S&P 500月例レポート (2018年10月配信)_後編

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最新投稿日時:2018/10/11 13:11 - 「S&P 500月例レポート (2018年10月配信)_後編」(みんかぶ株式コラム)

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S&P 500月例レポート (2018年10月配信)_後編

●トランプ大統領と政府高官

・米議会は2019会計年度(2018年10月1日開始)の暫定予算案(2018年12月7日まで)を可決し、トランプ大統領に送付しました。この暫定予算案によって政府の歳出は12月7日まで賄われますが、議会は(今年も)この問題に再び対応を迫られることになります。

・トランプ大統領はニューヨークの国連本部で演説を行い、持論である「アメリカ・ファースト」を主張しましたが、あまり多くの共感を得ることはできませんでした。

・大統領と安倍首相は貿易協議を開始することで合意しました。主な議題は自動車販売と関税です。

・米上院司法委員会は、連邦最高裁判事候補に指名されたブレット・カバノー氏の人事承認のため、記録および司法哲学に関する公聴会を開催しました。同氏の政治的見解が焦点となる中、性的に不適切な行為をめぐる疑惑が浮上しました。

●貿易

・米国とカナダによるNAFTA再交渉(米国とメキシコは8月に合意)は、9月30日の合意期限(米国議会への通知。12月1日にはメキシコ大統領が退陣。カナダでは10月1日に地方選挙実施。米国では2019年1月3日に新議会が発足)が迫る中、協議が続きました。

・トランプ大統領は、2,000億ドル相当の中国製品に追加関税(既に発動済みの500億ドルに加え)を課すと発表しました。追加関税率は2018年9月24日から10%とし、2019年1月1日に25%に引き上げられます。トランプ大統領はさらに2,670億ドル相当の中国製品に追加関税を発動することも検討しています(2017年の中国からの輸入額は5,050億ドル)。中国も報復措置として600億ドル相当の米製品に対する関税を9月24日に適用しました。中国は貿易戦争に備えている模様で、その後(9月末に)、11月1日から一部関税を引き下げることを発表しました(交渉ではどのような印象を与えるかは重要です)。これと関連し、8月の中国の対米貿易黒字は過去最高の311億ドルとなりました。

●各国中央銀行の動き

・トルコ中央銀行はエルドアン大統領の利下げを求める発言を無視し、国内の経済問題と市場下落に対応するため、政策金利を17.75%から24%に引き上げました。

・ロシアの中央銀行は一連の利下げから一転、通貨防衛と米国の制裁措置をめぐる懸念増大のために、大半の予想に反して政策金利を7.25%から7.50%に引き上げました(2014年末の政策金利は17%)。

・欧州中央銀行は政策理事会を開催し、貿易問題への懸念を表明し、政策を据え置きました。

・米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、経済は成長し、企業に楽観論が広がっており、また、投入コスト上昇と貿易問題をめぐる懸念の兆候が見られています。

・連邦公開市場委員会(FOMC)会合が開催され、予想通り、2015年以降8回目となる0.25%の利上げが実施されました。また、12月にもう1回利上げがあることが示唆されました(12月の追加利上げを予想するメンバーは16人中12人で、6月の8人から増加)。FOMCは、失業率が低水準にとどまる中、GDPの増加が続くと予想しています。特筆すべき点は、声明文の中で利上げのタイムスケジュールに言及した箇所から「緩和的」という文言が削除された一方、「緩やかに」という文言は残されたことです。

●利回り、金利、コモディティは引き続き活発な動き

・米国10年国債の利回りは8月の2.86%から上昇して3.06%で月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

・英ポンドは8月末の1ポンド=1.2960ドルから1.3034ドルに上昇し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1606ドルから横ばいでした(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は8月末の1ドル=111.17円から113.69円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元は8月末の1ドル=6.8313元から6.8690元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

・原油価格は7月末の1バレル=68.43ドル、8月末の69.92ドルから上昇し73.53ドルで月末を迎えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、8月末の1ガロン=2.906ドルから2.923ドルに上昇しました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

・金価格は7月末の1トロイオンス=1,232.90ドル、8月末の1,205.30ドルから下落して1,195.10ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

・VIX恐怖指数は7月の12.84、8月の12.86から低下して12.12で9月末を迎えました。月中の最高は15.63、最低は11.10でした(同11.05、同14.04)。

●株式市場、減税などに支えられ3ヵ月連続で上昇

 S&P 500指数は、これまで下落傾向にあった9月(54.5%の確率で下落、月間の平均下落率は1.00%)ですが、珍しく0.43%ながら上昇しました(年率で5.28%の上昇)。こうしたアノマリーを打ち破った上昇は、7月の3.60%上昇、8月の3.03%上昇という2カ月連続の大幅高に続くもので、この3カ月間の上昇はいずれも、減税に加えて、貿易問題の(悪化ながらも)緩やかな進展、そして、経済が予想されたほどではないにしても拡大基調を維持していることを追い風に、企業業績が利益(第2四半期は前年同期比26.7%増)、売上高(同11.2%増)ともに過去最高を更新したことが材料となりました。

 加えて、一部でFOMCの予見可能性が高まったとみられることも支援材料となりました。FOMCは9月に0.25%の利上げを実施し(4四半期連続でいずれも0.25%の利上げ)、市場では12月12-13日の会合でもう1回の利上げが予想されています。2019年に関しては、四半期毎に4回の追加利上げを予想する向きが最も多いものの、過半数には遠く及びません。ただし、基調にある経済(雇用、貿易)と消費者の支出動向がカギを握るとの見方は共通しています。

 S&P 500指数は、第3四半期に7.20%(配当込みのトータルリターンは7.71%)と好調な上昇となりしました。これは、四半期としては2013年第4四半期の11.35%以来、また、第3四半期としては2010年の10.72%上昇以来、最大の上昇率です。同指数は第3四半期に2,900を突破して推移しており、楽観的な向きは「S&P 500指数3,000」と書かれた帽子を早くも注文しています。また、取引時間中の高値(2,940.91)と終値での高値(2,930.75)を更新しました。インデックスとして長い歴史を持つダウ平均でさえ、2018年1月26日に両指数が史上最高値を更新して以降はS&P 500指数に後れを取っていたものの、9月に過去最高値を更新しました(取引時間中の最高値は2万6,769.16ドル、終値での最高値は2万6,743.50ドル)。

 9月のS&P 500指数は第3四半期の好パフォーマンスのおかげで、年初来で8.99%上昇し、配当込みのトータルリターンはプラス10.56%(年率でプラス14.37%)となりました。ただし、内訳を見ると、セクター毎のパフォーマンスには大きなばらつきが見られ、パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、19.52%上昇)と最低のセクター(生活必需品、5.53%下落)の騰落率の差は25.05%となりました。

 第4四半期に関しては、相場の継続的上昇(市場の夢です)に向けて市場心理は明るく、最初の試金石となる第3四半期決算(決算期がずれる企業の第3四半期決算では、16社中14社で利益が、10社で売上高がそれぞれ予想を上回っています)に注目が向きつつあります。10月12日の大手銀行(Citigroup、JP Morgan、Wells Fargo)の発表を皮切りに、第3四半期の決算シーズンに突入します。企業によるガイダンスの下方修正は限定的で(企業は悪材料を先送りする傾向)、市場ではさらなる過去最高益更新に期待が高まっています。

 一方、中国との貿易問題(カナダとのNAFTA交渉は合意に至るとの見方が多勢)が最高益更新のプラス効果を打ち消しかねず、同問題は今や政治問題に発展しています。その他の材料として、原油価格、インフレの急騰(コモディティ価格が主導する可能性)、ドル相場の消費者(と企業利益)への影響、地政学問題(イラン、韓国、EUの混乱)など、経済と市場に直接影響を及ぼしそうな問題もくすぶり続けています。

●ボラティリティは縮小傾向

 相場のボラティリティは8月、7月と同様に9月も低下し、1%以上変動した日数は19営業日中ゼロとなり、その結果、第3四半期全体でも1%以上変動した日数はゼロとなりました。市場が1営業日中に1%以上上昇したのは2018年6月1日(1.08%上昇)、1%以上下落したのは6月25日(1.37%下落)、2%以上変動(上昇あるいは下落)したのは2018年4月が最後となっています。

 9月の平均日中値幅(高値と安値の差)は8月の4.30%、7月の5.52%から2.68%に再度低下しました(直近の最高は2月の11.97%)。1年平均は5.56%、10年平均は7.09%です。出来高は8月から総計では10%減、実際の営業日数調整後(9月の19日に対して8月は23日)では18%減となりました。前年同月比では6%減少しています(営業日数調整後で6%減)。

 セクター間のリターンの格差は、8月に3カ月連続での縮小から急拡大したのち、再び縮小しました。9月はパフォーマンスが最高のセクター(コミュニケーション・サービス、前電気通信サービスセクター、4.26%上昇)と最低のセクター(不動産、3.17%下落)の騰落率の差は7.43%と、8月の10.53%(7月は6.25%、6月は7.13%)から縮小しました。騰落率の差は1年平均では10.01%(8月は11.00%)、年初来では25.05%(同27.26%)となっています。

 9月は11セクター中6セクターが上昇し、8月の8セクター、7月の11セクター(両月とも市場は3%を超える大幅上昇を記録)を下回りました。セクターの騰落は、市場がそれまでの上昇を消化し、過去の決算シーズンを評価し、貿易問題と金利の双方について予想する中、個別銘柄の騰落状況(若干プラス)を反映しました。しかし、9月に相場が上昇し、S&P 500指数が過去最高値を更新する中、上昇したセクター数は拡大基調で月を終えました。

 9月はコミュニケーション・サービスセクターが騰落率トップとなりました。同セクターは電気通信サービスセクターから名称が変更されるとともに、構成銘柄が3銘柄(AT&TとVerizon Communicationsが時価総額の大半を占める)から26銘柄に拡大され(9月24日の取引開始時点で全ての変更を実施)、Alphabet、Facebook、次いでVerizon、AT&T(次いでWalt Disney、Comcast、NetFlix)が時価総額上位銘柄に名を連ねています。同セクターは8月の2.93%上昇(当時は3銘柄のみ)した後、9月に4.26%上昇しましたが、年初来では3.33%の下落にとどまっています。セクター構成の変更によって同セクターの特徴が大幅に変化するのに伴い、投資家は評価の見直しや一部で資金の再配分を行っています。9月末時点で、同セクターの2019年予想株価収益率(PER)は8月の10.0倍に対して17.6倍となり、配当利回りは5.53%から1.41%に低下しました(もはや同一のセクターではなく、したがって同一の統計もあてはまりません)。

 ヘルスケアセクターは2.80%上昇とアウトパフォームが続き、第3四半期は14.04%上昇(全セクター中最高)、年初来では15.17%上昇となりました(ここでも、第3四半期のパフォーマンスが年初来のパフォーマンスに貢献)。エネルギーセクターは(石油輸出国機構(OPEC)の増産見送りを支援材料に)原油価格が上昇する中で2.43%上昇し、第3四半期は0.11%の小幅下落、年初来では5.16%の上昇となりました。

 不動産セクターは上昇が4カ月連続で途切れ、3.17%の下落で騰落率最下位となりました。同セクターは、第3四半期は横ばい(0.02%下落)、年初来では0.98%下落しています。素材セクターは2.28%下落し(8月は0.74%下落)、第3四半期はほぼ横ばい(0.14%下落)、年初来では4.17%の下落となっています。8月に6.74%の上昇(7月は2.04%上昇)で騰落率トップとなった情報技術セクター(9月に一部銘柄がコミュニケーション・サービスセクターに移行)は0.39%下落したものの、第3四半期は8.49%の上昇、年初来では全セクター中最高の19.52%の上昇となっています。

 消費関連セクターは揃って上昇したものの(S&P 500指数を上回る)、パフォーマンスのばらつきが続きました。一般消費財セクターは0.97%上昇(8月は4.98%の大幅上昇)し、第3四半期は7.81%、年初来では19.47%上昇しています(情報技術セクターに次ぐ)。一方、生活必需品セクターは0.62%上昇(8月は0.34%上昇)しましたが、年初来ではなお5.53%の下落と、騰落率最下位となっています。

 9月は値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数が拮抗しました。9月の値上がり銘柄数は253銘柄(平均上昇率は4.04%)と多くの銘柄が上昇した過去2カ月(8月は315銘柄、7月は381銘柄)から減少しました。そのうち10%以上値上がりした銘柄数は13銘柄(平均上昇率は14.47%)と、8月の41銘柄(7月は54銘柄)を下回りました。一方、値下がりした銘柄数は251銘柄(平均下落率は4.12%)と、8月の189銘柄(7月は124銘柄)を上回りました。そのうち、10%以上値下がりした銘柄数は16銘柄(平均下落率は12.78%)と、8月の19銘柄は下回ったものの、7月の15銘柄を上回りました。

 年初来では、引き続き値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りましたが、その差は縮小しました。値上がり銘柄数は297銘柄(平均上昇率は20.19%)と、8月の304銘柄(7月は289銘柄)から減少し、そのうち183銘柄(8月は188銘柄)が10%以上、98銘柄(同79銘柄)が25%以上値上がりしました。一方、値下がり銘柄数は208銘柄(平均下落率は11.90%、同201名柄)で、そのうち97銘柄(同90銘柄)が10%以上、25銘柄(同22銘柄)が25%以上値下がりしました。

[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

 このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム

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