S&P 500月例レポート (2018年12月配信)<後編>

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最新投稿日時:2018/12/13 11:56 - 「S&P 500月例レポート (2018年12月配信)<後編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート (2018年12月配信)<後編>

●ファンダメンタルズ

 ○業績面では、S&P 500指数構成銘柄の97%が第3四半期の決算発表を終えた段階で、利益と売上高は過去最高を更新し、77%の銘柄で利益が予想を上回り(過去平均は67%)、60%の銘柄で売上高が予想を上回りました。投資家の動きは引き続き今後の成長性をめぐる懸念に左右され、減税効果は既に織り込み済みで、内部成長に焦点が当てられています。市場参加者は第3四半期の営業利益は過去最高を更新し、第2四半期に記録したこれまでの最高から7.4%増、前年同期比では32.5%増になると予想しています。2018年通期では、利益は2017年を26.7%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から10.3%の増益が予想されています。

 営業利益では、これまでに決算発表を終えた488銘柄中、予想を上回ったのは376銘柄、予想を下回ったのは74銘柄、予想通りだったのは38銘柄でした。売上高は486銘柄中293銘柄で予想を上回り、過去最高を更新しました。2018年第3四半期の売上高は前期比2.0%増、前年同期比10.7%増となりました。

 配当に関しては、2018年11月の現金配当支払額は1株当たり6.78ドルと、これまで最高の2018年5月の6.55ドルを3.77%上回り、月間ベースの過去最高を記録しました。また、11月の配当総額も2017年11月の559億ドルを上回る573億ドルとなり、過去最高を更新しました。

 S&P 500指数構成銘柄の年初来の配当は1株当たり49.52ドルで、2017年同期を8.75%上回り、総額では4,207億ドルと前年同期の3,907億ドルを上回りました。年初来で346銘柄が増配し(前年同期は325銘柄)、減配したのはわずか3銘柄でした(そのうちの1社であるWyndham Worldwideは、事業をスピンオフして2社に分社化し、スピンオフ後の2社の配当率は分社化前と同じでした。前年同期は10銘柄が減配)。346対3という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。11月末までの12カ月間の配当は前年同期比8.74%増(年初来では8.75%増)となり、年初来の配当総額は既に2017年通年の実績を上回っているため(12月は上乗せ分となる)、2018年も7年連続で過去最高を更新することになります。

 自社株買いでは、数銘柄を残して大半が第3四半期の自社株買いの結果の公表を終えた現時点で、自社株買いの総額は既に1,998億ドルと過去最高を更新し、前期比9.6%増、前年同期比55.9%増となっています。発表された発行済株数の97%のEPSに基づけば、発行済株数は前年比での減少が加速しており、多くの銘柄でEPSが4%以上押し上げられています。第3四半期は17.6%の銘柄(2017年第3四半期は14.2%)が発行株数の減少によってEPSが4%以上増加しました。

 注目すべきニュースとして、Apple(AAPL)がiPhoneの新型3モデル(9月発売)の減産に踏み切ったとの報道を受け、同社株は売りが続き、2018年10月3日に付けた最高値(233.47ドル)から23.5%下落して178.58ドルとなりました。自動車メーカーのGeneral Motors(GM)は60億ドルの経費削減計画(45億ドルの費用削減と15億ドルの設備投資縮小)を発表しました。計画の実施には雇用削減(6,300人の工場労働者と8,000人の月給制スタッフ)、工場閉鎖、ダウンサイジング(米国の5工場、カナダの1工場)が予想されています。GMは2018年第4四半期と2019年第1四半期に30~38億ドルの費用を計上し(18億ドルは現金以外の財源)、今後も電気自動車や自動運転車に向けた体制整備に取り組むと明らかにしました。

 Rockwell Collins(COL)の買収(230億ドル)を完了したUnited Technology(UTX)は、自社をジェットエンジンと飛行制御システム、空調設備の「キャリア」、エレベーターの「オーチス」の3事業に分割すると発表しました。ホテル運営企業のMarriott(MAR)は傘下のスターウッド・ホテルズに対するハッカー攻撃で、2014年にさかのぼる不正アクセスにより最大5億人分の顧客アカウントが流出したと発表しました。

 推定によれば、感謝祭からサイバー・マンデーまでの5日間のホリデーシーズンに、1億6,500万人の米国人(3億2,900万人中)が(オンラインや実店舗で)買い物をしました。当初のレポートと推定値を考え合わせると、実店舗での売上高は前年比4~7%減少し、オンライン売上高は25%増加したと見られ、最近の傾向が持続していることが示されました。Amazon(AMZN)はホリデーシーズンとしては過去最高の販売高(1億8,000万個の商品を販売)を記録し、MasterCard(MA)は前年比9%増を見込む一方で、実店舗の来客数は1%減少したと推定されます(ShopperTrak)。

 米疾病対策センター(CDC)の発表によると、2017年の米国人の平均寿命は2016年の78.7歳から78.6歳に短縮しました(女性は81.1歳で横ばい、男性は2016年の76.2歳から76.1歳に短縮)。アナリストによれば、平均寿命の短縮は自殺の急増と医療用麻薬オピオイド関連の死亡者数増加が要因となっています。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債の利回りは10月末の3.14%から低下して2.99%で月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ○英ポンドは10月末の1ポンド=1.2769ドルから1.2743ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=1.1319ドルから1.1318ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は10月末の1ドル=112.91円から113.55円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元は10月末の1ドル=6.9758元から6.9590元に上昇しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は10月末の1バレル=64.96ドル、9月末の73.53ドルから下落して50.72ドルで月を終えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は10月末の1ガロン=2.896ドルから2.630ドルに下落して月末を迎えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は10月末の1トロイオンス=1,217.10ドルから1,227.40ドルに上昇して月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は10月末の21.23から低下して18.07で月末を迎えました。月中の最高は23.81、最低は16.09でした(同11.05、同14.04)。

●S&P 500指数

 11月もボラティリティが続いたものの10月ほどではなく、「10月は株安」とのアノマリー通りとなった前月と比べて11月は格段に喜ばしい結果となりました。基調的な問題に変わりはなかったものの、経済指標、要人のコメント、さらに市場の認識(および取引)が変化しました。個人消費、企業コスト(原材料費や人件費)、関税が不透明感や成長見通し(企業利益、住宅市場、小売売上高)の後退につながる中、景気減速懸念が目先の重要な問題となっています。主要株価指標は現在のバリュエーションがいかに現実的かを示しています。

 一方、向こう6カ月間の長期的な関心事としては、貿易(従って関税)、ならびにFOMCが2019年の利上げペースについて新たな(改善した)認識を示したことが挙げられます(12月利上げは確実とみられるものの、2019年第1四半期の利上げ見通しは大幅に後退)。

 ファンダメンタルズ面を見ると、第3四半期の企業利益は過去最高を更新した一方、第4四半期と2019年第1四半期の業績見通しは引き下げられました。企業の配当は11月に過去最高を更新し、年初来でもこれまで最高だった2017年を上回り、通年での最高を更新しています。第3四半期の自社株買いの総額も過去最高を大幅に更新し、公表ベースで1,998億ドルとなりました(未公表の企業も数社残っています)。

 金利は小幅に低下し、依然として企業の利払いコストの節減につながっていますが、需給関係の影響を受ける住宅業界ではそれほど顕著ではありません。

 パフォーマンスを見る限り、米国市場は依然として最適な投資対象とみられます。ただし、一部の見通しに基づくとそうとは言えません。一つの見方を選好するのであれば、それが実現する確率は90%ぐらいと考えた方が良いでしょう。

 11月のS&P 500指数は、9月の0.43%上昇(配当込みのトータルリターンは0.57%)、10月の6.94%の急落(同マイナス6.84%)ののち、1.79%(同2.04%)と大きく上昇しました。同指数は過去3カ月間では4.87%の下落(同マイナス4.40%)、年初来では3.24%上昇(同5.11%)とプラス圏を維持し、過去1年では4.25%(同6.27%)、2016年11月8日の米大統領選以降では29.01%上昇(同34.43%)しています。S&P 500指数は月中に正真正銘の調整局面入りしたものの(9月20日の直近高値から10%下落)、その後反発に転じ、週間ベースで2011年以来の大幅高が11月全体を大きく押し上げる要因となりました。

 ボラティリティは11月に低下とはいえ、依然として高水準で推移しました。1%以上変動した日数は21営業日(感謝祭翌日は午後1時の取引終了のため、実際は20.5日)のうち8日(5日が上昇、3日が下落)と、10月の23営業日中10日(5日が上昇、5日が下落)を下回りました(年初来では54日で、30日が上昇、24日が下落。2017年は4日、下落が4日)。11月の平均日中値幅(高値と安値の差)は、10月の12.91%(9月の2.68%、8月の4.30%、7月の5.52%から大幅に上昇。調整局面入りした2月は11.97%)から、7.00%に低下しました。1年平均は6.59%、10年平均は6.60%です。

 出来高は前月比12%減少しましたが、実際の営業日数調整後(10月の23日に対して20.5日)では2%減にとどまりました。前年同月比では15%減(営業日数調整後で14%減)でした。

 セクター間のリターンのばらつきは縮小しています。11月はパフォーマンスが最高のセクター(ヘルスケアセクター、6.83%上昇)と最低のセクター(エネルギー、2.20%下落)の騰落率の差は9.03%と、10月の13.45%から低下しました。騰落率の差は1年平均では9.89%(10月は10.44%)、年初来では24.68%(同23.16%)となっています。

 11月は11セクター中8セクターが上昇し、10月の2セクター、9月の6セクターを上回りました。月中のセクターの騰落状況の変化は、調整モードから週間上昇率4.85%を付けた月末にかけてのパフォーマンスを反映しました。

 ヘルスケアセクターが10月の6.78%下落ののちに6.83%上昇し、騰落率が最高となりました。同セクターは年初来でも14.69%上昇と、騰落率は全セクター中最高となっています。不動産セクターは5.30%上昇し、年初来でも2.47%の上昇に転じました。

 消費関連セクターを見ると、一般消費財セクターは10月の11.33%下落ののち2.60%上昇し、年初来で8.69%上昇した一方、生活必需品セクターは1.72%上昇したものの、年初来では1.87%下落しています。

 エネルギーセクターは、原油価格が1バレル=50ドルを下回る中(10月3日は76.41ドル)、2.20%の下落で騰落率最下位となり、年初来でも8.81%下落しました。コミュニケーション・サービスセクターは0.68%下落し(10月は6.02%下落)、年初来では9.76%の下落で騰落率が最下位となりました。情報技術セクターは2.12%下落し(既にある程度の反発を反映)、年初来では7.57%上昇(米大統領選以降では48.81%上昇)しています。

 11月は、値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数の差はプラスに転じました。値上がり銘柄数は358銘柄(平均上昇率は6.24%)と10月の103銘柄(9月は253銘柄)から増加し、そのうち10パーセント以上値上がりした銘柄数は50銘柄(平均上昇率は14.20%)と、10月の4銘柄を上回りました。一方、値下がり銘柄数は145銘柄(平均下落率は7.03%)と、10月の400銘柄(9月は251銘柄)から減少し、そのうち10%以上値下がりした銘柄数は35銘柄(平均下落率は17.47%)と、10月の170銘柄を下回りました。年初来でも値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数の差は若干のプラスに転じ、値上がり銘柄数は252銘柄(平均上昇率は18.69%)と10月の218銘柄から増加しました。そのうち、10%以上値上がりした銘柄数は149銘柄(平均上昇率は28.04%、25%以上値上がりした銘柄数は68銘柄)と10月の97銘柄を上回りました。一方、年初来で値下がりした銘柄数は251銘柄(平均下落率は15.62%)と、10月の287銘柄から減少し、そのうち151銘柄(10月は168銘柄)が10%以上下落しました(25%以上下落した銘柄数は51銘柄)。
 

 

 

 

 

 

 

[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
http://asia.spindices.com/RESOURCE-CENTER/THOUGHT-LEADERSHIP/MARKET-COMMENTARY/

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配信元: みんかぶ株式コラム

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