[資源・新興国通貨2月の展望] 豪ドル:上値が重い展開か。米中通商協議の行方に注目
豪ドル
NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)が1月24日、住宅ローン金利を31日から0.12-0.16%引き上げると発表しました。資金調達コストの上昇が理由です。
2018年8月から9月にかけて、豪4大銀行のうち、3行(コモンウェルス銀、ウエストパック銀、ANZ)が相次いで住宅ローン金利を引き上げました。NABはその時に住宅ローン金利の引き上げに動きませんでしたが、結局は他の3行に追随した格好です。
NABの住宅ローン金利の引き上げは、豪ドルの上値を抑える要因になりそうです。住宅ローン金利の引き上げによってローンの借り手の金利負担が増大し、豪住宅市場を一段と冷え込ませる恐れがあるほか、金利負担の増大は個人消費を抑える要因になるためです
米国と中国の通商協議が1月30-31日に米ワシントンで開催されます。米国は3月1日までに中国と通商協議で合意できなければ、翌2日に中国に対して追加関税を発動する方針です。両国の貿易摩擦が解消に向かうとの期待が市場で高まれば、リスク回避の動きが和らいで、豪ドルの支援材料となる可能性もあります。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)が2月13日に政策金利を発表します。その結果がその後のNZドルの動向に影響を与える可能性があります。
政策金利は現行の1.75%に据え置かれるとみられます。今回の注目は、声明やオア総裁の会見、そして金融政策報告になりそうです。
RBNZは前回2018年11月の金融政策報告で、利上げ時期を2020年7-9月期との見通しを示しました。また、NZの18年7-9月期のGDP成長率については、前期比+0.7%と予測しましたが、実際は+0.3%にとどまりました。今回の金融政策報告では、GDP成長率見通しは下方修正されるとみられ、利上げ時期が後ズレする可能性もあります。その通りになれば、NZドルは上値が重い展開になりそうです。
NZドルはまた、米中通商協議の行方にも注目です。豪ドルと同様、米中貿易摩擦が解消に向かうとの期待が市場で高まれば、NZドルの支援材料になる可能性もあります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は1月9日の会合で、政策金利を1.75%に据え置くことを決定。声明では、「インフレ目標を達成するため、政策金利を時間をかけて中立レンジまで引き上げる必要がある」と表明し、追加利上げを示唆しました。
市場では、BOCが4月に追加利上げを行うとの観測もあります(3月6日の次回会合は据え置き予想)。FRB(米連邦準備理事会)など、他の主要国中銀が当面、金融政策の現状維持を続けるとみられるなか、BOCの追加利上げ観測があることは、カナダドルのプラス材料と考えられます。
原油価格が足もと反発傾向にあることもカナダドルの追い風です。原油価格が再び下落基調に転じなければ、カナダドルは当面、底堅く推移しそうです。
トルコリラ
トルコの1月CPI(消費者物価指数)が2月4日に発表されます。その結果がトルコリラの動向に影響を与える可能性があります。
2018年12月のCPIは前年比+20.30%と、TCMB(トルコ中銀)のインフレ目標の+5%を大きく上回ったものの、2カ月連続で低下しました。
トルコが抱える問題のひとつに高インフレがあるため、CPI上昇率が鈍化することはトルコ経済にとっては好ましい傾向と言えそうです。一方で、足もとのCPI上昇率の鈍化を受けて、市場ではTCMBが早期に利下げを行うとの観測が根強くあります。2月4日発表のCPI上昇率が前月から大きく鈍化すれば、利下げ観測が強まりそうです。TCMBの次回3月6日の会合に向けて、トルコリラには下落圧力が加わる可能性があります。
トルコリラはまた、エルドアン大統領の発言(TCMBの金融政策や米国との関係など)や、シリア情勢にも注意が必要です。
南アフリカランド
南アフリカランドは今月(1月)、対米ドルや対円で約1カ月半ぶりの高値を記録しました。南アフリカランドが堅調に推移した背景として、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ休止観測から米ドルが全般的に弱含んだことや、中国の景気支援策への期待が挙げられます。
足もとの南アフリカランドは経済指標などの独自材料に反応しにくい地合いとなっており、この状況は当面続きそうです。FRBの金融政策の先行きに対する市場の観測、米中通商協議(1/30-31)の結果、中国の経済政策に注目です。FRBの利上げ観測が一段と後退する、米中通商協議に進展がみられる、中国の景気対策への期待が一段と高まる、などがあれば、南アフリカランドは上値を試す展開になる可能性があります。
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