豪ドル
豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。足もとでコロナの変異種の感染が各国へと拡大しつつある一方で、今後はコロナワクチンの普及が進むとみられます。ワクチンの普及がある程度進めば、市場ではリスクオンの動きが強まり、豪ドルは上値を試す展開になりそうです。
ただ、豪州と中国の関係には注意が必要かもしれません。コロナの発生源の調査や南シナ海における中国の領有権主張をめぐり、両国の関係は悪化しています。両国の関係が一段と悪化した場合、豪ドルの上値を抑える要因になりそうです。
豪ドル/NZドルについては、1.00NZドル~1.15NZドルのレンジ内で上下動を繰り返しそうです。RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)のいずれも政策金利を当面据え置くとみられること、また豪ドルとNZドルはリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があるためです。RBAの政策金利は12月24日時点で0.10%。RBAは「マイナス金利を導入する可能性は非常に低い」との見方を示す一方、「少なくとも3年間は利上げしない」と予想しています。
<注目点・イベントなど>
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
・米中関係、豪中関係、中国経済の動向(中国は豪州の主要輸出先)。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
・RBA(豪中銀)の金融政策。追加緩和の有無。
NZドル
豪ドルと同様、NZドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。NZドルにとってリスクオンはプラス材料、リスクオフはマイナス材料です。
変異種を含めてコロナの感染拡大の状況やコロナワクチンの普及度合いが、投資家のリスク意識に影響を及ぼすとみられます。コロナワクチンの普及がある程度進めば、市場ではリスクオンの動きが強まり、NZドルは堅調に推移する可能性があります。
ただ、NZドルが上昇基調を強める場合(特に対米ドル)、RBNZ(NZ中銀)はNZドル高のけん制へと動くかもしれません。NZドル高がけん制されれば、NZドルは上昇しにくくなりそうです。
RBNZの政策金利(12/24時点で0.25%)については、市場では「当面据え置き」との見方が有力です。
<注目点・イベントなど>
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
・米中関係、中国経済の動向(中国はNZの主要輸出先)。
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。マイナス金利導入の有無。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。
カナダドル
カナダドルは原油価格の動向に注目です。カナダは産油国であり、カナダドルは原油価格に影響を受けやすいという特徴があるためです。
OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は2021年1月から協調減産の規模を日量720万バレルとし、2020年12月末までの770万バレルから50万バレル縮小します。減産規模の縮小は、原油価格にとってマイナス材料です。
ただ、新型コロナウイルスのワクチンがある程度普及すれば、世界の景気が持ち直して原油需要は増加していくと考えられます。また、原油価格が下落を続ける場合には、OPECプラスは協調減産の強化へと動くでしょう。
原油価格はいずれ上昇基調を強める可能性があり、その場合にはカナダドルは上値を試す展開になりそうです。
トルドー・カナダ首相とトランプ米大統領の関係は、必ずしも良好なものではありませんでした。バイデン氏が米大統領に就任して両国の関係が改善すれば、カナダドルの支援材料になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・資源(特に原油)価格の動向。
・米国の新政権の政策。
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
トルコリラ
トルコが抱える問題のひとつに高インフレが挙げられます。
高インフレへの対応策として利上げが有効と考えられるものの、TCMBの対応はこれまで後手に回る傾向がありました。エルドアン大統領はかねてより低金利を志向しており、大統領による圧力のためと考えられます。
しかし、2020年11月にアーバル氏が新たに総裁に就任すると、TCMBは直後の会合で4.75%の利上げを実施。12月の会合では2.00%の追加利上げに踏み切りました。TCMBの政策金利は12月24日時点で17.00%です。
アーバル総裁は就任後2会合連続で利上げを行い、インフレ抑制を抑制する姿勢を示しました。そのことはリラにとってプラス材料と考えられます。
エルドアン大統領は今のところ、TCMBの利上げ姿勢を認めているようです。ただ、今後CPI(消費者物価指数)上昇率が一段と高まる、あるいはリラ安が加速した場合に我慢できるのか疑問は残ります。エルドアン大統領がTCMBの金融政策に介入する姿勢を示せば、リラに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
米国の新政権の対トルコ政策にも注目。トルコのS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)の配備をめぐり、トランプ大統領は2020年12月に対トルコ制裁を発動。国防産業庁への取引を禁止し、また国防産業庁長官ら個人4人の米国内の資産の凍結や米国への渡航を禁止しました。バイデン氏はトランプ大統領よりもトルコに対して強硬とみられており、バイデン氏が大統領に就任すれば米国は追加制裁へと動くかもしれません。
EU(欧州連合)もトルコに対して追加制裁を科す可能性があります。東地中海でのトルコの海底資源探査問題をめぐり、トルコとEUは関係が悪化。EUは2020年12月、トルコに対して限定的な制裁を科すことで合意し、さらに厳しい制裁を科すか否かを2021年3月の首脳会議で決定する予定です。
米国やEUとトルコの関係が一段と悪化した場合、リラは下押しする可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。利上げが必要になった時に躊躇なく利上げできるか。
・トルコの外貨準備高。
・トルコとEU、米国との関係。
・地政学リスク。
南アフリカランド
南アフリカランドは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。コロナのワクチンが普及するなどしてリスクオンの流れが強まれば、ランドは堅調に推移しそうです。
一方で、南アフリカの景気は低迷が続いており、また英国とは別のコロナの変異種の感染が南アフリカで拡大しています。エスコム(国営電力会社)の問題も抱えています。経営危機に陥っているエスコムは、計画停電をたびたび実施。停電は弱い景気を一段と下押す要因となり得ます。南アフリカ国内の状況にも市場の関心が向けば、ランドは上値が重くなる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
・南アフリカ経済の動向。電力供給不安。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
メキシコペソ
メキシコは産油国であり、またメキシコ経済は対米依存度が高い(メキシコの輸出全体の8割弱が米国向け)という特徴があります。原油価格が堅調に推移し、メキシコと米国の関係が改善へと向かえば、メキシコペソは上値を試す展開になりそうです。
BOM(メキシコ中銀)の金融政策もペソの材料になる可能性があります。
BOMは2020年9月まで11会合連続で利下げを実施したものの、11月と12月の2会合で政策金利を据え置きました。BOMの政策金利は12月24日時点で4.25%です。
メキシコのCPI(消費者物価指数)上昇率の動向次第では、追加利下げをする可能性はあるものの、利下げしたとしてもあと1回0.25%とみられています。その場合、BOMの政策金利の水準が主要国の中銀と比べて高い状況に変化はないとみられ、そのことがペソを下支えすると考えられます。
<注目点・イベントなど>
・資源(主に原油)価格の動向。
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・米国とメキシコの関係。米国の新政権の政策。
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
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