■クリントン候補勝利となれば、市場には「リスクマネー」が流入
クリントン氏は、国務長官を努めた2013年まではTPP(=環太平洋パートナーシップ協定)を推進する立場でしたが、「変革」を訴えるトランプ氏が思いのほか支持を伸ばしたことで、選挙選の最中にTPP反対の姿勢に転じました。
ただ、TPPを除けば、オバマ政権の政策を引き継ぐ姿勢ですので、政策運営が劇的に変わることはないとみられます。
■注目の政策は「薬価の引き下げ」
クリントン氏が大統領就任後、まず着手しそうなことは、薬価の引き下げです。
米国では薬の特許を他社から買い取り、薬価を引き下げた上で再販する手法が常態化しています。薬価を不当に吊り上げるのを防ぐとともに、高額な薬価には引き下げ圧力が強まりそうです。
16年度に約2500億円を売り上げたアステラス製薬(4503)の前立腺がん治療薬「イクスタンジ」は、売上の58%を米国で稼いでいます。
大日本住友製薬(4506)は、主力の総合失調症薬「ラツーダ」の北米売上10億ドルを目指すなど、製薬大手にはクリントン氏の大統領就任が逆風となる恐れがあります。
一部企業を除けば、オバマ政権を引き継ぐクリントン氏が勝利しても、悪影響を受ける企業は少ないのではないかと考えられます。
■市場には「リスクマネー」が流入
トランプ・リスクが払拭されることで、積極的にリスクを取ろうという動きになりやすく、株式市場にはリスクマネーが流入する公算があります。
為替相場の見通しについては、大統領選が短期的には影響があるとしても、中長期的にはファンダメンタルズに基づいて為替レートは形成されると考えますので、大統領が誰になるかよりも、12月に追加利上げがあるかどうかに左右されるのではないでしょうか。
1年ぶりに12月に米国の金利が0.25%引き上げられ、日米金利差がさらに拡大することになれば、1ドル「108円」程度まで円安・ドル高が進む余地があるとみています。
日銀による月5000億円の株価指数連動型上場投信(ETF)買入れも続くため、株価も上昇が期待できそうです。
108円まで円安が進行すれば、輸出企業の業績上振れ期待が高まり、日経平均株価は今年1月以来となる「18000円」台を回復する場面もあるのではないでしょうか。
小野山 功