S&P500月例レポート(19年11月配信)<前編>

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最新投稿日時:2019/11/22 20:00 - 「S&P500月例レポート(19年11月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(19年11月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年10月
市場の関心は企業決算に集中

 1970年代中期に活躍したKC & ザ・サンシャイン・バンドのかつての大ヒット曲「That’s The Way(I Like It)」では、“that’s the way, uh-huh I like it, uh-huh, uh-huh (そうそうこの調子で行こう…すごくいいね…)”と歌われていました。この曲は全く私の趣味ではありませんが、10月の市場関係者の耳にはひどく心地よく響いたことでしょう。

 S&P 500指数は今年に入ってから14回目と15回目となる終値での最高値更新を記録し、2016年11月の大統領選挙以降での最高値更新は105回を数えました。10月は世界的に政治関係の話題が大きく取り上げられましたが、米国では決算発表に市場の関心が集中し、正式署名の時期と場所はさておき、対中貿易協議で「第1段階」の合意に達したことや米連邦公開市場委員会(FOMC)による今年3回目となる利下げ決定、英国の3度目となるEU離脱期限の延期、そして景気後退を示唆する指標が見当たらないことなどは、ほとんど材料視されませんでした。

 市場は活発な取引という投票行動を通じて、S&P 500指数と投資家に勝利をもたらしました。結論として、10月時点での株式市場の年初来の上昇率は21.17%(配当込みのトータルリターンは23.16%)となりました。一部では11月のポジションを手仕舞う声も聞かれました(強欲な投資家でさえ休暇を取るか、万が一に備えて短期の金融商品に幾らか残しておくことを検討しているようです)。今のところ全員が楽観主義者となっているか、少なくともそのようだと言われており、通常より低調な売買が続き(驚くほどです)、ボラティリティも低くなっており、下半期の値幅(高値と安値の差)は8.1%(今年上半期は21.3%、2018年は25.3%)に縮小しています。しかし、ここにきて再び過去最高を更新(あるいはその近辺で推移)しています。

 過去の実績を見ると、10月は57.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.17%、下落した月の平均下落率は4.72%、全体の平均騰落率は0.41%の上昇となっています。11月は60.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.87%、下落した月の平均下落率は4.25%、全体の平均騰落率は0.72%の上昇となっています。

 今後のFOMCのスケジュールは、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日、3月17日-18日、4月28日-29日、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、そして2021年が1月26日-27日となっています。

主なポイント

 ○今年の10月はいわゆる「大虐殺」と呼ばれるような暴落は起きませんでした。S&P 500指数は今年に入ってから14回目と15回目となる終値での最高値更新を達成しました(2016年の大統領選挙以降では105回を記録)。10月の株式市場は2.04%上昇しました(9月は1.72%上昇、8月は1.81%下落)。政治面では再び弾劾調査が浮上してきましたが、すでに下方修正されていた事前予想を上回る決算発表が相次ぎ、貿易問題もどうやら良い「段階」へと進んでいるように思われる中、市場では神経質な動きや警戒ムードが一部で見られたとはいえ、楽観的な見方が支配的でした。結論として、株式市場の年初来の上昇率は21.17%となりました。一部では11月のポジションを手仕舞う声も聞かれました(強欲な投資家でさえ休暇を取るか、万が一に備えて短期の金融商品で幾らか残しておくことを検討しているようです)。

 ○10月のS&P 500指数は2.04%上昇しました(配当込みのトータルリターンは2.17%)。過去3カ月のリターンは1.92%(同2.43%)、年初来のリターンは21.17%(同23.16%)と、年初から10カ月では2013年の23.16%上昇以来の最高の上昇率を記録しました(2013年の年間騰落率は29.60%の上昇)。

 ○2009年3月9日に始まった強気相場の上昇率は349%(年率換算で15.15%)、配当込みのトータルリターンはプラス461%(同プラス17.58%)となりました。

 ○FOMCは事前予想通り、今年に入ってから3度目となる0.25%の利下げを(8対2で)決定しました(2011年~2018年まで10回利上げを実施し、2007年~2008年にかけては12回利下げを実施)。今回の声明文では景気拡大を維持するために「適切に行動する」という文言が削除されており、追加利下げに対するハードルを引き上げたことが示されました。これに対し株式市場の反応は薄く、債券市場では利回りがわずかに低下しました。

 ○月中に1ポンド=1.30ドルを突破する場面もあった英ポンドは、9月末の1ポンド=1.2291ドルから1.2928ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは9月末の1ユーロ=1.0900ドルから1.1154ドルに上昇しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は9月末の1ドル=108.05円から108.02円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は9月末の1ドル=7.1485元から7.0387元に上昇しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は9月末の1バレル=54.31ドルから54.14ドルに下落して月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、9月末の1ガロン=2.737ドルから2.692ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は9月末の1トロイオンス=1,480.50ドルから1,515.40ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は9月末の16.24から13.22に下落して月を終えました。月中の最高は21.46、最低は12.27でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ○第3四半期の利益は、予想が年初から9.6%下方修正されていましたが、新たに引き下げられていた事前予想を上回りました(2019年第2四半期の7.1%下方修正されたEPS予想と同様)。利益が予想を上回った銘柄の割合は全体の75.2%(過去平均は67%)、売上高が予想を上回った銘柄の割合は60.5%でした。

  →第3四半期の利益予想は、期初来で1.9%、2018年末からは9.6%引き下げられました。現在は前期比で0.3%の減益、過去最高となった2018年第3四半期からは3.3%の減益が予想されています。

  →第4四半期に関しては楽観ムードが続いています。同四半期の利益予想は2019年9月からは2.8%、2018年末からは9.4%引き下げられています。好調な年末商戦を背景に前期比では2.5%の増益が見込まれており、第4四半期としては過去最高を記録する見通しです(ただ、それでも過去最高を記録した2018年第3四半期には届きません)。

  →2019年は前年比で5.0%の増益が見込まれ、大統領選挙がある2020年に関しては11.5%の増益を市場は夢見ています。

 ○第3四半期の自社株買いのうち59.3%が発表され、合計額は同銘柄ベースで前期比3.5%増、前年同期比で4.3%減となっており、第3四半期の自社株買い額は1,710億ドルあたりに落ち着くとみられます。

  →1,700億ドルあたりであれば、株式(買い)を支えるには十分で、株式数の減少によりEPSの押し上げにつながると「期待」しています。本稿執筆時点で、株式数の減少によりEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄の割合は24.7%で、2019年第2四半期は24.2%、2018年第3四半期は17.7%でした。

 ○第3四半期の設備投資のうち59.4%が発表され、合計額は同銘柄ベースで前期比2.0%増、前年同期比で2.6%増となっています。

 ○第3四半期の現金配当は過去最高を付け(1株当たり14.80ドル、合計1,232億ドル)、支払済みおよび宣言済みの配当率に基づくと、第4四半期および通年で再び過去最高を記録しそうです。

 ○ビットコインは9月末の8,265ドル(8月末は8,534ドル)から上昇して9,229ドルで月を終えました。月中の最高は10,022ドル、最低は7,447ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ○1年後の目標値はS&P 500指数が3,316(現在値から9.2%上昇、9月末時点の目標値は3,305)、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は29,380ドルとなっています(同8.6%上昇、同29,715ドル)。

トランプ大統領と政府高官

 ○米議会下院は、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の電話での会話を巡り、トランプ大統領に対する弾劾手続きを進めるか否かを判断するための弾劾調査(事実調査)を開始しました(手続きを進める場合、下院本会議で採決を行い、弾劾への賛成票が過半数に達すれば、上院本会議で採決を行いますが、トランプ大統領の罷免には3分の2の賛成票が必要です)。トランプ大統領はこれに対し、中国とウクライナはバイデン氏(オバマ政権の副大統領で、2020年大統領選でトランプ大統領に対抗する民主党最有力候補)の調査をするべきだと主張し、弾劾手続きについて「ばかげている」と反発しました。

  →下院は弾劾調査の一環として証人を呼びましたが、その一部に対してホワイトハウスから妨害があり、下院は召喚状を送付しました(最終的に裁判所で判断される見込みです)。

  →10月最終日に、下院は弾劾調査を正式に進めて公開すること(これまでは非公開)を決定しました。証人は議員(両党)から質問を受け、タイムリミットはありません。

 ○世界貿易機関(WTO)は、欧州諸国がAirbus(EADSY)に不当な政府補助金を提供していたことへの対抗措置として、米国が欧州の輸出品75億ドル相当(年間)に報復関税を課すことを認めました。トランプ政権はこれを受けて新たに10%~25%の追加関税を発動しました(シングルモルト・スコッチも含まれています ―― 「マッカラン」に手を出さないでほしいです)。

 ○米中は貿易協議が「第1段階」の合意に達したとして、正式な合意文書の作成を進め(一部で協議が続いていた模様です)、米国は予定していた対中関税を延期しました。

  →2019年11月16~17日にチリのサンティアゴで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(トランプ大統領と習近平国家主席がともに出席予定)で第1段階の合意に正式署名することを目指し、水面下で協議が続きました。しかし、チリは格差問題を巡る国内の混乱を理由に予定されていた首脳会議を中止しました。

 ○トランプ大統領がシリア北部から米軍を撤退させると、トルコは同地域に侵攻し、敵対するクルド人武装勢力を攻撃しました。これを受けてトランプ大統領はトルコの対米鉄鋼輸出に関税を課して停戦を求め、トルコは停戦を受け入れました。

中央銀行関連の動き

 ○2019年9月17日-18日のFOMC議事録では、緩和の必要はないと考えるタカ派的発言も多かったものの依然としてハト派が優勢だった模様で、市場は引き続き、10月29日-30日の会合での追加利下げを予想していました(12月10日-11日が年内最後の会合です)。議事録は、貿易政策に伴うリスクに対する懸念が持続していることも示していました。

 ○パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、最近の流動性の逼迫が再燃することを回避するために、FRBは短期国債の買い入れを進める意向であるが、これは量的緩和(QE)の再開ではないとの見方を示しました。

 ○FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)は、経済は「わずかなペースから緩やかなペース」で拡大するとの見通しを示し、景気の減速を示唆しました。

 ○欧州中央銀行(ECB)ではドラギ総裁による最後の政策理事会が開かれ、政策金利は据え置かれました。ECB総裁は再任なしの8年任期で、後任には前国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏が就任します。

 ○スウェーデン中銀のリクスバンクは政策金利を-0.25%に据え置きましたが、2019年12月の金融政策決定会合で5年間続いたマイナス金利から脱却するとの見通しを示しました。ウクライナ中央銀行は今年4回目となる利下げを行い、政策金利を16.5%から15.5%に引き下げました。トルコ中央銀行はインフレ率の低下を受けて、政策金利を2.5%引き下げて14.0%としました。ノルウェー中央銀行は政策金利を据え置きました。

 ○FOMCは事前予想通り、今年に入ってから3度目となる0.25%の利下げを(8対2で)決定しました(2011年~2018年まで10回利上げを実施し、2007年~2008年にかけては12回利下げを実施)。今回の声明文では景気拡大を維持するために「適切に行動する」という文言が削除され、追加利下げに対するハードルを引き上げたことが示されました。株式市場の反応はすぐには見られず、国債利回りはわずかに低下しましたが、最終的に株価は上昇し、S&P 500指数は30日に終値での最高値を更新して引けました。米国の利下げを受け、米ドルとのペッグ制を採用している香港が追随し、香港金融管理局(HKMA)は政策金利を0.25%引き下げました。

 ○日銀の金融政策決定会合では金利は据え置かれましたが、将来の利下げの可能性が示唆されました。

企業業績

 ○2019年第3四半期の利益予想は、第1四半期や第2四半期と同様に下方修正されており、決算発表の序盤も前2四半期と同様に下方修正後の予想は上回っているものの、修正前の予想には届いていません。具体的には、第3四半期の利益予想は2018年末から9.6%、2019年6月末(第3四半期の初め)から5.7%、それぞれ引き下げられています。現時点での第3四半期決算の状況は以下の通りです。

  →これまでに、S&P 500指数構成銘柄の67.1%、時価総額ベースで73.5%に相当する339銘柄が決算発表を終えています。

  →→339銘柄のうち、255銘柄(75.2%、過去平均は66.6%)で利益が予想を上回りました。

  →→売上高に関しては334銘柄中202銘柄(60.5%)が予想を上回りました。

 ○現時点において、第3四半期の全体の利益は前期比で0.3%の若干の減益、過去最高だった前年同期比で3.3%の減益が見込まれています。

  →2019年第4四半期の利益は第3四半期を上回る見通しですが、過去最高には届かず、前期比で2.5%の増益、落ち込んだ2018年第4四半期と比べると17.2%の増益となる見通しです。

  →2019年は前年比で5.0%の増益、2020年は同11.5%の増益が見込まれています。

  →株式数による影響も続いており、決算発表を終えている企業のうち、株式数の減少によってEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄(つまり、利益の総額は横ばいながら、1株当たりでは4%以上上昇)の割合は24.7%となりました。この割合は、2019第2四半期は24.2%、2018年第3四半期は17.7%で、最近で最も高かったのは2016年第1四半期の28.2%でした。

<後編>へ続く


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配信元: みんかぶ株式コラム

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