S&P500月例レポート(21年2月配信)<前編>

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最新投稿日時:2021/02/12 13:55 - 「S&P500月例レポート(21年2月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(21年2月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2021年1月
個人的見解:「最近の子供らはどうしたんだ」もしくは「うちの息子は私にそっくりだ」

 2021年最初の月を一言でまとめると、12月と(そして11月も、あるいは程度の違いこそあれ2020年3月以降ずっと)同じでした。つまり、ウイルスも政治も、そしていかなるファンダメンタルズも、最高値更新という市場の既定路線を止めることはできませんでした。

 しかも、ウェブ上のソーシャルトレードを背景とした1日で1.93%の下落や2.57%の下落には一切触れず、特に後者に関しては、「最近の子供らはどうしたんだ」とか「うちの息子は私にそっくりだ」とつぶやかずにはいられませんでした。今回の素晴らしい最高値更新をもたらしたのは、個人投資家、楽観的姿勢を示した米連邦準備制度理事会(FRB)、そして繁華街に繰り出すことができずにお金の使い道がなくなった新しいタイプの若手投資家でした(バーに人が行かなくなったおかげです)。オンライントレードというアプリに楽しみを見つけた若者は、市場を「刺激」しました(誰かがFTを読むように言ったのでしょうか。FTと言ってもフィナンシャル・タイムズ紙ではなく、FRBと財務省(Treasury)の政策のことですが)。大きな資産を動かすマネーマネジャーと比べると、小口投資家が市場を動かすには相当な人数が必要です。より経験の深い市場ウォッチャーは余談として、非常に多くの投資家が新しく市場に参加し(利益が出ているかどうかは別として)、彼らが将来の投資家予備群となり、生き残った者がいずれ市場を継承していくことになると述べています。

 市場が陽気に続伸する中、VIX恐怖指数が1日のうちに21から37に急上昇するほどボラティリティが高まって最終週(そして1月)は厳しい状況となりましたが、市場はそう簡単には屈しませんでした。最終週は2営業日で大幅な下落となり、1週間で3.31%下落というのは2020年10月の5.64%下落以来の下落幅でした。結果的に1月は1.11%の下落で終わり、1月25日に付けた終値での最高値からは3.66%安の水準で月末を迎えました。

 ゲームと言えば、ゲームソフト小売り企業のGameStop(GME)は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて赤字に転落し、450店舗が閉鎖に迫られ、株価は2020年4月上旬に2.57ドルの最安値を付けました(S&P 500指数が底値を付けたのは3月23日)。同社はその後、外部の投資家からの助言もありオンライン販売にシフトしたとみられ、株価は2020年末に18.84ドルまで回復していましたが、空売り投資家が同社株に注目し、株式の140%がショートされているとの報道もありました。

 ところが、ソーシャルメディア、ウェブ取引サイト、小口投資家の間で同社株の人気に火が付き、コールオプションを利用して同銘柄に投資しました。(空売りをしていたヘッジファンドへの反発という見方もあります)。ショートポジションをカバーしようとする空売り筋からも同銘柄への買いが殺到した結果、GameStopの株価は一時483ドルまで上昇し、最終的に325.00ドルで1月を終えました。1月の最終週だけで400%高、月間では1525%の上昇、2020年4月の安値からは1万2545%の上昇となりました。空売り投資家にとっては大損失です。同様に、映画館チェーンのAMC Entertainment(AMC)も1営業日で株価が3倍に上昇しました。
 
 投資家にとって、今回の出来事はソーシャルメディアに関する教訓であり、また小口投資家(と社会トレンド)がトレードにおける一種の悪い面に及ぼす影響が重なるとどうなるかを知るきっかけにもなりました。これらは暴徒による支配、フラッシュトレーディング(超高速取引)、市場操作とも呼ばれ、以前は空売り投資家のターゲットとなった企業が空売り投資家の行動について表現する際に同じ単語が使われていました。

 あくまでも個人的な見解を述べれば(筆者にはその資格がありますが、他の人に劣らずあまりふさわしくはないようです)、これはガバナンスの問題になりつつあると思います。つまり、ファンド、トレーダー、各種意見サイトが何をするかがテーマであると同時に、取引や執行、市場参加者やガバナンスに対する見解といったあらゆる点が変化しているということもテーマなのです。ソーシャルメディアやウェブサイトを通じて市場に参加する新しいトレーダーは明日の投資家であり、彼らの多くはこれまでとは異なる視点や意見を持っています。彼らの意見は正しいこともあれば、間違っていることもあるかもしれませんが、市場が時代とともに変化し続けるためには彼らの意見に耳を傾け、理解する必要があるということです。

 「絵文字」に代表されるように文化が変わったというだけでは投資する気になれないとしても(筆者は前向きです)、上述の2営業日までは(続いていた)波に乗るだけでも十分に利益につながりました。投資家の間では引き続き、市場は結果的にファンダメンタルズに回帰するという楽観が勝っています。とはいえ、今回の取引や高値更新につながったのがファンダメンタルズではなく、投資家の期待感だったことを考えると、面白いものです。自分たちが求めているものには要注意です。

 S&P 500指数は、1月に1.11%下落して3714.24で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.01%)。12月は3756.07で月を終え、3.71%の上昇(同プラス3.84%)、11月は10.75%上昇して3621.63で月を終えました(同プラス10.95%)。過去3ヵ月間では13.59%上昇(同プラス14.05%)、過去1年間では15.15%上昇(同プラス17.25%)、コロナ危機前の2月19日の終値での高値からは9.69%上昇しました(同プラス11.54%)。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は1月に2.04%下落して2万9982.62ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.95%)。12月は3万0606.48ドル(終値での最高値)で月を終え、3.27%の上昇でした(同プラス3.41%)。過去3ヵ月間では13.14%上昇(同プラス13.70%)、過去1年間では6.11%上昇となりました(同プラス8.54%)。

 過去の実績を見ると、1月は63.0%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.27%、下落した月の平均下落率は3.85%、全体の平均騰落率は1.22%の上昇となっています。2021年1月は1.11%の下落となりました。

 2月は53.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.88%、下落した月の平均下落率は3.46%、全体の平均騰落率は0.08%の下落となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2021年3月16日-17日、4月27日-28日、6月15日-16日、7月27日-28日、9月21日-22日、11月2日-3日、12月14日-15日、2022年1月25日-26日となっています。

主なポイント

 ○S&P 500指数は1月に1.11%下落しました。12月の3.71%上昇や11月の10.75%上昇の勢いが続き、政治や新型コロナウイルスにもかかわらず最高値を更新しましたが、最終週に下落に転じ、結果的に月間のリターンはマイナスとなりました。

  ⇒S&P 500指数は1月に1.11%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.01%)。過去3ヵ月間では13.59%上昇(同プラス14.05%)、過去1年間では15.15%の上昇となりました(同プラス17.25%)。

   →終値ベースの最高値を5回更新し(トランプ政権下で2回、バイデン政権下で3回)、初めて3800の大台に乗りました(1月末は3800を下回って取引を終えました)。

   →コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは9.69%上昇して月を終えました(同プラス11.54%)。2月19日以降、終値ベースで25回、最高値を更新しました。

  ⇒トランプ政権は終わりましたが、トランプ政権下(2017年1月20日~2021年1月19日)でS&P 500指数は最高値を149回更新し、期間全体の上昇率は69.59%、年率換算では14.12%の上昇でした。バイデン政権がスタートして以降、同指数は2.23%下落、2020年11月3日の大統領選以降では10.24%上昇しています(同プラス10.69%)。

  ⇒強気相場入りして以降、2020年3月23日の底値から66.01%上昇しています(同プラス68.46%)。

 ○米国10年国債利回りは12月末の0.92%から1.07%に上昇して1月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは12月末の1.65%から1.84%に上昇して取引を終えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは12月末の1ポンド=1.3673ドルから1.3695ドルに上昇し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは12月末の1ユーロ=1.2182ドルから1.2139ドルに下落しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は12月末の1ドル=103.24円から104.69円に下落し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は12月末の1ドル=6.5330元から6.4277元に上昇しました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は12月末の1バレル=48.42ドルから52.14ドルに上昇して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、12月末の1ガロン=2.330ドルから2.478ドルに上昇して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は12月末の1トロイオンス=1901.60ドルから下落して1849.50ドルで月の取引を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は12月末の22.75から33.07に上昇して月を終えました。月中の最高は37.51、最低は21.09でした(同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

 ○2020年第4四半期の決算シーズンが始まり、S&P 500指数構成銘柄の中の184社が決算発表を終え、このうち81.0%に当たる149銘柄で利益が予想を上回り、予想を下回った銘柄を見つける方が難しいほどでした。売上高に関しては、182銘柄のうち76.9%に相当する140銘柄が予想を上回りました。

  ⇒2020年第4四半期の利益予想は2020年12月末時点から3.1%引き上げられ(2019年末からは19.3%引き下げられています)、前期比で1.9%の減益、前年同期比では5.1%の減益となる見通しです。

  ⇒その結果、2020年の予想EPSは22.8%の減益となり、それに基づく足元の予想株価収益率(PER)は30.6倍となっています。

  ⇒2021年については、特に下半期で企業利益が過去最高を更新する見通しで、2020年比で39.6%増益(2019年比で7.8%増益)が見込まれており、2021年の予想PERは21.9倍となっています。

   →出始めた2022年見通しに基づく予想PERは19倍となっています。

 ○米国の新型コロナウイルス対応のための財政政策:

  ⇒第1弾:医療機関への財政支援やウイルス感染拡大防止に83億ドルの資金拠出。

  ⇒第1段階:2週間の疾病休暇および最長10週間の家族医療休暇の給与費用に対する税額控除。

  ⇒第2段階:労働者、中小企業、事業会社、病院や医療関係機関に対する直接支援、ならびに融資保証を提供する2兆2000億ドルのプログラム。

  ⇒第3段階:(中小企業向け)給与保証プログラム(PPP)に3100億ドルと医療機関に750億ドルを含む、総額4840億ドルの供出。ただし、州政府および地方自治体に対する資金支援は行わない。

  ⇒第4段階:議会は新型コロナウイルス関連の対策として、個人への直接給付金600ドル(所得制限あり)などを盛り込んだ総額9000億ドルの財政パッケージを(ようやく)可決しました。

  ⇒第5段階:民主党が上下両院を制し、バイデン大統領は就任前に1兆9000億ドルの新たな財政刺激策を発表しました。個人向けの重要措置の1つとして、600ドルの直接給付金(まだ支払われていない)の2000ドルへの引き上げが盛り込まれました。

 ○暗号通貨ビットコインは4万1947ドルに達して再び最高値を更新し(2020年12月に2万9244ドルで最高を記録)、その後、2020年末の終値を17.0%上回る3万3943ドルで月を終えました(2019年末は7194ドル)。

 ○電気自動車メーカーTesla(TSLA)も急騰を続けました。900ドルで最高値を更新した後、下落して793.53ドルと、2020年末の705.67ドルを12.5%上回る水準で月を終えました(2019年末は83.67ドル)。

 ○ゲームソフト小売企業のGameStop(GME)はウォッチリストの「買いそびれた銘柄」に加わりました。2020年末の18.84ドル(2020年4月初旬には2.57ドルの安値を記録)から月中に483ドルまで上昇し、その後325.00ドルで月を終えました。

 ○市場関係者のS&P 500指数の1年後の目標値はこの1ヵ月で上昇し、現在値から13.9%上昇(前月は6.7%上昇)の4229(かなり強気な予想)となっています(12月末時点の目標値は4006、11月末時点の目標値は3931)。ダウ平均の目標値は現在値から15.6%上昇(前月は7.8%上昇)の3万4657ドル(相当強気な予想)となっています(同3万2980ドル、同3万1860ドル)。

選挙

 ○わが心のジョージア:ジョージア州の上院2議席をめぐる決選投票はいずれも民主党が勝利しました(民主党の牧師ラファエル・ウォーノック氏と映画プロデューサー、ジョン・オソフ氏が共和党現職のデービッド・パーデュー氏とケリー・ロフラー氏を破りました)。その結果、上院の構成は民主党50議席、共和党50議席となり、賛否同数の場合は2021年1月20日以降カマラ・ハリス副大統領(民主党)が決定票を投じます(前回これと同様の状況となったのは2001年の共和党ブッシュ政権時代です。当時は共和党が下院を支配し、上院は50対50で割れていました)。新体制では民主党が上下両院とホワイトハウスを事実上支配します。

  ⇒まずそれにより、バイデン氏が選んだ閣僚候補(既に全員指名済み)の上院における承認が円滑に進みました。民主党内で政策の優先順位が異なるため、政策見通しは不透明です。全般的には、追加の新型コロナウイルス対策、歳出増加、州に対する資金支援、社会保障プログラムの拡充などが年の早い段階で打ち出される見込みです。歳入強化(法人税および個人所得税の引き上げ)も予想されますが、少し先になるでしょう(景気回復がさらに進んでから)。ただ(ここでも)、具体的な措置は現段階では不明です(トランプ減税の一部撤回、州・地方税[SALT]控除の一部調整)。

 ○世界中が注目する中、トランプ前大統領の支持者が米連邦議会議事堂に乱入しました(トランプ氏が集会で支持者に演説を行った後)。議会ではバイデン氏を次期大統領に認定するために選挙人団の投票の開票作業が進んでいましたが、議事堂は乱入した支持者らにより数時間にわたり占拠されました。その後、乱入者は警察によって排除され(この事件で5名が死亡)、議会は夜遅くに再開し、バイデン氏は次期大統領として正式に認定され、2021年1月20日に就任宣誓することになりました。

  ⇒この事件は激しい批判を呼び、トランプ大統領の解任(憲法修正第25条では、副大統領と内閣に大統領を解任する権限が認められています)、あるいは弾劾(下院が訴追、上院で審判)を求める声が広がりました。トランプ氏は大統領の任期が終了することを認め、平和的な政権移行に注力すると述べました。議事堂が占拠されている間、市場では取引が続きましたが、株価はプラスで推移しました。市場は短期的な材料を無視し、消費の復活による景気回復予想を重視し、過去最高値で取引を終えました。

  ⇒議事堂襲撃の余波は続き、民主党はペンス副大統領にトランプ大統領を(憲法修正第25条に基づき)解任するよう求めましたが、拒否され、失敗に終わりました。その後、下院はトランプ大統領の弾劾訴追案の採決を行いました(賛成は、民主党議員222名全員と共和党10名、そして反対は、民主党がゼロで共和党は197名。共和党から4名が棄権)。トランプ前大統領は2019年12月にも下院で弾劾訴追されています(上院で無罪判決)。弾劾決議は2021年1月25日に上院に送付され、2月9日から弾劾裁判が始まる予定です。ただ、上院で有罪を宣告するには3分の2の賛成が必要です。つまり共和党議員から17名(50名のうち)が弾劾に賛成する必要があるということです。弾劾裁判を違憲とする動議の採決などの弾劾裁判前の動きによると、民主党が共和党から17名の賛同者を得るのは難しそうです。

 ○ソーシャルメディア企業Twitter(TWTR)がトランプ氏のアカウントを永久停止し、フェイスブックとインスタグラムもこれに追随しました。

 ○これと関連し、複数の企業が政治献金を見直すこと、あるいは見直し中の停止を発表しました。

政権交代:トランプ氏が去り、バイデン氏が大統領に就任

 ○米連邦捜査局(FBI)は、2021年1月20日のバイデン新大統領就任式とトランプ大統領のホワイトハウス退去に関連し、全米50州の州都と首都ワシントンで武装デモが行われる可能性があると警告しました。1月20日水曜日の就任式に備え、米議会議事堂に武装した州兵が動員されました。

  ⇒就任式は大きな混乱もなく無事に終了しました。

 ○バイデン大統領は、2000ドルの直接給付金(既に成立した600ドルに1400ドルを追加。所得制限あり)、失業給付金の週400ドル加算の2021年9月までの延長、州・地方政府への3500億ドルの支援などを盛り込んだ1兆9000億ドルの新型コロナウイルス対策を発表しました(その後、議会に法案を提示する予定)。民主党が上下両院を支配していても、法案審議開始は入り口にすぎず、何らかの妥協も含めて交渉が必要です ―― バイデン大統領はそうした作業を進めると述べています。

 ○就任式を前に、トランプ大統領は欧州とブラジルからの渡航制限を解除すると発表しました。これに対してバイデン次期政権チームは解除を認めない方針を示しました。

 ○バイデン氏が財務長官(1月下旬に承認)に指名したジャネット・イエレン前FRB議長が議会公聴会に出席し、追加財政支出に関して(一般論として)最優先課題は米国の労働者ならびに米国経済の競争力の向上だと述べました。市場はこれを財政政策とFRB(パウエル議長)の金融政策の一体化と受け止め、今や両当局を政策を打ち出す窓口を2つ備えた1つの組織のようにみています。

 ○1月20日水曜日、バイデン氏は米国大統領として就任宣誓を行い、トランプ氏は就任式に先立ち(当日朝)フロリダに発ちました。その後、3名の民主党議員が上院で宣誓を行い(ジョージア州の決選投票で当選した2名と、副大統領に就任したカマラ・ハリス前上院議員の後任1名)、その結果、民主党はホワイトハウスと上院を支配することになりました(下院は既に過半数を維持)。週明け月曜日(1月25日)にトランプ前大統領の弾劾決議が上院に送付されるのを前に、1月21日木曜日に上院がバイデン政権の国家情報長官としてアブリル・ヘインズ氏を承認しました。同氏はバイデン政権で最初に承認された閣僚で、続いて他の閣僚の承認も行われます(イエレン前FRB議長は承認によって、大統領権限継承順位が第5位となります)。

  ⇒バイデン大統領は最初の10日間のそれぞれの日にテーマを設けて、53の大統領令に署名する予定を立てました。大統領は就任式の日の午後に職務に就き、その週を通して(予定通りに)大統領令に署名し続けました。当初の大統領令には、パリ協定と世界保健機関(WHO)への再加入、米・メキシコ国境間の壁の建設中止、キーストーンXLパイプラインの認可取り消し、ならびに特定の「イスラム」諸国からの渡航制限の解除が含まれています。

 バイデン大統領は21日木曜日には、新型コロナウイルスの感染拡大と治療面の問題に対応するため、連邦政府の建物内や州間移動でのマスク着用を呼びかけ、検査(および資金提供)の拡大、新型コロナウイルスに関するデータベースの設定の必要性を主張し、ワクチンと防護服が必要な地域の特定を政府機関に要求しました(これらは全て、同大統領の200ページに及ぶパンデミックに対する国家戦略計画の一部です)。

 22日金曜日には、労働者の保護や連邦援助プログラムの拡大(フードスタンプ、個人給付の増額、コロナ下での労働条件)を含む社会的プログラムを通じて、パンデミックの影響を受ける個人を支援する大統領命令に署名しました。また、連邦レベルの最低賃金を時給15ドル(現在は7.25ドル)に引き上げる計画を策定するように政府機関に命じました。その一方で、同大統領(およびスタッフ)は、1.9兆ドルの財政刺激策に取り組むとともに、ハッキングを防ぐための米国のセキュリティ強化に取り組みました(ロシアの関与を指摘)。

新型コロナウイルス関連

 ○感染状況等:

  ⇒世界的に感染の急拡大が続いており、感染者数が増加し、ロックダウン措置を再導入する国が増えています。米国では感染者数が2590万人に達しました(12月は2000万人、11月は1350万人。世界の感染者数は1億200万人、12月は8360万人。11月は6320万人)。また、米国の死者数は43万6000人(同34万6000人、同26万8000人)、世界全体の死者数は220万4000人(同182万1000人、同146万6000人)となりました。米国では1日の新規感染者数の過去最多記録が何度も更新されて30万594人(12月の記録は28万541人)に達しましたが、月末には16万5264人に減少しました。新規感染者数の7日間平均も過去最多の25万9564人(同21万8633人)に達しましたが、月末には15万9625人に減少しました。感染による入院者数は過去最多の13万2370人となりましたが、月末には10万4303人に減少しました。

   →クリスマス休暇を背景とする感染者数の急増は落ち着いてきた模様で、感染者数は減少傾向にあります。

 ○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬

  ⇒全国的にワクチンの供給が限られており、ワクチン接種は思うように進んでいません。

   →バイデン大統領は大統領令に署名し続けましたが、その多くはトランプ前大統領の政策を取り消すものです。バイデン大統領は次の3週間でワクチン配布を16%増やすことを約束し(不足を補うため)、全ての米国民が接種できるよう、現在承認されているワクチンの十分な量を購入する予定です(CDCのアウトラインによれば、約3億人分)。同大統領は、就任後の最初の100日間(2021年4月30日まで)に1億5000万人分を確保する可能性について触れました(2020年12月(就任前)には1億人分と予想していました)。

   →Johnson & Johnson(JNJ)は、来週、ワクチンの承認を申請する予定です。

  ⇒米国ではこれまでに2730万回分のワクチンが接種されました(世界全体では8710万回)。これは、7日間平均では1日あたり126万回に相当し、州に配布されたワクチンの54%が接種されたことになります。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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