■事業構造と戦略の変化
1. 創業−2014年
クロス・マーケティンググループ<3675>は2003年の創業以来、その成長の過程で、ターニングポイントが3回あったと考えられる(「沿革」の項参照)。最初のターニングポイントは、2006年にVOYAGE GROUP(当時ECナビ)と資本・業務提携をしたことである。VOYAGE GROUP傘下のリサーチパネルに資本参加することで、リサーチパネルの有する70万人(当時)という大規模なモニターを獲得することができた。これにより電通リサーチ(現電通マクロミルインサイト)やビデオリサーチといったトップクラスのマーケティングリサーチ会社と資本提携することができ、設立後間もないのに大きく業容を拡大することができた。
2008年の東証マザーズ上場が2つ目のターニングポイントで、上場によって資金力と知名度が付いた。このため、楽天リサーチ(株)(現楽天インサイト(株))など大規模なモニターを持つ同業他社と業務提携することでパネル数を確保、一方、専門的な知識がなくてもアンケート画面の作成・カスタマイズができる「pyxis2」を開発、更なる業容の拡大へとつなげた。3つ目のターニングポイントは、持株会社化を機に大型M&Aや海外展開を加速した2013年−2015年である。これにより、サービス機能を拡充し、アジアにおける拠点開発を加速させている。
ウィングを広げ成長余地を拡大した直近5年
2. 2015年−2019年
2015年−2019年の直近5年間は、持続的な成長を実現するため、成長領域における積極的な事業拡大、収益力強化に向けた投資などを行うとともに、更なるグループシナジーを追求するなど、様々な取り組みを進めてきた。この結果、2014年に25%だった国内リサーチ事業以外の売上高構成比は、2019年には45%へと拡大した。
業績面では、Kadenceグループを中心に拡張を図った海外リサーチ事業で、運営面の課題から再構築を迫られ、2018年12月期−2019年12月期の構造改革につながった。しかし国内では、2015年にメディリードとディーアンドエムを設立、2019年にサポタントとクロス・ジェイ・テックを統合してFittioを設立するなど、子会社の設立や譲受、統合を積極化し、さらに大きくウィングを広げる一方、子会社運営の効率化も進めた。以上から、2015年以降に展開を始めた新規事業・エリアの売上高平均成長率は、85%という非常に高い伸び率になった。こうした動きは次なる成長につながる動きであり、将来振り返ってみたときに、この5年が第4のターニングポイントだったということになるかもしれない。
広げたウィングをデジタルトラスフォーメーションで強化
3. 2020年の取り組み
足元のITの急速な普及によって、ビッグデータがそこかしこに氾濫するようになった。マーケティング面においても、顧客がそうしたデータを自動的に蓄積できるようになってきたが、一方で精緻に解析・応用することがより大きな課題となっている。これを解決するのが、顧客のデータと同社のリサーチデータやコンサルティングなどを最速最適に結び付ける、マーケティングソリューションとデジタルトランスフォーメーションの融合ということになるだろう。今後同社は、マーケティングソリューションとデジタルトランスフォーメーションの2軸によって、こうした新たな局面に取り組み、顧客のマーケティングを支援していくことになると考えられる。
一方、デジタルトランスフォーメーションは、同社自身にも次なる成長と自動化による原価低減というチャンスを与える。例えば、メディリードでは、患者のヘルスケアリサーチだけでなく、医薬という特化した専門分野でコンサルティングやデータサイエンス(分析)、論文支援など、最適解としての高付加価値のサービスが可能となる。一方、高度デジタル化によってサーバー内アセットの活用やアンケートレポートの作成などネットリサーチの自動化が促進され、最速化による生産性の向上が見込まれる。なお、こうした動きは、同業のリサーチ企業大手に対してはシステムの融通性、マーケティング企業に対してはリサーチ機能の面で優位性があることから、拡大したチャンスを同社が実にする可能性はより高まると考えられる。
ITソリューション事業では、2019年にサポタントとクロス・ジェイ・テックが合併し、Fittioが設立された。この「Fittio(フィッティオ)」という新ブランドを活用して、IT人材領域で積極的な事業展開・投資をしていく計画である。Fittioでは、ITやWeb業界での経験を持つ求職者に対して、サービス総合サイトのほか、雇用形態別にスタッフ(一般派遣/紹介予定派遣)、キャリア(人材紹介)、フリーランス(SES/業務委託)という3つの専門サイトを設け、幅広く人材にアプローチする考えである。また、ネットに溢れるファッションに関するデータを、AIなどを活用して画像解析から販売予測までをノウハウ化し、サービスとして展開していくことも検討している。
プロモーション事業では、内外リサーチ事業との連携により、プロモーションの精度アップというシナジーが生じている。しかし、さらに機能を向上するため外部との連携を強化する方針で、デジタルマーケティングの領域において、外部の(株)サイカと同社グループが業務提携した。国内トップのMMMツール「XICA magellan(マゼラン)」を軸に、クロス・マーケティングが認知度や好意度といった消費者意識データを週次・日次で調査・取得し、意識変化による事業成果への影響を可視化、ディーアンドエムは獲得単価を10%下げるコミット型のインターネット広告運用に利用する、という共同サービスを開始する。なおMMMツールとは、統計的な分析手法を用いて、様々なマーケティング施策が売上などの事業成果に与える効果を定量的に測定し、マーケティング投資の最適化やシミュレーションを行うツールである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 創業−2014年
クロス・マーケティンググループ<3675>は2003年の創業以来、その成長の過程で、ターニングポイントが3回あったと考えられる(「沿革」の項参照)。最初のターニングポイントは、2006年にVOYAGE GROUP(当時ECナビ)と資本・業務提携をしたことである。VOYAGE GROUP傘下のリサーチパネルに資本参加することで、リサーチパネルの有する70万人(当時)という大規模なモニターを獲得することができた。これにより電通リサーチ(現電通マクロミルインサイト)やビデオリサーチといったトップクラスのマーケティングリサーチ会社と資本提携することができ、設立後間もないのに大きく業容を拡大することができた。
2008年の東証マザーズ上場が2つ目のターニングポイントで、上場によって資金力と知名度が付いた。このため、楽天リサーチ(株)(現楽天インサイト(株))など大規模なモニターを持つ同業他社と業務提携することでパネル数を確保、一方、専門的な知識がなくてもアンケート画面の作成・カスタマイズができる「pyxis2」を開発、更なる業容の拡大へとつなげた。3つ目のターニングポイントは、持株会社化を機に大型M&Aや海外展開を加速した2013年−2015年である。これにより、サービス機能を拡充し、アジアにおける拠点開発を加速させている。
ウィングを広げ成長余地を拡大した直近5年
2. 2015年−2019年
2015年−2019年の直近5年間は、持続的な成長を実現するため、成長領域における積極的な事業拡大、収益力強化に向けた投資などを行うとともに、更なるグループシナジーを追求するなど、様々な取り組みを進めてきた。この結果、2014年に25%だった国内リサーチ事業以外の売上高構成比は、2019年には45%へと拡大した。
業績面では、Kadenceグループを中心に拡張を図った海外リサーチ事業で、運営面の課題から再構築を迫られ、2018年12月期−2019年12月期の構造改革につながった。しかし国内では、2015年にメディリードとディーアンドエムを設立、2019年にサポタントとクロス・ジェイ・テックを統合してFittioを設立するなど、子会社の設立や譲受、統合を積極化し、さらに大きくウィングを広げる一方、子会社運営の効率化も進めた。以上から、2015年以降に展開を始めた新規事業・エリアの売上高平均成長率は、85%という非常に高い伸び率になった。こうした動きは次なる成長につながる動きであり、将来振り返ってみたときに、この5年が第4のターニングポイントだったということになるかもしれない。
広げたウィングをデジタルトラスフォーメーションで強化
3. 2020年の取り組み
足元のITの急速な普及によって、ビッグデータがそこかしこに氾濫するようになった。マーケティング面においても、顧客がそうしたデータを自動的に蓄積できるようになってきたが、一方で精緻に解析・応用することがより大きな課題となっている。これを解決するのが、顧客のデータと同社のリサーチデータやコンサルティングなどを最速最適に結び付ける、マーケティングソリューションとデジタルトランスフォーメーションの融合ということになるだろう。今後同社は、マーケティングソリューションとデジタルトランスフォーメーションの2軸によって、こうした新たな局面に取り組み、顧客のマーケティングを支援していくことになると考えられる。
一方、デジタルトランスフォーメーションは、同社自身にも次なる成長と自動化による原価低減というチャンスを与える。例えば、メディリードでは、患者のヘルスケアリサーチだけでなく、医薬という特化した専門分野でコンサルティングやデータサイエンス(分析)、論文支援など、最適解としての高付加価値のサービスが可能となる。一方、高度デジタル化によってサーバー内アセットの活用やアンケートレポートの作成などネットリサーチの自動化が促進され、最速化による生産性の向上が見込まれる。なお、こうした動きは、同業のリサーチ企業大手に対してはシステムの融通性、マーケティング企業に対してはリサーチ機能の面で優位性があることから、拡大したチャンスを同社が実にする可能性はより高まると考えられる。
ITソリューション事業では、2019年にサポタントとクロス・ジェイ・テックが合併し、Fittioが設立された。この「Fittio(フィッティオ)」という新ブランドを活用して、IT人材領域で積極的な事業展開・投資をしていく計画である。Fittioでは、ITやWeb業界での経験を持つ求職者に対して、サービス総合サイトのほか、雇用形態別にスタッフ(一般派遣/紹介予定派遣)、キャリア(人材紹介)、フリーランス(SES/業務委託)という3つの専門サイトを設け、幅広く人材にアプローチする考えである。また、ネットに溢れるファッションに関するデータを、AIなどを活用して画像解析から販売予測までをノウハウ化し、サービスとして展開していくことも検討している。
プロモーション事業では、内外リサーチ事業との連携により、プロモーションの精度アップというシナジーが生じている。しかし、さらに機能を向上するため外部との連携を強化する方針で、デジタルマーケティングの領域において、外部の(株)サイカと同社グループが業務提携した。国内トップのMMMツール「XICA magellan(マゼラン)」を軸に、クロス・マーケティングが認知度や好意度といった消費者意識データを週次・日次で調査・取得し、意識変化による事業成果への影響を可視化、ディーアンドエムは獲得単価を10%下げるコミット型のインターネット広告運用に利用する、という共同サービスを開始する。なおMMMツールとは、統計的な分析手法を用いて、様々なマーケティング施策が売上などの事業成果に与える効果を定量的に測定し、マーケティング投資の最適化やシミュレーションを行うツールである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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