世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いを続ける中、翻訳会社あるいは言語サービスプロバイダ(LSP)は、さまざまな言語で行われているCOVID-19に関する調査や研究の情報を世界に発信・共有する上で重要な役割を担っています。
他の多くの業界同様、翻訳業界もCOVID-19の感染拡大により多くの課題に直面することとなりました。CSA Researchが実施による調査によると、調査対象となったLSP(115社)の66%がCOVID-19の影響により業務が減少したと答えています。他の調査からは、小規模なLSPも困難な状況に陥っており、回答企業の12%が従業員の解雇を予定していることが分かっています。翻訳業界で仕事をするフリーランサーも多大な影響を受けていることでしょう。
COVID-19の感染拡大による全体への影響としては、2020年末までに言語翻訳市場の8%の縮小を引き起こすと予測されています。
今回の感染拡大による企業への影響の有無あるいは影響の度合いに関わらず、この困難な時期にあっても翻訳業界は人々の役に立つことに注力しています。世界が共に立ち向かっているパンデミックという危機的な状況において、翻訳サービスの必要性が高まったことは明らかです。実際、信頼できるCOVID関連情報は500以上の言語に翻訳されており、多言語での情報発信の必要性が高いことを示しています。この翻訳作業には、少なくとも150言語に翻訳された400本以上の動画の翻訳や、短い一般的な情報を世界中のさまざまな言語で発信するものや、世界保健機関(WHO)のガイドラインを220言語以上に翻訳したものまで多岐にわたっています。
機械翻訳だけに頼る翻訳ではなく、人間の翻訳者の必要性が高まっていると言えるかもしれません。人は、困難な状況においては特に、母国語で正確な情報を入手し、何が起こっているのかを理解したいと思うものです。配信される情報の内容に応じて付加情報を付けるなどの対応ができるのは人間の翻訳者であり、それができることが重要なのです。
COVID-19の感染拡大の結果、言語サービス業界に依頼される翻訳需要には大きな変化がありました。移動制限下で顧客向けのマーケティングを行うことのできない旅行およびサービス業からの翻訳需要が減る一方で、医薬関連や引きこもり需要に関連する業界からの需要が高まったのです。
- 医療翻訳:最も重要な翻訳ニーズの1つです。大量の情報が発信される中、一般的な医療情報やウイルスに関する最新情報と共に、医学研究、論文、出版物の翻訳が必要とされています。
- eコマースおよびマーケティング情報の翻訳:多くの人が引きこもり生活を余儀なくされたことで、多くの企業が顧客向けのオンラインサービスに力を注いでいます。今、企業が生き残るためにはターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンやeコマース・ソリューション戦略が不可欠です。そのため、広告や製品資料などの翻訳が必要とされるようになりました。
- 文書(ドキュメント)翻訳:従来から複数の種類の文書の多言語翻訳は大切です。最近ではWHOの発表、政府速報や勧告、事業の同意書や契約書の翻訳需要が増えています。
- eラーニング関連:世界中の外出規制や休校などによりeラーニングへの移行が進み、多くの学生にとってオンライン授業やeラーニングが生活の一部となってきました。それにともない、eラーニング関連の翻訳の需要も高まっています。
翻訳業界およびLSPは、アフターコロナの世界においても、人や企業に役立つサービスを提供し続けていきますが、ある程度の変化は予想されます。
- 他の業界や多くの企業と同様、従業員間、ベンダー、顧客とのオンラインミーティング増
- 従業員のテレワーク継続
- 顧客訪問および学会などへの参加の機会削減
- 市場の変化に応じた営業およびマーケティング活動の実施
- 大規模多言語オンラインイベントの開催支援への注力
アフターコロナに向けて各国が手探りで対応を進めていますが、経済再開への道のりはさまざまです。各国の状況、段階がことなるからこそ、より正確で迅速な情報提供に翻訳会社/LSPをお役立てください。