では12.83%下落、年初来では25.41%下落しました。
先進国市場は5月の1.29%上昇、6月の1.08%上昇の後、7月は全体で1.19%上昇しました。米国を除くと0.32%の上昇(5月は2.97%上昇、6月は1.20%下落)でした。過去3ヵ月間では3.60%上昇、米国を除くと2.06%上昇、年初来では13.55%上昇、米国を除くと8.65%上昇となりました。過去1年間では34.56%上昇、米国を除くと30.27%上昇、過去2年間では40.26%上昇、米国を除くと26.94%上昇、過去3年間では40.64%上昇、米国を除くと19.20%上昇となりました。7月は25市場中15市場が上昇し、6月の6市場から増加しましたが、5月の22市場は下回りました。パフォーマンスが最高となったのはルクセンブルグで、7月は8.41%上昇し、過去3ヵ月間では11.43%上昇、年初来では21.12%上昇しました。2番目はフィンランドで7月は5.59%上昇し、過去3ヵ月間では8.81%上昇、年初来では18.03%上昇しました。3番目はスウェーデンで7月は5.05%上昇し、過去3ヵ月間では6.14%上昇、年初来では18.05%上昇しました。パフォーマンスが最低だったのは韓国で7月は4.86%下落し、過去3ヵ月間では2.65%下落、年初来では1.94%上昇しました。これに続いたのが香港で7月は4.50%下落し、過去3ヵ月間では7.23%下落、年初来では4.39%上昇しました。3番目はスペインで7月は2.02%下落し、過去3ヵ月間では2.89%下落、年初来では3.43%上昇しました。
注目すべき点として、英国は7月に1.13%上昇し、過去3ヵ月間では1.80%上昇、年初来では11.76%上昇しました。ドイツは7月に0.23%上昇し、過去3ヵ月間では0.40%の上昇、年初来では7.57%の上昇となりました。カナダは7月に0.35%下落し、過去3ヵ月間では4.53%上昇、年初来では19.00%上昇しました。日本は1.09%下落し、過去3ヵ月間では0.13%下落、年初来では0.62%下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
https://www.spglobal.com/spdji/en/documents/performance-reports/sp-global-equity-indices-monthly-update.pdf?force_download=true
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