米大統領選の結果が伝わる日本時間9日の焦点
日経平均は直近11/1の高値1万7473円から先週金曜日には一時1万6801円まで売られた。672円下げた分の半値戻しが、1万7137円だからほぼ今日の寄り付きの値に一致する。売った分の半分買い戻しておこうというのは典型的なヘッジポジションの調整である。本来はエクスポージャー(投資額)の話だが、それを値幅に置き換えても差し支えないだろう。
極端に「トランプ・リスク」を恐れたところからは後退したといえ、大統領選の行方は依然として不透明であることには変わりがない。6月の英国国民投票の時だって、直前には「残留優位」との見方で市場は楽観に傾いていた。そこから梯子を外されて暴落したことを忘れてはいないだろう。今回もBREXITの再現とならない保証はどこにもない。
米国大統領選挙の結果は順調に開票が進めば、日本時間で9日昼~午後には大勢が判明する見込みだが、まれにみる接戦だけに最終結果の判明は東京市場の取引終了後、日本時間の夕方~夜になる可能性もある。投票締め切り時間は州によって異なり、また米国内でも時差があるため、開票速報が出される時間も異なる。最も開票が早く始まるのは東部で、日本時間9日の午前8時に投票が締め切られる。その後、しばらくしてメディアが出口調査の結果を発表し始める。それに市場は一喜一憂し相場は乱高下するだろう。
拮抗した選挙戦の鍵を握るのは、「スイング・ステート」である。それぞれの党のシンボルカラー(民主党=青、共和党=赤)から、伝統的に民主党が強い州を「ブルーステート」、共和党が強い州を「レッドステート」という。このどちらでもない州は「スイング・ステート(揺れる州)」と呼ばれ、選挙のたびに民主、共和のいずれかに振れてきた。
9日当日の最初にして最大の注目は「スイング・ステート」の大票田、フロリダとオハイオだ。フロリダ州は人口がおよそ2000万人と全米で3番目に多く、29人の選挙人が割り当てられ、大統領選挙の勝敗を左右する重要州。中東部に位置するオハイオ州は、全米で7番目に多い18人の選挙人が割り当てられている。人種の構成や産業の分布が全米の平均値に近いことから、「アメリカの縮図」とも呼ばれ、「オハイオを落とした者は大統領になれない」というジンクスがあるくらいだ。フロリダが日本時間9時に、オハイオが9時半に投票が締め切られる。情勢は10時過ぎ頃から伝わるだろう。その結果次第で東京市場は前場から大荒れになる可能性もある。
このように9日は日中の動きは激しくなることが予想される。しかし、東京の大引けまでに最終結果がわからない可能性が高い。なので、変動性は高まるがBREXITのような「決定的なショック安」は、取引時間中には発生しないというのをメインシナリオとする。
サブシナリオ【A】は、早い段階でフロリダ、オハイオ、バージニアの「スイング・ステート」でトランプ氏が勝利すること。そうなれば東京市場は「トランプ大統領誕生」の可能性を織り込み始めてBREXIT再現を警戒する。BREXITでは1300円近く下げた。今回も1000円幅の下落となってもおかしくはない。その場合、ドル円もあっさり100円を割るだろう。
ただし、「トランプ大統領誕生」で市場が急落したら、そこは絶好の買い場となるだろう。「トランプ大統領誕生」による急落は、ショック安や狼狽売りで、実体経済の悪化を反映したものではないからだ。そうしたセンチメントの急変による安値はミスプライスとなることが多く、その後の修正が期待できる。
サブシナリオ【B】は、Aの逆でヒラリー・クリントン氏の勝利がほぼ確実になるケース。上記のフロリダ、オハイオ、バージニアの「スイング・ステート」3州を獲れば、ほぼ間違いないだろう。その後出てくるアイオアや終盤のネバダでクリントン氏の当確が読める可能性がある。
サブシナリオ【B】では、これまでの下げに対する買戻しは入る。しかし、クリントン氏が勝っても、その後の政策が株式市場や日本株から見たドル円相場にとって好ましいものになるか疑問が残ることから、一気に大幅高とはならないだろう。