再生医療は従来では治療困難である病気に新たな治療の途を開くと同時に、一度の治療による根治、あるいは症状の抜本的改善が期待できる治療法です。しかし再生医療は治療費が高額なため産業化は難しいと見られていましたが、2013年に政府が再生医療の産業化を成長戦略に組み込んだことで同分野への投資が活発化しています。政府が再生医療の産業化を推し進める背景は、慢性疾患領域(腎臓病や糖尿病など)で根治治療がなされれば医療費や介護費などの社会保障費が大幅に削減できるうえ、患者の社会復帰による労働力人口の確保につながりトータルメリットが大きいと考えているためです。
再生医療市場は、政府成長戦略資料によれば年率17%成長が見込まれ、2050年には国内2.5兆円(図1)、グローバルでは38兆円(図2)に拡大すると予想されています。とりわけ現在の開発中のものが発売される2020年以降の成長率は加速する見通しです。
2014年に再生医療実用化の促進のために「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)」と従来の薬事法を改正した「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」が施行されたことで従来のベンチャーだけでなく大手企業も参入も相次ぎ産業化の流れが加速しています。
再生医療新法は、細胞の培養・加工の外部施設への委託を可能にしたもので、研究開発に使用する細胞のコストダウンも期待されると同時に、細胞の培養・加工の受託ビジネスの育成につながります。
医薬品医療機器等法は、従来の医薬品、医療機器とは別に第3のカテゴリーとして再生医療等のカテゴリーを新設しました。従来の再生医療は、医薬品と同様に販売までには臨床試験で安全性と有効性を証明することが必要であったのに対し、新制度では再生医療等製品については、安全性の確認と有効性の示唆が行えれば、条件および期限付き承認を取得し保険適用で市場での販売が可能になり、従来8-10年程度かかった開発期間は最短2年程度まで大幅に短縮され参入企業の収益化が図りやすくなりました。
しかし産業化のための法整備は進んだものの実際に認可プロセスや認可の条件、薬価など制度変更の運用面がどうなるか注目されていましたが、この秋にテルモとJCRファーマから2つの製品が再生医療品として認可、保険収載されました。
認可された二つの製品の内容をみると厚生労働者や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が新制度を積極的に運用していく方針と推測されます。条件および期限付きでの承認であったテルモの製品は、承認を取得するまで実施した臨床試験はわずか7症例と少ない数で認可されたうえ、薬価についても比較的に高めに設定されました。また通常承認であったJCRファーマの製品はわが国初の他家細胞品での承認です。再生医療の産業化が成立するためには他家細胞品の拡大が必須といわれており日本でも他家細胞品(※)が認可された点は意義があると考えます。
(※)患者本人以外の細胞、すなわち「他家細胞」を利用した製品のこと。患者本人からは採取しにくい細胞を利用できる、あらかじめ製造しておくことで緊急の用に役立つ可能性がある等のメリットがある。
出所:経済産業省「原料細胞の入手等に関する調査報告書」をもとにスパークス・アセット・マネジメント作成
また株式市場でも市場の大きい分野での再生医療品の開発を手掛けるサンバイオ、ヘリオスの2社が今年株式公開しました。サンバイオは脳領域、ヘリオスは、眼科領域でいずれも患者が多くいる分野での開発を進めており今後の開発動向が注目されます。
またニコンが再生医療分野に戦略的に進出するほか、国内医薬品最大手の武田薬品工業が京都大学IPS細胞研究所と共同研究契約を締結するなど大手企業の再生医療分野への参入も本格しており再生医療の成長ペースが加速する可能性が高まっています。
※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。上記の企業名はあくまでもご参考であり、特定の有価証券等の取引を勧誘しているものではございません。
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