S&P500月例レポート(21年1月配信)<前編>

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最新投稿日時:2021/01/21 11:30 - 「S&P500月例レポート(21年1月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(21年1月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET:2020年12月
個人的見解:S&P 500指数は16.26%上昇して波乱の2020年を終えた

 個人的見解を述べると、筆者はただの計算屋です。点と点を結び、何らかの見解をまとめ、将来起こり得るシナリオを統計に基づいて提示しているつもりですが、マーク・トウェインが述べたように、嘘には「普通の嘘、真っ赤な嘘、そして統計」の3種類があります。新型コロナウイルスの感染状況、治療法、消費者や企業の反応、また政策対応の影響(財政、ウイルスに対する認識と共に)に関する予想は他の専門家に任せるつもりですが、統計は、これまで43年以上にわたり当社で見てきたように、私たちが予想利益に多くの対価を支払っていることを示しています ―― たとえ予想通りの利益が達成されるとしても。

 具体的には、2021年は治療法が確立されて感染拡大やそれに伴う経済閉鎖の影響が十分に抑えられ、過去最高に達すると予想(営業利益のコンセンサス予想)されていますが、それでも予想PERは23倍となっており、過去12ヵ月の利益に基づくPERは30倍です。過去最高益が実現したとしても、1年先にPER 23倍という結果を当社は予想しておらず(予想の場合は大幅に低い数字にはならないものですが)、プレミアムの多くが異例であることの根拠となっています。おそらくコロナ後のニューエコノミーがそれを証明するでしょう。計算屋の筆者は足元のデータに執着し過ぎているのかもしれません。したがって、経済情勢やイベントを踏まえると素晴らしく見える水準を正当化して設定する役目は、市場に任せることにします。

 S&P 500指数は、2020年2月19日にコロナ前の終値ベースの最高値(3386.15)を付けて以降、終値ベースの過去最高値を20回更新し(3756.07の最高値で年を終えるまで年初来で33回最高値を更新。最高値で年末を終えたのは1928年以降8回目)、コロナ前の高値から10.92%上昇、年初来で16.26%上昇(配当込みで18.40%上昇)して2020年を終えました。ちなみに、2019年の上昇率は28.8%(同31.49%)でした。素晴らしいとしか言いようがありません。

 2020年を振り返ると、市場は「とんでもなく荒っぽい」展開となり、弱気(2月19日~3月23日に33.93%下落)と強気(3月23日の安値から67.88%上昇)の両方の相場を経験しました。下落も上昇も市場全体が一様に動いたのではなく、パンデミックによる景気の急激な変化でほぼ事業活動が停止したセクター(旅行、ホテル、実店舗など)があった一方、「巣ごもり」関連の財やサービスは消費者や企業のニーズを捉え、大いに恩恵を受けました。こうした格差が市場を「頭でっかち」にしており、時価総額上位10銘柄が全体に占める割合は27.4%と、2019年末の22.7%、2018年末の21.0%から上昇しました。背景には一部の銘柄が市場を支配していることがあり、2020年のS&P 500指数のトータルリターンの53%超をApple、Amazon、Microsoftが占めています。同指数の2020年のトータルリターン18.40%はこれら3社を除くと8.60%になり、寄与上位30銘柄を除くと指数のリターンは-0.03%とマイナスに転じます。ただし、回復のすそ野は徐々に広がっており、市場が2桁の急上昇を演じた11月には、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りました。

 セクターごとのばらつきは大きく、エネルギーは37.31%下落し、情報技術は42.21%上昇し、その差は80%となりました。これはIT株が急騰した1998年と1999年、そしてその後ITバブルが崩壊した2000年以降、見たことのない水準です(2000年は92.64%、1999年は95.02%、1998年は85.62%)。指数内の「シフト」(と呼ぶ向きもあります)を明白に示す統計データの1例として、42銘柄が配当支払いを停止したことが挙げられます(その前に最後の1銘柄があったのは2017年で、2008年~2009年の景気後退期では32銘柄)。一方で、2020年には配当支払額は(実際のところ)過去最高を更新し、前回過去最高を付けた2019年の58.24ドルから58.28ドルに0.07%増加し、パンデミック後(第2四半期~第4四半期)に155銘柄が増配しましたが、平均増配率は2019年の9.80%から8.34%に低下しています。
 

 
 S&P 500指数は12月に3.71%上昇して3756.07で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.84%)。11月は3621.63で月を終え、10.75%の上昇(同プラス10.95%)、10月は3269.96で月を終え、2.77%の下落(同マイナス2.66%)となりました。過去3ヵ月間では11.69%上昇(同プラス12.15%)、2020年1年間では16.26%上昇(同プラス18.40%)、コロナ前の2月19日の終値での高値からは10.92%上昇しました(同プラス12.68%)。ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は12月に3.27%上昇して3万0606.48ドル(終値での最高値)で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.41%)。11月は2万9638.64ドルで月を終え、11.84%の上昇(同プラス12.14%)、10月は2万6501.60ドルで月を終え、4.61%の下落でした(同マイナス4.52%)。過去3ヵ月間では10.17%上昇(同プラス10.73%)、2020年1年間では7.25%上昇となりました(同プラス9.72%)。

 過去の実績を見ると、12月は72.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.94%、下落した月の平均下落率は3.08%、全体の平均騰落率は1.30%の上昇となっています。2020年12月は3.71%の上昇となりました。

 1月は63.0%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.27%、下落した月の平均下落率は3.85%、全体の平均騰落率は1.22%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2021年1月26日-27日、3月16日-17日、4月27日-28日、6月15日-16日、7月27日-28日、9月21日-22日、11月2日-3日、12月14日-15日、2022年1月25日-26日となっています。

主なポイント

 ○S&P 500指数は12月に3.71%上昇しました。11月は10.75%上昇し、9月と10月は合わせて6.58%下落しました。同指数は過去最高値の更新を続け、過去3ヵ月間では11.69%上昇し(第4四半期としては1999年の14.54%以来の高水準)、2020年の上昇率は16.26%と2桁台となりました(2019年の28.88%上昇に続く)。

  ⇒S&P 500指数は12月に3.71%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス3.84%)。過去3ヵ月間では11.69%上昇(同プラス12.15%)、2020年通年では16.26%の上昇となりました(同プラス18.40%)。

   →コロナ前の2月19日の終値での高値からは10.92%上昇して月を終えました(同プラス12.68%)。

  ⇒2016年11月8日の米大統領選以降の同指数の上昇率は75.55%(同プラス90.38%)、年率換算では14.54%の上昇(同プラス16.80%)、2020年11月3日の大統領選以降では11.48%上昇しています(同プラス11.82%)。

  ⇒強気相場入りして以降、2020年3月23日の底値から67.88%上昇しています。

 ○米国10年国債利回りは11月末の0.85%から0.92%に上昇して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは11月末の1.57%から1.65%に上昇して取引を終えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは11月末の1ポンド=1.3329ドルから1.3673ドルに上昇し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは11月末の1ユーロ=1.1929ドルから1.2182ドルに上昇しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は11月末の1ドル=104.31円から103.24円に上昇し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は11月末の1ドル=6.5789元から6.5330元に上昇しました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は11月末の1バレル=45.06ドルから48.42ドルに上昇して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、11月末の1ガロン=2.211ドルから2.330ドルに上昇して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は11月末の1トロイオンス=1780.00ドルから上昇して1901.60ドルで月の取引を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は11月末の20.57から22.75に上昇して月を終えました。月中の最高は31.46、最低は19.97でした(同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

 ○S&P 500指数構成銘柄の499社が第3四半期決算発表を終え、決算シーズンが終了しました。499銘柄のうち84.0%(過去平均は67%)に当たる419銘柄で利益が予想を上回り、64銘柄が予想を下回り、16銘柄が予想通りという結果でした。予想を上回った銘柄の割合が高かった一因として、2020年第3四半期の利益予想が2019年末時点から2020年9月末までの間に29.9%引き下げられていたことも寄与しました。売上高に関しては、498銘柄のうち77.5%に相当する386銘柄が予想を上回りました。

  ⇒2020年第3四半期の利益は、速報値に基づくと、前年同期比では4.8%の減益ですが、前期比では41.5%の増益で利益予想(年初から9月末までで29.9%引き下げられています)を上回っています。これを反映して、2020年第3四半期の利益予想は期末時点から18.3%引き上げられました。

  ⇒決算期がずれている13社が第4四半期決算を終え、13銘柄すべてで利益が予想を上回り、13銘柄中11銘柄で売上高が予想を上回りました。第4四半期の利益予想は9月末から1.5%上方修正され、前期比4.9%の減益、前年同期比では8.0%の減益が予想されています。

  ⇒その結果、2020年の予想EPSは23.5%の減益となり、それに基づく足元の予想株価収益率(PER)は31.2倍となっています。

  ⇒2021年については、企業利益は大幅に増加して過去最高を更新する見通しで、2020年比で36.7%増益(2019年比で4.6%増益)が見込まれており、2021年の予想PERは22.8倍となっています。

 ○米国の新型コロナウイルス対応のための財政政策:

  ⇒第1弾:医療機関への財政支援やウイルス感染拡大防止に83億ドルの資金拠出。

  ⇒第1段階:2週間の疾病休暇および最長10週間の家族医療休暇の給与費用に対する税額控除。

  ⇒第2段階:労働者、中小企業、事業会社、病院や医療関係機関に対する直接支援、ならびに融資保証を提供する2兆2000億ドルのプログラム。

  ⇒第3段階:(中小企業向け)給与保証プログラム(PPP)に3100億ドルと医療機関に750億ドルを含む、総額4840億ドルの供出。ただし、州政府および地方自治体に対する資金支援は行わない。

  ⇒第4段階:バイデン氏は追加の景気刺激策を2021年1月5日に行われる上院2議席(両議席とも現職は共和党)改選の決選投票前に成立させるよう、民主党上院議員に対して妥協を働きかけていましたが、年内に経済対策がまとまる可能性は低いとみられていました。

   →しかし、議会は新型コロナウイルス関連の対策として、個人への直接給付金600ドル(所得制限あり)などを盛り込んだ総額9000億ドルの財政パッケージを(ようやく)可決しました。一方、トランプ大統領は、現金給付の額を1人当たり2000ドルに引き上げるよう求め、法案に署名しないままクリスマス休暇に入りましたが、拒否権を発動することはありませんでした。

   →トランプ大統領は最終的に、新型コロナウイルス対策パッケージが期限切れとなった日の翌日、そして政府機関が一部閉鎖を余儀なくされる前日に、この法案に署名しました。

   →下院は個人への現金給付を600ドルから2000ドルに引き上げる法案を可決しました。上院はこの法案を持ち越し、2021年1月5日にジョージア州で行われる上院2議席改選の決選投票後に協議が再開される予定です(ジョージア州での決選投票の結果、上院の支配権が共和党から民主党に移る可能性もありますが、その見込みは薄いと思われます)。

 ○ビットコインは11月末の1万9344ドルから上昇して2万9240ドルで月を終えました。月中の最高は2万9594ドルで、過去最高を更新しました(2019年末は7194ドル)。

 ○また、電気自動車メーカーTesla(TSLA)の株価も急騰が続き、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが同社をS&P 500指数の構成銘柄に追加する中、同社株の12月の上昇率は24.3%、年初来では743%の上昇となりました。

 ○市場関係者のS&P 500指数の1年後の目標値はこの1ヵ月で上昇し、現在値から6.7%上昇(前月は8.5%上昇)の4006(かなり強気な予想)となっています(11月末時点の目標値は3931、10月末時点の目標値は3835、9月末時点の目標値は3751)。また、ダウ平均の目標値は現在値から7.8%上昇(前月は7.50%上昇)の3万2980ドル(相当強気な予想)となっています(同3万1860ドル、同3万1104ドル、同3万0470ドル)。

大統領選挙

 ○裁判所による判断とは別に、各州は大統領選の勝敗を早期に認定することを求められています。大統領選挙のプロセスとして、12月14日に各州の選挙人が大統領候補に直接投票することになっているためです。

  ⇒各州が投票結果を認定する中(12月8日が認定期限)、トランプ大統領は一部の州の選挙結果に対する法廷闘争を継続しています(これまで勝利はありません)。

  ⇒選挙人団による投票結果はバイデン氏の勝利となり、この結果は2021年1月6日に議会で承認され、次期大統領の就任式は1月20日に開かれる予定です。

 ○重要な点として、ジョージア州の上院2議席の現職はいずれも共和党ですが、今回の選挙で50%の過半数の票を確保した候補者がいなかったため、2021年1月5日に決選投票が行われることになっています。この結果、上院(現在は民主党が48議席、共和党が50議席)は数の上では両党の議席数が同数となる可能性がありますが、バイデン政権が誕生した場合は副大統領が投票権限を持つため(民主党51議席に対し共和党50議席となる)、民主党が過半数を握ることになります。

  ⇒両党は何としても上院の支配を勝ち取ろうと、ジョージア州での選挙運動を本格化させています。

  ⇒市場は、共和党が上院の支配を維持し、ねじれ議会が続くとみています。

 ○バイデン氏は閣僚や補佐官といった主要ポストの指名を続けています(一部は上院の承認が必要です)。

トランプ大統領と政府高官

 ○議会はつなぎ予算の1週間延長(12月18日まで)を可決し、連邦政府の閉鎖は辛うじて回避されました。

  ⇒翌週、つなぎ予算の2日間延長(12月20日まで)が再度可決され、追加の新型コロナウイルス対策法案をめぐる議会協議が続けられました。

  ⇒その後、議会はようやく2兆3000億ドル規模の財政支出および景気刺激法案(5593ページに上る)を可決しました。総額9000億ドルの新型コロナウイルス関連対策には、1人当たり600ドル(所得による制限あり)の直接給付、失業給付の週当たり300ドルの上乗せ(11週間分)、中小企業支援、ワクチン配布、特定の業界に対する支援が含まれる一方、州に対する支援や雇用主を新型コロナウイルス関連の損害賠償訴訟から守る免責条項は含まれていません。航空業界に対しては総額150億ドルの支援が盛り込まれ、1週間以内に支給開始が見込まれることから、各社は早くも一時解雇した従業員を呼び戻し始めています。航空業界では前回の雇用支援が10月に期限を迎えて以降、3万2000人の従業員が一時解雇されています。

  ⇒トランプ大統領は、現金給付の額を1人当たり2000ドルに引き上げるよう求め、法案に署名しないままクリスマス休暇に入りましたが、拒否権を発動することはありませんでした。

   →大統領は12月27日に法案に署名しました。

   →翌28日に下院は現金給付を1人当たり2000ドルに増額する追加法案を可決し、上院での採決は、ジョージア州の2議席をめぐる決選投票が行われる1月5日を待ってから行われる予定です。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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