■今後の展望
日本プロセス<9651>は、2018年5月期で終了した第4次中期経営計画に続き、2021年5月期を最終年度とした第5次中期経営計画を策定した。そこでは具体的な数値目標として2019年5月期見通しを示したのにとどまり、最終目標については今後に譲る格好となっているが、基本方針として以下を掲げている。
1. 第5次中期経営計画基本方針
(1) 獲得事業の主力化と新分野の開拓
a) 自動運転・ADAS、IoTを主力事業へ
b) AI、ネットワーク、セキュリティ、クラウド等で、更なる注力分野を開拓
(2) 持続的成長への投資
a)働きやすい環境への投資
b)生産設備への投資
c)人材への投資
d)働きやすい制度の活用と見直し
(3) T-SESの継続
基本方針の第1に挙げた獲得事業の主力化と新分野の開拓では、既に、IoTにおいて、医療メーカー2社との取引拡大や、建設機械メーカーとの取り組みが進展するなど実績を上げている状況。自動運転・ADAS分野でも、組込や画像認識・識別などこれまで培ってきた技術を生かして大きく拡大中だ。第5次中期経営計画においては、獲得したIoT分野の担当範囲や規模拡大を図るとともに、自動運転・ADAS分野を主力事業として確立すべく加速度を上げて取り組んでいく。
また、AI、ネットワーク、セキュリティ、クラウド等の更なる注力分野については、AI画像認識・識別、AI基盤システム、ロボティクス、IoT建設機械クラウド基盤などに積極的に取り組んでいる。
(2)の持続的成長への投資に関しては、具体的な項目として、a)働きやすい環境への投資、b)生産設備への投資、c)人材への投資、d)働きやすい制度の活用と見直し──などを掲げた。
前回の中期経営計画では、2番目に人材への重点投資を挙げていたが、新たな中期経営計画においては、働き方改革、IT業界の人材不足などを念頭に置いて、更に突っ込んで社員への投資を進める。やはり、人材をいかに採用、育成、活性化するのかがIT業界では重要であるため、以前にも増して人材投資を重視した。
また、人材については、国内の人材採用が困難な状況が継続する中、中国人技術者の活用を推進している。同社は2008年に中国・大連に現地法人を設立。現地で採用した人材を日本で日本語及び技術教育を実施、ブリッジSEとして育成し、オフショア開発を行う体制を構築した。標準化やパッケージ化などの提案を積極的に行うとともにオフショア開発を推進することなどで、顧客の海外での競争力を支えているが、それと同時に中国人技術者を日本で活用することにより、人手不足の解消にもつなげている。実際、2018年5月期では、こうした大連の活用が奏功した部分が多かった。
他方、最後のT-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)の継続では、同社の知見に基づいて顧客を正しい仕様決定に導き、以降完成まで一貫して請け負うために、顧客の了解を得てソフトウェアを任せてもらう体制を整え、戦略的パートナーシップを築いていく。これに関しては、例えば、在来線運行管理システムなど、事業によっては成果が現われるものも出ている。
今後は次に成長する分野は何かを見極めるといった戦略経営を進め、新規顧客の獲得を目指す。第4次中計において“種まき”は完了しており、第5次は“収穫”の時期になりそうだ。
2. 6つの事業領域ごとの現状、課題、今後の展開
(1) 制御システム事業
制御システム事業のうち、エネルギー関連については、これまで日本全国の発電所の監視制御システムなど発電分野を事業の中心としていた。発送電分離に伴い、需要が旺盛な送配電などの電力分野にも参入し、エネルギーマネージメントなど新たな領域を拡大していく。
交通関連では、東京圏輸送管理システムや各地のJR在来線の運行管理システムで案件が潤沢なことに加え、新幹線の運行管理システムで大型のリプレース案件が始動するなど、オフショア開発を活用しながら一層の拡大が期待できる。在来線については、T-SESの成果が出始めており、更なる収益向上を目指す。
(2) 自動車システム事業
完全自動運転に向けて、今後、特に伸びが期待できる分野である。2016年6月に社内で自動車システム事業部を新設し、前中期経営計画より中核事業に位置付けて拡大している。自動車システム全体で旺盛な需要がある中、自動運転・ADAS分野に関するビジネスが、稼ぎ頭になっていくものとみられる。
自動運転・ADAS分野は、人命に直結することから高い技術と品質が求められる。これまで同社が取り組んできた自動車そのものの車載制御、カーナビゲーションなどの車載情報、画像認識・識別や各種センサー・電子部品の組込ソフトウェアなどの総合的な技術力は、競合他社と一線を画しており、自動運転・ADAS分野での更なる飛躍が期待できる。
(3) 特定情報システム事業
危機管理分野は、景気の波に左右されない傾向があり受注は堅調な見通しであるものの、中長期的には危機管理に対する意識の高まりから伸びが期待できそうだ。担当したシステムが、5年・10年周期で大型更改の開発が見込まれるなど、数年間を見渡した計画が立ちやすい分野でもある。
自動運転・ADAS分野での画像認識・識別では、道路標識の認識などより高度な技術が求められており、今後の拡大を目指している。AIやディープラーニングなど技術習得を継続しており、得意とする画像認識・識別の案件については、新規分野を含めて積極受注を加速する。
(4) 組込システム事業
世界的なクラウドサービスの進展に伴い、データセンター向けのSSDのソフトウェア開発が増加しており、次機種開発にも着手するなど好調が継続すると見込まれる。一方、次の中核ビジネスとなる分野の開拓を加速させる。
前中期経営計画より、IoT建設機械、医療関連、車載BSWを次の注力分野として取り組んできたが、前期スタート時から売上規模が倍増となっており、この流れを加速させ中核ビジネスへと育成する考え。IoTへのニーズが高いことから、今後もビジネスの拡大が見込まれる。
(5) 産業・公共システム事業
文書管理、ICカード、鉄道の券売機などで安定受注が見込まれる一方、人工衛星など航空宇宙分野の主力ビジネス化に取り組んでいく。また、このセグメントでもIoT関連の受注獲得に力を注ぎ、IoT建設機械の積極受注を進め主力ビジネス化に取り組む。新分野開拓では、技術習得を進めてきたAI、ディープラーニングやロボティクスに関わる案件に着手しており、更にノウハウを蓄積することで今後の拡大を図る。
(6) ITサービス事業
戦略的な構築サービスへのシフトを継続する。IoT、クラウド、ビッグデータなど、ビジネスを取り巻く環境が変化する中、ユーザー企業などでシステム開発環境をパブリッククラウドで構築する動きが見え始めている。前期までは、オンプレミスの環境構築を主としていたが、今後はパブリッククラウドの環境構築に力を入れていく。クラウド化のニーズは世界的なものであることから、今後のビジネス拡大が期待される。
以上がセグメント別の展開である。
一方、M&Aの取組みとしては、鉄道、道路、消防、防災などの社会インフラ分野をシステム開発領域とし、通信技術に強みを持つ株式会社アルゴリズム研究所を、株式交換により完全子会社するM&Aを実施した。開発領域が同社と同じ社会インフラ分野であることから、シナジー効果が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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日本プロセス<9651>は、2018年5月期で終了した第4次中期経営計画に続き、2021年5月期を最終年度とした第5次中期経営計画を策定した。そこでは具体的な数値目標として2019年5月期見通しを示したのにとどまり、最終目標については今後に譲る格好となっているが、基本方針として以下を掲げている。
1. 第5次中期経営計画基本方針
(1) 獲得事業の主力化と新分野の開拓
a) 自動運転・ADAS、IoTを主力事業へ
b) AI、ネットワーク、セキュリティ、クラウド等で、更なる注力分野を開拓
(2) 持続的成長への投資
a)働きやすい環境への投資
b)生産設備への投資
c)人材への投資
d)働きやすい制度の活用と見直し
(3) T-SESの継続
基本方針の第1に挙げた獲得事業の主力化と新分野の開拓では、既に、IoTにおいて、医療メーカー2社との取引拡大や、建設機械メーカーとの取り組みが進展するなど実績を上げている状況。自動運転・ADAS分野でも、組込や画像認識・識別などこれまで培ってきた技術を生かして大きく拡大中だ。第5次中期経営計画においては、獲得したIoT分野の担当範囲や規模拡大を図るとともに、自動運転・ADAS分野を主力事業として確立すべく加速度を上げて取り組んでいく。
また、AI、ネットワーク、セキュリティ、クラウド等の更なる注力分野については、AI画像認識・識別、AI基盤システム、ロボティクス、IoT建設機械クラウド基盤などに積極的に取り組んでいる。
(2)の持続的成長への投資に関しては、具体的な項目として、a)働きやすい環境への投資、b)生産設備への投資、c)人材への投資、d)働きやすい制度の活用と見直し──などを掲げた。
前回の中期経営計画では、2番目に人材への重点投資を挙げていたが、新たな中期経営計画においては、働き方改革、IT業界の人材不足などを念頭に置いて、更に突っ込んで社員への投資を進める。やはり、人材をいかに採用、育成、活性化するのかがIT業界では重要であるため、以前にも増して人材投資を重視した。
また、人材については、国内の人材採用が困難な状況が継続する中、中国人技術者の活用を推進している。同社は2008年に中国・大連に現地法人を設立。現地で採用した人材を日本で日本語及び技術教育を実施、ブリッジSEとして育成し、オフショア開発を行う体制を構築した。標準化やパッケージ化などの提案を積極的に行うとともにオフショア開発を推進することなどで、顧客の海外での競争力を支えているが、それと同時に中国人技術者を日本で活用することにより、人手不足の解消にもつなげている。実際、2018年5月期では、こうした大連の活用が奏功した部分が多かった。
他方、最後のT-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)の継続では、同社の知見に基づいて顧客を正しい仕様決定に導き、以降完成まで一貫して請け負うために、顧客の了解を得てソフトウェアを任せてもらう体制を整え、戦略的パートナーシップを築いていく。これに関しては、例えば、在来線運行管理システムなど、事業によっては成果が現われるものも出ている。
今後は次に成長する分野は何かを見極めるといった戦略経営を進め、新規顧客の獲得を目指す。第4次中計において“種まき”は完了しており、第5次は“収穫”の時期になりそうだ。
2. 6つの事業領域ごとの現状、課題、今後の展開
(1) 制御システム事業
制御システム事業のうち、エネルギー関連については、これまで日本全国の発電所の監視制御システムなど発電分野を事業の中心としていた。発送電分離に伴い、需要が旺盛な送配電などの電力分野にも参入し、エネルギーマネージメントなど新たな領域を拡大していく。
交通関連では、東京圏輸送管理システムや各地のJR在来線の運行管理システムで案件が潤沢なことに加え、新幹線の運行管理システムで大型のリプレース案件が始動するなど、オフショア開発を活用しながら一層の拡大が期待できる。在来線については、T-SESの成果が出始めており、更なる収益向上を目指す。
(2) 自動車システム事業
完全自動運転に向けて、今後、特に伸びが期待できる分野である。2016年6月に社内で自動車システム事業部を新設し、前中期経営計画より中核事業に位置付けて拡大している。自動車システム全体で旺盛な需要がある中、自動運転・ADAS分野に関するビジネスが、稼ぎ頭になっていくものとみられる。
自動運転・ADAS分野は、人命に直結することから高い技術と品質が求められる。これまで同社が取り組んできた自動車そのものの車載制御、カーナビゲーションなどの車載情報、画像認識・識別や各種センサー・電子部品の組込ソフトウェアなどの総合的な技術力は、競合他社と一線を画しており、自動運転・ADAS分野での更なる飛躍が期待できる。
(3) 特定情報システム事業
危機管理分野は、景気の波に左右されない傾向があり受注は堅調な見通しであるものの、中長期的には危機管理に対する意識の高まりから伸びが期待できそうだ。担当したシステムが、5年・10年周期で大型更改の開発が見込まれるなど、数年間を見渡した計画が立ちやすい分野でもある。
自動運転・ADAS分野での画像認識・識別では、道路標識の認識などより高度な技術が求められており、今後の拡大を目指している。AIやディープラーニングなど技術習得を継続しており、得意とする画像認識・識別の案件については、新規分野を含めて積極受注を加速する。
(4) 組込システム事業
世界的なクラウドサービスの進展に伴い、データセンター向けのSSDのソフトウェア開発が増加しており、次機種開発にも着手するなど好調が継続すると見込まれる。一方、次の中核ビジネスとなる分野の開拓を加速させる。
前中期経営計画より、IoT建設機械、医療関連、車載BSWを次の注力分野として取り組んできたが、前期スタート時から売上規模が倍増となっており、この流れを加速させ中核ビジネスへと育成する考え。IoTへのニーズが高いことから、今後もビジネスの拡大が見込まれる。
(5) 産業・公共システム事業
文書管理、ICカード、鉄道の券売機などで安定受注が見込まれる一方、人工衛星など航空宇宙分野の主力ビジネス化に取り組んでいく。また、このセグメントでもIoT関連の受注獲得に力を注ぎ、IoT建設機械の積極受注を進め主力ビジネス化に取り組む。新分野開拓では、技術習得を進めてきたAI、ディープラーニングやロボティクスに関わる案件に着手しており、更にノウハウを蓄積することで今後の拡大を図る。
(6) ITサービス事業
戦略的な構築サービスへのシフトを継続する。IoT、クラウド、ビッグデータなど、ビジネスを取り巻く環境が変化する中、ユーザー企業などでシステム開発環境をパブリッククラウドで構築する動きが見え始めている。前期までは、オンプレミスの環境構築を主としていたが、今後はパブリッククラウドの環境構築に力を入れていく。クラウド化のニーズは世界的なものであることから、今後のビジネス拡大が期待される。
以上がセグメント別の展開である。
一方、M&Aの取組みとしては、鉄道、道路、消防、防災などの社会インフラ分野をシステム開発領域とし、通信技術に強みを持つ株式会社アルゴリズム研究所を、株式交換により完全子会社するM&Aを実施した。開発領域が同社と同じ社会インフラ分野であることから、シナジー効果が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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