豪ドル
RBA(豪中銀)は金融政策運営において雇用情勢を重視しています。豪州の失業率は昨年7月の7.5%をピークに改善(低下)傾向にあり、12月は6.6%でした。RBAは昨年11月の金融政策報告で12月の失業率を8.0%と予想。実際はRBAの見通しに反して大きく改善しました。
RBAの政策金利と3年物豪国債利回りの目標は現在、いずれも0.10%。また、1000億豪ドルの量的緩和も実施しています。失業率の改善や豪州ではコロナの感染拡大が比較的抑えられていることから、追加緩和の可能性は低くなったと考えられます。
RBAはいずれ金融緩和策縮小の検討を始める可能性があります。緩和策の縮小は量的緩和から開始され、続いて3年物豪国債の利回り目標の引き上げ、あるいは廃止へ。最後に利上げになるとみられます。量的緩和や3年物豪国債の利回り目標に関する措置は、年内に行われるかもしれません。
市場では、RBAが追加緩和を行うとの観測は大きく後退。今後発表される経済指標が堅調な結果が続けば、緩和策縮小への観測が強まる可能性があり、その場合には豪ドルにとってサポート要因になりそうです。
豪ドルはまた、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。コロナのワクチンが普及するなどしてリスクオンが強まれば、豪ドルは対米ドルや対円で堅調さを増す可能性があります。
豪ドル/NZドルについては、引き続き1.00000~1.15000NZドルのレンジ内で推移しそうです。RBAとRBNZ(NZ中銀)のいずれも政策金利を当面据え置くと考えられ、両者の政策金利の差に変化はないとみられるためです。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
・米中関係、豪中関係、中国経済の動向(中国は豪州の主要輸出先)。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
NZドル
NZの昨年7-9月期GDPは前期比14.0%、同10-12月期CPI(消費者物価指数)は前年比1.4%でした。いずれもRBNZ(NZ中銀)の昨年11月時点の見通しである13.4%、1.1%を上回りました。
このことは、RBNZがマイナス金利を導入する可能性が低下したことを示唆します。今後発表されるNZの経済指標に堅調な結果が続けば、マイナス金利導入観測は市場で一段と後退するとみられ、その場合にはNZドルは堅調に推移しそうです。
NZドルはまた、豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。コロナのワクチン普及が進むとともに市場ではリスクオンが強まる展開が想定されます。その場合、NZドルは底堅さを増すとみられます。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・コロナのワクチン普及の状況。
・米中関係、中国経済の動向(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は1月20日の会合で政策金利を0.25%に据え置きました。
マックレムBOC総裁は会合後の会見で、「カナダ経済が(BOCの)見通しを大幅に下回る場合、マイナス金利を回避しつつ利下げすることは選択肢の一つとしてある」としながらも、「会合では現在実施している大規模な刺激策は適切であり、変更は必要ないと判断した」と発言。現時点で利下げは必要ないとの見方を示しました。
BOCはまた、カナダ経済について今年第1四半期(1-3月期)はマイナス成長になるとの見方を示す一方、コロナワクチンの普及によって「第2四半期(4-6月期)には力強く回復する」と指摘。景気の先行きに楽観的な見方を示しました。
見通し通りに景気が回復すれば、BOCは政策金利を据え置きつつも量的緩和の縮小を検討し始める可能性があります。その観測が市場で高まれば、カナダドルの支援材料になりそうです。
カナダドルをみる場合、原油価格(米WTI原油先物など)にも注目する必要があります。サウジアラビアは2月と3月に自主的に日量100万バレルの減産を行う方針。それが原油価格を下支えするとみられます。コロナのワクチン普及によって世界景気が持ち直せば、需要が増加して原油価格は上値を試す可能性があります。原油高はカナダドルの上昇要因となり得ます。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・米国の新政権の政策。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は1月21日、政策金利を17.00%に据え置くことを決定。声明では、「インフレ率の持続的な低下がみられるまで、長期にわたって金融政策の引き締めスタンスを断固維持する」とし、また「必要に応じて追加の金融引き締めを行う」と表明しました。
一方でエルドアン・トルコ大統領は「金利を下げれば、インフレ率は下がる」というのが持論。TCMBはウイサル前総裁のもと、エルドアン大統領の圧力によってCPI上昇率(インフレ率)が十分に下がる前に利下げを開始しました。
昨年11月のアーバル総裁就任後、TCMBの金融政策運営に対する市場の信頼は回復しつつあります。しかし、CPI上昇率が十分に下がる前にTCMBが政策の引き締めスタンスを弱めれば、TCMBの独立性をめぐる懸念が再燃するかもしれません。
米国やEU(欧州中銀)とトルコの関係にも要注意です。両者との関係が悪化した場合、リラに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコとEU、米国との関係。
・トルコの外貨準備高。
・地政学リスク。
南アフリカランド
南アフリカランドは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。今後、主要国などでコロナのワクチンの普及が進めば、世界の景気は持ち直していくとみられます。その場合、リスクオンが強まってランドを下支えしそうです。
一方、南アフリカではコロナの変異種(南アフリカ型)の感染拡大が続いており、同国景気は低迷が続くとみられます。また、エスコム(国営電力会社)の問題も抱えています。経営危機に陥っているエスコムは、計画停電を過去何度も実施し、景気に対する下押し圧力となってきました。これらが市場で強く意識された場合、リスクオンになったとしてもランドは伸び悩むかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・主要国でのワクチン普及の状況。
・南アフリカ景気の動向。コロナの感染状況。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は昨年9月まで11会合連続で利下げを実施。その後、11月と12月の2会合連続で政策金利を4.25%に据え置きました。
コロナの感染拡大の影響によってメキシコ経済に対して下押し圧力が加わる一方、インフレ圧力は緩和しつつあります。BOMのインフレ目標は3%(その±1%が許容レンジ)。昨年10月に前年比4.09%だったCPI(消費者物価指数)上昇率は、12月には3.15%へと鈍化しました。
こうした状況をみれば、BOMは今後利下げする可能性があります。一方でメキシコでは今年1月から最低賃金(日額)が15%引き上げられました。賃上げを背景にインフレ圧力が再び高まるかもしれません。利下げするとしてもあと1回、0.25%ではないかとみられます。
今後もBOMの政策金利の水準が主要国の中銀と比べて高い状況は続くとみられ、そのことがペソを下支えしそうです。
メキシコは産油国であり、またメキシコ経済は対米依存度が高い(メキシコの輸出全体の8割弱が米国向け)という特徴があります。原油価格(米WTI原油先物)やメキシコと米国の関係にも注目。原油価格が堅調に推移する、あるいは両国の関係が改善へと向かえば、ペソは上値を試す展開になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米国とメキシコの関係。米国の新政権の政策。
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
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