萩原電気HD Research Memo(3):自動車向けを中心とした半導体商社だが、ソリューション事業にも注力

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最新投稿日時:2018/07/17 17:02 - 「萩原電気HD Research Memo(3):自動車向けを中心とした半導体商社だが、ソリューション事業にも注力」(フィスコ)

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萩原電気HD Research Memo(3):自動車向けを中心とした半導体商社だが、ソリューション事業にも注力

配信元:フィスコ
投稿:2018/07/17 17:02
■事業概要

1. 事業内容
萩原電気ホールディングス<7467>の主たる事業は、マイクロコンピューター(マイコン)や各種半導体等を半導体メーカーから仕入れ、販売する電子部品商社としての機能であるが、それだけでなくIT機器の仕入れ、販売やインテグレーションに加え、産業用電子機器の開発、製造、販売も行っている。車載用半導体などでは、商品企画・設計段階から参画して、顧客企業の要望に沿ったスペックのマイコンや周辺デバイスの提供を行っている。ハイブリッド車や電気自動車(EV)の普及に伴う電装化の高まりが同社の成長を支えているが、今後は自動車での更なる自動化(自動運転、自動ブレーキ等)や製造現場でのIT化の波も同社にとって追い風となる。

業種別の売上高構成比(2018年3月期)は、自動車86.6%、FA・産業機器8.5%、OA・その他4.9%だった。FA機器やその他の中にも間接的に自動車向けがあるため、実質の自動車向けは約90%となっている。また、主要ユーザー別の売上高構成比(同)は、デンソー56.5%、トヨタ自動車8.0%、東海理化<6995>4.4%、その他国内20.6%、海外子会社得意先10.5%となった。ただし、海外子会社得意先の大部分はデンソー及び東海理化の海外子会社向けとなっている。一方で、仕入れの60%近くがルネサスエレクトロニクス<6723>からとなっている。

2. セグメントの概要
同社は、開示上のセグメント※として「デバイスビジネスユニット事業」と「ソリューションビジネスユニット事業」の2つを開示しているが、重要な社内組織として「開発生産本部」と「技術センター」が関わっている。概要は次のとおり。

※同社は2018年4月1日から持株会社制へ移行したため、2019年3月期からは新しい名称のセグメントで開示される予定。


(1) デバイスビジネスユニット事業(2018年3月期売上高比率81.9%)
主に自動車関連企業向けに、マイコン、カスタムLSI、アナログ・パワー半導体、コンデンサ、リレー、コネクタなどの電子部品の販売を行う。また、カスタムLSIの設計や組込ソフトウェア/ハードウェア開発支援などの技術サポートビジネスも展開する。

具体的には、次世代車の企画時に顧客メーカーの機能的要望を聞き取り、それを実現する最適なマイコンを含めた周辺デバイスを提案している。またデバイスの開発時には、マイコンの性能や各種開発ツールの技術面でのサポート、デバイスの動作確認や評価を行い、量産時にはそのデバイスを適時供給するというワンストップソリューションを提供。また、最適な機能を実現するマイコンが標準品にない場合、半導体・電子部品メーカーと共同でハードウェアの開発も行う。

(2) ソリューションビジネスユニット事業(同18.1%)
IT機器、計測機器及び組込機器の販売とITプラットフォーム基盤構築を核とし、自社製品である産業用コンピュータの開発、製造、販売も手掛け、これらを組み合わせた各種ソリューションを提供する。また、自動車や半導体といった各産業分野向けFAシステム、物流システム、生産管理システムなどの構築サービス、データセンターサービスなどソリューション提案型のビジネスを行っている。

自動車業界向け以外の事業を伸ばすため、同社はデータセンター事業を育成している。2012年5月には愛知県内にデータセンターを開設。クラウド型のファイル共有・同期サービスやハウジングサービス(サーバー預かり)を提供し、自前で投資する余裕のない中小企業の情報基盤整備や災害復旧(DR)対策の需要を取り込んでいる。主要既存顧客の自動車関連メーカーに加えて、非製造業も含めた新規顧客の開拓に注力中だ。

また、これら機器販売やITソリューションの提供によって獲得した新規顧客から、半導体や電子部品といったデバイスビジネスユニット事業での新規受注を得るというシナジー効果も見込んでいる。

(3) 開発生産本部
ソリューションビジネスユニット事業のセグメントとして開示されており、ソリューションビジネスユニット事業配下の1つの事業部門として分かれている。電子・情報プロダクツの開発、製造に取り組むメーカー部門である。

同部門では、各産業分野に対応したタイムスケールを最重要課題とし、効率と環境を追求した信頼できる電子機器やシステムソリューションを提案する。同社が長年携わってきた産業機器・計測制御機器の開発における経験を新しい技術と融合させ、多岐にわたる分野に応用している。実例として、主に次の4つの分野に注力している。

a) 社会インフラシステムソリューション
ICカードシステム、デジタルサイネージ、KIOSK端末、道路・交通システム、金融システム等。

b) 産業制御システムソリューション
工作機械、産業用ロボット、計測システム、各種産業機械等。

c) セキュリティシステムソリューション
生体認証システム、ゲートウェイシステム、入退室セキュリティ等。

d) カスタムコントローラソリューション
医療用補助機器、半導体製造・検査装置、画像処理システム、物流システム等。

(4) 技術センター
セグメントとしては開示されていないが、同社の主要事業を技術面で支える重要なプロフェッショナル集団である。デバイスビジネスユニット事業、ソリューションビジネスユニット事業、開発生産本部それぞれの技術スペシャリストを集結させて設立された。蓄積してきた技術・情報・経験の融合により、従来の事業分野の枠を越えて将来を見据えた技術戦略の立案、要素技術の開発及びビジネス企画の創出を行っている。

3. 特色、強み
同社の主力事業はルネサスエレクトロニクスから半導体を仕入れ、主にトヨタグループ企業に販売する「商社機能」であるが、同社の場合は単に商品を右から左へ流す商社機能だけでなく、以下のような特色や強みを持っている。

(1) 提案力・開発力
同社は自社内に開発、技術サポート部門(技術者)を有していることから、提案力・開発力に優れている。特にトヨタグループと密接であることから、同グループのニーズを的確に把握し、その内容を半導体メーカーにフィードバックすることで最適なデバイスを提供することが可能になっている。

また、独自の知識や技術を結集し、ユーザーのニーズに最適な製品やモジュール等を提案している。同社によれば、現在販売しているカスタム半導体の一部は、モデルチェンジなどの企画に合わせてデンソーやトヨタの指導で開発に関わったものであり、顧客の要求に応じ開発支援を行うことができるとのことである。同社は顧客に対して「提案できる」、さらに顧客が求める製品を「開発できる」商社と言えるだろう。

(2) トヨタグループとの太いパイプ
トヨタグループとの密接な関係も同社の強みだ。単に生産面での恩恵(生産増→同社売上増)だけでなく、ハイブリッド車、EV車などの次世代自動車で高い技術を有するトヨタと付き合うことで、同社自身の技術力・開発力・提案力にも一段と磨きがかかるだろう。

将来はこの技術力・開発力・提案力を自動車業界だけでなく各種の産業用機器やFA機器、生産システム、検査システムなどに応用することで事業の拡大が可能になってくる。要求が世界で最も厳しいと言われるトヨタグループと関係があること自体が、同社の財産とも言える。

一方で、売上高の多くをトヨタグループに依存していることはリスクが高いとの見方もあるが、必ずしもそうではない。現在、トヨタは世界市場での勝ち組であり、そのトヨタグループ向けの売上高が多いことは、同社にとってプラスである。

(3) 非自動車向けの技術力
同社の売上高の約10%は非自動車業界向けだが、この大部分は単なる商社機能ではなく、むしろIT企業としてのシステム構築等によるものである。特に生産現場でのシステムや検査工程でのシステム構築などに強い。非自動車向け売上規模(年間約11,500百万円)は、ちょっとした上場システムインテグレーター(SI)企業の売上規模に匹敵し、このようなSI的な機能を持っていることも同社の特色であり、強みでもある。

以上のように同社は、単にデバイスを右から左へ流す商社機能だけでなく、「付加価値を付ける」ことができる商社である。これは売上総利益率の高さからもうかがえる。同社の売上総利益率(2018年3月期)が9.7%だったのに対し、同じようにルネサスエレクトロニクスの製品を多く扱う主な半導体商社の売上総利益率は、三信電気<8150>が7.3%(同)、新光商事<8141>が8.9%(同)、佐鳥電機<7420>が8.6%(2017年5月期)となっている。同社が持つ技術力・開発力・提案力によって「付加価値」がオンされた結果だろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

<SF>
配信元: フィスコ

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