■事業概要
1. 主な事業内容
イチネンホールディングス<9619>の事業セグメントは、自動車リース関連、ケミカル、パーキング、機械工具販売、合成樹脂、その他に分けられている。各セグメントの売上高(2019年3月期実績)は自動車リース関連48,718百万円(構成比55.2%)、ケミカル11,173百万円(同12.7%)、パーキング5,651百万円(同6.4%)、機械工具販売17,306百万円(同19.6%)、合成樹脂5,156百万円(同5.8%)、その他178百万円(同0.3%)となっている。またセグメント別営業利益(同)は、自動車リース関連3,807百万円(同60.9%)、ケミカル1,154百万円(同18.5%)、パーキング869百万円(同13.9%)、機械工具販売285百万円(同4.6%)、合成樹脂229百万円(同3.7%)、その他90百万円の損失(同-1.6%)であった。
(1) 自動車リース関連事業
この部門はさらに以下のようなサブセグメントに分けられる。
a) オートリース
(株)トヨタレンタリースやオリックス<8591>などと同様に、自動車のリースを行う事業。したがって競合他社は多いが、特色としては比較的大型車(4トン以上)の取扱いが少ない。またメンテナンス部門を有していることから、メンテナンス付きで受注する場合も多い。リースは一度受注すると数年間継続することから、比較的安定した部門である。
b) 自動車メンテナンス受託
全国約8,300の自動車整備工場と提携し、他のリース会社からのメンテナンス契約を受託するもの。この部門の売上高は他社から受託したものだけで、自社リースに付随したメンテナンスはオートリース売上高に含まれる。
c) 燃料販売
石油元売各社から発行されるガソリンスタンド(GS)用の給油カードを主に販売する事業。車両1台に対して1枚のカードが発行されるが、販売先は必ずしも同社のリース先とは限らない。ガソリンの販売価格は同社が決定し全国一律価格で提供される。顧客にとっては、全国の支店や事業所等での利用を同一価格で一括請求してもらえるため、業務効率の改善につながるメリットがある。なお同社の売上高として計上されているのは、末端販売金額から仕入金額を差引いた分だけである。
d) 車体修理管理サービス
主に鈑金修理の斡旋を行う事業。損害保険会社出身のアジャスター(損害査定士)と呼ばれる社員が、顧客からの修理依頼に基づいて適正価格の見積もりを行い、全国各地の鈑金工場と交渉を行うもの。引取手数料無料、代車の無料手配、修理箇所の永久保証などのサービスを付加し他社との差別化を図っている。
各サブセグメントの詳細売上高は開示されていないが、部門売上高に占める大体の比率は、リースが約71%、メンテナンスが約23%、燃料販売が約4%、残りがその他となっている。
(2) ケミカル事業
主力製品は、プロ向けケミカル(潤滑剤、防錆剤、各種洗浄剤、補修塗料等)。その他には発電用大型ボイラー及び船舶エンジン向け燃料添加剤、一般消費者向けケミカル(自動車用クリンビュー等)、特殊ケミカル(ゴム、エラストマーなどの難密着素材へのコーティングや各種OA部品向けケミカル製品等)などを扱っている。部門の約76%が自社製品で残り約24%が仕入商品であるため、部門の粗利率は高い(30~50%)。また海外展開の強化として、2015年6月に上海で合弁会社を設立した。
(3) パーキング事業
土地所有者から土地を借りて駐車場事業を行うもので、コイン式、立体式、管理受託など契約形態は様々。全国展開しているが、関西地区の比率(約63%)が高くなっている。また、総合病院や大型の商業施設に附帯する駐車場の運営管理にも注力している。
(4) 機械工具販売事業
既述のように同社は自動車メンテナンス受託事業の関連で全国約8,300の自動車整備工場と提携しているが、これらの整備工場向けに機械工具を販売することでシナジーが得られるとして、この事業に参入した。複数の子会社で事業を行っているが、歴史が長い(株)イチネン前田(現:(株)イチネンMTM)は主に自動車用工具と産業用工具を扱っている。(株)イチネンTASCOは空調工具、環境計測器を扱っているが、空調工具では業界一の売上実績があり「TASCO」ブランドは高い信頼を得ている。また(株)イチネンミツトモ(現:(株)イチネンMTM)は電動工具やDIY用品を扱っているが、オリジナルブランドによる幅広い製品ラインアップをそろえている。近年は、子会社(株)イチネンネットを通してネット販売も強化している。また海外展開の強化として、2015年4月にタイで合弁会社を設立した。
また2018年8月に(株)トヨシマの事業を吸収分割により継承したが、2019年4月1日付で(株)トヨシマを存続会社として(株)イチネン前田、(株)イチネンミツトモ、(株)ゴンドー、(株)イチネンSHOKOの4社を吸収合併し、(株)イチネンMTMに商号変更している。
(5) 合成樹脂事業
このセグメントはさらに3つのサブセグメントに分けられるが、合成樹脂事業では熱可塑性の合成樹脂原料を扱っている。アミューズメント事業は、主にパチスロ機の筐体部分を設計、製造するもので、商社及びメーカー機能を合わせ持っている。その他に酸素濃度計、ガス検知警報機の開発・製造・販売も行っている。
(6) その他
新規事業である農業、遊休不動産の賃貸・管理事業などが含まれる。
2. 特色、強み
同社の特色及び強みを要約すると以下のようになる。
(1) 変化に強く、安定性がある
多角化経営により、環境の変化に対して柔軟な対応が可能。さらに業績の増減をそれぞれの事業でカバーし合うことで、全体としては安定した経営を継続的に行うことが可能である。
(2) グループ一体経営
グループ間のシナジーを最大限に生かし、グループ全体で成長を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<MH>
1. 主な事業内容
イチネンホールディングス<9619>の事業セグメントは、自動車リース関連、ケミカル、パーキング、機械工具販売、合成樹脂、その他に分けられている。各セグメントの売上高(2019年3月期実績)は自動車リース関連48,718百万円(構成比55.2%)、ケミカル11,173百万円(同12.7%)、パーキング5,651百万円(同6.4%)、機械工具販売17,306百万円(同19.6%)、合成樹脂5,156百万円(同5.8%)、その他178百万円(同0.3%)となっている。またセグメント別営業利益(同)は、自動車リース関連3,807百万円(同60.9%)、ケミカル1,154百万円(同18.5%)、パーキング869百万円(同13.9%)、機械工具販売285百万円(同4.6%)、合成樹脂229百万円(同3.7%)、その他90百万円の損失(同-1.6%)であった。
(1) 自動車リース関連事業
この部門はさらに以下のようなサブセグメントに分けられる。
a) オートリース
(株)トヨタレンタリースやオリックス<8591>などと同様に、自動車のリースを行う事業。したがって競合他社は多いが、特色としては比較的大型車(4トン以上)の取扱いが少ない。またメンテナンス部門を有していることから、メンテナンス付きで受注する場合も多い。リースは一度受注すると数年間継続することから、比較的安定した部門である。
b) 自動車メンテナンス受託
全国約8,300の自動車整備工場と提携し、他のリース会社からのメンテナンス契約を受託するもの。この部門の売上高は他社から受託したものだけで、自社リースに付随したメンテナンスはオートリース売上高に含まれる。
c) 燃料販売
石油元売各社から発行されるガソリンスタンド(GS)用の給油カードを主に販売する事業。車両1台に対して1枚のカードが発行されるが、販売先は必ずしも同社のリース先とは限らない。ガソリンの販売価格は同社が決定し全国一律価格で提供される。顧客にとっては、全国の支店や事業所等での利用を同一価格で一括請求してもらえるため、業務効率の改善につながるメリットがある。なお同社の売上高として計上されているのは、末端販売金額から仕入金額を差引いた分だけである。
d) 車体修理管理サービス
主に鈑金修理の斡旋を行う事業。損害保険会社出身のアジャスター(損害査定士)と呼ばれる社員が、顧客からの修理依頼に基づいて適正価格の見積もりを行い、全国各地の鈑金工場と交渉を行うもの。引取手数料無料、代車の無料手配、修理箇所の永久保証などのサービスを付加し他社との差別化を図っている。
各サブセグメントの詳細売上高は開示されていないが、部門売上高に占める大体の比率は、リースが約71%、メンテナンスが約23%、燃料販売が約4%、残りがその他となっている。
(2) ケミカル事業
主力製品は、プロ向けケミカル(潤滑剤、防錆剤、各種洗浄剤、補修塗料等)。その他には発電用大型ボイラー及び船舶エンジン向け燃料添加剤、一般消費者向けケミカル(自動車用クリンビュー等)、特殊ケミカル(ゴム、エラストマーなどの難密着素材へのコーティングや各種OA部品向けケミカル製品等)などを扱っている。部門の約76%が自社製品で残り約24%が仕入商品であるため、部門の粗利率は高い(30~50%)。また海外展開の強化として、2015年6月に上海で合弁会社を設立した。
(3) パーキング事業
土地所有者から土地を借りて駐車場事業を行うもので、コイン式、立体式、管理受託など契約形態は様々。全国展開しているが、関西地区の比率(約63%)が高くなっている。また、総合病院や大型の商業施設に附帯する駐車場の運営管理にも注力している。
(4) 機械工具販売事業
既述のように同社は自動車メンテナンス受託事業の関連で全国約8,300の自動車整備工場と提携しているが、これらの整備工場向けに機械工具を販売することでシナジーが得られるとして、この事業に参入した。複数の子会社で事業を行っているが、歴史が長い(株)イチネン前田(現:(株)イチネンMTM)は主に自動車用工具と産業用工具を扱っている。(株)イチネンTASCOは空調工具、環境計測器を扱っているが、空調工具では業界一の売上実績があり「TASCO」ブランドは高い信頼を得ている。また(株)イチネンミツトモ(現:(株)イチネンMTM)は電動工具やDIY用品を扱っているが、オリジナルブランドによる幅広い製品ラインアップをそろえている。近年は、子会社(株)イチネンネットを通してネット販売も強化している。また海外展開の強化として、2015年4月にタイで合弁会社を設立した。
また2018年8月に(株)トヨシマの事業を吸収分割により継承したが、2019年4月1日付で(株)トヨシマを存続会社として(株)イチネン前田、(株)イチネンミツトモ、(株)ゴンドー、(株)イチネンSHOKOの4社を吸収合併し、(株)イチネンMTMに商号変更している。
(5) 合成樹脂事業
このセグメントはさらに3つのサブセグメントに分けられるが、合成樹脂事業では熱可塑性の合成樹脂原料を扱っている。アミューズメント事業は、主にパチスロ機の筐体部分を設計、製造するもので、商社及びメーカー機能を合わせ持っている。その他に酸素濃度計、ガス検知警報機の開発・製造・販売も行っている。
(6) その他
新規事業である農業、遊休不動産の賃貸・管理事業などが含まれる。
2. 特色、強み
同社の特色及び強みを要約すると以下のようになる。
(1) 変化に強く、安定性がある
多角化経営により、環境の変化に対して柔軟な対応が可能。さらに業績の増減をそれぞれの事業でカバーし合うことで、全体としては安定した経営を継続的に行うことが可能である。
(2) グループ一体経営
グループ間のシナジーを最大限に生かし、グループ全体で成長を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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関連銘柄
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