GPIFによる責任投資原則への署名

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最新投稿日時:2015/11/06 15:12 - 「GPIFによる責任投資原則への署名」(みんかぶ株式コラム)

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GPIFによる責任投資原則への署名

著者:舞妓さん
投稿:2015/11/06 15:12

 世界最大の年金を運用する日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動向は、日本の投資家のみならず、海外の投資家からも注目を集める存在です。そのGPIFが9月に国連の責任投資原則に署名をしたと発表しました。この責任投資原則は国連PRI(Principles for Responsible Investment)とも呼ばれており、世界中で多くの投資家が行動規範の一つとして採用しはじめています。国連PRIは2006年に当時の国連事務総長であったコフィー・アナン氏が提唱した6つの項目で構成された原則で、投資プロセスにおいてESG(環境、社会、企業統治)を考慮することを宣言する内容となっています。機関投資家はこの原則に署名することで、社会に対して責任を持って行動するということが求められますが、そのような意思表示をすることによって対外的に存在意義を示しやすくなるというプラスの効果が期待できます。

国連PRIの6原則

① 私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
② 私たちは活動的な所有者になり、所有方針と所有慣習にESG問題を組入れます。
③ 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
④ 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
⑤ 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
⑥ 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

 国連PRIへの署名機関数は過去3年で25%増加して1380機関(2015年4月時点)に達しており、世界の資産運用業界において責任投資の考え方が着実に浸透していることがうかがえます。国連PRIに署名している1380機関の運用資産規模を合計すると約59兆ドル(1ドル120円換算で7080兆円)と巨額であり、世界の金融市場への影響は無視できないレベルとなってきています。

 日本でも、GPIFが責任投資のプロセスを実現するために、運用を委託している機関に対しても国連PRIの署名状況や活動状況についての報告を求める方針を掲げています。これを受けて、今後は日本においても多くの運用機関や年金基金が新たに国連PRIへ署名する可能性があり、その場合はESGを考慮して投資を行うことが主流になることが予想されます。

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 ESGが投資パフォーマンスに影響を与えるか否かという点について、株式市場で一致した見解は見られないものの、すでに国連PRIの関連団体や東証がESGを考慮すると投資パフォーマンスを向上させる可能性があるという指摘を行っています。たしかに、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のそれぞれが経営のリスクや事業機会に直結する項目であるため、これらに適切に対応をする企業が持続的に成長し、企業価値が向上するということは無理のない説明です。さらに、今後このような認識が広まった場合には、各種調査機関が発表している「ESGスコア」を参照し、スコアの高い企業を優先的に買う、もしくはスコアの低い企業への投資を避けるという投資家が増えることが予想されます。その結果、企業のESGへの対応度合いが、投資家の企業選別基準に直接的な影響を及ぼすようになることから、株価パフォーマンスとの関係性が高まる可能性も出てきます。

 投資家のESGに対する関心が高まり、投資評価の基準になると、上場企業の経営方針や情報開示の姿勢が変化することが予想されます。従来上場企業は企業価値を向上させるために、利益やキャッシュフローを極大化させ、それを適切に開示するということを優先していましたが、今後はこのような財務情報だけでなく、幅広い企業活動をESG情報として投資家向けに開示を積極化する可能性があります。そして、企業の情報開示が積極的になると、調査・分析がしやすくなるため、更にESGに注目する人が増えるという循環が生まれることが予想されます。

 機関投資家が、ESGを投資プロセスに組み込むことは、社会から期待されている責任を果たす意味でも、投資パフォーマンスを向上させるためにも、今後益々重要になってくると考えられます。ESGについての分析手法はまだ確立されていませんが、基本となるのは、やはり個別の企業の経営理念や中長期の方針などを把握し、事業機会やリスクを丹念に調べるという地道な活動になると考えられます。ただし、従来よりも幅広い視野が求められることから、情報収集範囲を拡大することや、分析の効率性を向上させ、大量な情報を処理できる体制を構築することなどが、機関投資家にとっての今後の課題になると考えられます。

※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
配信元: みんかぶ株式コラム

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