■イメージワン<2667>の業績動向
1. 厳しい価格競争と先行投資負担が重荷だが、エクイティファイナンスにより財務体質は良化
2004年3月、同社は伊藤忠商事を第2位の大株主として迎える第三者割当による新株発行(2008年3月に国際航業グループが全株取得)を実施した。これが奏効し、2008年9月のリーマン・ショックや2011年3月の東日本大震災といった厳しい経済環境を乗り越えた後、2015年以降、エクイティファイナンスを活発化させ、事業構造改革と財務体質強化を加速させている。
むろん、株主価値の希薄化には十分留意する必要があるものの、パートナー戦略を伴ったエクイティファイナンスは、財務基盤の強化、事業構造改革や新規事業領域開拓、バリューチェーン強化を通じて、中長期的な企業価値増大を目指すものであり、今後の成果を見守りたい。
直近の動きを見ると、2015年9月期から2017年9月期に至る3期のうち2期において赤字決算を余儀なくされるなど、フロー利益が冴えない一方、自己資本比率(単体ベース)が2014年9月期末 46.2%→2017年9月期末 60.4%(連結ベース52.1%)、流動比率(同)が2014年9月期末 231.6%→2017年9月期末 280.0%(同347.6%)、と財務体質の安全性を図る代表的な指標は大幅に良化している。
この財務体質の良化は、2015年5月のEBMへの資本業務提携を伴う第三者割当による新株発行とマイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)への純投資としての第三者割当による新株予約権発行によるところが大きいわけだが、1)厳しいながらも更新需要を迎えつつある国内PACS市場における競争力確保、2)医療分野での新規事業開発、3)GEOソリューション事業の事業構造改革、を推進する原動力となったばかりでなく、新たなパートナー戦略実現につながるものであった。
2016年11月、同社は新たなパートナー戦略として、光通信の子会社EPARKとの合弁でイメージワン ゼロットを設立した。その原資として、EBM等への第三者割当増資で得た資金が活用され、2018年5月のエンパワープレミアムへの出資(この原資は、純投資目的のSBIグループ(SBIホールディングス<8473>)及び事業パートナーである光通信グループへの第三者割当による新株予約権発行)につながったわけである。
2. 先行投資負担は大きいが事業構造改革の成果が顕在化しつつある
セグメント情報を見ると、事業構造改革の進展ぶりが確認できる。
ヘルスケアソリューション事業については、老舗ベンダーとしての顧客基盤(400病院程度へPACS導入実績)とEBMとの強固なパートナーシップ(日本国内の医療の状況や顧客ニーズをタイムリーに反映したシステム開発)を背景に、厳しい価格競争の中でも更新需要を取り込み、ウェアラブル心電計(duranta)関連の先行投資を負担しながらもプラスサイドの利益率を維持している。
GEOソリューション事業については、高採算プロダクトへの集中と継続課金モデルへ移行に踏み切った結果、2015年9月期に大幅減収のなかで利益率底打ちを果たした後、2016年9月期から2期連続で利益率20%水準を実現している。
各セグメントに帰属しない全社費用の大きさから、先行投資を含む事業部門に負わせられないコストが重荷になっていることは注視しておく必要があるものの、こうした事業構造改革の進展は、2015年5月のエクイティファイナンスの成果として評価してよいだろう。
3. 2018年9月期業績は想定の範囲内で推移
2018年9月期の第2四半期連結決算は売上高が前年同期比28.6%増の766百万円、営業損失が同22百万円縮小の55百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失が同43百万円縮小の39百万円となった。通期業績予想に対しては、売上高進捗率48.5%となり、想定の範囲内で推移している。
赤字推移のなかでも、明るい兆候が散見される。1つ目は主力事業であるヘルスケアソリューション事業で前年度から注力してきた営業体制強化策(モダリティ(医療機器)メーカーとの協業など)が販売実績につながり始めたこと、2つ目は「duranta」が保険適用認可を得た「不整脈検査用ウェアラブル心電計」として販売を開始したこと、3つ目はGEOソリューション事業において実施したPix4D製ソフトウェアの戦略的価格改定が一定の効果を収めたこと、である。
なお、Pix4D製ソフトウェアの価格改定は、同社が販売を開始した2012年以降、初めてのことである。当初は実質的に独占販売に近い状況であったが、国内のドローン運用急拡大に伴いソフトウェア需要が高まるなかで、複数社による価格競争が生じたため、先駆する正規代理店として、対抗策を講じたわけだ。今後の見通しとしては、Pix4Dが日本のディストリビュータを制限していること、今回の見直しでグローバル販売価格に適合したこと、などから、近い将来に一段の価格引下げが行われる可能性は小さいと考えられる。
また、財務安全性指標を見ると、自己資本比率が57.3%(前期末52.1%)と良化、流動比率は339.3%(同347.6%)と極めて健全な水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田 吉弘)
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1. 厳しい価格競争と先行投資負担が重荷だが、エクイティファイナンスにより財務体質は良化
2004年3月、同社は伊藤忠商事を第2位の大株主として迎える第三者割当による新株発行(2008年3月に国際航業グループが全株取得)を実施した。これが奏効し、2008年9月のリーマン・ショックや2011年3月の東日本大震災といった厳しい経済環境を乗り越えた後、2015年以降、エクイティファイナンスを活発化させ、事業構造改革と財務体質強化を加速させている。
むろん、株主価値の希薄化には十分留意する必要があるものの、パートナー戦略を伴ったエクイティファイナンスは、財務基盤の強化、事業構造改革や新規事業領域開拓、バリューチェーン強化を通じて、中長期的な企業価値増大を目指すものであり、今後の成果を見守りたい。
直近の動きを見ると、2015年9月期から2017年9月期に至る3期のうち2期において赤字決算を余儀なくされるなど、フロー利益が冴えない一方、自己資本比率(単体ベース)が2014年9月期末 46.2%→2017年9月期末 60.4%(連結ベース52.1%)、流動比率(同)が2014年9月期末 231.6%→2017年9月期末 280.0%(同347.6%)、と財務体質の安全性を図る代表的な指標は大幅に良化している。
この財務体質の良化は、2015年5月のEBMへの資本業務提携を伴う第三者割当による新株発行とマイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)への純投資としての第三者割当による新株予約権発行によるところが大きいわけだが、1)厳しいながらも更新需要を迎えつつある国内PACS市場における競争力確保、2)医療分野での新規事業開発、3)GEOソリューション事業の事業構造改革、を推進する原動力となったばかりでなく、新たなパートナー戦略実現につながるものであった。
2016年11月、同社は新たなパートナー戦略として、光通信の子会社EPARKとの合弁でイメージワン ゼロットを設立した。その原資として、EBM等への第三者割当増資で得た資金が活用され、2018年5月のエンパワープレミアムへの出資(この原資は、純投資目的のSBIグループ(SBIホールディングス<8473>)及び事業パートナーである光通信グループへの第三者割当による新株予約権発行)につながったわけである。
2. 先行投資負担は大きいが事業構造改革の成果が顕在化しつつある
セグメント情報を見ると、事業構造改革の進展ぶりが確認できる。
ヘルスケアソリューション事業については、老舗ベンダーとしての顧客基盤(400病院程度へPACS導入実績)とEBMとの強固なパートナーシップ(日本国内の医療の状況や顧客ニーズをタイムリーに反映したシステム開発)を背景に、厳しい価格競争の中でも更新需要を取り込み、ウェアラブル心電計(duranta)関連の先行投資を負担しながらもプラスサイドの利益率を維持している。
GEOソリューション事業については、高採算プロダクトへの集中と継続課金モデルへ移行に踏み切った結果、2015年9月期に大幅減収のなかで利益率底打ちを果たした後、2016年9月期から2期連続で利益率20%水準を実現している。
各セグメントに帰属しない全社費用の大きさから、先行投資を含む事業部門に負わせられないコストが重荷になっていることは注視しておく必要があるものの、こうした事業構造改革の進展は、2015年5月のエクイティファイナンスの成果として評価してよいだろう。
3. 2018年9月期業績は想定の範囲内で推移
2018年9月期の第2四半期連結決算は売上高が前年同期比28.6%増の766百万円、営業損失が同22百万円縮小の55百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失が同43百万円縮小の39百万円となった。通期業績予想に対しては、売上高進捗率48.5%となり、想定の範囲内で推移している。
赤字推移のなかでも、明るい兆候が散見される。1つ目は主力事業であるヘルスケアソリューション事業で前年度から注力してきた営業体制強化策(モダリティ(医療機器)メーカーとの協業など)が販売実績につながり始めたこと、2つ目は「duranta」が保険適用認可を得た「不整脈検査用ウェアラブル心電計」として販売を開始したこと、3つ目はGEOソリューション事業において実施したPix4D製ソフトウェアの戦略的価格改定が一定の効果を収めたこと、である。
なお、Pix4D製ソフトウェアの価格改定は、同社が販売を開始した2012年以降、初めてのことである。当初は実質的に独占販売に近い状況であったが、国内のドローン運用急拡大に伴いソフトウェア需要が高まるなかで、複数社による価格競争が生じたため、先駆する正規代理店として、対抗策を講じたわけだ。今後の見通しとしては、Pix4Dが日本のディストリビュータを制限していること、今回の見直しでグローバル販売価格に適合したこと、などから、近い将来に一段の価格引下げが行われる可能性は小さいと考えられる。
また、財務安全性指標を見ると、自己資本比率が57.3%(前期末52.1%)と良化、流動比率は339.3%(同347.6%)と極めて健全な水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田 吉弘)
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