ふざけているようで実はくそ真面目なオイラは、量子コンピュータというものに関して、純粋にコンピュータサイエンスの進化という目線でしか捉えていなかった。これは、実に間抜けな考えだと知った。
★「量子コンピュータの衝撃 ~世界を変えるデジタル最終兵器~」
深田萌絵著 宝島社 2020.5.28.第1刷
この書籍はなかなか奥が深く、読んでいて飽きない。
だから、この書籍の一番ミソの部分を明かしてしまっても、
他の箇所にもオモロイ記事が満載なので、支障はないと判断する。
一番のミソは、量子コンピュータが成立したとき、最重要な意義がなんなのかという点だ。ざっくり言ってしまえば、これは旧来のコンピュータにより築き上げられてきた暗号化システムをあっさりと無力化してしまえるということに尽きるのだという。
量子コンピュータにより、旧式コンピュータでは解析不可能だった暗号鍵にまつわる解読が瞬時にできてしまい、そうなると仮想通貨や軍事機密情報などすべてが無力化してしまうという。言い換えれば、世界で最初に量子コンピュータをものにできた国家が、世界を支配できるという。
この一点で、目下米国と中国は熾烈な争いを水面下で繰り広げているという。また、双方とも量子コンピュータにかける予算は、世界でトップレベルの巨額なのだという。
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またこの著者は、コンピュータサイエンスに通じているだけでなく、金融関係の業務経験者でもあり、その内容は多岐にわたっている。
ユニークな文章と過激な表現から副島隆彦を彷彿とさせるが、副島氏とは上記の点で一線を画しており、また、二階堂ドットコム的な視点で語るその内容は、スリルに富んでいる。
量子コンピュータにいたるまでの経過的なモデルプランの目算や、邦銀を通じた中国への資金流出問題、5Gをめぐる米中の対立と台湾の関与、中国の思惑を見抜いた米国による6G規格の制定と新規ルールの策定、米中を除いているが日銀も参加した主要国中央銀行によるデジタル通貨発行の動き(2020年)、などなどきわめて重要な知見が描き混まれており、読者を引き込む。
著者である深田萌絵の今後に活躍に、とてつもなく期待したい。