この頃を思い出す。小学生の頃である。この日は「農業祭」と言って、小学校で、村総出のお祭りがあった。成年団の主催である。木造の古い体育館(と言っても、古い教室を、移動したものだから、床板は、所々はがれ、そこを別の板で補修した粗末なもの)で、秋に採れたサツマイモ、里芋、などの品評会があった。
農業祭は、青年団のパン食い競争、婦人会の東京音頭や、上州音頭の踊り、などで、10月にあった、小学校の運動会よりは、規模が小さく、どこか、侘しいものだった。大体3時頃には終わり、小学校の先生が数人、青年団と一緒に、後かたずけをした。
私は、どういう訳か、片ずけを、最後まで見ているのが、好きだった。最後を、見届けようというのか、名残惜しいというのか、分からないが、5,6年生の頃、一旦家に帰り、再び自転車で一人学校に行き、校庭の人がいなくなった夕暮れの中で、一人たたずんでいた。
人がいないと言っても、近くの子供が、2,3人、遠くで遊んでいた。桜の枯葉が、幾つか散っていた。
夕日が次第に傾き、やがて夜になる少し前、学校を、後にした。舗装されていない、でこぼこの道を自転車で帰ると、赤城や榛名が、赤っぽくなっている印象がある。どこか、孤独な帰りである。これから、冬がくる。自分の呼吸だけが、心に残る。自転車は、がたがたと、揺れる。