S&P500月例レポート(2017年12月配信)

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最新投稿日時:2017/12/12 21:33 - 「S&P500月例レポート(2017年12月配信)」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(2017年12月配信)

 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

絶好調が続いており(今のところ)、大半の市場参加者が今後も続くと予想

 私の自己紹介をさせて下さい。私は富と嗜好を支配する雄牛(ブル)です。もう随分長い間ここにいて、大勢のショート筋の魂を奪ってきました。米連邦準備制度理事会(FRB)が疑念や苦痛を抱える中、バランスシートがまさにFANG銘柄のように巨大化していたときも、私はここにいました。お会いできてうれしいです。私の名前はご存じだと思います。しかし、私がなぜこれほど長生きしているのか戸惑っていることでしょう。

 何度も現れて申し訳ありません――というのは本心ではなく、来月も登場するつもりですが、肝心なことはS&P500指数とS&Pグローバル総合指数がそれぞれ11月も再び上昇したことです。この文章のくだりに既視感を覚えるとすれば、それは以前にも聞いたことがあるからに他なりません。実際、トータルリターン・ベースでは、これで13ヵ月連続になります。S&Pグローバル総合指数にとっては、先進国指数と新興国指数を統合して誕生した1995年以来の記録です。S&P500指数が13ヵ月連続の上昇を記録したのは2回目のことです、前回は1959年で(私は、当時はS&Pにいませんでしたが)、15ヵ月連続で上昇しました(注:ちなみにここではトータルリターンを使用しています。S&P500指数は、株価の値上がりだけで見ると2017年3月に0.04%下落しており、「記録更新に役に立たない」のですが、配当を含めると0.12%上昇になるからです)。本稿執筆時点で、市場は上昇を続けており、ビットコインほどではないかもしれませんが、ひたすら上昇しています(そして、普通の市場でビットコインと同様のボラティリティがあったら、相場を乗り切れる者はほとんどいないと思われます)。第3四半期の業績は過去最高水準に達し、第4四半期も記録更新が見込まれ、ワシントンの情け深い人たちからクリスマス・プレゼントが届くかもしれません。もっとも、良い子と悪い子で中身は違うでしょうが。景気は好調を維持しているようで、住宅市場は底堅く、失業率は低水準にあり、しかも一部の熟練労働者市場では賃金が上昇しています。また、金利は緩やかなペースで上昇するとみられます(FRBの新執行部の下で若干加速する可能性はあるものの、依然として緩やかなペースになるでしょう)。

 とにもかくにも、105ヵ月に及ぶ強気相場は、例外はあるものの、総じて前進を続けています。投資家も投資家でない者も(それとも直接投資家と間接投資家と言った方がよいでしょうか)、クリスマス・ショッピングを通じて喜びを伝えようと、スマートフォンを手に取ったり店舗に足を運んだりしているようです。売り手側(小売業や電子商取引)を見ると、第4四半期序盤の売り上げは順調ですが、それ以前の9ヵ月間を穴埋めするには売上高をかなり伸ばす必要があるでしょう(小売業の多くは1月が決算期末)。株式市場では、強弱混在の様相です。Amazon(AMZN)、Wal-Mart(WMT)、Home Depot(HD)、Best Buy(BBY)はいずれも年初来で30%以上上昇する一方、Macy’s(M)、Target(TGT)、L Brands(LB)、Foot Locker(FL)は年初来で軒並み2桁台の下落となっています。 現時点で、落ちこぼれ組はごく一部にすぎません。その原因が好調なファンダメンタルズにあるのか、利益への執着心(これを「貪欲」と呼ぶ人もいます――ただ最近は貪欲が良いことなのか悪いことなのか思い出せません)にあるのかは区別し難いものの、他の多くの事がそうであるように、2つが重なったためかもしれません。私には「結果は終わるまで分らない」としか言えませんが、順調に進んできたことは確かです(あくまで、現在までのところ)。


●11月のまとめ

○11月のS&P500指数は初めて2600の大台を突破し、10月末の2575.26から2.81%(配当込みのトータルリターンは3.07%)上昇して2647.58で月の取引を終えました(10月は2.22%上昇)。3ヵ月間の上昇率は7.12%(同7.65%)となり、年初来では18.26%(同20.49%)、2016年11月8日の大統領選投票日の終値(2139.56)からは23.74%(同26.49%)上昇しています。S&P500指数は、11月中に終値での最高値を7回更新しました(直近の高値更新は11月30日の2647.58)。ダウ工業株30種平均(NYダウ)も初めて2万4000ドルの大台に乗せ、10月末の23377.24ドルから3.83%上昇して24272.35ドルで11月の取引を終えました。年初来の上昇率(昨年末の終値は19762.60ドル)は22.82%となっており、11月中に終値での最高値を9回更新しました(直近の高値更新は2017年11月30日の24272.35ドル)。

○原油価格は10月末の54.44ドル(9月末は51.64ドル)から5.3%上昇して57.35ドルで11月を終えました。2016年末の53.89ドルからの上昇率は6.4%となっています。

○米国10年国債の11月末の利回りは2.42%と、10月末の2.38%から上昇しました(2016年12月末は2.45%)。

○金価格は10月末の1トロイオンス1271.80ドルから11月に0.5%上昇し、1277.70ドルで11月を終えました。2016年12月末の1152.00ドルからの上昇率は10.9%となっています。

○英ポンドは10月末の1ポンド=1.3285ドルから1.3531ドルに上昇し(2016年12月末は1.2345ドル)、ユーロも10月末の1ユーロ=1.1651ドルから1.1909ドルに上昇しました(同1.0520ドル)。円は10月末の1ドル=113.70円から112.57円に上昇しました(同117.00円)。

○VIX恐怖指数は10月末の10.15から11.30に上昇して月を終えました(2016年12月末は14.04)。月中の最高は14.51、最低は8.56で、後者は1990年以後で最も低い水準となりました。

○ボトムアップベースで算出したS&P500指数の1年後の目標値は2812で(現在値から6.2%上昇)、またNYダウは2万5531ドル(同5.2%上昇)と、史上初の2万5000ドルの大台突破を目指しています。

●12月の見通し

 12月は、税制改革をめぐる議会採決が市場を大きく左右すると予想され(上院が採決を先送りしたため)、投資家が不安に駆られて一斉に出口に殺到しないことを願うばかりです(そうならないと期待しますが)。12月に殺到するのは買い物客で、特定の利益集団も首都ワシントンの密室に集まると予想されます。歴史的に見ると、12月の月間騰落率がプラスとなる確率は73.0%で、上昇した月の平均上昇率は2.97%、また下落した月の平均下落率は2.82%、全体の平均騰落率はプラス1.41%となっています。今後のFOMCのスケジュールは、2017年12月12日-13日*、2018年1月30日-31日、3月20日-21日*、5月1日-2日、6月12日-13日*、7月31日-8月1日、9月25日-26日*、11月7日-8日、12月18日-19日*(*は記者会見が行われる)となっています。


●S&P500指数

 11月のS&P500指数は2.81%(配当込みのトータルリターンは3.07%)の上昇となり、8ヵ月連続のプラスとなりました(2016年11月以降の13ヵ月では12ヵ月がプラスとなり、唯一0.04%のマイナスだった2017年3月も配当込みのトータルリターンは0.12%のプラスでした)。最高値の更新は7回(10月は11回、9月は9回)、過去3ヵ月では7.12%(トータルリターンは7.65%)、年初来では18.26%(同20.49%)、過去1年では20.41%(同22.87%)の上昇となりました。2016年11月8日の大統領選以降、S&P500指数は23.74%(同26.49%)上昇し、最高値を65回更新しています(2017年は年初来で57回、2016年は18回、2015年は10回、2014年は52回)。

 11月は、10月の7セクターに対し11セクター全てが値上がりしました(9月は8セクター)。電気通信サービスセクターが反発に転じて最も高い5.90%の上昇を見せましたが、年初来では11.10%値下がりしています(依然として年初来騰落率は全セクター中で最低)。こうした反発の背景には2つの要因がありました。1つ目が底値買い、2つ目が相対的な配当利回りの高さ(価格下落の産物)です。情報技術セクターは10月に7.67%と大幅上昇しましたが、今月は0.93%の上昇でした。年初来では36.96%の上昇と、全セクター中で騰落率首位となっています。消費財セクターも健闘し、一般消費財は4.90%(年初来では18.52%)、生活必需品は5.40%(年初来では8.33%)上昇しました。パフォーマンス下位グループでは素材セクターが最も振るわず0.74%の上昇にとどまりましたが、年初来では19.31%の上昇となっています。

 11月は値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました。背景としては、小売セクターで事前予想を上回る業績発表が相次いだこと(なお、2017年第3四半期の業績は大半の企業が事前予想を上回りました)、および株式市場が11月に7回も最高値を更新し、最終日も最高値更新で締めくくったことが挙げられます。11月は385銘柄が値上がりし(平均上昇率は6.19%)、10月の318銘柄(9月は334銘柄)を上回りました。このうち65銘柄が10%以上値上がりしました(10月は24銘柄)。一方で、119銘柄が値下がりしましたが(平均下落率は4.51%)、その数は10月の186銘柄(9月は170銘柄)から減少しました。このうち10銘柄は10%以上下落しました(10月は32銘柄)。過去3ヵ月でみると、394銘柄が上昇(平均上昇率は12.12%)、このうち217銘柄が10%以上(平均17.77%)上昇しました。一方で、値下がりしたのは111銘柄(平均下落率は8.92%)となり、このうち39銘柄が10%以上(平均下落率は18.30%)値を下げました。年初来でも個別銘柄の動きは堅調で、371銘柄が値上がり(平均上昇率は28.37%)しており、このうち175銘柄が25%以上値上がりしました。値下がりしたのは131銘柄(平均下落率は14.73%)で、このうちの27銘柄が25%以上値を下げました。


●所得税

 議会(およびトランプ大統領)は税制改革法案を公表しましたが、今後、委員会や議会での修正作業が予想されます。企業にとって重要なポイントとなるのは、連邦法人税率の現行35%から20%への引き下げ、(最大)12%の海外留保資金課税、最低10%のグローバル企業向け海外収益課税、償却対象資産の即時償却の向こう5年間の承認、といった項目です。個人税制では、低所得層と一部中間層を対象に(実質的に)減税が実施されます。基礎控除が引き上げられる一方で、州・地方税控除、住宅ローンや学生ローンの利息控除、医療費控除は縮小されます。上院は独自の税制改革法案を公表しましたが、まだ採決は行っていません。上院案の内容は下院案とは異なり、主要な相違点として、上院案では法人減税の実施を2019年に先延ばししたほか、所得税の実際の税率区分についても下院案から増やし、税率も引き上げました。上下両院は一本化された(妥協案としての)法案に同意する必要があり、外部の特定利益団体がロビー活動を通じて両院への働きかけを活発化しています。

●各国中央銀行の政策行動

 イングランド銀行は予想通り、2007年7月以来となる利上げを発表し、政策金利を0.25%ポイント引き上げて0.50%としました。イングランド銀行は今後の利上げは「極めて緩やか」なペースになるとの声明を発表し、市場はこれをハト派的と受け止めました。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、ECBは「インフレ率が持続的に回復するまで、忍耐強くなる」必要がある、と述べました。10月31~11月1日の2日間に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想外の政策変更はなく、市場参加者は引き続き、FRBが12月11~12日の会合(まだイエレン議長の体制下)で0.25%の利上げを決定し、さらに2018年3月にも(新執行部の下で)利上げを実施する可能性があると予想しています。トランプ大統領はパウエル現FRB理事をイエレン議長(2018年2月1日に任期切れ)の後任としてFRB議長(任期5年)に指名しました(必要となる議会の承認も得られる見通しです)。パウエル理事はイエレン議長よりも若干ハト派的だとみられていますが、上院銀行住宅都市委員会での指名公聴会では従来よりもややタカ派的な証言を行い、ボルカールールの緩和を支持する考えを示しました。トランプ大統領はエコノミストであるマービン・グッドフレンド氏(カーネギーメロン大学教授)を空席となっているFRB理事に指名しました。就任に先立ち、同氏は上院の承認を得る必要があります。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は2019年1月の任期終了を待たずに2018年半ばで退任することを明らかにし、「任期終了よりも十分に早い段階で、確実に後任が決まるように」早期退任する意向であることを示しました。イエレン議長は後任のパウエル氏が2018年2月3日にFRB議長に就任した後に、自身のFRB理事のポストも退任する(理事の任期終了は2024年)意向を表明しました。


●企業業績

 S&P500指数構成企業の98%が第3四半期の決算発表を終え、第3四半期(正式にはまだ全銘柄が決算を終えていませんが)の企業業績が好調だったことが確認されました。全体としては、営業利益と米国の一般会計原則(GAAP)に基づく公表利益がともに過去最高益を更新し、市場を下支えしました。しかし、増益は株価の上昇で概ね織り込まれており、株価収益率(PER)は過去の水準に照らして高止まりしています。目下、「20倍以上のPERは今や当たり前なのだろうか」と疑問に思う向きもあるでしょう(私を含め、多くの人がこの点について考えていると思われます)。第3四半期を振り返ると、比較可能なデータがある497銘柄のうち、72.4%に相当する360銘柄で業績が予想を上回りました(過去平均は67%)。情報技術セクターの業績は目覚ましく、89.6%の銘柄で予想を上回り(これは予想の妥当性に疑いを抱かせるほど高い割合)、同セクターは9月末以降で8.68%、年初来で36.96%上昇しています(年初来騰落率はS&P500指数の全セクターの中で最高)。電気通信サービスセクターも注目されましたが、予想を上回った銘柄は半分にとどまり、同セクターは9月末以降で4.05%、年初来では11.79%の下落となっています(年初来騰落率はS&P500指数の全セクターの中で最低)。売上高を見ると、2017年第3四半期は、495銘柄のうち331銘柄で予想を上回り、予想を上回った比率は異例の高水準である66.9%となりました。この比率以上に明るい材料は、売上高が前年同期比6.0%増加したことで、ホリデー商戦の速報値が個人消費の増加を示す中、消費支出の加速が期待されます。

 今後を展望すると、2017年第4四半期の業績予想を9月末と比べるとわずかに1.6%しか下方修正されておらず、堅調に推移しています。第4四半期は再び過去最高益を更新し、2017年通期の利益も過去最高水準が予想されています。現時点で注目すべきセクターはまたもや情報技術セクターで、同セクターの第4四半期の利益は前年同期比27.4%増となって過去最高益の更新が示唆されており、全セクターの中で利益への寄与が最大となることが見込まれています。2018年に関してみると、通常、年末から1月にかけては、アナリストの年末評価と目標株価の更新に伴い、予想の修正が最も大きくなる時期に当たります。所得税改革をめぐる不透明感を踏まえれば(現時点で、ボトムアップの業績予想は税制改革による恩恵を織り込んでいるように見える一方、トップダウンの予想では、幅広い想定に基づき様々な憶測がなされています)、アナリストは議会の休会入り後まで予想の修正を遅らせようとするかもしれません(下院は12月14日(木曜日)、上院は12月15日(金曜日)で休会となる予定)。

●個別銘柄

 iPhone(アイフォーン)メーカーのApple(AAPL)は、上場企業として世界で初めて、時価総額が9000億ドルを一時突破しました(S&P500指数のトリビア:S&P500指数構成企業の時価総額に占めるAppleの割合は3.60%。ちなみに、IBMは1985年に6.37%、Microsoftは1999年末に4.92%を占めました)。インフラ・テクノロジー銘柄のGeneral Electric(GE)は年初来で42.1%下落しています。同社は、事業再編に伴うコスト削減の取り組みの中で、配当を従来の半分に減額しています(41億ドルもの減配額はS&P500指数の歴史上8番目の規模で、過去最大はGEが2009年に行った89億ドルの減配)。ビットコイン(BTCUSD)は一時1万1365ドルに達し、9615ドルで11月を終えました。2016年末は968ドルでした。Alibaba(BABA)の独身の日(11月11日)の売上高は254億ドルとなりました。ブレグジットをめぐる欧州連合(EU)と英国の交渉では、ブレグジットに伴う最大1330億ドルの支払い義務に関して暫定合意に近づきました(今後、承認される必要があります)。英国はこの額の半分を(何年にも分散して)支払う方針を示しています。

●その他トピック:ホリデーシーズンを迎えたが、歳末商戦はどうか?

 ブラックフライデーの週末のオンライン売上高は79億ドルでした。推定では、サイバーマンデー(11月27日)のオンライン売上高は66億ドルと過去最高を記録し、ブラックフライデーは50億ドル、感謝祭祝日(木曜日)は29億ドルとなりました。27日までの11月のオンライン売上高は前年比16.8%増の500億ドルとなっています。これに関連して、Amazon(AMZN)の株価は11月に過去最高値を更新し、同社のジェフ・ベゾスCEOの総資産は一時1000億ドルに達しました(個人の資産額がこの水準に達したのは初めてで、同氏は現時点で世界で最も富裕な個人となっています)。


 

 

 

 

 
 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム

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