増税原理主義と景気動向

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最新投稿日時:2014/11/17 16:16 - 「増税原理主義と景気動向」(みんかぶ株式コラム)

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増税原理主義と景気動向

著者:矢口 新
投稿:2014/11/17 16:16

GDP成長率は消費税を引き上げた4月から、2四半期連続のマイナスとなり、公式的にはリセッションに逆戻りした。アベノミクスでもダメだったと見るべきか、予想通りの景気後退と見るべきか、増税の「景気抑制効果」は抜群だと言わざるを得ない。病後の体力のない時に、予防ワクチンを投与して、瀕死の病人になるようなものだ。

今回の消費税問題について、ウォールストリート・ジャーナル(日本語訳)が詳細な解説をしているので、興味のある方々はご覧いただきたい。
参照:消費増税先送りが日本経済に与える意味合い
http://realtime.wsj.com/japan/2014/11/13/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E5%A2%97%E7%A8%8E%E5%85%88%E9%80%81%E3%82%8A%E3%81%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%AB%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%82%8B%E6%84%8F%E5%91%B3%E5%90%88%E3%81%84/?mod=WSJBlog&mod=WSJJP_Blog

(以下抜粋引用)
現在の消費税増税法のルーツは、菅直人元首相(民主党)が財務相を務めていた2010年にさかのぼる。ギリシャ債務危機が取りざたされるなか、財務省関係者が日本も二の舞になりかねないと説得。菅氏は消費税率を2倍に引き上げる案を示し、最終的に同法案は野田佳彦前首相(民主党)のもと12年に成立した。

国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)はともに、計画通り増税するよう日本政府に促している。一方、ノーベル賞受賞者で、安倍首相と最近会談したポール・クルーグマン氏をはじめとする経済学者からは、増税を延期すべきとの声が上がっている。

安倍首相がこの法律を破棄すれば、公の場で財務省の主張が否定されるという異例の状況を作り、政治家の独立性を目立った形で宣言することにもなる。これは増税先送りが確定していない理由の一つだ。財務省はすでに、増税を計画通り進められるよう動いている。
(引用ここまで)

消費税率再引き上げの先延ばし可能性がでてきたことで、上記財務省の動きの表れか、懸念を表明する報道が目立っている。

日経新聞:「財政健全化の遅れ必至 消費再増税先送りへ」
:「財務相『財政目標厳しく』増税延期にらみ閣僚発言相次ぐ」

朝日新聞:「追加の金融緩和に踏み切った日本銀行は肩すかしを食った状態だ。引き上げ前提で、政策を準備してきた『霞が関』からも戸惑いの声があがる。」

読売新聞:「2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する政府目標を達成するには、消費税率を最低でも10%に引き上げる必要がある。」

私はテレビ東京の早朝の海外市場情報番組を欠かさず見ているが、そこに登場するゲスト解説者も、ほとんどが財政健全化のためには、増税が必要だとしている。17日になって、新登場だという大手銀行系の解説者による、デフレ時に金融政策が必要なのは常識。増税ではますます景気が悪化すると、私などから見れば当然と思える見解が、むしろ新鮮に感じたくらいだ。

GDP発表後にも、新聞報道では「誤算のマイナス成長」となっているが、本来、増税は景気過熱を抑えるためのもので、上げれば景気は後退する。誤算どころか、計算通りなのは多くの人が指摘してきた。

税収を増やすには、減税や金融政策などで景気を拡大させるのが効果的なのは、常識中の常識だ。そのことの最大リスクはインフレだが、デフレ対策時に考えるリスクではない。

日本や米国では個人消費がGDPの大半を占める。消費が伸びれば成長率が伸び、税収も増える。その税収が増える前に、個人消費から3%や5%の分け前を国が先取りすれば、一時的には国の税収が増えるが、潜在的な消費拡大、成長率が大きく阻害されて、結局は税収が減るのだ。

先日、IMFはリーマンショック、ギリシャ債務危機後に、緊縮財政を提言したことは大きな間違いだったと認めた。日本の消費税率引き上げは、間違いをベースに決められたものだ。私は、再引き上げ延期だけに留まらず、打ち止め、場合によっては引き下げを検討してもいいかと思う。

引き下げを検討とは、過激に聞こえるかも知れないが、「場合によっては」と断っており、円安が進行すればその必要はないかと思う。私などからみれば、「どんな場合にでも」増税ありきという主張の方が、原理主義的で過激に思えている。

配信元: みんかぶ株式コラム

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