S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<前編>

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最新投稿日時:2019/01/19 11:00 - 「S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート(2019年1月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2018年12月
●12月としては1931年以来の大幅な下落

 S&P 500指数は12月に再び大幅な下落に転じました。これまで12月は73.3%の確率で上昇していましたが、従来通りとはなりませんでした。ここ数ヵ月の動きを振り返ると、10月に6.94%と大きく下落した後、11月は1.94%の上昇で月を終えたものの、12月は再び9.18%下落し、12月としては1931年(マイナス14.53%)以降で最も悪く、月間ベースでは2009年2月(マイナス10.99%)以降で最悪の結果となりました。

 過去3ヵ月のリターン(マイナス13.97%)の重石となったのは、(1)世界経済の減速(一部の国では経済成長がマイナス)、(2)米中貿易摩擦(中国市場は大幅に下落したものの、報道によると両国政府は1月に貿易協議を開催する方向で調整中)、(3)原材料費や労働コストの上昇(原油価格の下落でコストや消費者への圧力はやや緩和したものの、影響はコアインフレに多少波及しており、警告を発する企業が増加)、(4)地政学問題(特に移民問題や国家主義的政策)などです。様々な要因が不透明感をもたらす中、投資家や企業は直面する問題に対応できず、市場の不安が高まると同時に信頼感は後退しました。

 S&P 500指数は2018年通年でも大幅に下落しました。2018年9月20日に付けた直近高値の2930.75(この時点では年初来で9.62%上昇、配当込みのトータルリターンはプラス11.16%)から14.46%下落し、年間では6.24%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス4.38%)と、2008年(マイナス38.49%)以来の最悪のパフォーマンスとなりました。ちなみに、2015年と2011年はいずれもリターンは-0.73%と-0.0025%でマイナスでしたが、配当込みのトータルリターンはそれぞれ+1.38%と+2.11%でプラスでした。こうした状況から2018年末のウォール街のムードもまちまちでしたが、エコノミストやストラテジストは景気の底堅さを強調し、テクニカル・アナリストはボラティリティ、下値支持線、成長減速を指摘するなど、悲観論より楽観論が勝っていました。結論としては、2019年最初の数日間はボラティリティが高まるとみられます。

 年明け取引初日の値動きがその年の相場の方向を言い当てた確率は50%で、コイン投げと変わりません。一方、1月の相場動向がその年の相場の方向性と一致する確率は71.1%です。例年、年明けの市場や取引の関心を集めるのは企業業績で、大手銀行を皮切りに決算発表シーズンが始まります。2019年1月14日にCitigroup、15日にはJP MorganとWells Fargoの発表が予定されています。今年は他にもテーマが満載で、政府機関の閉鎖(閉鎖に伴い経済指標の発表も少なくなるはず)や2018年に大きな注目を集め取引の材料となったワシントンの動向、民主党が多数派を占める下院の議会運営(両党とも自らの党利党略を優先しそうですが)のほか、国際貿易や関税問題、金利、歳出、成長減速など挙げればきりがありませんが、これらはボラティリティと不透明感が続くことを示しており、ボラティリティと不透明感に賭けることが米国市場での最善策でしょう。この見解を裏付けるために、以下にボラティリティに関する図表を掲載するとともに、安全のため、ご自身の流動性(誰かが言及して以来、市場の多くが警戒するようになった模様)、リスク許容度、ポートフォリオにも注意することを推奨します。
 

 

 

 
●「嘘には3種類ある。普通の嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ」(マーク・トウェイン)

○記憶に残る12月となりました(忘れた方がいいかもしれませんが)。S&P 500指数のパフォーマンス(マイナス9.18%)は12月としては1931年(マイナス14.53%)以降で最悪となり、見方によっては弱気相場入りとなりました(日中の水準に基づくと弱気相場入りに相当しますが、弊社は終値に基づいて分類しています)。月間では終値ベースの高値から14.46%の下落と、調整局面(マイナス10%)と弱気相場(マイナス20%)の中間点で12月を終え、通年では6.24%の下落で終わりました(9月には年初来で9.62%上昇していました)。

○S&Pグローバル総合指数:

 ・米国市場は12月に9.48%下落(11月は1.78%上昇、10月は7.50%下落)、2018年通年では7.02%下落

   ⇒時価総額は12月に2兆8790億ドル減少(11月は4730億ドル増加、10月は2兆2060億ドル減少)、2018年通年では2兆4600億ドル

 ・米国以外の市場は12月に4.86%下落(同0.92%上昇、同8.48%下落)、2018年通年では16.73%下落

   ⇒時価総額は12月に1兆990億ドル減少(11月は2080億ドル増加、10月は2兆2820億ドル減少)、2018年通年では4兆3270億ドル減少

○日中値幅は12月には2.56%と、11月の1.37%から上昇し、2018通年では1.21%と、2017年の0.51%(筆者のデータ開始年である1962年以降で最低。平均値は1.43%)から上昇しました。

○12月のS&P 500指数の出来高は、11月と比べて4%増加し(11月は、取引が活発だった10月(46%増)から12%減少)、前年同期比では28%増、1年間の平均月間出来高を13%上回りました。ボラティリティは上昇し、19営業日中10日で1%以上の変動となりました(上昇が2日、下落が8日。2018年通年では251営業日中で1%以上の上昇が32日、下落が32日)。これに対して、11月は1%以上変動した日数は21営業日中8日(上昇が5日、下落が3日)、10月は23営業日中10日(同5日、5日)で、7~9月の3ヵ月間はゼロでした。

○12月のS&P 500指数は2506.85で取引を終え(初めて2500を超えたのは2017年9月)、11月末の2760.17から9.18%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス9.03%)。11月は1.79%の上昇でした(同プラス2.04%)。日中ベースでは一時的に弱気相場入りしましたが(20%下落)、その後回復して終値ベースでは直近高値(9月20日の2930.75)から14.46%の下落にとどまったため、弱気相場入りを免れました。

○現実がほとんど「耳」に入る中、12月は世論が重要な役目を果たしました。

 ・米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を0.25%ポイント引き上げ、2019年に2回利上げを実施する可能性があるとの予想を示しました。ウォール街は1回と予想していましたが、2回利上げを実施しても金利水準は歴史的には低水準が続きます。

 ・国境の壁を巡る対立が主たる原因となり、政府機関が(再び)閉鎖されました。2019年1月3日には議会が招集され、民主党が多数派となった下院の議会運営がスタートしますが、両党の隔たりを埋めるのは「壁」を超えるよりも難しいでしょう。ここでも目新しいニュースはありませんが、信頼感と政府の能力の後退に注目が集まりました。

 ・1月に貿易協議が開始されるとの報道を受け、米中両国が貿易問題で合意する(少なくとも協議が行われる)との観測が高まりました。協議は続いており、市場は2019年上半期の合意を予想していますが、混乱する米国政府の多くの要人による現在の認識が、この状況に関する見解に影響を及ぼしています。

 ・FOMCは引き続きトランプ大統領などから攻撃を受け、パウエル議長の解任観測が広がる中、火消しに追われました。

 ・ムニューシン財務長官が米銀大手6行首脳と電話協議を行い、流動性に問題がないことが確認できたとツイッターに投稿。これが流動性懸念を引き起こす結果となりました。いったい誰が頼んだというのでしょうか。

○コイン投げと同じ:年明け取引初日の値動きがその年の相場の方向を言い当てた確率は50%です。一方、1月の相場動向はその年の相場の行方を占う尺度として有効で、71.1%の確率で的中しています(1929年以降)。ただ、最近はあまり調子が良いとは言えず、2014年、2016年、2018年は的中しませんでした。過去の実績を見ると、12月は73.3%の確率で上昇しており(昨年は下落でしたが)、上昇した月の平均上昇率は2.94%、下落した月の平均下落率は2.82%、全体の平均騰落率は1.40%の上昇となっています。1月は63.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.13%、下落した月の平均下落率は3.96%、全体の平均騰落率は1.17%の上昇となっています。

今後のFOMCのスケジュールは、1月29日-30日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日となっています。

●主なポイント

 ・12月のS&P 500指数は2506.85で取引を終え、11月末の2760.17から9.18%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス9.03%)、12月の騰落率としては1931年12月(14.53%下落)以降の最低、1ヵ月の騰落率としては2009年2月(10.99%下落)以降の最低を付けました。11月は1.74%の下落でした(同プラス2.04%)。過去3ヵ月間では13.97%下落(同マイナス13.52%)、2018年通年では6.24%下落(同マイナス4.38%)、過去2年間では11.97%上昇(同プラス16.49%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2139.56)以降では17.17%上昇(同プラス22.29%、年率換算でそれぞれ7.67%とプラス9.84%)となっています。

 S&P 500指数は調整モードに入ってからも下落基調が続き、終値で2018年9月20日に付けた直近高値(2930.75)から14.46%下げて12月を終え、弱気相場の水準であるマイナス20%に近づきました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は23327.46ドルで取引を終え、11月末の25538.46ドルから8.66%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.59%)。11月は1.68%の上昇でした(同プラス2.11%)。過去3ヵ月間では11.83%下落(同マイナス11.31%)、年間では5.63%下落(同マイナス3.48%)となりました。

 ・2018年第3四半期の業績は、営業利益、米国の一般会計原則(GAAP)に基づく利益、売上高が過去最高を更新し、市場の注目は2018年第4四半期に移り始めています。第4四半期の企業利益は2.3%減が予想されますが、減税実施前の2017年第4四半期比では19.4%増となる見通しです。年間では、2018年は2017年比で26.1%増益、2019年は減速して9.4%増益(過去最高を更新する見通し)となることが予想されています。

 ・S&P 500指数構成企業の第3四半期の自社株買い額は予想通り、3四半期連続で過去最高を更新し、2000億ドルの節目を初めて超えて2038億ドルとなり、2018年の第1四半期から第3四半期までで、2007年に記録した年間最高額にあと約1%に迫りました。より多くの銘柄が株式数を大幅に減らしていることで、EPSが増加しています。

 ・S&P 500指数構成企業の2018年第4四半期の1株当たり配当金額は過去最高の14.19ドル(総額1198億ドル)、年間での1株当たり配当金額も過去最高の53.76ドル(総額4563億ドル)となりました。

 ・アナリストはボトムアップベースで算出した1年後の目標値を引き下げましたが、相場の下落幅ほど大きな見直しではなく、引き続き高い水準を予想しています。目標値はS&P 500指数が3153(現在値から25.8%上昇、11月末時点は3179)、ダウ平均は2万8865ドル(同23.7%上昇、同2万9020ドル)となっています。

○トランプ大統領と政府高官

 ・ミック・マルバニー行政管理予算局長が、2018年末で退任するジョン・ケリー氏に代わり、トランプ政権の首席補佐官代行を務めます(ケリー氏は2017年7月にラインス・プリーバス氏に代わり首席補佐官に就任しました)。

 ・ジム・マティス国防長官がトランプ大統領との見解の相違を理由に、2019年2月末で退任することを発表したところ、トランプ大統領がマティス国防長官の退任日を年内に早め、パトリック・シャナハン副国防長官(以前はボーイング社に勤務)を暫定的な長官代理に指名しました。

 ・テキサス州連邦判事は医療保険制度改革法(オバマケア)を違憲とする判決を下しました。この事案は上級裁判所で再審理されます。

 ・米国-メキシコ国境の壁の建設費用問題により、米国の政府機関の一部が閉鎖されました(2018年12月21日金曜日の真夜中)。閉鎖されたのは連邦政府の約25%で(残りはそれ以前に資金が供給済み)、重要性の高い一部の機関は引き続き業務を行いました。クリスマス休暇の週には政府機関の閉鎖の影響は大きくありませんでしたが、1月も閉鎖が続くようであれば、影響は拡大すると思われます。注意すべき点は、労働統計局が閉鎖期間中も経済指標の発表を続けるのに対して(ただし、発表時期は遅れる可能性あり)、米商務省は指標(GDP統計、インフレ指標)を発表しないと表明したことです。

○各国中央銀行の動き

 ・欧州中央銀行(ECB)は予定通り(かつ予想通り)、危機期に実施された量的緩和プログラムを2018年末で終了すると発表し、月額150億ユーロ(170億ドル)の債券購入を打ち切りました。ECBによれば、償還債券の元本再投資期間は延長される予定です。金利は据え置きとなりました。

 ・FOMCは2018年で4回目となる利上げを発表し、金利を(予想通り)0.25%ポイント引き上げました。発表されたFOMC声明と経済見通しでは、今後数年の金利見通しがやや下方シフトし、過半数のメンバー(17人中11人)が2019年に必要な利上げを2回と考えていることが示されました(それに対して、9月の会合では7回が予想されていました)。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、「経済的背景は力強い」とした上で、FRBは「数ヵ月前の予想に比べて軟化を示唆する動きがある」とみている一方、目下のバランスシート縮小プログラムに満足しており、それを変更するつもりはないと述べました。2019年の利上げを1回と見込んでいた市場はこの発言に否定的に反応し、株価は会見前の1.5%高から反転して、終値で1.5%安となりました。

 ・スウェーデンのリクスバンクは予想外の利上げを発表し(2011年以降で初めて)、政策金利を0.25%ポイント引き上げましたが、それでも依然として-0.25%(利上げ前は-0.50%)とマイナス金利となっています。また同中銀は2019年に0.25%の追加利上げを2回実施する見通しを示しました。

 ・メキシコの中央銀行は(予想通り)金利を0.25%ポイント引き上げ、2008年以来の高水準となる8.25%としました。

<後編>に続く
 


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配信元: みんかぶ株式コラム

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