注目材料揃いで復活へ
【子会社株式価値から見た極端な割安感】
同社の米国半導体子会社、アレグロ・マイクロシステムズ・インク(ティッカー:ALGM)は10月29日にNASDAQ上場した。
直近25日終値はちょうど24ドル。時価総額で45億4600万ドル。日本円換算では4727億円といったところ。
サンケン電気の出資比率は上場に伴って67.2%から54.9%に下がったが、それでも過半を握り、持ち分の価値は「2595億円」ということになる。
ところが、サンケン電気自体の時価総額は27日終値で「954億9800万円」しかない。3分の1とちょっとの水準だ。
時価総額同士の比較なら、ほぼ5分の1の水準に過ぎない。
【アクティビストの動き】
資産価値に対して極端に割安な状況にあると、アクティビストが集まってくるものだ。サンケン電気の大株主としては、大量保有報告書ベースでエフィッシモの保有比率が9.58%、オアシス・マネジメントが6.47%だ。
東京ドームが「三井不動産によるTOB」観測報道を受け、大量買いにストップ高比例配分となったが、オアシスによるプレッシャーが実質的な身売りにつながったのではないかと見られている。12月17日に控える臨時株主総会には長岡勤社長ら解任議案がかけられていたためだ。
オアシスはサンケン電気に対しても、サイト上で「A Better Sanken~より「強い」サンケン~」キャンペーンを展開している。
サンケン電気の株価の足取りを追うと、まず10月30日に「アレグロNASDAQ上場」人気で急伸。
目先調整を挟んで、11月6日決算発表時の収益増額修正を受けて再人気化。
高値形成後はもみ合っていたが、27日はオアシス絡みでの連想人気が及んだものかも知れない。
【構造改革進展による収益好転、来期黒字化期待】
オアシスは経営陣に構造改革の早期実施を促す立場だが、実際にはサンケン電気は2017年に第1次構造改革を打ち出してから、着実な改革に取り組んでいる。
その一環がアレグロ上場でもあるし、8月には社会システム(電源機器)事業をGSユアサに売却し、今月4日には子会社合併も発表している。
こうした点はオアシスもそれなりに評価しているらしい。
先の決算発表では、4~9月期営業損益が事前予想の「19億円の赤字」から「6億3000万円の赤字」に上方修正されて着地した。
今3月期通期見通しも増額したが、こちらは「1億円の黒字」を「6億円の黒字」に引き上げただけ。
改善幅は、上期の12億7000万円から通期の6億円に圧縮されているが、下期の悪化を見越したものではなく、単に慎重な見通しと見られる。
なお、通期の最終損益は「80億円の赤字」から「70億円の赤字」へと改善されたが、大幅な赤字見通しであることに変わりはない。
ただし、これは構造改革費用などの特別損失を計上したためだ。
来期もまだ工場再編による特別退職金が発生する可能性はあるが、大きなものは大体、今期中に処理される見通しで、来期は黒字化が視野に入る。
逆に言えば、今期赤字予想だからこそ、上昇してきたとはいえ、依然として2006年高値から実質3分の1の水準(そして保有アレグロ株の時価評価に対しても約3分の1の水準)に放置されてきたわけだ。
先の上方修正の背景にあるのは、強みを持つ自動車関連分野の出荷増。
中国などで自動車需要復調が言われる。コロナ感染拡大も、「電車やバスなど公共交通機関よりも自動車」の機運を高める可能性がある。
なお、25日にはスズキが昨年3月以来の高値に買われている。
【株価位置】
11月27日の上昇で17日の高値3,875円に接近。ここを上抜くと、2018年5月以来の高値水準。しかしながら、2006年1月には、5対1株式併合を勘案した実質ベースで1万1600円の天井があり、そこからは、まだ3分の1の水準に過ぎない。
上記、手掛かり材料3点が、サンケン復活の手掛かりとなるのではないか。
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