まずは雇用統計だが
今週は、前哨戦のADP雇用統計は強気の内容であったものの、ドル買いの反応は限定的。ハト派色の強いイエレン講演が上値を抑えた。今晩の雇用統計も、よほどの強気とならない限り、イエレン議長の会見のない4月FOMCに利上げする可能性は低く、ドル買いの反応は限定的となるのではないか?
本日のアジア株式市場は、日本株を含めて軟調で、強気の雇用統計が出て、米利上げ観測が高まりを見せるなら、高値圏にあるNY株式市場の急落を招きかねず、ドルの上値も抑えられるだろう。NYダウとの相関が高まっているNY原油市場も、下値不安は後退したが、4月17日の産油国会合への期待感も後退しており、上値も重い状況だ。
現在の値位置は、2月から続いている110‐115円レンジの中心帯で、既に1-3月で変動幅が小さくなる傾向がある大統領選挙年の平均的値幅の8-9割を出し切っており、議長会見のある6月FOMCまでは、様子見ムードが支配するシナリオもあるだろう。ドル円は110-116円、NY金は、1200-1300ドル程度の保合いで、次なる放れを待つ展開となるかもしれない。
ただし、4~6月期はヘッジファンドの決算期をはさみ、日本のゴールデンウィーク前後に相場の潮目が変わるケースも多く、投機的な乱高下にも要注意だ。4月は新年度入りで、ニューマネーが動きやすい時間帯でもある。GPIFが2015年度の通期運用実績を7月29日に公表する事を発表しており、これに合わせて、6月1日解散、7月10日ダブル選挙投票日の方向との声も増えている。政治ファクターがマーケットに及ぼす影響にも注視だ。
新年度に一時的にドルが買われて、金が売られる局面があったとしても、長期的にはドル円の頭打ち、商品市場の底打ちが確認されつつある中、金融市場の波乱の火種は燻っており、ドルの上値・NY金の下値は、それぞれ限定的と考える。
米大統領選挙では、トランプ候補、ヒラリー候補いずれも、円安ドル高に対しては牽制発言を行っている。両党の候補が絞られるまでには、まだ時間が必要だが、次期政権の通貨政策・エネルギー政策にも、そろそろ気を配りたい。2月には米ルイジアナ州の液化天然ガス(LNG)基地から、米国産の新型天然ガス(シェールガス)のブラジル向け輸出が始まった。今回の輸出は2017年にも始まる日本向け輸出本格化の先駆けとなると見られるが、米国がシェールガス・原油輸出を積極的に行うため、新政権がドル安政策に舵を切る可能性も中長期シナリオを考慮する際には、頭に入れておかなければいけない事項だ。