物流品質の向上と機能の強化で
新たな食品物流を創造する
消費の伸び悩みや競争激化により厳しい収益環境にある内需系企業で、構造改革を推進させてその環境を打破し収益拡大につなげているところもある。食品物流のトップ企業であるキユーソー流通システムもその一社だが、国内の総物量は減少傾向の中で、利益は経常増益基調を継続している。中期経営計画の最終年度に当たる今期は、様々な構造改革が進展しており、その成果が注目される。現況と進捗状況について岡宗直樹代表取締役社長に話を聞いた。
──食品物流が主力事業ですが、業界でのポジションと強みについてお聞かせください。
親会社であるキユーピーの倉庫部門が会社の原点です。食品に特化した物流ではリーディングカンパニーを自負しています。食品メーカーからの少量多品種商品を共同配送する共同物流や、外食チェーン、コンビニエンスストア、スーパー向けの専用物流を全国展開しています。さらに冷凍・冷蔵・常温・定温の4温度帯物流のすべてで食品物流をリードしています。親会社およびグループ向け以外の外販比率は約85%。外販比率の高い物流子会社の一社といえ収益の安定やビジネス機会の拡大につながっています。グループ会社にて、海運(船舶輸送)やタンクローリー車を保有し原料調達から店舗配送まで、すべての食品物流を手掛けている総合力ということが他企業にはない強みだと考えています。
──物流品質の向上と機能の強化で、新たな食品物流を創造することを目指されていますが、具体的にはどのようなことですか。
食品物流業界を取り巻く環境は、個人消費低迷による総物量の減少や荷主の物流費抑制など、従来のように量的拡大が見込みにくくなっています。その一方で食品の安全・安心といった品質に対するニーズが高まるなど、主要得意先の物流ニーズも変化してきております。つまり、物流の効率化を図りながら、品質の向上も同時に、しかもスピーディに対応していく必要があります。保管機能・運送機能を再構築して物流ネットワークを強化することや、グループ各社・協力運送会社と連携して地域密着型の営業を強化することなどに取り組んでいます。
──具体的な事例では小型フレキシブル車両の開発が挙げられますね。
これは、荷量や用途に応じて荷室スペース(1室から最大3室)をマイナス20℃からプラス25℃まで柔軟に変更できるところが特徴です。2010年5月に開発した4トンのフレキシブル車両を今期、2~3トン車をベースにした小型車両を開発しました。これまでは地方を中心とする共同物流の効率化に活用してきましたが、都市部での活用も可能になります。今後実試験運行を経て、外食チェーンやコンビニエンスストア向けに提案を働きかけていく方針です。車両の特長である1台で3温度帯の食品運搬が可能になるだけに、新たな食品物流につながるかも知れませんね。
──収益体質の改善に取り組まれていますが進捗状況を教えてください。
連結決算の推移は、売上高は既存の専用物流取引の影響により減収となりましたが、利益はゆるやかではありますが着実に回復しており、手ごたえを感じています。倉庫内業務の標準化や保管・運送機能の再構築、情報系システムの構築、そして土台となる人材育成と活用の強化などの中期戦略と戦略軸に紐付いた施策に取り組んできました。12年11月期見通しの営業利益率は1・6%と利益水準はまだまだ低いと考えています。まずは2.0%台に引き上げていく所存です。
──成長分野へのシフトを中期計画のテーマに掲げていますが。
外食チェーン、コンビニエンスストア、スーパー向けの専用物流を伸ばしていきたい。その有力な武器となるのが自社開発したKRS-WMSサービスです。様々な物流形態に対応した倉庫管理システムをクラウド・モデルで提供するもので、従来は得意先ごとにシステム構築や業務設計するケースが多く、時間とコストがかかる傾向がありましたが、それらをパッケージ化することでカスタマイズのみでの対応が可能となるため、得意先のニーズにより合致したシステムができ、なおかつシステム導入コストの大幅な削減にもつながるという優れものです。大手量販店の専用センター業務を受託するなど成果が出始めています。また、輸入業務システムも構築し輸入貨物の取り扱いに向けて、対応力を強化していきます。
──今12年11月期業績の進捗状況はどうでしょうか。
6月20日に今11月期連結業績見通しを売上高1390億円(前期比0.8%減)、経常利益22億円(同11.6%増)と売上高で10億円、経常利益で1億1000万円上方修正しました。売上高増による粗利益改善や業務効率化に伴うコスト削減の進捗がその要因です。一方、電力事情による景気影響および燃料調達単価の動向に不透明な部分がございますが、経営目標の達成に向けて全力で取り組んでいきます。今後ともなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
キユーソー流通システム
[東証1部・9369]
岡宗直樹(おかむね・なおき)
東京水産大学水産製造学科卒業。1973年キユーピー入社。1999年営業本部業務用加工食品部長、2003年人事本部人事労務部長、2007年トウ・キユーピー社長。2010年キユーソー流通システム顧問に着任し、取締役社長補佐を経て、2011年2月社長就任(現任)。