インバウンド消費という言葉をご存知でしょうか。2013年頃から話題になり始めた言葉で、海外から来日した外国人の日本での消費を指す言葉です。2014年日経MJヒット商品番付において、妖怪ウォッチを抑え、栄えある東の正横綱に選ばれており、ご存知の方も多いと思います。
消費税増税や円安に伴う物価上昇により、2014年は国内個人消費に停滞感が漂っていました。その一方で、訪日外客数は過去最高の1,341万人(前年比約+29%)(出所: 日本政府観光局)、訪日外国人旅行消費額は2.03兆円(前年比約+43%)(出所: 観光庁)と非常に高い伸びとなったことで、インバウンド消費への期待はますます高まっています。
実は、訪日外客数は2013年、2014年と2年連続で過去最高を更新しています。その背景には、為替の円安化、発着枠の拡大、ビザの緩和、政府による施策等、様々な要因が挙げられます。一方で、今後の伸びを考える際には、過去2年間高成長が可能となった背景を認識しておく必要があると考えます。
下のグラフは、アジア太平洋地域全体の国際観光客数に占める日本のシェアの推移を示しています(注1)。グラフの通り、日本のシェアは2010年~2012年にかけて低位となっていました。円高や東日本大震災等が影響したと考えられます。この失ったシェアを一気に取り戻したのが2013年~2014年(予想)であり、結果として極めて高い伸びとなったと考えられます(注2)。
(注1)ここでアジア太平洋地域全体の国際観光客数に注目するのは、国際観光客を誘致する上で日本が競合するのがアジア太平洋地域の各国だからです(アジア太平洋地域を訪れる国際観光客のうち、約8割が同地域に居住しています)。移動コストを考えると、同じくらい魅力的な2つの国があれば、近い方が選ばれやすいということでしょう。実際に、2013年においてアジア諸国からの外客数が全体に占める比率は約78%となっています。
(注2)2014年における訪日外客数は2010年比464万人増、約+54%。この間アジア太平洋地域全体の国際観光客数は約+3割弱と推計できるため、+54%の増加のうち約半分が市場拡大要因で、残りの半分がシェア上昇要因と考えられます。
次に、今後の訪日外客数の伸びについて考えてみます。まず2015年については、2014年11月以降の高水準が続くという前提に立てば、1,500~1,550万人程度(前年比約+12~16%)と引き続き高い伸びが期待できます。この場合、アジア太平洋地域全体の国際観光客数に占める日本のシェアは1990年の5.8%に次ぐ高水準まで上昇することになります。
では、それよりも先については、どうでしょうか。国連世界観光機関(UNWTO)では、2010年~2030年におけるアジア太平洋地域全体の国際観光客数は年率5%程度で拡大すると予測しており、訪日外客数の伸びについても中期的には年率5%というところが一つの目安となりそうです。一方で、これを上回る成長がもうしばらく続くと期待できる材料もあります。まず、急激な円安によって日本旅行のバリュー感(価値に対する価格)は一層高まっていると思いますが、これが海外の人々に広く認知されるまでは、様々な経路(友人の土産話、インターネット上の情報、ガイドブック等)を経るため時間がかかります。そのため、今後も認知が広まるにしたがって訪日外客が増える余地があると考えます。また、日本側でもインバウンド消費を取り込もうとする動きが様々な企業・自治体で加速しており、訪日外客に対するサービスの充実や利便性の向上が期待できます。このような2つの動きが好循環を生めば、今後も日本のアジア太平洋地域全体を上回る拡大を続けることも十分可能だと考えます。
円安でも輸出が増えず、輸入物価の上昇といったデメリットに注目が集まりがちですが、インバウンド消費の拡大による国内経済の活性化を期待したいと思います。
※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。
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