■日本モーゲージサービス<7192>の今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
2020年3月期からスタートしている3ヶ年の中期経営計画では、2022年3月期の業績目標として連結営業収益で9,000百万円、営業利益で1,700百万円を目標に掲げている。2019年3月実績と比較すると営業収益で43.6%増、営業利益で46.7%増となる。また、事業セグメント別で見ても、すべての事業セグメントで収益拡大を目指す計画となっており、3年目の2022年3月期に加速する計画となっている。2019年3月期比での営業利益の増加幅で見ると、住宅瑕疵保険等事業が310百万円増と最も寄与度が大きくなる。
計画の前提となる住宅業界の環境認識については、新築住宅市場が中長期的に緩やかな縮小局面に入り、そのなかで人手不足や資材・人件費の上昇等、住宅関連事業者の経営環境は厳しい状況が続くと考えている一方で、ストック市場については年々増加しており、生涯顧客モデルを軸としたストック住宅市場における成長ポテンシャルは高いと見ている。
こうしたなかで、成長戦略として「各事業を深掘りし、各シェア拡大」「クラウドシステムによる“パイプ戦略“」の2つを注力していく方針となっている。
(2) 成長戦略
a) シェア拡大戦略
1) 住宅ローン店舗拡大によるシェアアップ
シェア拡大戦略として、住宅金融事業では住宅ローン店舗を年間10店舗ペースで出店していくことでシェア拡大を進めていく。出店戦略のポイントは、大口取引先の支援等をしやすい拠点を中心に開設していくほか、従来は手薄だった大都市圏への出店を推進し、シェアを拡大していく戦略となる。
もちろん、店舗を出店するだけでは意味がなく、高いパフォーマンスを出せる優秀な人材の採用・育成が重要となる。住宅と金融の知識を兼ね備えるだけでなく、住宅関連企業の懐に飛び込み、当該企業が抱える課題を解決に導くコンサルティング能力を併せ持つことが必要と考えており、潜在能力のある人材を採用に努めている。
2) 戦略顧客への営業推進によるシェアアップ
戦略顧客として戸建住宅市場における大手ビルダー約370社並びに共同住宅市場における大手デベロッパーをそれぞれターゲットとして設定し、ターゲットに応じた営業を推進していくことでシェア拡大を図っていく。
戸建住宅の大手ビルダー向けには、「助っ人クラウド」による生産性改善・合理化提案を行っていくと同時に、住宅瑕疵保険の販売促進や地盤保証、その他商品、住宅ローンの提供など提供商品を縦積みしていくことで手数料収入を積み上げていく。「助っ人クラウド」で提供する各種業務支援ツールを無料化する代わりに、保険や保証サービス、金融商品等の取扱件数を増やし、そこから得られる手数料収入で収益を拡大していくモデルとなる。住宅瑕疵保険については、2019年3月期で約3万戸(市場シェア約13%)であったものを2022年3月期に2倍となる約6万戸(同約25%)に拡大することを目標としている。
一方、共同住宅の大手デベロッパー向けでは、住宅設備延長修理保証や緊急駆け付け保証等の各種保証プログラムの販売促進に取り組む。マンションでは駆け付けサービス等のニーズも拡大しており、潜在的なポテンシャルは大きく、その他新たな商品開発も進めていく。
b) クラウドによる“パイプ戦略”
「助っ人クラウド」を通じてグループ商品の提供を拡大していくほか、キャプティブ・ファイナンスにより住宅関連事業者のメインバンクの役割を果たせるような新サービスの開発を計画している。2020年4月の民法改正で、従来、元請け業者と下請け業者の間で交わされていた債権譲渡禁止特約事項が無効とされることになり、これによって債権買取りによる融資サービス(ファクタリング、債権流動化サービス等)を提供することが可能となった。従来、売上債権は反社会的団体や悪意のある第3者に譲渡されるリスクがあったため特約事項で制限を設けてきたが、下請け企業保護の観点から資金繰り問題を解消するため、債権の譲渡を行えるようにする。
従来、中小・零細企業への融資については地域の金融機関がその役割を担ってきたが、ここ数年はその機能が衰退しており、同社が新規参入してこれら需要を取り込んでいくことは十分可能と見られる。潜在的な市場規模は数兆円規模になると見られ、成長ポテンシャルは極めて大きい。同社では、「助っ人クラウド」を通じて、ブロックチェーン技術の活用などにより信頼性を担保していくことにしている。2021年3月期から同社の考えに賛同する企業と共同で実証試験を開始し、問題がなければ2022年3月期以降、本格的にサービス展開していくことになる。
その他にも「助っ人クラウド」で提供できる新たな機能を複数開発中であり、住宅業界の中でITを活用した金融サービスや業務支援サービスを積極的に拡充していくことで、顧客企業の経営効率化に貢献し、相互に成長していくことを目指していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
2020年3月期からスタートしている3ヶ年の中期経営計画では、2022年3月期の業績目標として連結営業収益で9,000百万円、営業利益で1,700百万円を目標に掲げている。2019年3月実績と比較すると営業収益で43.6%増、営業利益で46.7%増となる。また、事業セグメント別で見ても、すべての事業セグメントで収益拡大を目指す計画となっており、3年目の2022年3月期に加速する計画となっている。2019年3月期比での営業利益の増加幅で見ると、住宅瑕疵保険等事業が310百万円増と最も寄与度が大きくなる。
計画の前提となる住宅業界の環境認識については、新築住宅市場が中長期的に緩やかな縮小局面に入り、そのなかで人手不足や資材・人件費の上昇等、住宅関連事業者の経営環境は厳しい状況が続くと考えている一方で、ストック市場については年々増加しており、生涯顧客モデルを軸としたストック住宅市場における成長ポテンシャルは高いと見ている。
こうしたなかで、成長戦略として「各事業を深掘りし、各シェア拡大」「クラウドシステムによる“パイプ戦略“」の2つを注力していく方針となっている。
(2) 成長戦略
a) シェア拡大戦略
1) 住宅ローン店舗拡大によるシェアアップ
シェア拡大戦略として、住宅金融事業では住宅ローン店舗を年間10店舗ペースで出店していくことでシェア拡大を進めていく。出店戦略のポイントは、大口取引先の支援等をしやすい拠点を中心に開設していくほか、従来は手薄だった大都市圏への出店を推進し、シェアを拡大していく戦略となる。
もちろん、店舗を出店するだけでは意味がなく、高いパフォーマンスを出せる優秀な人材の採用・育成が重要となる。住宅と金融の知識を兼ね備えるだけでなく、住宅関連企業の懐に飛び込み、当該企業が抱える課題を解決に導くコンサルティング能力を併せ持つことが必要と考えており、潜在能力のある人材を採用に努めている。
2) 戦略顧客への営業推進によるシェアアップ
戦略顧客として戸建住宅市場における大手ビルダー約370社並びに共同住宅市場における大手デベロッパーをそれぞれターゲットとして設定し、ターゲットに応じた営業を推進していくことでシェア拡大を図っていく。
戸建住宅の大手ビルダー向けには、「助っ人クラウド」による生産性改善・合理化提案を行っていくと同時に、住宅瑕疵保険の販売促進や地盤保証、その他商品、住宅ローンの提供など提供商品を縦積みしていくことで手数料収入を積み上げていく。「助っ人クラウド」で提供する各種業務支援ツールを無料化する代わりに、保険や保証サービス、金融商品等の取扱件数を増やし、そこから得られる手数料収入で収益を拡大していくモデルとなる。住宅瑕疵保険については、2019年3月期で約3万戸(市場シェア約13%)であったものを2022年3月期に2倍となる約6万戸(同約25%)に拡大することを目標としている。
一方、共同住宅の大手デベロッパー向けでは、住宅設備延長修理保証や緊急駆け付け保証等の各種保証プログラムの販売促進に取り組む。マンションでは駆け付けサービス等のニーズも拡大しており、潜在的なポテンシャルは大きく、その他新たな商品開発も進めていく。
b) クラウドによる“パイプ戦略”
「助っ人クラウド」を通じてグループ商品の提供を拡大していくほか、キャプティブ・ファイナンスにより住宅関連事業者のメインバンクの役割を果たせるような新サービスの開発を計画している。2020年4月の民法改正で、従来、元請け業者と下請け業者の間で交わされていた債権譲渡禁止特約事項が無効とされることになり、これによって債権買取りによる融資サービス(ファクタリング、債権流動化サービス等)を提供することが可能となった。従来、売上債権は反社会的団体や悪意のある第3者に譲渡されるリスクがあったため特約事項で制限を設けてきたが、下請け企業保護の観点から資金繰り問題を解消するため、債権の譲渡を行えるようにする。
従来、中小・零細企業への融資については地域の金融機関がその役割を担ってきたが、ここ数年はその機能が衰退しており、同社が新規参入してこれら需要を取り込んでいくことは十分可能と見られる。潜在的な市場規模は数兆円規模になると見られ、成長ポテンシャルは極めて大きい。同社では、「助っ人クラウド」を通じて、ブロックチェーン技術の活用などにより信頼性を担保していくことにしている。2021年3月期から同社の考えに賛同する企業と共同で実証試験を開始し、問題がなければ2022年3月期以降、本格的にサービス展開していくことになる。
その他にも「助っ人クラウド」で提供できる新たな機能を複数開発中であり、住宅業界の中でITを活用した金融サービスや業務支援サービスを積極的に拡充していくことで、顧客企業の経営効率化に貢献し、相互に成長していくことを目指していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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