■業績動向
1. 2020年8月期の連結業績概要
ナガイレーベン<7447>の2020年8月期の連結業績は、売上高が前期比1.7%増の17,066百万円、営業利益が同0.4%増の4,937百万円、経常利益が同0.8%増の5,031百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.8%増の3,474百万円となった。
売上高は2020年1月までは比較的順調であったが、2月以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療現場が混乱し、さらに緊急事態宣言等により営業活動を自粛したことから商戦期である第3四半期の売上高は大きく低迷した。第4四半期に入り厚生労働省向けにアイソレーションガウンの特需(945百万円)があったものの、それまでの落ち込みを十分にカバーするには至らず、結果的に通期の売上高はほぼ前期並みにとどまった。利益面では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一時的に国内生産が増加し売上総利益率が低下したが、販管費を抑えたことから営業利益もほぼ前期並みを確保した。厳しい環境の中でも増収増益を維持した点は評価できるだろう。
市場環境としては、2019年10月からの消費税増税に伴い、診療報酬及び介護報酬の改定が行われたことに加え、2020年4月にも診療報酬改定(全体0.46%減、本体0.55%増、薬価等1.01%減)が行われたが、本体の改定がアップであったことから同社の業績に大きな影響を与えるほどではなかった。その一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、医療現場で混乱が生じた。そのため同社の売上高も、2020年1月までは前年同期比でプラスを維持してきたものの、2月以降の売上高が急減した。これは需要そのものが消失したわけではなく、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療現場が混乱したことから、同社製品への更新や発注が大幅に遅れたことに加え、緊急事態宣言等により営業活動を自粛したことが影響している。なお、同社グループに関連した生産・販売・物流の現場においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は出ていない。
売上高の推移を四半期ごとに見ると、2月から新型コロナウイルス感染症拡大の影響が出始めたことから上期は前年同期比2.5%減であったが、第3四半期(会計期間)は同7.8%減となった。しかし第4四半期には厚生労働省向けの納入が945百万円あったことから同23.5%増となった。仮にこの厚生労働省向けがなかったとしても、同1.0%減となることから、前年同期比で減少ではあったが回復傾向にあると言える。
原価面では、売上総利益率は45.8%となり前期の46.7%から0.9ポイント低下した。この要因としては、販売による要因(売上高増)として129百万円増、生産による要因として159百万円減による。さらに生産要因の増減分析を行うと、加工賃の値上による影響として63百万円減(国内)、原材料等の値上による影響として68百万円減であったが、これらはいずれも当初から予想されたものであり、想定内と言える。さらに為替レートによる影響として30百万円増(2019年8月期107.5円/米ドル→2020年8月期106.0円/米ドル)、海外生産比率アップの影響として35百万円増(2019年8月期49.2%→2020年8月期49.5%)となっている。また厚生労働省向け感染対策商品を緊急に国内で生産したことによるコストアップが100百万円あった。
一方で販管費は、2019年8月期に発生した特殊要因(役員退職慰労金制度廃止に伴う功労金)が消失したことによる費用減84百万円、営業自粛による旅費交通費減36百万円、医療機関向けの寄付金20百万円増などから2,872百万円(前期比1.7%減)となり、対売上比率は16.9%(前期は17.4%)となった。その結果、営業利益は同0.4%増の4,937百万円となり、増益となった。また、設備投資額は183百万円(IT設備75百万円、建物関連67百万円、物流設備28百万円、生産設備12百万円)、減価償却費は334百万円となった。
(1) アイテム別売上高
アイテム別売上高は、ヘルスケアウェアが前期比7.6%減の8,944百万円、ドクターウェアが同7.4%減の2,475百万円、ユーティリティウェアが同10.6%減の394百万円、患者ウェアが同1.7%増の2,067百万円、手術ウェアが同7.7%増の1,719百万円、シューズ・その他が同3.2%減の347百万円、新たに加えられた感染対策商品が1,116百万円(前期比較なし)となった。
主力のヘルスケアウェア及びドクターウェアは、新型コロナウイルス感染症拡大による医療現場の混乱や営業活動自粛の影響が大きく、更新物件に大幅な遅れや買い控えが発生した。ただし、第3四半期の大幅減収に対し第4四半期には回復が見られた。患者ウェアは他アイテムより新型コロナウイルス感染症拡大の影響は比較的少ないものの、新規案件の進捗に影響が出て微増収にとどまった。その一方で、手術ウェアはディスポ(使い捨て)製品の供給不足(海外からの輸入停止等)により、リユーサブルであるコンペルパック商品群が見直され、特に第3四半期に大幅増収となった。また期中に開発した感染対策商品は、厚生労働省向け(945百万円)を含めて1,116百万円の売上高を計上した。
(2) 地域別売上高
地域別売上高は、東日本が前期比4.1%減の8,530百万円、中部日本が同4.0%増の1,730百万円、西日本が同6.2%減の5,658百万円、海外が同6.0%増の201百万円、厚生労働省(全国)が945百万円(前期比較なし)となった。
東日本では、2020年1月までは順調に推移していたものの、2月以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で更新物件の納入遅れが発生した。第3四半期は手術ウェア及び感染対策商品の拡販に注力し、第4四半期には物件のキャッチアップに努めたことから回復基調ではあったものの、都市部中心に期ずれ物件が多く発生したため前期比では減収となった。中部日本は第4四半期に大型更新物件を受注したことから増収となった。西日本では、第4四半期に患者ウェアの取り組み開始及び上期までの遅れ物件も含め更新に注力したが、特に関西において期ずれ物件が多く発生し減収となった。海外は、第3四半期は国内同様に厳しい市場環境であったが、台湾において第4四半期に物件を確実に受注したことから増収を確保した。厚生労働省向けは、第4四半期に期中開発したアイソレーションガウン945百万円を受注、厚生労働省経由で全国の医療機関に無料配布された。
(3) 商品別売上高
商品別売上高は、ハイエンド商品が前期比15.9%減の1,072百万円、高付加価値商品が同3.1%減の8,692百万円、付加価値商品が同2.2%減の5,600百万円、量販品が同7.5%減の756百万円、厚生労働省向けが945百万円(前期比較なし)となった。ハイエンド商品の減少率が高くなっているが、前期に比較的大型の受注があったことによるもので、特別な要因があったわけではない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 2020年8月期の連結業績概要
ナガイレーベン<7447>の2020年8月期の連結業績は、売上高が前期比1.7%増の17,066百万円、営業利益が同0.4%増の4,937百万円、経常利益が同0.8%増の5,031百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.8%増の3,474百万円となった。
売上高は2020年1月までは比較的順調であったが、2月以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療現場が混乱し、さらに緊急事態宣言等により営業活動を自粛したことから商戦期である第3四半期の売上高は大きく低迷した。第4四半期に入り厚生労働省向けにアイソレーションガウンの特需(945百万円)があったものの、それまでの落ち込みを十分にカバーするには至らず、結果的に通期の売上高はほぼ前期並みにとどまった。利益面では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一時的に国内生産が増加し売上総利益率が低下したが、販管費を抑えたことから営業利益もほぼ前期並みを確保した。厳しい環境の中でも増収増益を維持した点は評価できるだろう。
市場環境としては、2019年10月からの消費税増税に伴い、診療報酬及び介護報酬の改定が行われたことに加え、2020年4月にも診療報酬改定(全体0.46%減、本体0.55%増、薬価等1.01%減)が行われたが、本体の改定がアップであったことから同社の業績に大きな影響を与えるほどではなかった。その一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、医療現場で混乱が生じた。そのため同社の売上高も、2020年1月までは前年同期比でプラスを維持してきたものの、2月以降の売上高が急減した。これは需要そのものが消失したわけではなく、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療現場が混乱したことから、同社製品への更新や発注が大幅に遅れたことに加え、緊急事態宣言等により営業活動を自粛したことが影響している。なお、同社グループに関連した生産・販売・物流の現場においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は出ていない。
売上高の推移を四半期ごとに見ると、2月から新型コロナウイルス感染症拡大の影響が出始めたことから上期は前年同期比2.5%減であったが、第3四半期(会計期間)は同7.8%減となった。しかし第4四半期には厚生労働省向けの納入が945百万円あったことから同23.5%増となった。仮にこの厚生労働省向けがなかったとしても、同1.0%減となることから、前年同期比で減少ではあったが回復傾向にあると言える。
原価面では、売上総利益率は45.8%となり前期の46.7%から0.9ポイント低下した。この要因としては、販売による要因(売上高増)として129百万円増、生産による要因として159百万円減による。さらに生産要因の増減分析を行うと、加工賃の値上による影響として63百万円減(国内)、原材料等の値上による影響として68百万円減であったが、これらはいずれも当初から予想されたものであり、想定内と言える。さらに為替レートによる影響として30百万円増(2019年8月期107.5円/米ドル→2020年8月期106.0円/米ドル)、海外生産比率アップの影響として35百万円増(2019年8月期49.2%→2020年8月期49.5%)となっている。また厚生労働省向け感染対策商品を緊急に国内で生産したことによるコストアップが100百万円あった。
一方で販管費は、2019年8月期に発生した特殊要因(役員退職慰労金制度廃止に伴う功労金)が消失したことによる費用減84百万円、営業自粛による旅費交通費減36百万円、医療機関向けの寄付金20百万円増などから2,872百万円(前期比1.7%減)となり、対売上比率は16.9%(前期は17.4%)となった。その結果、営業利益は同0.4%増の4,937百万円となり、増益となった。また、設備投資額は183百万円(IT設備75百万円、建物関連67百万円、物流設備28百万円、生産設備12百万円)、減価償却費は334百万円となった。
(1) アイテム別売上高
アイテム別売上高は、ヘルスケアウェアが前期比7.6%減の8,944百万円、ドクターウェアが同7.4%減の2,475百万円、ユーティリティウェアが同10.6%減の394百万円、患者ウェアが同1.7%増の2,067百万円、手術ウェアが同7.7%増の1,719百万円、シューズ・その他が同3.2%減の347百万円、新たに加えられた感染対策商品が1,116百万円(前期比較なし)となった。
主力のヘルスケアウェア及びドクターウェアは、新型コロナウイルス感染症拡大による医療現場の混乱や営業活動自粛の影響が大きく、更新物件に大幅な遅れや買い控えが発生した。ただし、第3四半期の大幅減収に対し第4四半期には回復が見られた。患者ウェアは他アイテムより新型コロナウイルス感染症拡大の影響は比較的少ないものの、新規案件の進捗に影響が出て微増収にとどまった。その一方で、手術ウェアはディスポ(使い捨て)製品の供給不足(海外からの輸入停止等)により、リユーサブルであるコンペルパック商品群が見直され、特に第3四半期に大幅増収となった。また期中に開発した感染対策商品は、厚生労働省向け(945百万円)を含めて1,116百万円の売上高を計上した。
(2) 地域別売上高
地域別売上高は、東日本が前期比4.1%減の8,530百万円、中部日本が同4.0%増の1,730百万円、西日本が同6.2%減の5,658百万円、海外が同6.0%増の201百万円、厚生労働省(全国)が945百万円(前期比較なし)となった。
東日本では、2020年1月までは順調に推移していたものの、2月以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で更新物件の納入遅れが発生した。第3四半期は手術ウェア及び感染対策商品の拡販に注力し、第4四半期には物件のキャッチアップに努めたことから回復基調ではあったものの、都市部中心に期ずれ物件が多く発生したため前期比では減収となった。中部日本は第4四半期に大型更新物件を受注したことから増収となった。西日本では、第4四半期に患者ウェアの取り組み開始及び上期までの遅れ物件も含め更新に注力したが、特に関西において期ずれ物件が多く発生し減収となった。海外は、第3四半期は国内同様に厳しい市場環境であったが、台湾において第4四半期に物件を確実に受注したことから増収を確保した。厚生労働省向けは、第4四半期に期中開発したアイソレーションガウン945百万円を受注、厚生労働省経由で全国の医療機関に無料配布された。
(3) 商品別売上高
商品別売上高は、ハイエンド商品が前期比15.9%減の1,072百万円、高付加価値商品が同3.1%減の8,692百万円、付加価値商品が同2.2%減の5,600百万円、量販品が同7.5%減の756百万円、厚生労働省向けが945百万円(前期比較なし)となった。ハイエンド商品の減少率が高くなっているが、前期に比較的大型の受注があったことによるもので、特別な要因があったわけではない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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